セドケイリ3.0 Web版

せどりの経理の教科書

セドケイリ3.0

自分の1か月分の取引を整理し、記帳し、
残高を確認して「今月は完了」と言えるようになる。

個人事業主 対応法人 対応MFクラウド対応

NOBU

一緒に、今月の記帳を終わらせましょう。
NOBU
  1. はじめに
  2. 第0章あなたが読む場所はここです
  3. 第1章確定申告と法人決算をさら〜っと理解しよう
  4. 第2章帳簿をつける本当の目的
  5. 第3章せどりのお金の流れを一枚で理解しよう
  6. 第4章勘定科目はこれだけ覚えよう
  7. 第5章記帳をラクにする初期設計
  8. 第6章MFクラウドを設定しよう
  9. 第7章月次記帳の全体像を覚えよう
  10. 第8章売上・売掛金を記帳しよう
  11. 第9章仕入れとクレジットカードを記帳しよう
  12. 第10章現金・振込・電子マネーを記帳しよう
  13. 第11章ポイント・ギフト券を記帳しよう
  14. 第12章経費と事業・プライベートを分けよう
  15. 第13章棚卸しと売上原価を理解しよう
  16. 第14章利益・資金繰り・残高を確認しよう
  17. 第15章消費税とインボイスを理解しよう
  18. 第16章固定資産・借入・給与などの特殊取引
  19. 第17章帳簿・領収書・電子データを保存しよう
  20. 第18章毎月の記帳を完了させよう
  21. 第19章年末決算と確定申告・法人決算の準備
  22. 実践・トラブル解決編
  23. 改訂履歴と制度の更新情報
  24. まとめ・索引

 

はじめに

NOBUからのごあいさつ

このたびは「セドケイリ3.0」を手に取っていただき、ありがとうございます。

いきなりですが、

あなたは今、自分のせどりの利益がいくらあるか、すぐに答えられますか?

売上は分かる。

Amazonやメルカリから、いくら入金されたかも分かる。

クレジットカードで、だいたいいくら仕入れたかも分かる。

でも、

  • 本当の利益はいくらなのか
  • カードの未払金はいくら残っているのか
  • 今ある在庫はいくらなのか
  • ポイントで仕入れた分をどうすればよいのか
  • 税金のために何を残せばよいのか

ここまで聞かれると、ちょっと自信がない。

そんな人も多いと思います。

大丈夫です。

最初から全部分かっているせどらーなんて、ほとんどいません。


この教材は、3つの使い方ができます この教材は、3つの使い方ができます 最初から順番に読む必要はありません 通しで読む 初めて記帳する人 第0章 → 順番に 1か月分をやりきる 辞書として引く いま困っている人 目次から該当章へ 実践編の逆引きも使う 手順書として使う 毎月の作業のたびに 第7章と第18章を開く チェックリストで確認 読み終えることがゴールではありません。自分の1か月分が終わることがゴールです
図1この教材の3つの使い方

経理が難しいのではなく、せどりの取引が複雑なのです

せどりの経理が難しく感じるのは、あなたに経理の才能がないからではありません。

せどりでは、いろいろなお金が同時に動きます。

  • Amazonで商品が売れる
  • 売上から販売手数料や送料が引かれる
  • 数週間後に銀行へ入金される
  • クレジットカードで仕入れる
  • 翌月以降に銀行から引き落とされる
  • 楽天ポイントやPayPayポイントを使う
  • ギフト券や電子マネーを経由する
  • 返品、返金、キャンセルが発生する
  • 商品が売れずに在庫として残る

これだけのことが起きているのに、入金額とカードの引落額だけを見て、正しい利益を出すのは無理があります。

逆に言えば、お金の流れを一つずつ整理すれば、帳簿は作れます。

簿記の難しい理論を全部覚える必要はありません。

せどらーがよく使う形から覚えていけば大丈夫です。


旧版「セドケイリ」を販売してから分かったこと

以前販売した「せどらーの為の経理の教科書 セドケイリ」は、29,800円で900本をご購入いただきました。

旧版では、経理や税金が苦手なせどらーでも、MFクラウドを使って帳簿をつけられるように、できるだけ難しい言葉を使わずに説明しました。

その後、当社ではせどり・物販事業者向けの記帳代行を行い、個人事業主から法人まで、多くのお客様の帳簿と向き合ってきました。

約5年間、464件の実際のお客様対応を振り返ると、同じところで困っている人がたくさんいました。

  • カードを連携したのに未払金が合わない
  • 売上と入金の違いが分からない
  • Amazonとカードの両方から仕入れを登録してしまう
  • 家族カードを追加したら二重計上になった
  • ポイントやギフト券の処理が分からない
  • 棚卸しをすると、なぜ利益が変わるのか分からない
  • MFに数字が入っているのに、実際の利益と感覚が合わない
  • 何を提出すれば記帳が完了するのか分からない

旧版で伝えた基本は、今でも大切です。

ただ、基本だけでは解決できない実務上の迷いも、たくさん見えてきました。

そこで、旧版の分かりやすさは残しながら、実際のお客様が困った内容を反映して作り直したのが「セドケイリ3.0」です。


セドケイリ3.0で目指すこと

この教材の目的は、あなたを税理士や経理の専門家にすることではありません。

目指すのは、次の状態です。

自分の1か月分の取引を整理し、記帳し、残高を確認して、「今月は完了」と言えるようになる。

具体的には、次のことができるようになります。

  1. 使用している販路、口座、カード、決済方法を整理する
  2. 売上、仕入れ、経費を記帳する
  3. 現金、ポイント、電子マネー等の連携外取引を追加する
  4. カード未払金や売掛金を照合する
  5. 棚卸表を作る
  6. 損益計算書と貸借対照表を確認する
  7. 個人は確定申告、法人は決算前の資料を準備する

「読んで分かった」で終わらず、実際に自分の帳簿を完成させることがゴールです。


個人事業主も法人も使えます

セドケイリ3.0は、個人事業主だけでなく、日本法人も対象にしています。

  • 副業でせどりを始めた人
  • 個人事業主として青色申告をする人
  • 法人化したばかりのひとり会社
  • 複数のカード・販路・倉庫を使う法人
  • 経理担当者や外注スタッフと分担している会社

経理初心者から中級者までを対象にしています。

ここでいう初心者・中級者とは、年商の大きさではなく、経理知識や実務経験のことです。

年商が大きくても、帳簿を会計事務所へ任せきりで、自社の数字がよく分からない経営者はいます。

反対に、まだ売上が小さくても、毎月きちんと残高確認までできる人もいます。

事業規模に関係なく、今の自分に必要なところから読んでください。


全部を最初から理解しなくて大丈夫です

この教材には、売上、カード、ポイント、在庫、消費税、法人特有の処理など、たくさんの内容があります。

最初から全部を覚えようとしないでください。

例えば、今は個人事業主で従業員もいないなら、法人の役員借入金や従業員立替の説明は読み飛ばして大丈夫です。

輸出をしていないなら、海外販売の説明は後回しで大丈夫です。

ポイントを使わないなら、ポイントの章も今すぐ読む必要はありません。

まずは、あなたが今使っている販路と支払方法に必要なところだけ進めてください。

分からないところがあっても、一度読み飛ばして実際に作業してみると、後から意味が分かることがあります。

旧版と同じように、まずはさら〜っと進めて大丈夫です。


「AIに聞けばいいのでは」と思った方へ

先に、私の考えを言っておきます。

AIを使って自分で記帳する。大いにありだと思っています。

私も使っています。「売掛金とは何ですか」と聞けば教科書どおりの答えが返ってきますし、「Amazonの手数料はどの勘定科目ですか」と聞けば、たいてい正しい答えが出ます。道具としては優秀です。

外注に出さず、自分の手で、AIを相棒にして経理を回す。それができるなら、それが一番いい形です。

ただし、順番があります。


帳簿が分からないままAIを使うと、とんでもない帳簿ができます

これは脅しではなく、実際に何度も見てきたことです。

理由は4つあります。

1 AIは、聞かれなかったことを教えてくれません

「クレジットカードで仕入れをしたときの仕訳を教えてください」と聞けば、正しい答えが返ってきます。「仕入高/未払金」でしょう。

ですが、その答えには次のことが一切含まれていません。

  • そのカードの明細と購入履歴、どちらを記帳元にするか決めましたか
  • 家族カードや追加カードを、別に登録していませんか
  • 引き落としの記帳を、経費で入れてしまっていませんか
  • 締め日と支払日のずれを考えずに、残高を比べていませんか

これらは、質問しなければ出てきません。そして質問できるのは、それが問題になると知っている人だけです。

記帳でお金が合わなくなる原因のほとんどは、仕訳を知らないことではありません。何を確認すべきかを知らないことです。

2 答えが正しいかどうかを、自分で判断できません

AIは、間違っているときも自信を持って答えます。「たぶん違うと思いますが」とは、あまり言ってくれません。

経理を知らない状態でAIの答えを受け取ったとき、それが正しいかどうかをどうやって判断しますか。

判断するには、自分の中に基準が必要です。AIを安全に使うには、AIの間違いに気づける程度の知識が要る。矛盾しているようですが、事実です。

3 AIは、あなたの帳簿を見ていません

「未払金が合いません」と聞いても、AIはあなたの残高も、カードの締め日も、去年どう処理したかも知りません。一般論しか返せません。

一般論では、目の前の差額は消えません。

4 記帳は、質問と答えの繰り返しではありません

ここが一番大きい違いです。

記帳のゴールは、正しい仕訳をたくさん知ることではありません。月末に、帳簿の数字が現実と一致していることです。

  • 預金残高が、通帳と1円まで合っている
  • 売掛金が、まだ入金されていない金額として説明できる
  • 未払金が、カードの請求額として説明できる
  • 在庫金額に、根拠となる棚卸表がある

これは質問して答えをもらう作業ではなく、手順です。しかも順番を間違えると、後の工程をやり直すことになります。

AIに100個質問しても、この状態にはたどり着きません。


だから、まず分かるようになってください

AIを否定しているのではありません。順番の話です。

土台があれば、AIは強い相棒になります。用語を確かめる、仕訳の形を思い出す、制度の概要を調べる、文章を整理する。確実に速くなります。

土台がないまま使うと、正しそうな答えを集めただけで、帳簿は合わないままです。そして厄介なことに、合っていないことに気づけません。

この教材は、その土台を作るためのものです。


分かった上で、選んでください

そして、ここからが本題です。

帳簿が分かるようになったあと、自分でやり続ける必要はありません。

分かった上で、こう判断する人がいます。

  • 記帳作業そのものが面倒だ
  • 自分には向いていない。数字を見ると気が滅入る
  • 自分の時給で考えたら、外注したほうが安い

どれも正しい判断です。

月に5時間かけて記帳している人が、その5時間を仕入れに使ったらいくらになるか。それを計算できるのは、経理が分かる人だけです。分からない人は、そもそも比較ができません。

逆に、分かったうえで「これは自分でやったほうが早い」と判断する人もいます。それも正しい。

大事なのは、選べる状態になることです。

分からないまま外に丸投げすると、出てきた数字が合っているかどうか判断できません。分からないまま自分でやると、とんでもない帳簿ができます。どちらも、選んだのではなく、選べなかっただけです。

この教材を読み終えたとき、あなたは選べるようになっています。自分でやるのも、任せるのも、そのときの状況で決めてください。行き来しても構いません。


なお、AIの答えをそのまま税務判断に使わないでください。制度は変わりますし、あなたの状況に当てはまるとは限りません。これは、この教材についても同じです。最終的な税務判断は、必ず顧問税理士か税務署に確認してください。


この教材の構成

セドケイリ3.0は、次の3つでできています。すべてこの1冊に入っています。

本文

考え方、基本の仕訳、判断基準、よくある間違いを説明します。

MFクラウドのボタンの位置や画面名は、しょっちゅう変わります。そこを追いかけても、来年には使えません。この教材では、変わりにくい「何を、どの順序で、どこに注意してやるか」を中心に説明し、画面の最新手順が要るところにはマネーフォワード公式サポートのリンクを載せています。

記入シート

カード台帳、未払金照合表、棚卸表、月次チェックリスト等は、各章の中に空欄の表として入れています。

別ファイルを開かなくても、読みながらその場で書き込めます。ゼロから自分で表を作る必要はありません。

実践・トラブル解決編

巻末に、実際のお客様対応で多かった間違いと例外処理を、匿名化した事例で載せています。

通常の方法で解決しないときの、逆引き辞書として使ってください。

そのほかに

巻末に「改訂履歴と制度の更新情報」を置いています。消費税やインボイス、電子帳簿保存法など、制度が動いたときの差分はそこに追記します。制度の記述で迷ったら、本文よりそちらを優先してください。


ひとりで進めなくて大丈夫です

この教材には、質問できるサポートが付いています。

旧版を販売したとき、一番多かった感想がこれでした。

読んだときは分かったのに、自分の画面を開いたら手が止まった。

教材は、どうしても「一般的な場合」を書きます。ですが実際の帳簿には、あなたの販路、あなたのカード、あなたの去年の処理があります。そこで詰まったときに聞ける場所がないと、そのまま止まります。

サポートの中身は2つです。提供期間や条件は、お申し込み時のご案内をご確認ください。

チャットでの質問

作業中に手が止まったら、そのつど聞いてください。回数の制限はありません。

「この取引はどの科目ですか」「未払金が合いません」「この画面から先に進めません」。どれも歓迎します。分からないまま先に進むより、聞いてもらったほうが早く終わります。

月2回の勉強会・作業会

オンラインで開催します。その時期にやるべきことを扱う勉強会と、実際に手を動かして終わらせる作業会です。

一人だと後回しになる作業も、時間を決めれば終わります。参加できない回は、あとから内容を確認できます。


ひとつだけ、お願いがあります。

質問するときは、次の3つを添えてください。

  1. 個人事業主か、法人か
  2. 使っている会計ソフト
  3. どの章の、どこで止まったか

これがあると、一度のやりとりで答えられます。往復が減るぶん、あなたの手も早く動き出します。

なお、個別具体的な税務相談・税務判断にはお答えできません。当社は税理士ではないためです。その場合は、確認すべき事項として整理してお伝えします。


正しい帳簿は、税金のためだけではありません

帳簿をつけると、税金の計算ができるようになります。

でも、それだけではありません。

  • 利益率が落ちていないか
  • 在庫へ資金が偏っていないか
  • カードの支払いに無理がないか
  • どの販路が利益を出しているか
  • 融資を受けられる状態か
  • 人を雇う余裕があるか

こうした経営判断にも使えます。

私は宅地建物取引士の資格を持ち、不動産事業の実務経理にも携わってきました。

物販で利益を残し、その後、不動産等へ事業や資産を広げていく方もいます。

本教材で不動産投資を詳しく扱うことはしませんが、どの事業へ進むとしても、正しい帳簿と数字を読む力は土台になります。


この教材で扱わないこと

本教材は、せどり・物販事業に共通する経理を学ぶための教材です。

次の内容を個別に判断するものではありません。

  • あなたの場合に、どこまで経費として認められるか
  • どの節税方法が最も有利か
  • 実際の納税額はいくらになるか
  • 法人税申告書をどのように作成するか
  • 税務調査へどのように回答するか
  • 特殊な海外取引や輸出消費税還付

同じ取引でも、契約内容、事業実態、課税状況等によって処理が変わる場合があります。

教材で基本を理解したうえで、個別判断が必要なところは税理士や税務署等へ確認してください。


まずは一つ、作業を始めましょう

経理は、読んでいるだけではなかなか身につきません。

最初から完璧な帳簿を作ろうとすると、動けなくなります。

まずは第0章で、あなたが使っている口座、カード、販路、決済方法を書き出してください。

そこから一つずつ整理していきます。

毎月繰り返していけば、帳簿は特別な作業ではなくなります。

この教材が、確定申告前の不安を減らすだけでなく、あなたのせどり・物販事業を成長させる土台になればうれしいです。

それでは、始めましょう。

NOBU


この教材を終えたときの状態 この教材を終えたときの状態 目指すのは、経理の専門家になることではありません いま 利益がいくらか、すぐ答えられない 入金額と引落額だけを見ている 未払金・売掛金の残高が分からない 確定申告の時期にまとめてやる 数字が経営の判断に使えない この教材を終えたあと 自分の1か月分を記帳できる 残高が実際と合っているか確認できる 「今月は完了」と言える 任せるか自分でやるか、選べる 数字が判断の材料になる ゴールは、自分の1か月分を記帳して「今月は完了」と言えるようになること
図2この教材を終えたときの状態

第0章

あなたが読む場所はここです

共通

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことが分かります。

  • 自分が最初に読む章
  • 今は読み飛ばしてよい章
  • 記帳を始める前に用意する資料
  • 自分が使っている口座・カード・販路・決済方法
  • 1か月分の記帳を完了するまでの道順

あなたが読む場所 まず、自分のルートを確認しよう 全部を順番に読む必要はありません あなたの事業形態は? ルートA 個人事業主・ひとり法人 第0章から順に 特殊取引は飛ばしてよい ルートB 法人・複数担当者 役割分担の設計から 第5章の初期設計が重要 ルートC 取引量が多い・拡大中 自動化と照合を優先 第6・14章を先に どのルートでも、ゴールは同じ 自分の1か月分を記帳して、「今月は完了」と言えるようになること
図3自分のルートを確認してから読み進めましょう

最初に結論

この教材を、最初から最後まで一気に読む必要はありません。

まずは、次の順番で進めます。

  1. 自分の事業と取引方法を確認する
  2. 全員共通の基礎を読む
  3. 自分が使っている販路・決済方法の章を読む
  4. 実際の1か月分を記帳する
  5. 残高を確認して月次を完了する

今の自分に関係ないところは、必要になってから戻れば大丈夫です。


1. まず自分のルートを確認しよう

次の質問へ答えてください。

Q1 個人事業主ですか、法人ですか?

  • 個人事業主・副業 → 個人マークを読む
  • 株式会社・合同会社等 → 法人マークを読む

個人・法人の両方に関係するところには、共通マークを付けています。

Q2 誰が記帳しますか?

  • 自分ひとり
  • 家族と分担
  • 社内の経理担当者
  • 外注・記帳代行
  • 税理士・会計事務所

複数人が関わる場合は、規模拡大マークも確認します。

大切なのは、誰か一人に全部任せることではありません。

誰が入力し、誰が資料を集め、誰が残高を確認するのかを決めることです。

Q3 どこで販売していますか?

使っている販路にチェックしてください。

  • Amazon
  • メルカリ・メルカリShops
  • ヤフオク・Yahoo!フリマ
  • ラクマ
  • 楽天市場・Yahoo!ショッピング等のモール
  • 買取業者
  • 自社EC・実店舗
  • eBay・Shopee等の海外販路
  • その他

売上の章では、自分が使っている販路だけ読めば大丈夫です。

Q4 どの方法で支払っていますか?

  • 現金
  • 銀行振込
  • クレジットカード
  • デビットカード
  • PayPay・楽天ペイ等
  • Suica・nanaco・WAON・majica等
  • 楽天ポイント・PayPayポイント等
  • Amazonギフト券・Apple Gift Card等
  • その他

カードを使うなら第9章、電子マネーを使うなら第10章、ポイント・ギフト券を使うなら第11章を読みます。

Q5 消費税の状況は分かりますか?

  • 免税事業者
  • 課税事業者・原則課税
  • 課税事業者・簡易課税
  • 2割特例等を利用
  • インボイス登録済み
  • 分からない

分からなくても、今ここで止まらなくて大丈夫です。

第15章で確認します。

ただし、自分が免税か課税かによって、税区分や保存する資料の重要性が変わります。分からないまま放置はしないでください。

Q6 在庫はどこにありますか?

  • 自宅
  • Amazon FBA倉庫
  • 外部倉庫
  • 事務所・店舗
  • 外注先
  • 輸送中・検品中
  • 返品処理中

12月末や決算日に、すべての場所の在庫を集めます。

FBA在庫だけ、手元在庫だけでは足りません。


2. 進み方は三つです

ルートA 個人事業主・ひとり法人

まず次の章を順番に読みます。

第0章 → 第1章 → 第2章 → 第3章 → 第4章
      → 第5章 → 第6章 → 第7章

その後、自分が使う取引方法へ進みます。

売上:第8章
カード:第9章
現金・電子マネー:第10章
ポイント・ギフト券:第11章
経費・私用区分:第12章
棚卸し:第13章

最後に、月次と年末を締めます。

第14章 → 第15章 → 第16章 → 第17章 → 第18章 → 第19章

ルートB 法人・複数担当者

ルートAに加えて、次の内容を重点的に確認します。

  • 第4章:役員借入金・役員貸付金、補助科目・部門
  • 第5章:複数担当者の役割と締め日
  • 第8章:販路別・部門別の売上管理
  • 第9章:法人カード・従業員立替・未払金照合
  • 第12章:役員・従業員の私用、立替、外注費
  • 第14章:月次試算表、残高、部門別確認
  • 第18章:月次締めと承認
  • 第19章:法人決算前の資料準備

ルートC 取引量が多い・事業を拡大している

個々の仕訳だけでなく、仕組みづくりを重視します。

  • 口座・カード・販路・倉庫の管理台帳
  • 補助科目・部門・タグの設計
  • 入力者と確認者の分離
  • 証憑提出期限
  • 売掛金・未払金・在庫の月次照合
  • 月次締め日
  • 税理士・記帳担当者との役割分担

年商が増えるほど、経理を一人の記憶に頼らないことが大切です。


3. 最初に用意するもの

全部を一度にそろえなくても構いません。

まず、直近1か月分から用意します。

事業の基本情報

  • 個人・法人の区分
  • 会計期間
  • 青色・白色の区分
  • 消費税・インボイスの状況
  • MFクラウドの事業所
  • 税理士・記帳担当者の有無

銀行口座

  • 事業で使った口座の一覧
  • 直近1か月の入出金明細
  • 月初・月末残高
  • 連携外口座の有無

クレジットカード

  • 事業で使ったカードの一覧
  • カード利用明細
  • カード請求明細
  • 引落口座
  • 繰上返済・リボ・分割の有無
  • 家族カード・追加カードの有無

売上

  • 販路別の売上データ
  • 販売手数料
  • 売上から引かれた送料
  • 返金・キャンセル
  • 実際の入金

仕入れ・経費

  • レシート・領収書
  • 請求書・納品書
  • ECサイトの購入履歴
  • 電子メールで届いた領収書等
  • 現金・連携外取引

在庫

  • 保管場所別の在庫一覧
  • 商品名・SKU等
  • 数量
  • 仕入単価
  • 返品・破損・廃棄

該当する人だけ

  • 借入金の返済予定表
  • 固定資産台帳
  • 給与・外注費資料
  • ポイント・ギフト券利用履歴
  • 電子マネー利用履歴
  • 海外販路・決済サービスの明細

4. 最初から1年分をやらない

確定申告前だからといって、いきなり1年分の記帳を始めると大変です。

まずは、資料がそろっている1か月分を使ってください。

おすすめは、次の順番です。

  1. 直近1か月分を記帳する
  2. カード・預金・売掛金を照合する
  3. 一連の流れを理解する
  4. 同じ方法で過去月へ戻る

一度やり方が決まれば、2か月目以降は同じ作業の繰り返しです。


5. 今は読み飛ばしてよいところ

個人事業主なら後回しでよい

  • 役員借入金・役員貸付金
  • 法人の部門管理
  • 従業員の経費精算
  • 法人決算前の資料

法人なら原則使わない

  • 事業主貸・事業主借
  • 青色申告決算書
  • 個人の確定申告書

利用していなければ後回しでよい

  • ポイント・ギフト券
  • 電子マネー
  • 分割・リボ・繰上返済
  • 借入金
  • 固定資産
  • 給与・外注費
  • 海外販売

読み飛ばすことは、手抜きではありません。

今の自分に必要なところから完成させるための方法です。


6. あなたの記帳環境を書き出そう

次の表を埋めてください。

事業情報

項目 回答
個人・法人
会計期間
消費税の状況
インボイス登録
記帳する人
確認する人
税理士・記帳代行

取引環境

種類 名称 事業専用・混在 MF連携 備考
販路
銀行
カード
電子マネー
ポイント・ギフト券
倉庫・保管場所

一行で足りなければ、行を増やしてください。


7. 第0章の完了チェック

  • 個人・法人の区分を確認した
  • 誰が入力し、誰が確認するか決めた
  • 使用している販路を書き出した
  • 銀行口座を書き出した
  • クレジットカードを書き出した
  • 電子マネー・ポイント・ギフト券を書き出した
  • 在庫の保管場所を書き出した
  • 自分が読む章を確認した
  • 直近1か月分の資料を集め始めた

すべて完璧にそろっていなくても大丈夫です。

何が足りないか分かれば、第0章は完了です。

次は、第1章で、個人の確定申告と法人決算の全体像をさら〜っと確認します。


第1章

確定申告と法人決算をさら〜っと理解しよう

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことが分かります。

  • 売上・経費・利益・所得・税金の違い
  • 個人事業主と法人で、いつ何をするのか
  • 副業の「20万円以下なら申告不要」をどう考えるか
  • 青色申告と白色申告の違い
  • 消費税の申告が必要かを、どこで確認するか
  • 「記帳が終わった状態」と「申告できる状態」の違い
  • 自分で行う範囲と、税理士等へ相談する範囲

売上から税金までの言葉の関係 売上から税金までを、言葉で追いかける 「20万円」は売上ではなく、ここでいう所得の話 売上 商品が売れた金額(総額) - 経費 仕入れ、手数料、送料など = 利益(所得) 個人事業主はここが「所得」 - 各種控除 基礎控除、青色申告特別控除など = 課税所得 税率をかける対象になる金額 → 税額 所得税・住民税など 副業の「20万円」は、売上ではなく所得で判定します
図4売上から税金までの言葉の関係

最初に結論

確定申告や法人決算は、いきなり申告書を作る作業ではありません。

1年分の取引を記帳し、口座・カード・売掛金・在庫等の残高を確認し、決算整理を行ったあとに、ようやく申告書を作れます。

flowchart LR
    A["日々の取引"] --> B["記帳"]
    B --> C["残高の照合"]
    C --> D["棚卸し・決算整理"]
    D --> E["決算書"]
    E --> F["税務申告書"]
    F --> G["申告・納税"]

この教材で中心に扱うのは、日々の取引から、申告に渡せる決算資料を作るまでです。

申告書の最終判断や提出を税理士へ依頼する場合でも、その前の帳簿が正しくなければ、正しい申告書はできません。

まずは全体の地図だけ、さら〜っと理解しましょう。細かい税率や申告書の書き方を、ここで全部覚える必要はありません。


1. 売上から税金までの言葉を整理しよう

最初に、よく出てくる言葉を整理します。

言葉 この教材での基本的な意味 せどりの例
売上・収入 商品を販売して得た金額 Amazon等で商品を販売した金額
経費 売上を得るために必要だった費用 販売手数料、送料、梱包材等
利益 売上から、売上原価や経費を差し引いたもの 帳簿・決算書で計算するもうけ
所得 税金を計算するときの基礎となる金額 個人では収入から必要経費等を差し引いて計算
税金 所得や取引等を基に計算されるもの 所得税、法人税、消費税等

たとえば、商品を100万円で売っても、100万円すべてがもうけではありません。

売上    1,000,000円
売上原価  △600,000円
販売手数料 △100,000円
送料等   △ 50,000円
----------------------
利益     250,000円

ここで注意したいのが仕入れと在庫です。

年末や決算日に売れ残っている商品は、原則としてその年・事業年度の売上原価にはまだ含めません。棚卸しをして在庫として残すため、単純に「仕入れた金額を全部経費にする」わけではありません。

また、個人の所得税では所得控除等を、法人税では会計上の利益に税務上の調整を加えて税額を計算します。

つまり、帳簿上の利益に、そのまま税率を掛ければ税金が出るわけではないということです。


2. 個人事業主の確定申告

個人は1月1日から12月31日で区切る

個人事業主の所得税は、原則として毎年1月1日から12月31日までを一つの期間として計算します。

その結果を、通常は翌年の確定申告期間に申告し、納税します。申告期限は原則として翌年3月15日ですが、土日祝日や制度変更等もあるため、毎年、国税庁の案内で確認してください。

1年間の基本的な流れ

flowchart LR
    A["1月〜12月
日々の記帳"] --> B["12月31日
棚卸し"] B --> C["翌年1月〜
残高確認・決算整理"] C --> D["青色申告決算書等
を作成"] D --> E["所得税の
確定申告・納税"]

日々の記帳では、次のものをそろえていきます。

  • 販路別の売上と入金
  • 仕入れ、販売手数料、送料、その他の経費
  • 銀行口座・クレジットカード・決済サービス
  • 売掛金・未払金等の残高
  • 年末に残っている在庫
  • 固定資産、借入金等

12月31日を過ぎてから1年分を集め始めると、資料の不足や記憶違いが起きやすくなります。

この教材では、まず1か月分を完成させ、その方法を毎月繰り返すことをおすすめします。


3. 副業せどらーと「20万円」の注意点

副業の方から、とても多く聞かれるのが次の質問です。

副業の利益が20万円以下なら、何もしなくてよいですか?

答えは、一律に「何もしなくてよい」とは言えません。

会社員等についてよくいわれる20万円の基準は、代表的には、給与を1か所から受け、その給与の全部が源泉徴収の対象となっており、給与収入が2,000万円以下で、給与・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下である場合に、所得税の確定申告が不要となる制度です。

次の点を間違えないでください。

20万円は売上ではなく所得

売上が50万円、必要経費が35万円であれば、単純化した所得は15万円です。

売上 500,000円 − 必要経費 350,000円 = 所得 150,000円

売上だけを見て判断しません。だからこそ、申告が不要かを判断するためにも記帳が必要です。

所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要なことがある

所得税で20万円以下の申告不要制度に該当しても、住民税では同じ扱いになるとは限りません。所得税の確定申告をしない場合は、原則としてお住まいの自治体へ住民税の申告要否を確認してください。

還付等のため確定申告をするなら、省略できない

医療費控除等を受けるために確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も含めて申告します。

事業所得か雑所得かは、金額だけで決まらない

せどりによる所得が事業所得か雑所得かは、活動の規模、継続性、営利性、帳簿の保存状況等、実態を踏まえて判断します。

「売上がいくらなら必ず事業所得」という単純な線引きではありません。判断に迷う場合は、税務署または税理士へ確認してください。


4. 個人の青色申告と白色申告

個人の所得税の申告には、青色申告と白色申告があります。

項目 青色申告 白色申告
事前手続 原則として青色申告承認申請書を提出 青色申告の承認申請は不要
記帳 原則として正規の簿記等 帳簿への記帳・保存が必要
主な特徴 青色申告特別控除、純損失の繰越し等の特典がある 青色申告の特典はない
決算書類 青色申告決算書 収支内訳書

白色申告なら帳簿を付けなくてよい、という意味ではありません。白色申告でも記帳と帳簿書類の保存が必要です。

青色申告特別控除は65万円・55万円・10万円

一定の要件を満たす場合、青色申告特別控除は55万円です。さらにe-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存の要件を満たすと、65万円控除を受けられます。要件を満たさない青色申告者は10万円控除となる場合があります。

65万円控除を受けるには、単に会計ソフトを使うだけでは足りません。複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付し、期限内に申告するなどの要件があります。

青色申告は、申告時に選ぶものではない

新たに青色申告を始めるには、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までに申請します。その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、原則として開業日から2か月以内です。

期限を過ぎてから「今年分を青色にしたい」と思っても間に合わないことがあります。開業したら早めに確認してください。


5. 法人は、自社の決算月で1年を区切る

株式会社や合同会社等の法人は、個人事業主のように全社が12月31日で区切られるわけではありません。

定款等で定めた、自社の事業年度で区切ります。

たとえば3月決算の法人なら、原則として4月1日から翌年3月31日までが一つの事業年度です。

法人の基本的な流れ

flowchart LR
    A["毎月
記帳・残高確認"] --> B["決算日
棚卸し"] B --> C["決算整理
残高確定"] C --> D["決算書
作成"] D --> E["法人税・地方税等
申告"] E --> F["申告・納税"]

法人税の確定申告書は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内に提出します。申告期限の延長制度等が適用される場合もあります。

法人では、次の項目も確認が必要になります。

  • 役員報酬、給与、源泉所得税
  • 役員借入金・役員貸付金
  • 売掛金・未払金・借入金
  • 在庫、固定資産、減価償却
  • 法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税等
  • 消費税の課税事業者であれば消費税

法人の決算書ができても、それだけで法人税申告書が完成するわけではありません。

会計上の利益に税務上の調整を行い、法人税申告書を作成します。法人ごとの事情による判断が多いため、申告書の作成・提出は税理士へ依頼する場合が多くなります。

年商が大きくなっても基本は同じ

取引数や担当者が増えても、基本は「記帳 → 残高確認 → 決算整理 → 申告」です。

ただし、規模が大きくなるほど、経理を一人の記憶に頼ることはできません。

  • 月次の締め日を決める
  • 入力者と確認者を分ける
  • 販路・口座・カード・倉庫を一覧化する
  • 売掛金・未払金・在庫を毎月照合する
  • 税理士へ相談する時期と資料提出日を決める

これらの仕組みは、第5章、第14章、第18章、第19章で扱います。


6. 消費税の申告は別に考える

所得税や法人税の申告と、消費税の申告は別のものです。

個人でも法人でも、消費税の課税事業者に該当すれば、消費税の申告・納税が必要です。

今の売上だけでは決まらない

原則として、個人は前々年、法人は前々事業年度である基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。

ただし、実際の判定には次のような例外があります。

  • 特定期間の課税売上高等による判定
  • インボイス発行事業者として登録している
  • 消費税課税事業者選択届出書を提出している
  • 新設法人の資本金や特定新規設立法人等に関する特例
  • 相続、合併、分割等があった

特に、インボイス発行事業者として登録している場合は、基準期間の課税売上高だけで免税とは判断できません。

flowchart TD
    A["消費税の確認"] --> B{"インボイス登録済み?"}
    B -- "はい" --> C["原則として課税事業者"]
    B -- "いいえ" --> D{"基準期間の課税売上高が
1,000万円超?"} D -- "はい" --> C D -- "いいえ" --> E["特定期間・届出・新設法人等の
例外を確認"] E --> F["免税または課税を判定"]

消費税には、原則課税、簡易課税、インボイス登録を機に課税事業者となった人の2割特例等があります。どの方法を使えるか、どれが有利かは、年度・届出・事業内容によって変わります。

「売上がまだ1,000万円以下だから大丈夫」と自己判断せず、第15章で自分の状況を確認してください。

個人事業者の消費税の申告・納付期限は、原則として翌年3月31日です。法人は原則として課税期間の末日の翌日から2か月以内です。所得税や法人税とは別の申告書を作ります。


7. 「入力完了」と「申告できる状態」は違う

実際の記帳代行でも、次の質問をよくいただきます。

MFクラウドへ全部登録されているので、もう確定申告できますか?

明細の登録が終わっていても、次の確認が残っていれば、まだ申告できる状態とはいえません。

申告できる状態のチェックリスト

  • すべての売上が計上され、入金額と照合できている
  • 仕入れ・経費の資料がそろい、重複や漏れがない
  • 銀行口座の帳簿残高と実際残高が一致している
  • カードごとの未払金残高が、利用・請求・支払状況と一致している
  • 売掛金・未収入金の残高と未入金の内容が分かる
  • 現金、電子マネー、ポイント、ギフト券等を必要に応じて確認した
  • 年末・決算日の在庫を、保管場所別に棚卸しした
  • 返品・返金・キャンセルが反映されている
  • 借入金残高が返済予定表等と一致している
  • 固定資産と減価償却の対象を確認した
  • 個人利用・家事按分、または役員・従業員の立替を整理した
  • 仮払金・仮受金・不明な残高の内容を確認した
  • 消費税の課税・免税、計算方法、インボイス登録状況を確認した

チェックが付かない項目は、単なる入力漏れではなく、利益や税額が変わる可能性があります。


8. この教材で行うこと、専門家へ相談すること

セドケイリは、税理士だけが行える税務代理や税務書類の作成を提供する教材ではありません。

自社の取引を理解し、帳簿と資料を整え、申告を自分で行う場合にも、税理士へ依頼する場合にも困らない状態を作るための教材です。

セドケイリで身に付けること 税理士等へ相談したいこと
日々の取引の集め方・記帳方法 個別事情を踏まえた税務上の最終判断
売上・入金・仕入れ・カードの整理 事業所得・雑所得等の所得区分の判断
口座・売掛金・未払金の照合 法人税申告書、複雑な消費税申告書の作成
棚卸し資料、固定資産資料の準備 特例・届出の選択、節税策の検討
月次締めと決算前チェック 税務調査、税務署への代理対応

分からない取引をすべて税理士へ丸投げするのではなく、次の形で伝えられると確認が早くなります。

いつ:6月10日
どこで:Amazon
何をした:販売用商品を返品した
いくら:33,000円
どう支払った・返金された:法人カードへ返金
資料:購入履歴、返品完了メール、カード明細あり
質問:仕入れの取消しでよいか

税理士へ依頼する場合も、帳簿を自分で付ける場合も、取引の事実を説明できる資料が出発点です。


よくある質問

Q1 記帳が終われば、そのまま確定申告できますか?

明細入力だけでは足りません。残高照合、棚卸し、固定資産、家事按分、消費税区分等を確認し、決算書を作れる状態にします。

Q2 確定申告に向けて、税理士へ何を渡せばよいですか?

帳簿データだけでなく、売上資料、口座・カード明細、棚卸表、借入金返済予定表、固定資産資料、給与・外注資料、各種控除資料等を用意します。詳しくは第19章で一覧にします。

Q3 青色申告か白色申告か、どこを見れば分かりますか?

青色申告承認申請書の控えや、前年の確定申告書・青色申告決算書を確認します。分からなければ、所轄税務署へ確認してください。

Q4 赤字なら確定申告は不要ですか?

所得、他の所得、控除、青色申告の純損失繰越し、消費税の課税状況等で対応が変わります。赤字だけを理由に不要とは判断しないでください。

Q5 法人も毎年3月15日が期限ですか?

いいえ。法人は自社の事業年度で区切り、法人税は原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。

Q6 消費税の申告も所得税と一緒ですか?

別の申告です。課税事業者に該当するか、原則課税・簡易課税・2割特例等のどの方法を使うかも確認します。

Q7 年商が増えたら、記帳方法を全部変える必要がありますか?

基本的な仕訳は同じです。ただし、取引数や担当者が増えたら、補助科目・部門・締め日・承認手順・残高照合等の管理を強化します。


この章の完了チェック

  • 個人は暦年、法人は自社の事業年度で区切ると分かった
  • 売上と所得、利益と税額が同じではないと分かった
  • 副業の20万円は、売上ではなく所得の基準だと分かった
  • 所得税の申告不要と住民税の申告不要は同じではないと分かった
  • 青色申告には事前申請と控除要件があると分かった
  • 消費税は、今の売上だけでは判定できないと分かった
  • 入力完了後にも、残高照合と決算整理が必要だと分かった
  • 自分で整理する範囲と、専門家へ相談する範囲が分かった

ここまで理解できれば十分です。

次の第2章では、「確定申告のためだけではない、帳簿を付ける本当の目的」を見ていきます。


第2章

帳簿をつける本当の目的

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことが分かります。

  • 帳簿が確定申告・法人決算以外にも必要な理由
  • 融資を申し込む前から帳簿を整える意味
  • 利益と銀行口座の残高が一致しない理由
  • 月の途中や決算前に、利益と資金繰りを確認する方法
  • 消費税・インボイス対応で帳簿と証憑が果たす役割
  • 税理士や記帳担当者へ、何をどう伝えればよいか
  • 会計ソフトに数字が入っていても完成ではない理由

最初に結論

帳簿は、税金のためだけではありません 帳簿をつける5つの目的 どれも「正しい帳簿」が土台になります 1 確定申告 法人決算 2 融資を 受ける 3 利益と資金繰り を把握する 4 消費税 インボイス対応 5 税理士等へ 引き継ぐ 会計ソフトに数字が入っているだけでは完成ではありません 残高が実際と合っていて、説明できる状態がゴールです
図5帳簿をつける5つの目的

帳簿をつける目的は、確定申告書や法人税申告書を作るためだけではありません。

良い帳簿は、次の三つの質問に答えられます。

  1. いくらもうかったのか
  2. 今、いくら使えるお金があるのか
  3. その数字になった理由を説明できるか
flowchart LR
    A["正しい取引資料"] --> B["正しい帳簿"]
    B --> C["正しい申告・決算"]
    B --> D["利益と資金繰りの把握"]
    B --> E["融資・金融機関への説明"]
    B --> F["税理士・担当者への引継ぎ"]

反対に、数字が入っていても、売上の漏れ、カードの重複、在庫の未計上、残高の不一致があれば、帳簿から正しい答えは得られません。

帳簿は、税務署へ出すためだけの過去の記録ではなく、これからどう経営するかを決めるための道具です。


1. 確定申告・法人決算のため

第1章で見たとおり、確定申告や法人決算は、日々の取引を記帳したあとに行います。

帳簿には、次のような事実を残します。

  • いつ取引したか
  • 誰と取引したか
  • 何を売った・買ったか
  • いくらだったか
  • どの口座・カード・決済方法を使ったか
  • どの資料で確認できるか

個人で事業を行う方は、申告が必要ない場合でも、状況に応じて記帳・帳簿書類の保存制度の対象になります。法人にも帳簿書類の作成・保存が必要です。

白色申告だから、赤字だから、税理士へ頼むから、帳簿が不要になるわけではありません。

帳簿は取引の索引、証憑は取引の根拠

会計ソフトに「仕入高 110,000円」と入っているだけでは、何を、どこで、いつ買ったのか分かりません。

一方、領収書だけが大量に保存されていても、年間の売上や利益は計算できません。

帳簿:取引を一覧にし、集計できるようにする
証憑:その取引が実際にあったことや内容を確認する

帳簿と証憑は、どちらか一方ではなく、セットで管理します。

申告期限に間に合わせるためではなく、毎月終わらせる

1年分の記帳を決算前にまとめて行うと、次の問題が起きやすくなります。

  • 購入内容を思い出せない
  • 領収書や購入履歴が見つからない
  • 解約したカードの明細を取得できない
  • 販路のデータ保存期間が過ぎている
  • 売上漏れや二重計上を見つける時間がない
  • 利益や納税額を知るのが遅くなる

おすすめは、毎月の資料を翌月中にそろえ、残高まで確認することです。


2. 融資を受けるため

せどり・物販は、仕入れが先、販売と入金があとになることが多い事業です。

売上を伸ばすほど仕入資金が必要になり、融資を検討する場面も出てきます。

融資を申し込む際には、金融機関や申込内容に応じて、確定申告書、決算書、勘定科目明細書、最近の試算表、借入状況、資金の使い道等の資料を求められることがあります。

日本政策金融公庫の事業資金融資でも、直近期の確定申告書・決算書や、一定の場合には最近の試算表等が必要書類として案内されています。

融資が必要になってから1年分を作らない

申し込みの直前に帳簿をまとめると、次の質問へすぐに答えられません。

  • 今期の売上と利益はいくらか
  • 在庫はいくらあるか
  • カードや借入金の残高はいくらか
  • 借りた資金を何に使うのか
  • 借入後に返済できる見込みがあるか
  • 前期から数字が増減した理由は何か

帳簿が整っているだけで融資が決まるわけではありません。

しかし、最新の数字とその理由を説明できることは、経営者自身が事業の状況を把握するうえでも重要です。

融資の入金と返済は、売上・経費ではない

500万円の融資を受けると銀行口座は500万円増えますが、売上や利益が500万円増えたわけではありません。

また、元金10万円を返済すると銀行口座は10万円減りますが、元金部分は経費ではありません。借入金が減ります。利息部分は支払利息等として区分します。

取引 銀行残高 利益への基本的な影響
融資金500万円が入金 500万円増える 影響しない
元金10万円を返済 10万円減る 影響しない
利息1万円を支払う 1万円減る 費用として利益が1万円減る

借入金の入金を売上にしたり、返済額をすべて経費にしたりしないよう、返済予定表を保存します。


3. 利益と資金繰りを把握するため

実際の記帳代行では、次のような質問が非常に多くあります。

自分の感覚ではもっと利益があるはずです。

こんなに利益が出ている感覚はありません。

MFクラウドのどこを見れば、今年の利益が分かりますか?

この違和感は、とても大切です。

感覚と帳簿が違うときは、感覚か帳簿のどちらかが必ず間違っていると決めつけず、差が生まれた理由を確認します。

利益と銀行残高は一致しない

利益は、売上と売上原価・経費から計算します。銀行残高は、実際のお金の入出金の結果です。

次のような取引があるため、二つは一致しません。

取引 利益 お金
掛けで商品を販売し、まだ未入金 売上・利益に反映 まだ増えない
カードで商品を仕入れ、まだ未払い 購入時点では原則影響せず、売れた分が売上原価へ まだ減らない
売れ残る商品を現金で仕入れた 期末在庫ならその期の売上原価にならない 先に減る
融資を受けた 利益は増えない 増える
借入元金を返済した 利益は減らない 減る
事業主が生活費を引き出した 個人事業の利益は減らない 減る

せどりでは、在庫とカード支払いの影響が大きいため、利益が出ていても現金が足りなくなることがあります。

この詳しい流れは、第3章で一枚の図にして確認します。

「売上総利益」と、普段計算する利益は違うことがある

損益計算書の売上総利益は、基本的に「売上高 − 売上原価」です。

Amazon等の販売手数料、荷造運賃、広告費等を販売費及び一般管理費として計上している場合、これらは売上総利益の段階ではまだ差し引かれていません。

一方、せどりの管理ツールや自分の計算では、商品原価、販売手数料、送料等をすべて差し引いた金額を「利益」や「粗利」と呼んでいることがあります。

そのため、同じ「利益」という言葉でも数字が一致しない場合があります。どの費用まで差し引いた数字なのかを確認してください。

まず見る三つの資料

資料 分かること 主な確認点
損益計算書 一定期間の売上・費用・利益 売上、粗利、経費、最終的な利益
貸借対照表 ある時点の財産・債務 預金、売掛金、在庫、未払金、借入金
資金繰り表 今後のお金の増減見込み 入金、カード引落し、納税、借入返済

損益計算書だけでは、カードの未払いや借入残高は分かりません。貸借対照表だけでは、翌月の納税や仕入予定まで分かりません。

三つを役割ごとに使います。

月次で確認する五つの質問

毎月または少なくとも四半期ごとに、次を確認します。

  1. 売上は販路の実績と大きくずれていないか
  2. 粗利率・利益率は自分の感覚と合っているか
  3. 異常に増えた経費や、マイナスの月はないか
  4. 預金・売掛金・カード・借入金・在庫の残高は合っているか
  5. 今後の仕入れ、カード引落し、納税に使う資金は足りるか

数字に違和感があれば、よくある原因は次のとおりです。

  • 売上データの期間ずれ・漏れ・重複
  • カード利用と銀行引落しの二重経費
  • 返品・返金の未反映
  • 販売手数料・送料等の計上漏れ
  • 棚卸しの未反映・数え間違い
  • ポイント・ギフト券・電子マネーの処理
  • 個人取引と法人取引、私用と事業用の混在

違和感を決算後ではなく月次で見つければ、原因を思い出しやすく、修正も早くなります。


4. 消費税・インボイスへ対応するため

消費税の納税額は、基本的には売上に係る消費税額から、仕入れや経費に係る消費税額等を差し引いて計算します。実際の計算は、課税方式や特例によって異なります。

そのため帳簿では、金額だけでなく次の情報も重要です。

  • 課税・非課税・対象外等の区分
  • 10%・軽減税率8%等の税率
  • 取引年月日
  • 取引先
  • 取引内容
  • インボイス登録番号や適格請求書の有無

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるため、原則として一定事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が必要です。一部、帳簿のみの保存が認められる取引や経過措置があります。

カード明細だけでは内容が足りないことがある

カード会社の利用明細は、支払先と金額の確認には役立ちます。

しかし、何を購入したのか、税率はいくつか、インボイスの記載事項を満たしているかまでは分からないことがあります。

カード明細に加えて、購入先が発行した領収書、請求書、購入履歴等も保存します。

消費税は早めに着地を確認する

顧客対応でも、次のような相談があります。

前回は消費税の支払いで資金繰りに苦労しました。早めに概算を知りたいです。

課税売上や仕入れの入力が遅れ、税区分が不明なままでは、納税見込みも分かりません。

毎月の記帳を行う目的には、正しい申告だけでなく、将来支払う税金の資金を準備することも含まれます。


5. 税理士・記帳担当者へ正しく引き継ぐため

経理を外注しても、取引の事実まで外注先が自動で知ることはできません。

銀行明細に「振込 330,000円」と表示されていても、次のどれかは明細だけでは判断できません。

  • 商品の売上
  • 別口座からの資金移動
  • 融資の入金
  • 役員や事業主からの立替金
  • 返品・解約等による返金
  • 補助金・保険金等の入金

渡すのは資料と取引の説明

渡すもの
取引データ 銀行、カード、販路、決済サービスの明細
証憑 領収書、請求書、購入履歴、契約書
残高資料 預金残高、売掛金、カード請求、在庫、借入金返済予定表
取引の説明 私用、資金移動、立替、返金、特殊な契約等
変更情報 新しい口座・カード・販路・倉庫、解約、法人化等

不明な取引を質問されたら、「分かりません」で終わらせず、次の順番で確認します。

  1. 同じ日付・金額をメールや購入履歴で検索する
  2. 前後の銀行・カード・販路明細を見る
  3. 領収書、請求書、契約書を確認する
  4. それでも不明なら、不明であることと調べた内容を伝える

税理士や記帳担当者への返信が遅れると、その月だけでなく、残高照合や決算全体が止まる場合があります。

複数担当者がいる法人は、資料提出者・入力者・確認者・承認者を決めます。


6. 会計ソフトに数字があるだけでは完成ではない

銀行やカードをMFクラウドへ連携すると、明細が自動で取得されます。

便利ですが、取得された明細は完成した帳簿ではなく、確認前の材料や仕訳候補です。

自動連携でも起こること

  • 連携開始前の明細が取得されていない
  • 一時的な連携エラーで期間が抜ける
  • 同じ取引を連携と手入力の両方で登録する
  • 自動仕訳ルールが誤った科目・税区分を選ぶ
  • 返品・キャンセル前の明細が残る
  • 銀行間の資金移動を売上・経費にする
  • カード引落しをもう一度経費にする
  • 私用取引が経費に入る

完成した帳簿の三条件

flowchart LR
    A["網羅性
漏れ・重複がない"] --> D["使える帳簿"] B["正確性
科目・税区分が正しい"] --> D C["一致性
実際残高と合っている"] --> D
  1. 網羅性:必要な取引がすべて入り、重複していない
  2. 正確性:日付、金額、科目、税区分、相手先等が正しい
  3. 一致性:預金、売掛金、未払金、借入金、在庫等が実際の残高と合っている

三つがそろって、初めて申告・経営・融資に使える帳簿になります。

年商が増えたら「入力」より「仕組み」を強くする

基本的な考え方は、創業直後でも年商20億円程度でも変わりません。

ただし、取引量が増えたら、経営者がすべての明細を見る方法には限界があります。

段階 重視すること
創業前後〜年商1億円 事業用口座・カードを分け、毎月の記帳習慣を作る
取引量・担当者が増えた 締め日、提出資料、補助科目、確認者を決める
複数部門・複数法人 部門別管理、権限、承認、月次照合を仕組みにする

この教材の中心は創業前後から年商1億円以下ですが、規模が大きくなった方は、各章の規模拡大の内容を使ってください。


よくある質問

Q1 税理士へ全部任せるなら、自分は帳簿を見なくてよいですか?

税務判断や申告書作成を任せても、売上、粗利、資金繰り、在庫、借入金等は経営者が把握する必要があります。取引内容を最もよく知っているのも自社です。

Q2 売上が増えているのに、なぜお金が残りませんか?

在庫の増加、売掛金の未回収、カード支払い、借入返済、税金、事業主の引出し等が考えられます。損益計算書だけでなく、貸借対照表と資金繰りも確認します。

Q3 融資の入金は売上ですか?

売上ではありません。借入金として負債が増えます。返済時も、元金部分は経費ではなく借入金の減少です。

Q4 帳簿上の利益が自分の想定と大きく違います

まず売上期間、仕入れ、棚卸し、販売手数料・送料、返品、ポイント等を確認します。感覚だけで数字を修正せず、差の原因となる取引を探してください。

Q5 会計ソフトの連携データをすべて登録すれば完成ですか?

完成ではありません。漏れ・重複、科目・税区分、実際残高との一致を確認します。

Q6 決算が終わってから数字を見れば十分ですか?

申告はできますが、経営判断や納税資金の準備には遅すぎることがあります。毎月、難しければ少なくとも四半期ごとに確認します。

Q7 売上総利益が、自分で計算した利益より多いのはなぜですか?

損益計算書の売上総利益では、販売手数料、送料、広告費等がまだ差し引かれていない場合があります。自分の計算と同じ期間・同じ費用範囲で比較してください。


この章の完了チェック

  • 帳簿の目的を「申告・経営・融資・引継ぎ」の四つで説明できる
  • 帳簿と領収書・請求書等の両方が必要だと分かった
  • 利益と銀行口座の残高が一致しないと分かった
  • 融資の入金と元金返済は、売上・経費ではないと分かった
  • 損益計算書・貸借対照表・資金繰り表の役割が分かった
  • 消費税の資金を早めに準備する意味が分かった
  • 外注先へ資料だけでなく取引内容も伝えると分かった
  • 自動連携後にも、漏れ・重複・残高確認が必要だと分かった

ここまで分かれば、帳簿をつける理由は十分です。

次の第3章では、売上、入金、仕入れ、カード、在庫がどうつながるのかを、一枚の地図で確認します。


第3章

せどりのお金の流れを一枚で理解しよう

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 仕入れから販売・入金までの流れを説明できる
  • 売上と銀行への入金が一致しない理由が分かる
  • カード利用と銀行引落しを別の取引として考えられる
  • 売掛金と未払金の役割が分かる
  • 仕入れと売上原価、在庫の違いが分かる
  • ポイント・ギフト券・電子マネーを現金と分けて考えられる
  • 利益が出ているのに現金が少ない理由を探せる
  • 個人事業主と法人で変わる部分を区別できる

せどりのお金の流れ 全体図 せどりのお金の流れ お金が動く時点と、帳簿に記録する時点はズレる ① 仕入れる クレジットカード 現金・振込 ポイント・ギフト券 (第9〜11章) ② 在庫になる 売れるまでは 経費にならない (第13章) ③ 売れる Amazon・楽天・メルカリ この時点で「売上」 (第8章) ④ 未払金として残る 翌月以降に引き落とし 利用日と引落日はズレる (第9章) ⑤ 売掛金として残る 手数料が引かれて入金 売上と入金は別の日 (第8章) ⑥ 銀行口座 入金も引き落としも、ここで動く この6つの時点を分けて記録できれば、帳簿は合う 最初はここが、いちばん分かりにくいところです
図6せどりのお金の流れ。お金が動く時点と、帳簿に記録する時点は違います

最初に結論

せどりの記帳が難しく見える最大の理由は、商品・売上・お金が動く日が、それぞれ違うことです。

  • 商品を仕入れる日
  • カード代金が引き落とされる日
  • 商品が売れる日
  • 販路から入金される日

これらを全部、銀行口座へお金が入った日・出た日だけで記帳すると、売上、仕入れ、在庫、利益がずれてしまいます。

まずは、せどりのお金の流れを一枚で見てください。

flowchart LR
    A["カード等で仕入れる"] --> B["商品・在庫を持つ"]
    A --> C["カード会社への
未払金が増える"] B --> D["商品が売れる"] D --> E["売上と売掛金が
発生する"] E --> F["販売手数料・送料・
返品等を精算"] F --> G["販路から銀行へ
入金される"] C --> H["後日カード代金が
銀行から引き落とされる"]

売掛金は、売れたけれど、まだ受け取っていないお金です。

未払金は、買ったけれど、まだ支払っていないお金です。

この二つが、売上・仕入れと実際の入出金の時間差をつなぎます。


1. 仕入れから販売・入金まで

一つの商品をカードで仕入れ、Amazon等で販売した場合を考えます。

4月1日 商品をカードで仕入れた

販売する商品66,000円をカードで仕入れたとします。

借方 金額 貸方 金額
仕入高 66,000円 未払金/カードA 66,000円

商品を仕入れた事実と、カード会社へあとで支払う義務を記録します。

この時点では、銀行口座からお金は減っていません。

4月10日 商品が110,000円で売れた

販売が成立し、販路から代金を受け取る権利が確定したとします。

借方 金額 貸方 金額
売掛金/販路A 110,000円 売上高 110,000円

売上は発生しましたが、銀行口座にはまだ入金されていません。

4月24日 手数料を引かれて入金された

販売手数料等11,000円が差し引かれ、99,000円が入金されたとします。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 99,000円 売掛金/販路A 110,000円
販売手数料 11,000円

売掛金110,000円が消え、普通預金99,000円と販売手数料11,000円に分かれます。

5月27日 カード代金が引き落とされた

借方 金額 貸方 金額
未払金/カードA 66,000円 普通預金 66,000円

カード会社への未払金が消え、銀行口座のお金が減ります。

四つの日付を並べてみよう

日付 起きたこと 損益への主な影響 銀行口座
4月1日 商品をカードで仕入れた 仕入れを記録 変わらない
4月10日 商品が売れた 売上を記録 変わらない
4月24日 販路から入金 手数料を記録 99,000円増える
5月27日 カード引落し 原則として新たな経費なし 66,000円減る

利益を正しく計算するには、この四つを別々の出来事として記録します。

なお、実際の売上・仕入れの計上日は、商品の引渡し、取引条件、販路データの内容等によって判断します。単純に注文日や入金日だけで決めず、採用した基準を継続してください。


2. 売上と入金が一致しない理由

販路の売上が100万円でも、銀行へ100万円がそのまま振り込まれるとは限りません。

入金前に、次のようなものが差し引き・加算されることがあるためです。

  • 販売手数料
  • FBA手数料・配送費
  • 広告費
  • 月額利用料
  • 返品・返金・キャンセル
  • 保留金・留保金
  • 前回精算分や調整額
  • 海外販路の為替差・決済手数料

入金額だけを売上にしない

売上110,000円から手数料11,000円が差し引かれ、99,000円が入金された場合、99,000円を売上にすると、売上も手数料も見えなくなります。

正しい考え方

売上     110,000円
販売手数料 △ 11,000円
入金      99,000円

売上と手数料を分けることで、売上規模と販路コストを正しく確認できます。

売掛金が売上と入金をつなぐ

flowchart LR
    A["商品が売れる
売上110,000円"] --> B["売掛金
110,000円"] B --> C["普通預金
99,000円"] B --> D["販売手数料
11,000円"]

月末の売掛金残高は、基本的には、すでに売上へ計上したもののうち、まだ入金・精算されていない金額です。

売掛金が残っていること自体は異常ではありません。

ただし、販路の未精算残高と帳簿残高が一致しない場合は、売上漏れ、入金漏れ、手数料・返金の未処理、期間ずれ等を確認します。

売上の詳しい集計方法と販路別の違いは、第8章で扱います。


3. カード利用と引落しが別取引である理由

クレジットカードは、「今買って、あとで払う」仕組みです。

そのため、カード利用時と銀行引落時の間を未払金でつなぎます。

flowchart LR
    A["商品・経費を購入"] --> B["未払金が増える"]
    B --> C["カード会社が請求額を確定"]
    C --> D["銀行から引落し"]
    D --> E["未払金が減る"]

引落しをもう一度経費にしない

カード利用時に仕入高66,000円を記帳し、引落時にも仕入高66,000円を記帳すると、仕入れが132,000円になります。

カード利用時:仕入高 66,000円 / 未払金 66,000円
銀行引落時 :未払金 66,000円 / 普通預金 66,000円

銀行引落しは、新しい買い物ではありません。以前のカード利用代金を支払った取引です。

未払金残高は、これから支払う金額

月末の未払金残高は、基本的には、すでにカード利用として記帳したもののうち、まだ支払いが終わっていない金額です。

ただし、次のような取引があると、カード会社の請求額と単純には一致しないことがあります。

  • 返品・返金
  • ポイントによる請求充当
  • 繰上返済
  • 分割・リボ払い
  • 年会費・利息・手数料
  • 複数カードを一つの口座から引き落としている

クレジットカードの記帳と照合は、第9章で詳しく扱います。


4. 売掛金と未払金は「時間差をつなぐ橋」

売掛金と未払金を、難しい負債・資産の言葉から覚える必要はありません。

まずは次のように考えてください。

科目 意味 増える場面 減る場面
売掛金 売れたが、まだ受け取っていない 販路で売上が確定した 販路から入金・精算された
未払金 買ったが、まだ支払っていない カード等で購入した 銀行引落し・返済をした
売上 ── 売掛金 ── 入金

仕入・経費 ── 未払金 ── 支払い

この橋があるため、銀行口座への入出金を待たずに、取引が発生した時期へ売上・仕入れ・経費を記帳できます。

国税庁も、原則として、実際の代金決済の時期にかかわらず、資産の引渡しやサービス提供等の時期が売上げ・仕入れの時期になると案内しています。個人の一定の小規模事業者等が届け出て現金主義の特例を受ける場合等は扱いが異なります。

月末に確認すること

  • 売掛金:販路別の未精算残高と合っているか
  • 未払金:カード別の未決済残高と合っているか
  • 古い残高:何か月も動いていない理由を説明できるか
  • マイナス残高:返金、過入金、科目違い、開始残高等を確認したか

残高は、ただ翌月へ繰り越す数字ではありません。未完了の取引一覧です。


5. 仕入れと在庫を分けて考える

商品を仕入れてお金を払っても、まだ売れていない商品は在庫として残ります。

そのため、年間の仕入高をすべてその年・事業年度の売上原価にするわけではありません。

売上原価の基本式

期首在庫 + 当期仕入高 − 期末在庫 = 売上原価

例として、期首在庫が0円、1年間の仕入高が1,000万円、期末在庫が400万円だった場合

期首在庫    0円
当期仕入高 10,000,000円
期末在庫 △4,000,000円
----------------------
売上原価  6,000,000円

お金は1,000万円分出ていても、その年・事業年度の売上原価は600万円です。残る400万円は在庫として翌期へ繰り越します。

在庫が変わると利益も変わる

同じ売上・仕入れ・経費でも、期末在庫が変われば売上原価と利益が変わります。

在庫を少なく数えると、売上原価が増えて利益は小さくなります。在庫を多く数えると、売上原価が減って利益は大きくなります。

税金を調整するために在庫金額を増減させるのではなく、決算日現在の実在庫を正しく集計します。

在庫はFBAだけではない

確認する場所の例

  • Amazon FBA倉庫
  • 自宅・事務所・店舗
  • 外部倉庫
  • 外注先・納品代行先
  • 輸送中・検品中
  • 返品処理中
  • 買取業者等へ預けている商品

どこまで棚卸しへ含めるかは、所有権や取引状況を確認します。判断に迷う商品は、商品名・数量・金額・現在地・取引状況を記録して税理士等へ相談してください。

棚卸しの実務は、第13章で扱います。


6. ポイント・ギフト券・電子マネーは三段階で考える

ポイント・ギフト券・電子マネーは、すべてを現金と同じように処理すると流れが見えなくなります。

まず、次の三段階を分けます。

  1. 獲得・購入・チャージした
  2. 残高として保有している
  3. 仕入れ・経費・私用に使った

電子マネーへチャージした

銀行口座からPayPay等へ10万円をチャージしただけなら、通常はその時点で10万円の経費が発生したわけではありません。

銀行のお金が、電子マネー残高へ移った状態です。

ギフト券を購入した

Amazonギフトカード等を購入した時点と、そのギフト券で商品を購入した時点を分けます。

未使用残高がある場合は、どれだけ残っているかを管理します。

ポイントを商品購入に使った

ポイント利用が商品本体の値引きなのか、支払う金額への充当なのか等により、記帳や消費税の扱いが変わる場合があります。

国税庁も、ポイント利用後のレシート表示等を基に、値引後の金額または商品対価の全額を判断する考え方を案内しています。

「ポイントで払ったから0円」「現金を使っていないから記帳不要」とは考えず、購入内容、ポイント使用額、現金・カード支払額が分かる資料を保存します。

電子マネーは第10章、ポイント・ギフト券は第11章で詳しく扱います。


7. 利益が出ているのに現金がない理由

売上と利益が増えているのに、銀行口座のお金が減ることはあります。

せどりで多い原因は次のとおりです。

flowchart TD
    A["利益は出ている"] --> B["売掛金が増え
まだ入金されていない"] A --> C["売れ残り在庫へ
お金が変わっている"] A --> D["過去のカード代金を
支払っている"] A --> E["借入元金を
返済している"] A --> F["納税・私用引出し・
設備購入等がある"]

利益と現金をつなぐ簡易チェック

確認するもの 増えていたら考えられること
売掛金 売上はあるが入金待ちが増えている
在庫 仕入れに資金を使い、商品として残っている
未払金 今後のカード引落額が増えている
借入金返済 利益には出ない元金返済で現金が減っている
事業主貸・役員貸付金等 事業外・私用への資金流出がある

利益だけ、銀行残高だけを見るのではなく、売掛金・在庫・未払金・借入金も一緒に確認します。

1か月分を完成させるための五つの残高

まずは月末に、次の五つを確認してください。

  • 銀行口座の残高
  • 販路別の売掛金残高
  • カード別の未払金残高
  • 商品在庫の金額
  • 電子マネー・ギフト券等の未使用残高

この五つがつながると、せどりの帳簿は一気に分かりやすくなります。


8. 個人事業主と法人で変わる部分

商品を仕入れ、販売し、入金を受け、カード代金を支払う基本の流れは、個人も法人も同じです。

違うのは、主に事業と個人のお金が混ざったときの処理です。

場面 個人事業主 法人
個人のお金で事業経費を立替えた 事業主借等 役員借入金・未払金等
事業のお金を私用に使った 事業主貸等 役員貸付金等。原則として早期精算
事業へお金を入れた 事業主借等 増資・役員借入金等、事実に応じて処理
事業から生活費を引き出した 事業主貸等 給与・役員報酬、貸付け等。自由な引出しは不可

個人事業主では、事業主本人と事業は法律上同一ですが、帳簿では事業用と私用を分けて管理します。

法人は、社長一人の会社でも、会社と個人は別です。会社のお金を社長の財布のように扱わないでください。

法人で個人立替や私用利用が発生した場合は、会社との債権・債務として残高管理し、精算します。

詳しい科目は第4章、初期設計は第5章、個人・法人別のカード処理は第9章で扱います。


よくある質問

Q1 売掛金残高とは何ですか?

すでに売上へ計上したもののうち、まだ販路から入金・精算されていない金額です。販路の未精算残高と帳簿を照合します。

Q2 Amazon等からの入金額を、そのまま売上にしてはいけませんか?

手数料、送料、返品等が差し引かれている場合、入金額だけでは本来の売上が分かりません。売上と差引項目を分けて記帳します。

Q3 12月にカードで仕入れ、引落しが翌年2月です。どちらの年の仕入れですか?

原則として引落年ではなく、商品を仕入れた取引の時期で記帳します。具体的な計上日は商品の引渡しや取引条件等で確認してください。

Q4 カードの2月引落しに、前年12月利用分が入っています。問題ですか?

カードでは通常起こる時間差です。12月の利用は12月の仕入れ・経費等として記帳し、2月の引落しで未払金を消します。

Q5 棚卸しを入れると、なぜ利益が変わるのですか?

期末在庫は当期の仕入高から差し引いて売上原価を計算するためです。売れ残った商品は、翌期へ在庫として繰り越します。

Q6 全額ポイントで仕入れた商品は、記帳不要ですか?

不要とは限りません。購入した商品、ポイント利用額、レシート上の値引き・充当の表示等を確認して処理します。

Q7 銀行口座の残高が合えば、帳簿は完成ですか?

銀行残高だけでは足りません。売掛金、未払金、在庫、電子マネー・ギフト券等の残高も確認します。


この章の完了チェック

  • 仕入れ、カード引落し、販売、入金を別の日として考えられる
  • 売上と入金の間を売掛金がつなぐと分かった
  • カード利用と引落しの間を未払金がつなぐと分かった
  • 入金額をそのまま売上にしない理由が分かった
  • カード引落しをもう一度経費にしないと分かった
  • 期首在庫+仕入高−期末在庫=売上原価を説明できる
  • チャージ・保有・使用を分けて考えられる
  • 利益と銀行残高が一致しない原因を探せる
  • 個人と法人で、私用・立替の科目が変わると分かった

この章の図を説明できれば、せどり記帳の土台はできています。

次の第4章では、この流れを帳簿へ記録するために必要な勘定科目を覚えます。


第4章

勘定科目はこれだけ覚えよう

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 勘定科目が何のためにあるか説明できる
  • せどりでよく使う資産・負債・収益・費用の科目を選べる
  • 売掛金・未払金・買掛金・借入金を区別できる
  • 売上高・仕入高・販売手数料・荷造運賃を使い分けられる
  • 個人の事業主貸・事業主借を使い分けられる
  • 法人の役員貸付金・役員借入金を使い分けられる
  • 仮払金・仮受金等を放置せず、解消まで管理できる
  • 補助科目・部門・タグを必要な範囲で設計できる

勘定科目は5つのグループに分かれる 勘定科目は5つのグループに分かれる どのグループに入るかが分かれば、迷う場面は大きく減ります 資産 普通預金 現金 売掛金 商品(在庫) 工具器具備品 負債 未払金 買掛金 借入金 預り金 未払消費税 純資産 元入金(個人) 資本金(法人) 事業主貸 事業主借 収益 売上高 雑収入 受取利息 費用 仕入高 支払手数料 荷造運賃 通信費 旅費交通費 資産・負債・純資産は貸借対照表へ、収益・費用は損益計算書へ
図7勘定科目は5つのグループに分かれます

最初に結論

勘定科目は、取引へ付ける整理用の名前です。

せどりの記帳で、何百種類もの科目を覚える必要はありません。

まずは、次の五つの箱に分けて考えます。

flowchart LR
    A["資産
持っている・受け取るもの"] B["負債
あとで支払うもの"] C["純資産
事業の元手・蓄積"] D["収益
売上・収入"] E["費用
仕入れ・経費"]

せどりで特に大切なのは、次の流れです。

仕入高・経費 ── 未払金 ── 普通預金

商品・在庫 ── 売上高 ── 売掛金 ── 普通預金

科目選びで迷ったら、名称から想像するのではなく、次の順番で考えてください。

  1. 何が起きた取引か
  2. 誰のお金・誰の取引か
  3. 代金の受取り・支払いは終わっているか
  4. 販売する商品か、自社で使うものか
  5. 証憑には何と書かれているか

また、勘定科目と消費税の税区分は別の項目です。

同じ消耗品費でも、課税、非課税、対象外、インボイスの有無等は取引ごとに異なる場合があります。「科目が合っているから税区分も合っている」とは限りません。


1. 勘定科目は、事業の共通言語

同じ内容の取引を、毎回違う科目へ入れると比較できません。

たとえばAmazonの販売手数料を、ある月は販売手数料、別の月は支払手数料、さらに別の月は雑費へ入れると、1年間でいくら負担したのか分かりにくくなります。

完璧な名称より、意味と継続性

経費科目の中には、複数の科目が考えられる取引もあります。

小さな科目差に悩み続けるより、次のことを重視します。

  • 取引の実態と合っている
  • 毎月同じ基準で処理している
  • 決算時に内容を説明できる
  • 税区分・証憑が適切に管理されている
  • 税理士や経理担当者とルールを共有している

ただし、販売商品を消耗品費にする、借入金の入金を売上高にするなど、決算書の意味が変わる誤りは直す必要があります。

最初に覚える基本科目

分類 基本科目
資産 現金、普通預金、売掛金、商品、未収入金、前払金
負債 未払金、買掛金、借入金、未払費用、預り金
収益 売上高、雑収入等
売上原価 仕入高、期首商品棚卸高、期末商品棚卸高
経費 販売手数料、荷造運賃、広告宣伝費、消耗品費等
個人専用 事業主貸、事業主借、元入金
法人で頻出 役員貸付金、役員借入金、資本金

この一覧を起点に、事業で本当に必要な科目だけ追加します。


2. 現金・普通預金・売掛金・商品

まず、事業が持っているもの、これから受け取るものを表す資産科目です。

現金

事業用の手元現金を表します。

現金売上、店舗での現金仕入れ、現金で支払った送料等を記帳します。

個人の財布と事業の現金を分けていない場合、帳簿上の現金残高が大きくなったり、マイナスになったりしやすくなります。実際に管理していない現金勘定を何となく使わず、個人立替なら事業主借等を使います。

普通預金

事業用銀行口座の残高です。

銀行ごと・口座ごとに補助科目を作ると、実際残高と照合できます。

普通預金/楽天銀行 1234
普通預金/住信SBIネット銀行 5678

銀行間の資金移動は、売上や経費ではありません。

普通預金/銀行B 500,000円 / 普通預金/銀行A 500,000円

売掛金

商品は売れたが、販路等からまだ入金・精算されていない金額です。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、eBay等、販路ごとに補助科目を分けます。複数アカウントがある場合は、アカウント単位まで分けると照合しやすくなります。

商品

決算日・月末に売れ残っている販売用在庫を表します。

期末棚卸しで仕入高から商品へ振り替え、翌期に繰り越します。商品を購入するたびに商品勘定へ記帳する方法もありますが、本教材では主に、日々は仕入高、決算時に棚卸しを反映する方法を前提とします。

未収入金と前払金

未収入金は、通常の売上以外で、まだ受け取っていない金額に使うことがあります。固定資産の売却代金や保険金等が例です。

前払金は、商品・サービスを受ける前に支払った手付金や代金等に使います。

名称が似ていても、売上代金の未回収なら売掛金、通常の売上以外の未回収なら未収入金、まだ受け取っていない商品等への支払いなら前払金というように、取引の内容で分けます。


3. 未払金・買掛金・借入金

次は、これから支払う義務を表す負債科目です。

未払金

クレジットカードで購入した商品・経費や、備品等の未払いに使います。

せどりでは、カードごとの未払金補助科目が特に重要です。

未払金/楽天カード 1234
未払金/三井住友カード 5678

カード利用時に未払金を増やし、銀行引落時に未払金を減らします。

買掛金

商品の仕入先との通常の掛取引で、まだ支払っていない仕入代金に使います。

たとえば卸売会社から商品を仕入れ、月末締め翌月払いとなる場合です。

クレジットカードによる仕入れは、本教材では原則として未払金を使います。仕入先との掛仕入れは買掛金とします。

内容 基本的に使う科目
カードで商品・経費を購入 未払金
卸売会社等から商品を掛けで仕入れ 買掛金
銀行・公庫等から資金を借りる 借入金

借入金

銀行、日本政策金融公庫、信用金庫等から借りた元金です。

融資金の入金は売上ではありません。元金返済も経費ではありません。返済額に含まれる利息は、支払利息等へ分けます。

返済予定表を保存し、金融機関・契約ごとに補助科目を作ります。

未払費用と預り金

未払費用は、すでに期間が経過して費用が発生しているものの、まだ支払っていない継続的な費用等に使います。未払金との厳密な区分は、税理士等とルールを決めて継続してください。

預り金は、給与から差し引いた源泉所得税や住民税、社会保険料等、会社・事業者が一時的に預かり、あとで納付する金額等に使います。

預り金は自社のお金ではありません。納付後に残高が正しく減っているか確認します。


4. 売上高・仕入高・販売手数料・荷造運賃

せどりの損益計算で中心になる四科目です。

売上高

商品の販売額です。

販路からの入金額ではなく、返品・値引き等を適切に反映した売上額を記帳します。販売手数料等が差し引かれて入金される場合も、売上高と手数料を分けます。

仕入高

販売目的で購入した商品の代金です。

自社で使うパソコン、棚、梱包材等は仕入高ではありません。販売するものか、自社で使うものかで判断します。

決算時には棚卸しを行い、売れ残った商品を期末商品棚卸高として売上原価から除きます。

販売手数料

Amazon、メルカリ、楽天市場、eBay等へ支払う販売手数料、成約手数料等に使います。

MFクラウドの初期科目や自社ルールにより支払手数料等を使う場合もあります。重要なのは、同じ性質の手数料を継続して集計できることです。

荷造運賃

購入者への発送費、FBA納品送料、梱包・配送に直接関係する支出等に使います。

ダンボールやテープ等を消耗品費とするか荷造運賃とするかは、金額的重要性や管理目的に応じてルールを決めます。

売上総利益と普段いう「粗利」の違い

損益計算書の売上総利益は、基本的に売上高から売上原価を差し引いた金額です。

販売手数料や荷造運賃を販売費及び一般管理費としている場合、それらは売上総利益のあとで差し引かれます。

自分の管理表では手数料・送料まで差し引いて「粗利」と呼ぶこともあるため、比較時は何を差し引いた数字か確認してください。


5. せどりでよく使う経費科目

経費は、名称だけでなく何のために支払ったかで選びます。

勘定科目 せどりでの例 注意点
販売手数料・支払手数料 販路手数料、決済手数料、振込手数料 販路手数料と銀行手数料を補助科目等で分けてもよい
荷造運賃 配送料、FBA納品送料 販売先への送料と仕入時の送料を区別する場合がある
広告宣伝費 Amazon広告、SNS広告 販路別に補助科目を付けると効果を確認しやすい
消耗品費 テープ、ラベル、プリンター用紙、小額備品 販売商品は仕入高。高額備品は固定資産を検討
通信費 インターネット、電話、クラウド通信 私用兼用は合理的な基準で家事按分
旅費交通費 電車、バス、駐車場、出張費 月極駐車場は地代家賃等とする場合もある
車両費 ガソリン、車検、車両関連費 車両費を使わず各科目へ分ける方法もある
接待交際費 取引先との会食、贈答 相手先と目的を記録。個人の飲食は含めない
会議費 打合せの飲食・会場費 接待交際費との基準を社内で統一
外注費 検品、梱包、発送、事務代行 給与との区分、契約・請求書を確認
地代家賃 事務所、倉庫、月極駐車場 自宅兼用は家事按分。保証金等は別処理の場合あり
水道光熱費 事務所・店舗の電気、水道 自宅兼用は家事按分
租税公課 事業税、印紙税等 所得税・住民税等、経費にならない税金もある
支払利息 借入金の利息 元金返済と分ける
保険料 事業用損害保険等 契約期間や積立部分を確認
修繕費 事業用備品・設備の修理 改良・価値増加は資産になる場合がある
減価償却費 パソコン、車両、設備等 購入時に全額経費としない場合がある
新聞図書費 業務用書籍、専門誌 私用書籍は含めない
研修費 事業に必要な講座・研修 事業との関連性を説明できるようにする

雑費は便利箱にしない

どの科目にも当てはまらない少額・臨時の支出に雑費を使うことはあります。

しかし、毎月発生する大きな金額をすべて雑費へ入れると、何に使ったか分かりません。繰り返し発生するものは、既存科目または補助科目で管理します。

科目より先に、経費になるかを考える

適切そうな科目名を付けても、事業と関係のない私用支出は経費になりません。

また、10万円以上の備品等は、金額・使用期間・事業者の状況により固定資産や少額減価償却資産等の検討が必要です。第16章で扱います。


6. 個人の事業主貸・事業主借

事業主貸・事業主借は、個人事業主本人と事業のお金が行き来したときに使います。

「貸」「借」の文字だけで覚えると混乱するため、お金の向きで考えます。

事業主貸 事業から個人へ

事業用のお金を生活費として引き出した、事業用カードで私物を買った、事業用口座から個人の税金を払った場合等です。

事業主貸 100,000円 / 普通預金 100,000円

事業主貸は、通常の事業経費ではありません。利益を減らす科目ではなく、事業のお金を個人側へ移したことを表します。

事業主借 個人から事業へ

個人用カード・個人のお金で事業経費を立て替えた、個人口座から事業用口座へ資金を入れた場合等です。

消耗品費 11,000円 / 事業主借 11,000円

事業主借は売上ではありません。個人側から事業へお金や支払いが入ったことを表します。

事業主貸:事業 → 個人
事業主借:個人 → 事業

事業主貸・事業主借は、年末の決算整理で元入金へ集約されます。会計ソフトの処理方法を確認してください。

「分からないから事業主貸」にしない

事業主貸は不明取引を消すための科目ではありません。

事業用カードの明細を事業主貸にするなら、実際に私用だったことを確認します。ギフト券購入や資金移動等を、分からないまま事業主貸にすると、必要な資産や取引が帳簿から消えることがあります。


7. 法人の役員借入金・役員貸付金

法人では、事業主貸・事業主借を使いません。

社長一人の会社でも、会社と社長個人は別です。

役員借入金 会社が役員から借りている

役員個人が会社経費を立て替えた、役員から会社口座へ資金を入れた場合等です。

消耗品費 11,000円 / 役員借入金 11,000円

会社が役員へ返金したとき

役員借入金 11,000円 / 普通預金 11,000円

役員貸付金 会社が役員へ貸している

法人カードで役員の私物を購入した、会社のお金を役員が私用で引き出した場合等です。

役員貸付金 11,000円 / 未払金 11,000円

役員が会社へ返金したとき

普通預金 11,000円 / 役員貸付金 11,000円

役員貸付金を長期間放置すると、利息、役員給与、金融機関からの見え方等について問題になる場合があります。発生理由を確認し、早めに精算し、税理士へ相談してください。

役員借入金も、誰から・いつ・なぜ借りたのかが分かるようにし、複数役員がいる場合は補助科目を分けます。

役員報酬の代わりに自由に引き出さない

法人の口座から生活費を自由に引き出し、あとで役員報酬に変更する方法は避けます。役員給与には税務上のルールがあるため、金額・支給日・変更時期は事前に税理士等へ確認してください。


8. 仮払金・仮受金を残さない

内容や金額が一時的に確定していないときに、仮払金・仮受金等を使う場合があります。

仮払金

支払いはしたものの、内容や最終金額がまだ確定していない金額です。出張旅費の概算払い等が例です。

仮受金

入金はあったものの、内容や相手先がまだ分からない金額です。

使うなら、解消日まで決める

仮払金・仮受金は、一時的な待機場所です。

悪い状態:誰の、いつの、何の金額か分からないまま翌年へ繰り越す

良い状態:取引日・相手先・調査内容・担当者・解消期限が分かる

月末には、次を確認します。

  • 取引日と金額が分かる
  • 相手先または関係者が分かる
  • 調査した資料が分かる
  • 確定後に振り替える科目が分かる
  • 担当者と解消期限が決まっている

分からない残高を勝手に0円にしない

過去から残る仮払金・仮受金・買掛金・預り金等を0円へ振り替えると、必ず反対側の科目が発生し、利益や資産・負債が変わる場合があります。

開始残高が間違っている可能性があっても、まず前年の決算書、総勘定元帳、通帳、契約、申告書等を確認します。原因が分からないまま雑収入・雑損失・事業主貸等へ振り替えず、税理士へ相談してください。


9. 補助科目・部門・タグで細かく管理する

勘定科目を増やしすぎると、毎回どの科目を使うか迷います。

同じ性質の取引をまとめたまま内訳を見たいときは、補助科目・部門・タグを使います。

補助科目 残高や相手先を分ける

勘定科目 補助科目の例
普通預金 楽天銀行1234、住信SBI5678
売掛金 Amazon国内、Amazon米国、メルカリShops
未払金 楽天カード1234、AMEX5678
借入金 日本政策金融公庫、○○信用金庫
販売手数料 Amazon、楽天市場、eBay
役員借入金 代表者A、役員B

口座番号・カード番号は、末尾4桁等の識別に必要な範囲だけ表示し、番号全体を記載しません。

部門 事業のまとまりを比較する

部門は、国内物販・輸出、店舗別、ブランド別、法人内の事業別等を比較するときに使います。

ただし、部門別の損益を正しく出すには、売上だけでなく仕入れ・手数料・送料・共通経費の配分も必要です。

タグ 取引へ追加情報を付ける

タグは、プロジェクト、担当者、キャンペーン、確認状況等、勘定科目や部門とは別の切り口で検索するときに使います。

MFクラウドのプランや機能によって利用できる管理項目が異なる場合があります。第6章の設定時に確認します。

最初は細かくしすぎない

事業の状況 おすすめの管理
創業直後・ひとり経理 口座、カード、販路、借入金の補助科目を優先
複数販路・複数担当者 販路別補助、部門、担当者ルールを追加
複数部門・複数法人 法人・事業所を分離し、部門・権限・承認を設計

使わない区分を先に大量に作るより、毎月照合したい単位から作ります。


よくある質問

Q1 事業主貸は「プライベート」という意味ですか?

個人事業では、事業用のお金を私用へ移した取引等に使います。ただし、不明な取引をすべて事業主貸にする科目ではありません。

Q2 個人カードで事業用商品を仕入れた場合は事業主貸ですか?

反対です。個人側が事業の支払いを立て替えているため、基本は「仕入高/事業主借」等です。

Q3 クレジットカードの仕入れは買掛金ですか、未払金ですか?

本教材では、カード利用は未払金、仕入先との通常の掛仕入れは買掛金とします。途中で処理を変えず、税理士等と決めた方法を継続します。

Q4 Apple Gift Card等を買ったら仕入高ですか?

ギフト券を購入しただけでは、販売商品を仕入れたとは限りません。ギフト券残高等として管理し、実際に何へ使ったかを記帳します。詳しくは第11章で扱います。

Q5 銀行から入った融資は売上高ですか?

売上高ではなく借入金です。元金返済も経費ではなく、借入金を減らします。利息部分は支払利息等です。

Q6 勘定科目を間違えると、税額も必ず変わりますか?

経費科目間の変更だけなら最終利益が変わらない場合もあります。ただし、資産・負債・売上・仕入れとの誤り、税区分の誤り、経費にならない支出等は利益・税額が変わる可能性があります。

Q7 古い仮払金・仮受金を0円にしてよいですか?

理由を確認せず0円にしないでください。反対側の科目によって利益や財産・債務が変わります。過去帳簿・決算書・通帳等を調べ、税理士へ相談します。

Q8 科目を細かく作るほど、正確になりますか?

必ずしもそうではありません。選択ミスが増えることもあります。勘定科目は性質別、補助科目は口座・カード・販路等の内訳という役割分担にします。


この章の完了チェック

  • 資産・負債・収益・費用の違いを説明できる
  • 売掛金と未収入金、未払金と買掛金を区別できる
  • 販売商品は仕入高、自社使用品は経費・資産等と判断できる
  • 販路入金を売上高と手数料へ分けられる
  • 借入元金と利息を分けられる
  • 個人の事業主貸・事業主借を、お金の向きで判断できる
  • 法人では役員貸付金・役員借入金等を使うと分かった
  • 仮払金・仮受金に担当者と解消期限を付けられる
  • 口座・カード・販路・借入金の補助科目を決められる
  • 勘定科目と消費税の税区分は別だと分かった

記入シート 勘定科目早見表

自分の事業で使う科目にチェックを付け、補助科目を決めるものにはメモを書いてください。ここで決めた科目が、第6章のMFクラウド設定でそのまま使えます。

共通(個人・法人とも使う)

分類 勘定科目 使う 補助科目を作るなら
資産 現金
資産 普通預金 口座ごと
資産 売掛金 販路ごと
資産 商品(棚卸資産)
資産 未収入金
資産 前払金
資産 仮払金
負債 未払金 カードごと
負債 買掛金 仕入先ごと
負債 借入金 借入先ごと
負債 未払費用
負債 預り金
負債 仮受金
収益 売上高 販路ごと
収益 雑収入
売上原価 仕入高
売上原価 期首商品棚卸高
売上原価 期末商品棚卸高

経費(使うものだけでよい)

勘定科目 使う 補助科目を作るなら
販売手数料・支払手数料 販路ごと/銀行手数料
荷造運賃 販売送料/仕入送料
広告宣伝費 販路ごと
消耗品費
通信費
旅費交通費
車両費
接待交際費
会議費
外注費
地代家賃 事務所/倉庫
水道光熱費
租税公課
支払利息
保険料
修繕費
減価償却費
新聞図書費
研修費

個人事業主だけが使うもの

勘定科目 使う メモ
事業主貸
事業主借
元入金

法人だけが使うもの

勘定科目 使う 補助科目を作るなら
役員借入金 役員ごと
役員貸付金 役員ごと
資本金
役員報酬

雑費に逃がしていないか

確認 結果
雑費に入れた取引が、月に何件あるか
そのうち、他の科目で説明できるものはあるか 見直す

次の第5章では、口座・カード・販路・証憑を整理し、この科目を迷わず使える環境を作ります。


勘定科目に迷ったときの考え方 勘定科目に迷ったときの考え方 正解は一つとは限りません。大事なのは毎回同じにすること 1 それは、モノやお金が残るものか 残るなら資産(在庫・備品)、消えるなら費用 2 せどりの本業に直接かかわるか 仕入れ・販売手数料・送料は、事業の中心の科目へ 3 同じ内容を前に何で処理したか 過去と揃える。これが一番大事です 4 どうしても決まらないときは 近い科目を選び、摘要に内容を書いて統一する 迷った時間より、統一されていないことのほうが後で困ります
図8迷ったときの考え方

第5章

記帳をラクにする初期設計

共通個人法人規模拡大

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 事業で使う口座・カード・販路・決済方法・倉庫を一覧化できる
  • 事業用と私用を混ぜにくい環境を作れる
  • 個人カード・家族カードを使う場合の管理方法を決められる
  • 領収書・請求書・電子データの保存場所と名前を統一できる
  • MFクラウドへ連携するもの・しないものを決められる
  • 個人事業と法人、複数法人の取引を分離できる
  • 資料回収・入力・確認・承認の担当者を決められる
  • 月次締め日と資料提出期限を設定できる
  • 年商や担当者が増えても崩れにくい経理へ育てられる

記帳をラクにする初期設計 記帳をラクにする初期設計 先にこれを決めておくと、毎月の作業が半分になります ① 決済を絞る 使う口座とカードを 決める ② 事業用に分ける 私用と混ぜない 1枚決めるだけでよい ③ 連携を設定する 何を自動、何を手入力 かを決める ④ 科目を決める よく使う取引の 処理を統一する 毎月の作業が重いときは、たいてい設計の問題です
図9先に決めておくと、毎月の作業が軽くなります

最初に結論

記帳をラクにする一番の方法は、入力速度を上げることではありません。

記帳を始める前に、漏れ・重複・私用混在が起きにくい環境を作ることです。

まず、次の九つを決めます。

決めるもの 最低限決める内容
事業者 個人・法人、対象となる事業所
銀行口座 事業で使う口座、用途、MF連携、残高確認方法
カード 名義、末尾4桁、用途、引落口座、MF連携
販路 アカウント、売上データ、入金先、担当者
決済方法 現金、電子マネー、ポイント、ギフト券等
倉庫 自宅、FBA、外部倉庫、外注先等
証憑 保存場所、ファイル名、原本・電子データ
担当者 回収、入力、確認、承認、税務判断
期限 資料提出日、質問回答日、月次締め日
flowchart LR
    A["口座・カード・販路等を一覧化"] --> B["資料の保存方法を統一"]
    B --> C["担当者と期限を決める"]
    C --> D["毎月同じ順序で記帳"]
    D --> E["残高を照合して月次完了"]

ここで作るのは、難しい経理規程ではありません。

創業直後なら、Excel一枚とフォルダ一つからで十分です。事業が大きくなったら、同じ土台へ担当者・部門・承認を足していきます。


1. 事業用口座・カードを分ける

個人事業主でも、事業用の銀行口座とカードを決めることをおすすめします。

法人は、原則として法人名義の口座・カードを中心に運用します。

分けると何がラクになるか

  • 事業取引を探しやすい
  • 私用取引の判定が減る
  • 口座・カード残高を照合しやすい
  • 資料提出の範囲が分かりやすい
  • 税理士や記帳担当者へ渡しやすい
  • 事業の資金繰りを確認しやすい

事業用カードなら、すべて経費になるわけではない

事業用カードで私物を買っても、経費にはなりません。

反対に、個人カードで事業に必要なものを買った場合は、取引内容と証憑を確認して事業の帳簿へ反映します。

カードの名称ではなく、何を買ったかで判断します。

最初から完璧に分けられなくてもよい

開業直後やカード審査中等で、すぐに完全分離できない場合もあります。

その場合は、次を決めてください。

  1. 事業で使う口座・カードを限定する
  2. 私用取引には毎月印を付ける
  3. 個人立替・役員立替の処理方法を統一する
  4. 新しい事業用口座・カードへ移行する時期を決める

「いつか分ける」のままではなく、移行日を決めます。


2. 個人カード・家族カードを使う場合

実際の記帳代行では、決算前になって次のような連絡をいただくことがあります。

家族カードでも仕入れをしていました。作った月まで遡って入れてください。

このカードが台帳にないと、仕入れ・経費、カード残高、引落しがまとめて漏れる可能性があります。

使うカードを一枚ずつ登録する

項目
カード名称 楽天カード
末尾4桁 1234
名義 本人・配偶者・役員A
事業者 個人事業・法人A
利用目的 仕入れ専用、経費用、事業・私用混在
引落口座 楽天銀行1234
締日・支払日 月末締め・翌月27日等
MF連携 有・無
明細取得方法 WebのPDF・CSV等
補助科目 未払金/楽天カード1234

カード番号全体やセキュリティコードは台帳へ記載しません。末尾4桁等、識別に必要な範囲だけにします。

個人・家族カードを使う場合のルール

  • 毎月、事業利用分があるか確認する
  • 利用明細と購入先の領収書・購入履歴を保存する
  • 個人事業では事業主借等、法人では役員借入金・未払金等の処理を統一する
  • 事業用口座から私用分もまとめて引き落とされる場合は、私用分を区分する
  • 解約前に必要な明細を保存する

カードを解約・再発行すると、過去明細が取得しにくくなる場合があります。解約前に利用明細・請求明細を保存し、未払残高と返金予定がないか確認してください。


3. 口座・カード・販路・決済方法・倉庫を一覧化する

会計ソフトに連携されているものだけが、事業のすべてではありません。

連携外口座、現金、個人カード、電子マネー、海外決済サービス、外部倉庫等も含めて一覧にします。

銀行口座台帳

  • 金融機関・支店・口座種別・末尾番号
  • 名義と対象事業者
  • 用途
  • MF連携の有無
  • 明細取得方法・取得可能期間
  • 月末残高の確認資料
  • 解約・休眠状況

取引がなかった口座も、台帳には残します。「今月取引なし」と確認できれば、資料漏れとの区別が付きます。

販路台帳

  • 販路名・アカウント識別名
  • 販売主体となる個人・法人
  • 売上データの取得場所
  • 精算・入金データの取得場所
  • 入金先口座
  • 売掛金の確認方法
  • データ取得担当者
  • アカウント停止・閉鎖時の保存状況

複数のAmazon、eBay、Shopee、メルカリ等を使う場合は、「Amazon」だけで終わらせず、アカウントを区別できる名称を付けます。

決済方法台帳

  • 現金
  • PayPay・楽天ペイ等
  • Suica・nanaco・WAON・majica等
  • 楽天ポイント・PayPayポイント等
  • Amazonギフトカード・Apple Gift Card等
  • Payoneer等の海外決済サービス

チャージ元、利用明細、月末残高、記帳方法を決めます。

倉庫・在庫保管場所台帳

  • 自宅・事務所・店舗
  • Amazon FBA倉庫
  • 外部倉庫
  • 外注先・納品代行先
  • 輸送中・検品中
  • 返品・修理・買取査定中

保管場所ごとに、在庫データの取得方法と棚卸し担当者を決めます。

変更があった日に台帳を更新する

次の出来事があったら、月末まで待たずに更新します。

  • 新しい口座・カード・販路を使い始めた
  • カードを再発行・解約した
  • 引落口座を変更した
  • 販路の入金先を変更した
  • 倉庫・外注先を追加した
  • 個人事業から法人へ取引を移した
  • アカウントが停止・閉鎖された

記憶ではなく、台帳を会社・事業の正本にします。


4. 証憑の保存場所を一つにする

領収書、請求書、購入履歴等が、LINE、メール、紙袋、パソコン、スマートフォンへ散らばると、毎月探すところから始まります。

保存場所と名前を最初に統一します。

フォルダの例

経理資料
└── 2026年
    ├── 01月
    │   ├── 01_売上
    │   ├── 02_仕入
    │   ├── 03_経費
    │   ├── 04_銀行
    │   ├── 05_カード
    │   └── 06_その他
    ├── 02月
    └── 決算資料

ファイル名の例

2026-07-08_11000_Amazon_梱包材.pdf
2026-07_楽天カード1234_請求明細.pdf
2026-07_Amazon国内_トランザクション.csv

日付・金額・取引先等で検索できる名前にすると、あとで探しやすくなります。

電子で受け取ったものは電子データを保存する

メール、Webサイト、アプリ等で受け取った注文書、契約書、請求書、領収書等の電子取引データは、電子データとして保存します。

国税庁は、電子取引データについて、真実性の確保と、日付・金額・取引先等で検索できる状態等を案内しています。事業規模やダウンロードへの対応等により要件が異なる場合があるため、最新の案内を確認してください。

取得できるPDF・CSVがある場合は、画面のスクリーンショットだけで済ませず、元データも保存します。

保存の基本ルール

  • 原本データを加工せず保存する
  • 加工・集計用ファイルは原本と分ける
  • 同じ資料を複数の場所へ重複保存しすぎない
  • 誰が閲覧・編集できるかを決める
  • 誤削除や障害に備えてバックアップを考える
  • 退職者・外注終了者のアクセス権を解除する

資料を共有するときは、カード番号、マイナンバー、個人住所等、不要な個人情報が含まれていないか確認します。


5. MFクラウドへ連携するもの・しないものを決める

すべてを連携すれば、必ずラクになるわけではありません。

連携するかどうかは、次の条件で決めます。

連携を検討しやすいもの

  • 毎月、事業取引が発生する
  • 取引件数が多い
  • 安定して明細を取得できる
  • 補助科目と照合方法を決められる
  • 連携エラーを確認する担当者がいる

連携しない方法も考えられるもの

  • ほぼ私用で、事業利用がごく少ない
  • 一度しか使わない
  • PDF・CSVで漏れなく管理できる
  • 連携すると私用取引が大量に入り、確認負担が大きい
  • 認証やサービス仕様の都合で安定して取得できない

連携しない場合も、事業取引を記帳しなくてよいわけではありません。PDF・CSV・スプレッドシート等、代わりの提出方法と担当者を決めます。

連携台帳で管理する

項目 記載内容
データ元 楽天銀行、楽天カード、Amazon等
取得方法 MF連携、CSV、PDF、手入力
取得担当 本人、経理担当、外注先等
確認頻度 毎月、四半期、利用時のみ
代替手段 連携停止時に取得するデータ
最終取得 どの日付まで取れているか

連携されていることと、漏れなく記帳できていることは別です。連携エラーや取得期間を毎月確認します。

連携設定・解除・再連携の操作は、第6章で扱います。


6. 個人・法人・複数法人を混ぜない

個人事業と法人、法人Aと法人Bは、それぞれ別の事業者です。

同じ経営者が運営していても、帳簿、銀行口座、カード、売上、在庫、証憑を分けます。

最低限分けるもの

  • MFクラウドの事業所
  • 銀行口座・カード
  • 販路アカウントまたは売上の帰属
  • 請求書・領収書の宛名
  • 倉庫・在庫の所有者
  • 証憑フォルダ
  • 借入金・固定資産

お金を移動したら記帳する

個人口座から法人口座へ50万円を振り込んだ場合、同じ人のお金だから消してよいわけではありません。

法人側では、役員借入金、資本金等、実際の取引に応じて記帳します。個人事業と法人の売上・仕入れを相殺しません。

共通利用する費用はルールを決める

自宅事務所、倉庫、車両、従業員、システム等を複数事業者で共通利用する場合は、契約主体、請求先、負担方法、按分基準を決めます。

あとから都合よく利益を動かすのではなく、合理的な基準を継続して使い、契約・精算資料を残します。具体的な取引は税理士へ相談してください。


7. 入力・確認・承認の担当者を決める

担当者が増えたときに、「みんなで確認する」は、実際には誰も確認しない状態になりがちです。

一つの作業につき、主担当者と最終確認者を決めます。

基本の役割

役割 主な仕事
資料提出者 売上・銀行・カード・領収書等を集める
入力担当者 会計ソフトへ登録・科目確認をする
質問回答者 不明取引の内容を調べて回答する
残高確認者 預金・売掛金・未払金・在庫等を照合する
承認者 月次数値と未解決事項を確認して締める
税務判断者 税区分・特例・申告判断を確認する

ひとり事業でも、役割を省略するのではなく、一人が順番に担当します。

資料を集める自分
  ↓
入力する自分
  ↓
残高を確認する自分
  ↓
月次を承認する自分

チェックリストを使い、入力直後ではなく時間を置いて確認すると、見落としを減らせます。

パスワードを共有しない

同じID・パスワードを複数人で使うと、誰が操作したか分からず、退職・外注終了時の管理も難しくなります。

MFクラウドには、メンバーを追加し、利用者ごとに権限を設定する機能があります。プラン・サービスにより利用可能な権限が異なるため、必要な人へ必要な範囲だけ付与します。

  • 経営者・管理者
  • 取引登録のみ
  • 監査・閲覧のみ
  • カスタム権限等

多要素認証が使えるサービスでは設定し、パスワードを使い回さず、退職・契約終了時には速やかに権限を削除します。


8. 月次締め日と資料提出期限を決める

「時間があるときに提出」では、記帳は必ず後回しになります。

売上データの確定日、カード明細の公開日、担当者の稼働日を確認して、無理のない期限を決めます。

月次スケジュールの例

期限 作業
翌月5日 領収書、現金・連携外取引、販路データを提出
翌月10日 銀行・カード・売上の入力、連携エラー確認
翌月15日 不明取引への回答、追加資料提出
翌月20日 預金・売掛金・未払金等を照合
翌月25日 月次数値を確認し、未解決事項を承認者へ報告

これは一例です。カード明細が確定する時期等に合わせて、自社の締め日を決めます。

締めるための条件を決める

次がそろったら、その月を完了とします。

  • 必要な資料が提出されている
  • 連携エラー・未取得期間がない
  • 不明取引へ回答している
  • 預金・売掛金・未払金等を照合している
  • 在庫を必要な頻度で確認している
  • 未解決事項と担当者・期限が記録されている
  • 承認者が数値を確認している

未解決事項があるまま締める場合は、何が未確定か、利益・残高へどの程度影響するかを記録します。

遅れたときのルール

  • 期限翌日に担当者へ連絡する
  • 一定日数を超えたら承認者へ報告する
  • 資料がない取引を勝手に確定しない
  • 翌月へ持ち越す項目と期限を記録する

催促する人の頑張りではなく、決めた手順で進むようにします。


9. 年商が増えても崩れない管理方法

取引量が増えても、基本は同じです。

一覧化、資料保存、担当者、期限、残高照合を少しずつ強くします。

事業の段階 経理の設計
創業前後・ひとり事業 事業用口座・カード、月別フォルダ、1か月ごとの記帳
年商1億円以下 販路・カード・倉庫台帳、提出期限、月次残高照合
取引量・担当者が増えた 入力者と確認者を分離、部門・承認・質問管理
複数部門・複数法人 事業者別の権限、共通費配賦、月次締め、変更履歴
年商20億円程度まで 販売・在庫・会計データの連携統制、承認証跡、経理規程、バックアップ

年商1億円以下の方が、最初から大企業の仕組みを作る必要はありません。

ただし、次の兆候が出たら設計を一段強くします。

  • 経営者しか分からない口座・カードが増えた
  • 月次締めが翌々月以降になる
  • 同じ取引を複数人が入力・修正している
  • 在庫・売掛金・カード残高が毎月合わない
  • 担当者の退職・休職で作業が止まる
  • 法人・販路・倉庫が増えた
  • 融資や税務調査の資料をすぐに出せない

変更履歴を残す

台帳やルールを変更したら、変更日、変更者、変更理由、旧ルール、適用開始月を記録します。

「今月から何となく変えた」をなくすと、過去月との比較と引継ぎがしやすくなります。


よくある質問

Q1 事業用口座・カードは必ず新しく作る必要がありますか?

必ずとは限りませんが、事業用として使うものを限定すると記帳が大幅にラクになります。すぐ作れない場合は、利用範囲と移行日を決めます。

Q2 個人カード・家族カードを事業で使ってもよいですか?

取引内容と証憑を確認して記帳できます。ただし、明細取得、私用区分、立替処理が必要です。法人では会社と個人の精算を明確にします。

Q3 すべての口座とカードをMFへ連携した方がよいですか?

取引件数、私用混在、連携安定性、代替資料を考えて決めます。連携しない場合も、事業取引の資料提出方法を決めてください。

Q4 使わなくなったカードは、すぐに連携解除してよいですか?

未処理明細、未払残高、今後の引落し・返金、過去データの保存を確認してから解除します。詳しくは第6章で扱います。

Q5 今月取引がなかった口座・カードも確認しますか?

台帳に「取引なし」と記録します。確認して0件なのか、確認していないのかを区別するためです。

Q6 電子の領収書を印刷して保存すれば十分ですか?

電子取引データは電子データとしての保存が必要です。最新の電子帳簿保存法の要件に沿って、元データを検索・提示できる状態にします。

Q7 一人で経理をしているので、役割分担表は不要ですか?

一人でも必要です。同じ人が資料回収・入力・確認・承認を順番に行い、どこまで終わったかを管理できます。

Q8 個人事業と法人で同じ口座・販路を使っています

できるだけ早く分離し、分離までの期間は取引の帰属を一件ずつ説明できるようにします。資金移動や共通費の処理は税理士へ確認してください。


この章の完了チェック

  • 対象となる個人・法人・事業所を確認した
  • 事業で使う銀行口座をすべて台帳へ登録した
  • 本人・家族・役員のカードをすべて台帳へ登録した
  • 販路・アカウント・入金先を登録した
  • 電子マネー・ポイント・ギフト券等を登録した
  • 在庫の保管場所と棚卸し担当者を登録した
  • 証憑フォルダとファイル名のルールを決めた
  • MFへ連携するもの・代替資料を決めた
  • 個人・法人・複数法人の資料を分けた
  • 資料回収・入力・確認・承認の担当者を決めた
  • 資料提出日・回答期限・月次締め日を決めた
  • パスワード共有をやめ、必要な権限だけ付与した
  • 変更時に台帳を更新する担当者を決めた

記入シート 経理初期設計シート

ここを埋めれば、第6章のMFクラウド設定へそのまま進めます。行が足りなければ増やしてください。

1 銀行口座台帳

銀行名 支店 口座番号下4桁 名義 事業・私用 用途 MF連携

2 カード台帳

カード名 末尾4桁 名義(本人・家族・役員) 事業・私用 引落口座 締日 支払日 MF連携 未払金の補助科目

3 販路台帳

販路 アカウント名 入金先口座 入金サイクル 売掛金の補助科目 手数料の確認場所

4 決済方法台帳

決済方法 種類(電子マネー・ポイント・ギフト券・現金) チャージ元 事業で使うか 記帳方法

5 在庫保管場所台帳

保管場所 種類(自宅・倉庫・FBA等) 棚卸し担当者 数量の確認方法

6 連携台帳

対象 MFへ連携する 連携しない場合の代替資料 取得方法

7 証憑の保存ルール

項目 決めたこと
保存場所(クラウド・フォルダ)
フォルダの分け方
ファイル名のルール
電子で受け取ったものの扱い

8 担当と締め日

項目 担当者 期限
資料の回収
入力
確認
承認
月次締め日
質問への回答期限

9 個人・法人の分離(該当する人だけ)

項目 決めたこと
分けている口座・カード・販路
共通で使う費用の分け方
お金を移動したときの記帳方法

何を自動連携し、何を手入力するか 何を自動連携し、何を手入力するか 全部を自動にすると、かえって二重計上が増えます 自動連携が向く 銀行口座 クレジットカード 決済サービス 取引が多く定型的なもの 手入力が向く 棚卸 自家消費 ポイント利用 現金での少額仕入れ 要注意(重複しやすい) 販路の売上データと入金 Amazon履歴とカード明細 家族カード 同じ取引の二重登録 「連携したから安心」ではなく、「どこから記帳するか」を1つに決めることが大事です
図10何を自動連携し、何を手入力するか

第6章

MFクラウドを設定しよう

共通個人法人規模拡大

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 個人と法人で使うMFクラウドの製品を選べる
  • 事業者、会計期間、消費税等の基本設定を確認できる
  • 第4章・第5章で決めた勘定科目、補助科目、部門をMFクラウドへ反映できる
  • 銀行、カード、ECアカウントを安全な順序で連携できる
  • 取得開始日を確認し、明細の漏れ・重複を防げる
  • 自動仕訳ルールを作る取引、作らない取引を区別できる
  • 連携エラーが起きたときの初動を統一できる
  • 連携解除・再連携の前に、消える可能性のある情報を保全できる

MFクラウドの設定は、この順番で MFクラウドの設定は、この順番で 画面の位置は変わることがあります。順番と考え方を押さえてください 1 事業者情報と会計期間を登録する 個人は1〜12月、法人は自社の事業年度 2 口座・カードを連携する 事業で使うものだけ。私用は入れない 3 勘定科目・補助科目を整える 販路別・カード別に補助科目を作ると照合がラク 4 自動仕訳ルールを設定する 最初のルールが以後すべてに影響します 5 試しに1か月分を通してみる 本番の前に、流れを確認する 最初の設定を間違えたまま1年走ると、修正が1年分になります
図11設定はこの順番で進めます

最初に結論

MFクラウドの初期設定は、次の順序で行います。

  1. 個人・法人に合う製品と事業者を選ぶ
  2. 事業者情報、会計期間、消費税等を確認する
  3. 勘定科目、補助科目、必要な部門を整える
  4. 銀行・カード・ECを一つずつ連携する
  5. 取得期間と重複の有無を確認する
  6. 内容を確認して仕訳を登録する
  7. 安定した取引だけ自動仕訳ルールへ育てる
  8. 毎月、連携エラーと最終取得日を確認する
flowchart LR
    A["事業者・会計期間"] --> B["科目・補助科目"]
    B --> C["一つずつ連携"]
    C --> D["取得期間を確認"]
    D --> E["仕訳候補を確認・登録"]
    E --> F["安定した取引だけルール化"]
    F --> G["毎月エラーと残高を確認"]

ここで最も大切なのは、次の二点です。

連携された明細は、仕訳の材料です。連携しただけで記帳が完了するわけではありません。

連携エラーが出ても、最初から削除・再連携をしないでください。

実際の記帳代行でも、「Amazonのデータが取れていないので、アカウントを削除して登録し直してよいですか」「一度連携を外すとは、削除して再連携で大丈夫ですか」という質問が繰り返し発生しています。

安易に解除すると、取得済み明細や自動仕訳ルールへ影響することがあります。まず、エラーの内容と最終取得日を確認し、必要なデータを保存してから対応します。

なお、この章では「何を、どの順序で、どこに注意して設定するか」を説明します。ボタンの名前や配置はMFクラウド側の仕様変更で変わるため、細かいクリック手順は追いかけません。手順で迷ったときは、各章に載せているマネーフォワード公式サポートのページで最新の画面を確認してください。


1. 個人と法人で使う製品を分ける

個人事業主

個人事業主は、原則としてマネーフォワード クラウド確定申告を使います。

日々の仕訳から、青色申告決算書・収支内訳書、所得税の確定申告書等を作成するための製品です。

法人

日本法人は、原則としてマネーフォワード クラウド会計を使います。

法人の会計帳簿と決算書を作成するための製品です。法人税の申告書は、会計帳簿・決算書とは別に、税務申告ソフトや税理士による作成が必要になる場合があります。

複数の事業者がある場合

個人事業と法人、または複数法人を運営している場合は、事業者ごとに帳簿を分けます。

取引 入れる事業者
個人名義で行う個人事業の売上・仕入 個人事業
法人Aが契約・販売・購入した取引 法人A
法人Bが契約・販売・購入した取引 法人B

ログイン後は、現在選択している事業者名を確認する習慣を付けます。

法人の取引を誤って個人事業へ入力すると、売上・仕入・残高・消費税がまとめてずれます。「同じ人が経営しているから、一つの帳簿でよい」にはなりません。


2. 事業者の基本設定を確認する

会計ソフトへ明細を取り込む前に、次を確認します。

設定項目 個人事業 法人
事業者名 屋号・氏名等 法人名
会計期間 原則1月1日〜12月31日 定款等で定めた事業年度
開業・設立日 開業日 設立日
消費税 課税・免税、計算方法等 課税・免税、計算方法等
開始残高 期首の口座、売掛金、在庫、借入金等 同左
利用者 本人、経理担当者、税理士等 代表者、経理担当者、税理士等

会計期間を軽い気持ちで変更しない

会計期間を変更すると、仕訳の入力対象期間や決算に影響します。すでに仕訳がある場合、変更できない、または修正が必要になることがあります。

「表示されている期間が違うから」と、その場で変更しないでください。現在開いている事業者、正しい事業年度、入力済み仕訳、期首残高を確認してから対応します。

消費税設定を推測で選ばない

消費税は、課税事業者か免税事業者か、原則課税か簡易課税か等により設定が変わります。インボイス登録、基準期間の売上、届出等も関係します。

年度の途中で設定を変更すると、その年度に登録済みの仕訳や集計へ影響することがあります。分からない場合は、前年の申告書・届出書・税理士の指示を確認します。

税区分が分からない状態で、とりあえず設定を進めない。

消費税の判断は、利益だけでなく納税額に直接影響します。税理士等へ確認が必要な項目として切り分けてください。


3. 勘定科目・補助科目・部門を整える

科目を一から増やす必要はありません。第4章で決めた科目を、MFクラウドの既存科目と照らし合わせます。

先に補助科目を整える

せどり・物販では、次の補助科目を設定すると残高を確認しやすくなります。

勘定科目 補助科目の例
普通預金 楽天銀行1234、住信SBI5678
売掛金 Amazon国内A、Amazon輸出B、楽天市場
未払金 楽天カード1234、Amazon Mastercard5678
借入金 日本政策金融公庫2026年借入、銀行A借入
役員借入金 代表者、役員A

口座・カード・販路は、「楽天銀行」「Amazon」だけではなく、末尾番号やアカウント識別名まで付けます。ただし、カード番号全体やパスワードは登録しません。

同じ意味の科目を重複して作らない

「支払手数料」があるのに「販売手数料」「サイト手数料」「決済手数料」を次々と作ると、利益の比較が難しくなります。

既存科目で表現できない理由がある場合だけ追加します。細かく見たい相手は、まず補助科目やタグ、部門で分けられないか検討します。

部門は、比較に使うときだけ作る

部門は、店舗別・事業別・拠点別等の利益を比較したいときに使います。

  • 国内物販と輸出で利益を比較する
  • 実店舗とECで利益を比較する
  • 複数拠点の収益性を比較する

単に「分けられそうだから」という理由で作ると、入力項目だけが増えます。毎月確認する管理表がある場合に設定してください。利用できる部門数や機能は契約プランにより異なる場合があります。

また、科目名・補助科目・部門の変更や削除は、過去の仕訳、決算書、自動仕訳ルールへ影響することがあります。運用開始後の変更は、対象範囲を確認してから行います。


4. 銀行・カードを一つずつ連携する

第5章で作った口座・カード台帳を見ながら進めます。

連携前チェック

  • 対象となる個人・法人が合っている
  • 金融機関名、口座・カードの識別名が分かる
  • 事業用、私用、混在のどれかを記録している
  • 引落口座が分かる
  • MFクラウドで使う補助科目を決めている
  • 過去明細を取得できる期間を確認している
  • 連携前の月まで手入力・CSV取込をしていないか確認した

最初は主力口座を一つだけ連携する

一度にすべて連携すると、設定ミスや重複があっても原因を特定しにくくなります。

まず主力の銀行口座を一つ連携し、取得された明細、開始日、残高、紐づく補助科目を確認します。問題がなければ主力カード、その他口座・カードの順に追加します。

取得開始日を記録する

金融機関ごとに、取得できる過去明細の期間は異なります。また、初回連携時に取得開始日を指定できる場合があります。

たとえば、1月〜3月を手入力済みなのに1月から明細を取得すると、同じ取引が仕訳候補へ現れる可能性があります。反対に、4月からしか取得できなければ、1月〜3月はCSV・PDF等を使って補う必要があります。

確認項目 記録例
連携日 2026年7月8日
MFで取得できた最古日 2026年4月1日
別途必要な期間 2026年1月1日〜3月31日
補完資料 銀行CSV、カードPDF
最終確認者 経理担当A

MFクラウドで見える最古日より前に、取引がなかったとは限りません。

不足期間は、金融機関やカード会社から明細を取得し、月末残高と合わせて確認します。

連携明細を「登録」するか「対象外」にするか

連携後の明細は、内容を確認して仕訳として登録します。

口座間振替やカード利用代金の支払いは、相手側の仕訳と重複しないように処理します。すでに別の方法で正しく登録済みの重複明細等は、対象外とすることがあります。

ただし、事業用口座・カードに私用取引がある場合、何でも対象外にするわけではありません。個人事業の事業主貸・事業主借、法人の役員貸付金・役員借入金等、帳簿へ残すべき取引があります。

「経費にならない」と「帳簿へ入れない」は同じではありません。


5. Amazon等のECアカウントを連携する

EC連携では、購入用アカウントと販売用アカウントを混同しないことが大切です。

アカウントを識別できる名前にする

  • Amazon購入用/個人事業
  • Amazon販売国内A/法人A
  • Amazon販売輸出B/法人A
  • 楽天市場店舗A/法人B

同じAmazonでも、アカウントと販売主体が異なれば別管理です。

連携とCSV取込の二重計上に注意する

同じ期間・同じアカウントについて、EC連携とCSV取込、さらに手入力を重ねると、重複する可能性があります。

どのデータを記帳の入口にするか、アカウントごとに決めます。

アカウント 記帳の入口 補完資料
Amazon購入用A MF連携 注文履歴・領収書
Amazon販売国内A 月次集計・CSV トランザクション、精算レポート
楽天市場店舗A CSV 売上・手数料・入金明細

ECを連携しただけで、売上、返品、販売手数料、広告費、入金差額、売掛金残高の確認がすべて終わるとは限りません。販売用アカウントは、各販路の月次レポートや精算明細を使って照合します。

購入用アカウントも、明細だけでは「何を買ったか」「仕入商品か、消耗品か、私物か」を確定できないことがあります。注文履歴や領収書を保存します。

アカウントを閉鎖・変更する前、または利用停止の可能性があるときは、先に注文履歴、領収書、売上・精算レポート等を保存してください。


6. 自動仕訳ルールは、確認してから育てる

自動仕訳ルールは便利ですが、最初から大量に作らないでください。

最初の1〜3か月は、実際の明細と証憑を確認し、同じ処理が繰り返される取引だけルール化します。

ルール化しやすい取引

  • 毎月同じクラウドサービスの利用料
  • 毎月同じ事務所家賃
  • 明確に識別できるカード引落し
  • 同じ内容で継続する振込手数料

広すぎるルールが危険な取引

  • Amazon
  • 楽天
  • Yahoo!
  • Costco
  • 家電量販店
  • ホームセンター

同じ購入先でも、商品仕入、消耗品、固定資産、私物が混ざることがあります。「摘要にAmazonを含む→すべて仕入高」のようなルールは、誤仕訳を量産します。

ルールを作る場合は、連携元、完全一致・部分一致、金額、摘要、勘定科目・補助科目、税区分、インボイス区分、部門等を必要な範囲まで絞ります。

また、MFクラウドが候補として表示した科目と、自分で保存した自動仕訳ルールは同じではありません。候補が表示されても、税務判断まで確定したわけではありません。

自動化するのは入力です。判断と確認まで自動化されたわけではありません。

販路、カード、契約、消費税区分等が変わったら、関連するルールを見直します。


7. 連携エラーが出たときの対応

連携エラーには、金融機関等のメンテナンス、ログイン情報の変更、追加認証、ワンタイムパスワード、画像認証、利用規約への同意待ち等、さまざまな原因があります。

エラーが出たら、次の順序で対応します。

  1. エラー画面とメッセージを記録する
  2. 最後に正常取得できた日を確認する
  3. 金融機関・EC等の公式サイトへ本人がログインできるか確認する
  4. MFクラウドのメンテナンス・障害情報を確認する
  5. 表示された認証・更新手順を行う
  6. 復旧後、抜けた期間と重複した期間がないか確認する
  7. 不足分をCSV・PDF等で補完する

エラー管理表

項目 記録内容
連携先 Amazon購入用A
発生日 2026年7月8日
エラーメッセージ 表示された文言をそのまま記録
最終取得日 2026年6月30日
未取得の可能性 2026年7月1日以降
対応者 アカウント所有者
補完方法 CSV・PDFを保存
復旧後確認 件数、日付、金額、重複

エラー表示があることと、取引がゼロであることは別です。

「今月は取引がなかった」と思って放置したところ、実際には明細を取得できていなかった、ということがあります。最終取得日と金融機関側の明細を比較します。

追加認証やワンタイムパスワードは、原則としてアカウント所有者が対応します。パスワード、ワンタイムパスワード、カード番号全体等を、LINEやメールで安易に共有しないでください。


8. 連携解除・再連携の前に確認する

「データが取れないから、いったん削除して登録し直す」は、最初に選ぶ対応ではありません。

MFクラウドの公式案内では、連携を解除すると、取得済みの明細情報や自動仕訳ルールが削除される場合があり、他の事業者や関連サービスの連携へ影響する場合もあるとされています。

まず、登録情報の更新、追加認証、再取得等で復旧できないか確認します。

解除前チェックリスト

  • エラーメッセージと発生日を記録した
  • 最終取得日を記録した
  • 未取得期間のCSV・PDFを保存した
  • 取得済み期間の必要な明細を保存した
  • 未登録の仕訳候補を確認した
  • 自動仕訳ルールの内容を記録した
  • 連携先と勘定科目・補助科目の対応を記録した
  • 同じアカウントが他の事業者等で使われていないか確認した
  • 会計データのバックアップ方法を確認した
  • 税理士・記帳担当者と作業日、担当者を共有した

再連携後に確認すること

  1. 取得開始日を設定する
  2. 月ごとの明細件数と金額を比較する
  3. 既存仕訳と同じ日付・金額の明細を確認する
  4. 抜けた期間をCSV等で補う
  5. 自動仕訳ルールを必要なものだけ作り直す
  6. 口座・カード残高を照合する

削除・再連携そのものが目的ではありません。目的は、漏れも重複もない状態へ戻すことです。


最小構成なら、この順序で設定する

創業前後や年商1億円以下の事業者は、最初から複雑にしなくて大丈夫です。

  1. 正しい製品・事業者を選ぶ
  2. 会計期間と消費税設定を確認する
  3. 主力銀行の補助科目を作り、連携する
  4. 主力カードの補助科目を作り、連携する
  5. 主力販路を一つ設定する
  6. 一か月分だけ、明細と仕訳を確認する
  7. 問題がなければ残りを追加する
  8. 安定した取引だけ自動仕訳ルールにする

年商が増え、口座・カード・販路・担当者が増えた場合も、基本は同じです。連携先台帳、命名ルール、権限、月次確認者、変更履歴を追加して運用を強くします。


よくある質問

Q1 すべて連携すれば、記帳は自動で完成しますか

いいえ。取得された明細は仕訳の材料です。取引内容、勘定科目、税区分、証憑、重複等を確認して登録します。売掛金・未払金・在庫等は、明細連携だけでは完成しません。

Q2 連携前の古い明細が取得できません

金融機関・カード・ECごとに取得可能期間が異なります。取得できない期間は、公式サイトからCSV・PDF等を保存し、手入力または取込で補完します。月末残高も合わせて確認してください。

Q3 間違った事業者へ連携・入力してしまいました

それ以上の登録を止め、対象期間、連携先、登録済み仕訳を確認します。大量に削除する前にバックアップを取り、税理士・記帳担当者へ相談してください。個人と法人の間で仕訳をそのまま混在させないことが重要です。

Q4 Amazonアカウントが複数あります。連携できますか

連携可能なサービス・方式は変更されることがあるため、最新の対応状況を確認します。連携できる場合も、アカウント識別名、対象事業者、取得期間を分けて管理してください。

Q5 使っていない口座の連携エラーは放置してよいですか

まず、金融機関側で本当に取引がないことと、最終取得日を確認します。今後も使わない連携を整理する場合は、本章の解除前チェックを行ってから対応します。「取引なし」と「取得できていない」を混同しないでください。

Q6 エラーが直らないので、削除して再連携してよいですか

最初の対応にはしません。公式のエラー別案内に従って、登録情報の更新、追加認証、再取得等を確認します。解除が必要な場合は、取得済み明細、自動仕訳ルール、他事業者への影響を確認してから行います。

Q7 同じ取引が二つ表示されています。片方を削除してよいですか

先に、連携明細、CSV取込、手入力、振替のどこから生じたかを確認します。日付・金額・摘要・相手勘定・証憑を比較し、本当に同じ取引と確認できたものだけ整理します。

Q8 消費税の設定が分かりません

前年の申告書、インボイス登録、提出した届出書等を確認します。推測で変更せず、税理士等へ確認してください。年度途中の変更は登録済み仕訳へ影響することがあります。


第6章の完了チェックリスト

  • 個人はMFクラウド確定申告、法人はMFクラウド会計を選んだ
  • 現在選択している事業者が正しい
  • 会計期間を確認した
  • 消費税設定を申告書・届出等と照合した
  • 期首残高の確認方法を決めた
  • 口座・カード・販路ごとの補助科目を整えた
  • 必要な場合だけ部門を設定した
  • 主力口座から一つずつ連携した
  • 各連携先の取得開始日・最終取得日を記録した
  • 取得できない期間のCSV・PDFを保存した
  • EC連携とCSV取込の役割を決めた
  • 広すぎる自動仕訳ルールを作っていない
  • 連携エラーの記録・対応担当者を決めた
  • 解除前チェックを担当者と共有した
  • 一か月分の明細件数と残高を確認した

すべて確認できたら、第7章で一か月分の記帳を終わらせる全体の流れへ進みます。


参考資料

  • マネーフォワード クラウド確定申告「確定申告書作成」
    https://biz.moneyforward.com/tax_return/feature/final-tax-return/
  • マネーフォワード クラウド会計「事業者の設定」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/guide/office02/of01.html
  • マネーフォワード クラウド会計「消費税」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/guide/office02/of02.html
  • マネーフォワード クラウド確定申告「勘定科目」
    https://biz.moneyforward.com/support/tax-return/guide/office02/of05.html
  • マネーフォワード クラウド会計「部門」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/guide/office02/of07.html
  • マネーフォワード クラウド会計「金融機関・カードを新規登録する」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/guide/linkage-financial/lf01.html
  • マネーフォワード クラウド会計「登録済一覧」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/guide/linkage-financial/lf02.html
  • マネーフォワード クラウド会計「自動仕訳ルール」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/guide/journal02/jo17.html
  • マネーフォワード クラウド会計「データ連携のエラー」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/faq/error/aggre-error.html
  • マネーフォワード クラウド会計「データ連携の解除」
    https://biz.moneyforward.com/support/account/faq/features/f07.html

自動仕訳ルールの考え方 自動仕訳ルールの考え方 AIも自動ルールも、最初に覚えさせた形をずっと再生産します 正しく育てる 最初の数件を丁寧に確認する 科目・税区分を決めてから登録する 補助科目も一緒に設定する 月に一度、ルールを見直す 使うほど作業が減っていく 放置すると 間違った科目を学習し続ける 税区分が空欄のまま増える 気づく機会がないまま1年経つ 修正が1年分になる 使うほど間違いが増えていく 自動化の精度は、最初の数件で決まります
図12最初の数件で、その後の精度が決まります

第7章

月次記帳の全体像を覚えよう

共通個人法人規模拡大

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 一か月分の記帳を、迷わず同じ順序で進められる
  • 月初に集める資料を一覧化できる
  • 「取引なし」と「資料未提出」を区別できる
  • 連携エラーと未取得期間を、入力前に発見できる
  • 売上、仕入れ・経費、連携外取引を漏れにくい順序で記帳できる
  • 預金、売掛金、未払金等の残高を照合できる
  • 棚卸しを反映する前の利益を確定値と誤解しなくなる
  • 月次完了の条件と、翌月へ持ち越す事項を整理できる

月次記帳の全体像 毎月やることは、この順番 順番を変えると、後の工程をやり直すことになります 1 データを取りに行く 各販路のレポート、カード明細、通帳 第6章 2 売上を計上する 売れた日で。入金額ではなく総額で 第8章 3 仕入れ・経費を計上する 使った日で。カードは未払金へ 第9・12章 4 現金が動かない取引を拾う ポイント、自家消費、相殺、廃棄 第10・11章 5 棚卸をして在庫を確定する 月次でやると、年末がラクになる 第13章 6 残高を照合する 通帳・カード・売掛金・在庫と合わせる 第14章 7 「今月は完了」と言える 数字が現実と一致した状態 第18章 1〜6が終われば、7は自動的についてくる 3か月続ければ、考えなくても手が動きます
図13毎月やることの順番。順番を変えると、後の工程をやり直すことになります

最初に結論

毎月の記帳は、次の順序で行います。

  1. 資料を集める
  2. 連携エラーと未取得期間を確認する
  3. 売上・売掛金・入金を記帳する
  4. 仕入れ・経費・カード利用を記帳する
  5. 現金・ポイント・連携外取引を記帳する
  6. 不明取引を質問して解消する
  7. 預金・売掛金・未払金等の残高を照合する
  8. 棚卸しを反映する
  9. 利益と異常な残高を確認する
  10. 未完了事項を記録し、月次を完了する
flowchart LR
    A["資料回収"] --> B["エラー・未取得確認"]
    B --> C["売上・売掛金"]
    C --> D["仕入・経費・未払金"]
    D --> E["現金・ポイント・連携外"]
    E --> F["不明取引の解消"]
    F --> G["残高照合"]
    G --> H["棚卸し"]
    H --> I["数値確認・月次完了"]

最初から一件ずつ完璧に処理しようとすると、途中で資料不足が見つかり、何度も同じ場所へ戻ることになります。

先に一か月分の資料が揃っているかを確認し、その後に入力、最後に残高照合を行います。

記帳のゴールは、入力欄を埋めることではありません。残高の理由を説明できる状態にすることです。


月次記帳の標準スケジュール

月次記帳は、毎月の期限を先に決めます。

次は、翌月20日までに前月分を完了させる場合の一例です。

時期 行うこと 完了の目安
月末当日〜翌月3日 月末残高・在庫の記録 基準日の資料が残っている
翌月1日〜10日 明細・売上・証憑を収集 提出状況がすべて判定済み
翌月5日〜12日 連携確認・仕訳登録 通常取引の入力が終わっている
翌月10日〜15日 不明取引への回答 未回答がゼロ、または期限付きで一覧化
翌月15日〜18日 残高照合・棚卸反映 差額の理由を説明できる
翌月18日〜20日 数値確認・承認 月次報告と持越事項が確定

カード会社や販路によっては、確定資料が出る日が遅いことがあります。その場合は、出るまで何となく待つのではなく、「資料公開予定日」「暫定処理」「確定後に確認する担当者」を決めます。

創業直後は月一回の作業でも構いません。取引量が増えたら、証憑回収と不明取引の確認を週一回にすると、月末の負担を減らせます。

法人や複数担当者で運用する場合は、資料提出日、入力完了日、確認日、承認日を分けます。


1. 月初に集めるもの

会計ソフトへ連携されるものだけでなく、事業で使ったすべての入口を確認します。

毎月の基本資料

分類 集めるものの例
銀行 連携状況、連携外口座のCSV・PDF、月末残高
カード 利用明細、請求明細、連携外カード、家族カード
売上 販路別売上、返品、手数料、入金・精算データ
仕入・経費 領収書、請求書、注文履歴、適格請求書等
現金等 現金、振込、デビット、電子マネーの記録
ポイント等 ポイント、ギフト券の獲得・利用履歴
在庫 月末時点の在庫数量・金額、保管場所別データ
その他 借入、固定資産、給与、立替、返金、事業間取引

カードの利用明細請求明細は役割が違います。利用明細は何をいつ買ったかを確認し、請求明細は今回の引落し対象と金額を確認するために使います。

売上も、入金額だけでは不十分です。売上、返品、販売手数料、送料、広告費、入金等が分かるデータを集めます。

「取引なし」も回答にする

資料提出表の空欄には、次の三つの可能性があります。

  • まだ提出していない
  • その月は取引がない
  • 何を提出すればよいか分からない

空欄のままでは区別できません。

提出状況 意味
提出済 資料の保存場所まで確認済み
取引なし 対象月に取引がないことを確認済み
未提出 資料はあるが、まだ提出していない
取得待ち 公開・確定日を待っている
確認中 取引や取得方法を調査している

実際のやり取りでも、「何が必要なのか詳しく教えてください」「これはどこに共有したらよいですか」という質問が繰り返し発生しています。

毎月同じ資料名・保存場所・提出期限を一覧にしておけば、この往復を減らせます。

前月からの変更を確認する

資料と一緒に、次の変更がなかったか確認します。

  • 新しい口座、カード、販路を使い始めた
  • カードを再発行・解約した
  • 個人カードや家族カードを事業で使った
  • 新しい倉庫・外注先へ在庫を移した
  • 販路の入金先を変更した
  • 借入れ、車両・設備の購入、給与支払いが始まった
  • 個人事業から法人へ取引を移した

変更があった場合は、第5章で作った台帳も更新します。


2. 入力前に連携エラーと未取得データを確認する

MFクラウドに明細が表示されていても、一か月分がすべて取得できているとは限りません。

記帳を始める前に、連携先ごとに次を確認します。

  1. エラーが表示されていないか
  2. 最後に取得できた日付はいつか
  3. 対象月の初日から末日まで揃っているか
  4. 同じ明細が重複していないか
  5. 連携外の期間をCSV・PDFで補っているか

確認例

対象月が6月の場合、最後の取得日が6月18日なら、6月19日〜30日の取引が未取得の可能性があります。

一方、最後の取得日が6月30日でも、金融機関側に6月30日までの全取引が反映されたとは限りません。金融機関・カード・EC側の明細と照合します。

エラーが出ているからといって、すぐに連携を削除しないでください。エラー時と解除前の対応は第6章で確認します。

未取得データは別ルートで補う

連携で取得できない場合は、次の方法を使います。

  • 金融機関・カード会社のCSV
  • 利用・請求明細のPDF
  • ECサイトの注文履歴・精算レポート
  • 連携外取引管理表
  • 証憑を確認した手入力

連携が復旧したあと、補完した仕訳と同じ明細が再取得されることがあります。日付・金額・摘要を比較し、二重計上を防ぎます。


3. 売上・売掛金・入金を記帳する

最初に、販路ごとの売上を一か月単位で確認します。

確認する順序

  1. 対象月の売上を確認する
  2. 返品・返金・キャンセルを確認する
  3. 販売手数料、送料、広告費等を確認する
  4. 販路からの入金を確認する
  5. 月末に未入金の売掛金を確認する

「銀行へ100万円入金されたから、売上100万円」とは限りません。販路側で手数料等を差し引いた残額が入金されることがあるためです。

反対に、月内に販売していても、入金が翌月なら月末に売掛金が残ります。

売上の記帳方法、Amazon等の精算レポート、入金差額、月末売掛金の確認は第8章で詳しく扱います。

この段階では、販路ごとに次の三点が揃っているかを確認してください。

  • 一か月分の売上・返品・手数料が分かる
  • どの口座・決済サービスへ入金されたか分かる
  • 月末売掛金の確認資料がある

4. 仕入れ・経費・カード利用を記帳する

次に、仕入れと経費を記帳します。

支払方法ごとに一巡する

  • 事業用カード
  • 個人カード・家族カード
  • 銀行振込・口座振替
  • 現金・デビットカード
  • 電子マネー・QR決済
  • ポイント・ギフト券
  • 役員・従業員・家族等の立替え

店舗名だけで仕入れ・経費・私用を決めないでください。同じAmazonや楽天市場でも、商品仕入、消耗品、固定資産、私物が混ざります。

購入内容と証憑を確認し、分からない取引は質問一覧へ移します。

カード利用と引落しを二重に経費にしない

カードで購入した時点と、銀行からカード代金が引き落とされた時点は別の動きです。

購入時に仕入れ・経費を記帳し、引落時はカード未払金の支払いとして処理します。具体的な仕訳と未払金照合は第9章で扱います。

未払・未入金を翌月へ消さない

請求書が届いているが未払い、商品を販売したが未入金等の取引は、月末残高として翌月へつながります。

現金の出入りだけを追うのではなく、売掛金・未払金を残して、翌月の入出金と結び付けます。


5. 現金・ポイント・連携外取引を記帳する

自動連携に出てこない取引を、最後まで忘れないようにします。

漏れやすい取引

  • 店舗での現金仕入れ
  • 個人口座からの振込み
  • 個人カード・家族カードでの購入
  • PayPay・楽天ペイ等の残高払い
  • Suica・PASMO・nanaco・WAON・majica等
  • 楽天ポイント・PayPayポイント等の利用
  • Amazonギフトカード・Apple Gift Card等
  • 海外決済サービス内で完結した取引
  • 役員・従業員の立替経費

「MFクラウドに出てこないから、取引がない」と判断しないでください。

連携外取引管理表へ、日付、金額、取引先、内容、支払方法、対象事業者、証憑の保存場所を記録します。

現金・電子マネーは第10章、ポイント・ギフト券は第11章、事業と私用の区分は第12章で詳しく扱います。


6. 不明取引を解消する

内容が分からない取引を、推測だけで仕訳しないでください。

質問一覧へまとめ、回答者と期限を決めます。

項目
日付 2026年6月12日
金額 33,000円
連携元 楽天カード1234
摘要 AMAZON.CO.JP
確認したいこと 購入品、事業・私用、証憑
回答者 代表者
回答期限 2026年7月12日
回答・処理 梱包材、消耗品費、領収書保存済み

質問は、一件ずつ何度も送るより、一覧にまとめた方が回答しやすくなります。

回答待ちの取引を一時的な科目へ置く場合も、金額、理由、担当者、解消期限を記録します。「あとで確認」のまま決算まで残さないでください。


7. 残高を照合する

入力後は、会計ソフトの残高と外部資料を照合します。

確認する残高 比較する資料
普通預金 通帳、銀行明細、月末残高画面
売掛金 販路の精算・未入金データ
カード未払金 利用明細、請求明細、引落実績
決済サービス サービス内の月末残高・取引履歴
借入金 返済予定表、金融機関の残高証明等
現金 実際の手元現金、現金出納帳
在庫 棚卸表、在庫管理データ

差額があれば、原因を探す

預金残高が合わない場合、次のような原因が考えられます。

  • 開始残高が違う
  • 一部期間の明細が取得できていない
  • 同じ取引を二重に登録した
  • 口座間振替の片側がない
  • 個人・法人を取り違えた
  • 日付や金額を誤って入力した

差額を雑収入・雑損失等で無理に合わせるのではなく、いつから差額が生じたかを調べます。

実際の記帳代行でも、必要資料が一つ欠けたまま数か月分の残高照合が完了せず、数値報告を待っていただく事例がありました。

残高照合は、入力後のおまけではありません。漏れと重複を見つけるための中心作業です。


8. 棚卸しを反映する

せどり・物販では、売れ残っている商品があると、仕入れた金額のすべてがその月の売上原価になるわけではありません。

月末在庫を反映する前の利益は、大きくずれている可能性があります。

月末に確認する保管場所

  • 自宅・事務所・店舗
  • Amazon FBA倉庫
  • 外部倉庫・納品代行先
  • 輸送中・検品中
  • 返品・修理・買取査定中

毎月の実地棚卸しが難しい場合でも、管理上の在庫データを使って月次利益を確認し、実地棚卸しを行う時期と差額調整の方法を決めます。決算時の棚卸しは、対象、数量、評価額、税込・税抜等を正しく確定する必要があります。

棚卸表の作り方、FBA・外部倉庫、返品・破損・紛失等は第13章で詳しく扱います。

棚卸しが入っていない利益を見て、「儲かった」「赤字になった」と判断しない。


9. 月次完了を確認する

一か月分の仕訳を入力しただけでは、月次完了ではありません。

この段階では、最低限、次を確認します。

  • 資料提出表に空欄がない
  • 連携エラー・未取得期間を確認した
  • 売上、返品、手数料、入金、売掛金を確認した
  • 仕入れ・経費・カード引落しを確認した
  • 現金・ポイント・連携外取引を確認した
  • 不明取引が解消済み、または期限付きで一覧化されている
  • 預金・売掛金・未払金等を照合した
  • 棚卸しを反映した、または暫定値であることを明記した
  • 前月比で大きく変わった売上・利益・残高を確認した
  • 翌月へ持ち越す事項と担当者を記録した

月次完了の詳細なチェック、30分・60分・半日のルーティン、税理士へ渡す資料は第18章で改めて実践します。

第7章では、まずこの順序を頭へ入れてください。各作業の具体的方法を第8章以降で身に付けていきます。


個人・法人・規模別の運用

創業前後〜年商1億円

  • 毎月同じ提出チェックリストを使う
  • 代表者が不明取引へ回答する日を決める
  • 翌月20日等、無理なく継続できる完了日を決める
  • 半年・決算時だけでなく、毎月または定期的に残高を確認する

複数担当者・取引量が多い場合

  • 資料回収、入力、確認、承認を分ける
  • 販路・カード・部門ごとに担当者を決める
  • 締め後の修正に承認ルールを設ける
  • 月次完了日と未完了件数を管理する
  • 月次試算表と残高一覧を責任者が確認する

年商が大きくなっても、手順そのものは同じです。違うのは、担当者、期限、承認、例外管理の細かさです。

個人事業と法人、複数法人がある場合は、同じスケジュールで進めても構いませんが、資料・帳簿・残高は事業者ごとに分けます。


よくある質問

Q1 毎月、すべての資料を提出する必要がありますか

対象月に取引がある資料は必要です。取引がない場合も、提出表を空欄にせず「取引なし」と記録します。連携されていても、連携エラー、取得期間、証憑を確認してください。

Q2 カードの請求明細がまだ確定していません

利用明細等で先に入力できる範囲を進め、請求明細の公開予定日と確認担当者を記録します。確定後、対象取引、請求額、引落額、未払金を確認します。

Q3 売上がない販路も確認しますか

はい。アカウント側で本当に売上・返品・手数料等がないことを確認し、「取引なし」と記録します。資料が届いていないだけの状態と区別します。

Q4 毎月の棚卸しが難しいです

月次管理用の在庫データと、実際に数える実地棚卸しを分けて考えます。事業規模に合う頻度を決め、決算時は正確な棚卸表を作ります。暫定値を使う場合は、暫定であることを明記してください。

Q5 分からない取引は、とりあえず経費にしてよいですか

推測で確定しません。質問一覧へ移し、購入内容、事業との関係、支払方法、証憑を確認します。一時的な科目を使う場合も、回答者と解消期限を決めます。

Q6 利益がいつもの水準なら、残高照合を省略できますか

省略できません。利益が自然に見えても、預金・売掛金・未払金の漏れや二重計上が残っていることがあります。外部資料と残高を照合して初めて異常を発見できます。

Q7 資料が一部遅れていると、月次を締められませんか

影響額、公開予定日、暫定処理、担当者、修正期限を記録したうえで、暫定月次として報告する方法があります。ただし、未提出を曖昧なまま放置せず、確定後に必ず更新します。

Q8 個人事業と法人を同時に進めてもよいですか

作業日は同じでも構いません。ただし、資料保存場所、MFクラウドの事業者、口座・カード、売上、在庫、質問一覧は分けます。


第7章の完了チェックリスト

  • 毎月の記帳順序を説明できる
  • 資料提出日、回答日、月次完了日を決めた
  • 月初に集める資料の一覧がある
  • 提出済・取引なし・未提出・取得待ちを区別できる
  • 入力前に連携エラーと最終取得日を確認する
  • 売上から売掛金・入金までを一つの流れで確認する
  • 仕入れ・経費とカード引落しを分けて考えられる
  • 現金・ポイント・連携外取引の確認欄がある
  • 不明取引の回答者と期限を決める
  • 預金・売掛金・未払金等を外部資料と照合する
  • 棚卸し前の利益を確定値と考えない
  • 未完了事項を翌月へ引き継ぐ方法を決めた

次章から、この全体図を一つずつ実行します。第8章では、売上・売掛金・入金の記帳から始めます。


後続章との役割分担

  • 第8章:売上、販売手数料、入金、売掛金
  • 第9章:仕入れ、カード利用、引落し、未払金
  • 第10章:現金、振込、電子マネー、連携外取引
  • 第11章:ポイント、ギフト券
  • 第12章:経費と事業・プライベートの区分
  • 第13章:棚卸表、在庫、売上原価
  • 第14章:利益、資金繰り、異常な残高
  • 第18章:月次締めの詳細チェックと実践ルーティン

本章は、各論の答えをすべて説明する章ではありません。迷子にならないために、毎月の作業の順番とゴールを先に示す章です。


第8章

売上・売掛金を記帳しよう

共通個人法人該当者のみ

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 売上日と入金日の違いを説明できる
  • 通帳の入金額だけで売上を判断しなくなる
  • 売上、販売手数料、送料、返金、入金を分けて記帳できる
  • Amazon、メルカリ、ヤフオク、ラクマ、楽天、Yahoo!等の売上を整理できる
  • 買取業者への販売、現金売上、振込売上を重複なく処理できる
  • 月末の売掛金残高を確認できる
  • 入金額が合わないときに、見るべき場所を判断できる
  • 法人や取引量が多い事業でも、販路別に売上を管理できる

売上と入金は違う 入金額を売上にしてはいけない プラットフォームからの入金は、手数料などを引いた後の金額 総売上 100,000円 手数料・広告費など 20,000円 銀行への入金額 80,000円 ○ 正しい計上 売上高   100,000円 支払手数料  20,000円 売上も経費も、実額で帳簿に残る × 入金額ベース 売上高    80,000円 (手数料の計上なし) 売上も経費も、実際より小さくなる 売上が小さく見えると、消費税の判定にも影響します
図14入金額を売上にしてはいけない理由

最初に結論

せどり・物販の売上記帳で一番大事なのは、次の一文です。

売上は「銀行に入金された日」ではなく、「商品が売れた日」を基準に考えます。

Amazonで商品が売れても、すぐ銀行に入金されるわけではありません。

メルカリで売れても、売上金を引き出すまで銀行口座には入りません。

ヤフオク、ラクマ、楽天、Yahoo!ショッピング、eBay、買取業者への販売でも、売れた日と入金日はズレることがあります。

このズレを帳簿で表すために使うのが、売掛金です。

flowchart LR
    A["商品が売れる"] --> B["売上を記帳する"]
    B --> C["売掛金が発生する"]
    C --> D["手数料・送料・返金を差し引く"]
    D --> E["銀行に入金される"]
    E --> F["売掛金を消す"]
    F --> G["月末売掛金を確認する"]

初心者のうちは、つい通帳の入金だけを見て、

「Amazonから98,000円入ったから、売上98,000円」

と処理したくなります。

しかし実際には、売上は120,000円で、そこから販売手数料、FBA手数料、送料、返金等が差し引かれ、98,000円が入金されているかもしれません。

入金額だけを売上にすると、次の問題が起きます。

  • 売上が少なく見える
  • 販売手数料が見えない
  • 利益率が正しく分からない
  • 月末時点で未入金の売上が分からない
  • 年末・決算月の売上がズレる
  • 消費税や法人決算の確認がしにくくなる

この章では、売上から入金までを一本の流れで整理します。


1. 売上日と入金日は違う

まず、売上日と入金日を分けて考えます。

プラットフォームの入金は、何が引かれているか プラットフォームの入金は、何が引かれているか 入金額だけを見ていると、売上も経費も見えません 売上として計上するもの 商品代金 配送料(受取分) ギフト包装料 経費として計上するもの 販売手数料 FBA配送代行手数料 在庫保管手数料 広告費 マイナスされるもの 返金・返品 調整金 返送・廃棄手数料 長期保管手数料 入金額 = 売上 − 経費 の結果。入金額を売上にすると、両方が消えます
図15プラットフォームの入金は、何が引かれているか
売上は「売れた日」に立てる 売上は「売れた日」に立てる 入金された日ではありません 商品が売れた この日に売上を計上 売掛金/売上高 手数料が引かれる 販路が差し引く 支払手数料を別に計上 入金される この日は回収の処理 普通預金/売掛金 売れた日と入金の日は違う。だから「売掛金」が必要になります
図16売上は「売れた日」に立てます

ここでは分かりやすく「商品が売れた日」と表現しますが、厳密には販路や取引条件により、注文日、発送日、引渡日、取引完了日などのどの日を売上日として扱うかを確認する必要があります。

教材本文では、初心者が理解しやすいように「売れた日」と表現しつつ、実務では毎月同じ基準で処理することを重視します。

用語 意味
売上日 商品が売れた日、または取引が成立・完了した日 6月28日にAmazonで販売
入金日 お金が銀行口座に入った日 7月3日にAmazonから入金

6月28日に売れて、7月3日に入金された場合、感覚としては7月にお金が増えています。

しかし、6月に商品は売れています。したがって、6月の売上として把握する必要があります。

このとき、6月末時点ではまだ銀行に入金されていません。

この「売れたけれど、まだ入金されていないお金」が売掛金です。

6月28日 商品が売れた
 売上が発生
 売掛金が発生

6月30日 月末
 まだ入金されていない
 売掛金として残る

7月3日 銀行に入金
 売掛金が消える
 普通預金が増える

年末や決算月では、このズレが特に重要です。

12月に売れた商品が翌年1月に入金された場合、入金だけを見ていると翌年の売上になってしまいます。

個人事業でも法人でも、年をまたぐ売上のズレは、所得や利益に直接影響します。


2. 売上・販売手数料・送料・売掛金の基本形

売上記帳の基本形は、次の三つです。

  1. 売れた日に売上を記帳する
  2. 販売手数料や送料を記帳する
  3. 入金された日に売掛金を消す

基本例

Amazonで10,000円の商品が売れたとします。

販売手数料等が1,000円差し引かれ、後日9,000円が銀行に入金されました。

この場合、実態はこうです。

内容 金額
売上 10,000円
販売手数料等 1,000円
入金額 9,000円

入金額の9,000円を売上にするのではありません。

売上は10,000円です。

そのうえで、手数料1,000円を費用として処理します。

仕訳で見る基本形

商品が売れた日

借方 金額 貸方 金額
売掛金/Amazon 10,000円 売上高 10,000円

販売手数料が差し引かれた日、または精算時

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 1,000円 売掛金/Amazon 1,000円

銀行に入金された日

借方 金額 貸方 金額
普通預金 9,000円 売掛金/Amazon 9,000円

結果として、売掛金はゼロになります。

売掛金 10,000円
 − 手数料 1,000円
 − 入金 9,000円
= 残り 0円

実務上は、販売件数が多い場合、一件ずつ仕訳を作るのではなく、月別・精算期間別にまとめて処理することもあります。

大事なのは、一件ずつか月次集計かではありません。

売上総額、差し引かれた費用、入金額、月末未入金額の関係が説明できることです。

入金額だけで処理するとどうなるか

間違いやすい処理は、次の形です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 9,000円 売上高 9,000円

これだと、売上10,000円のうち1,000円が消えてしまいます。

手数料も記録されません。

月ごとの利益率を見るときにも、正しい分析ができません。

せどり・物販では、販売手数料、FBA手数料、決済手数料、送料、広告費などが利益を大きく左右します。

だからこそ、売上と費用を分けて見えるようにします。


3. Amazonの売上を記帳する

せどり・物販で最も相談が多いのが、Amazonの売上です。

Amazonは売上件数が多く、手数料の種類も多く、決済期間も月をまたぐことがあります。

そのため、通帳の入金額だけを見て処理すると、ほぼ必ずズレます。

Amazonで見るべきもの

Amazon売上で確認する主な項目は、次のとおりです。

確認するもの 目的
売上データ 商品がいつ、いくらで売れたかを確認する
トランザクションデータ・精算レポート 売上、手数料、返金、入金予定を確認する
決済期間 どの期間の売上・手数料が精算対象かを確認する
入金明細 銀行への入金額と照合する
未決済・留保・調整額 月末売掛金や差額の理由を確認する

Amazonでは、「銀行に入金された金額」よりも先に、「Amazon側の精算データ」を確認します。

売上、販売手数料、FBA関連手数料、返金、調整額などがすべて差し引かれた結果として、銀行に入金されるからです。

広告費などは、設定や契約により精算データから差し引かれる場合と、別途請求・カード決済になる場合があります。差し引かれているものだけを売掛金から消し、別請求のものは支払い側で処理します。

決済期間が月をまたぐ

Amazonでは、決済期間が月をまたぐことがあります。

決済期間:6月25日〜7月9日
入金日:7月12日

この中には、6月分の売上と7月分の売上が混ざっています。

7月12日に入金されたからといって、すべて7月の売上にするわけではありません。

6月に売れたものは6月の売上、7月に売れたものは7月の売上として分けます。

決算や年末では、ここが特に大事です。

「現在」と表示される未確定データに注意する

Amazonの精算データでは、決済期間がまだ確定していない段階のデータを取得できることがあります。

未確定の状態では、その後に返金、手数料、調整額が入る可能性があります。

そのため、月末売掛金や決算確認に使うデータは、原則として決済期間が確定した後のデータを使います。

「今見えているから大丈夫」ではなく、

「この決済期間は確定しているか」

を確認してください。

Amazonの基本処理

Amazonは、次の順番で処理すると整理しやすくなります。

  1. 対象月または決済期間の売上データを取得する
  2. 売上、返品、販売手数料、FBA関連手数料、送料、広告費等を分ける
  3. 売上総額を売上高として記帳する
  4. 差し引かれた手数料等を費用として記帳する
  5. 銀行入金額と精算データを照合する
  6. 月末時点で未入金の金額を売掛金として確認する

Amazonの月次集計例

前月からの売掛金がない単純な例として、ある月のAmazon集計が次のようになっていたとします。

内容 金額
商品売上 1,200,000円
返品・返金 50,000円
販売手数料・FBA手数料等 170,000円
銀行入金 900,000円
月末未入金 80,000円

このときは、ざっくり次の関係になります。

売上 1,200,000円
− 返品・返金 50,000円
− 手数料等 170,000円
− 銀行入金 900,000円
= 月末売掛金 80,000円

会計ソフトへの登録方法は、事業の規模や使用するデータ形式によって変わります。

ただし、確認すべき関係は同じです。

Amazonの売上は、入金額ではなく、精算データから逆算して確認する。

これを覚えてください。

実際の月次確認では、ここに前月末売掛金も加わります。正確な計算式は、この章の「10 月末売掛金残高を確認する」で扱います。

Amazon出品者アカウントと購入アカウントを混ぜない

Amazonには、出品者アカウントの売上データと、購入アカウントの注文履歴があります。

この二つは役割が違います。

種類 主な内容 記帳上の扱い
Amazon出品者アカウント 販売、手数料、入金 売上・売掛金
Amazon購入アカウント 商品仕入れ、備品購入 仕入・経費

出品者アカウントは売上側です。

購入アカウントは仕入れ・経費側です。

両方をMFクラウド等へ連携している場合、売上と仕入れのデータが混ざらないようにします。

購入アカウントの話は第9章で詳しく扱います。


4. メルカリ・ヤフオク・ラクマ等の売上を記帳する

メルカリ、ヤフオク、ラクマ等では、売上金が一度プラットフォーム内にたまり、後で銀行へ振り込まれることがあります。

この場合も、銀行に振り込まれた日だけを売上日にしないようにします。

基本の考え方

出来事 記帳上の考え方
商品が売れた 売上が発生する
販売手数料が差し引かれた 支払手数料等を記帳する
送料が差し引かれた 荷造運賃、発送費等を記帳する
売上金がプラットフォーム内に残っている 売掛金等として残る
銀行へ振り込まれた 売掛金を消して普通預金を増やす

初心者向けの運用では、プラットフォームごとに売掛金を作り、銀行に入金されたときに消していく形が分かりやすいです。

より細かく管理する場合は、売上金残高を「預け金」等で管理する方法もあります。

ただし、最初から細かくしすぎると運用が止まります。

まずは、販路別に未入金額が説明できる状態を目指します。

メルカリの例

メルカリで15,000円の商品が売れ、販売手数料1,500円、送料750円が差し引かれ、12,750円が売上金として残ったとします。

内容 金額
売上 15,000円
販売手数料 1,500円
送料 750円
売上金残高 12,750円

商品が売れたとき

借方 金額 貸方 金額
売掛金/メルカリ 15,000円 売上高 15,000円

手数料・送料が差し引かれたとき

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 1,500円 売掛金/メルカリ 1,500円
荷造運賃 750円 売掛金/メルカリ 750円

売上金を銀行へ振り込んだとき

借方 金額 貸方 金額
普通預金 12,750円 売掛金/メルカリ 12,750円

売上がない月は「なし」と記録する

メルカリやヤフオクは、毎月必ず売上があるとは限りません。

売上がない月に、資料提出欄が空欄のままだと、

  • 取引がない
  • 資料を出し忘れている
  • 取得方法が分からない

の区別ができません。

売上がない月は、必ず「取引なし」「売上なし」と記録します。

これは地味ですが、月次記帳ではかなり重要です。


5. 楽天・Yahoo!等の販売を記帳する

楽天市場、Yahoo!ショッピング、Shopify、自社EC等で販売している場合は、Amazonやフリマアプリよりも管理項目が増えることがあります。

主な項目は次のとおりです。

分類 内容の例
売上 商品売上、送料収入、オプション料等
値引き クーポン、キャンペーン、ポイント負担等
手数料 出店料、販売手数料、決済手数料、システム利用料
広告 モール広告、クリック課金、販促費
返金 キャンセル、返品、返金、チャージバック
入金 モールからの振込、決済会社からの入金

楽天やYahoo!等は、売上だけではなく、販促費、ポイント、広告、決済手数料が絡むため、入金額と売上額が一致しにくいです。

そのため、通帳から逆算するのではなく、モール側の精算レポートを起点にします。

基本の処理順

  1. 月次または精算期間ごとの売上・精算レポートを取得する
  2. 売上、値引き、手数料、広告、返金、入金を分ける
  3. 銀行入金額と精算レポートを照合する
  4. 月末時点で未入金の売上を確認する
  5. 補助科目や部門で販路別に管理する

取引量が多い場合は、一件ずつ手入力するのではなく、CSV取込や月次集計仕訳を使います。

ただし、月次集計で処理する場合でも、元データは必ず保存します。

「会計ソフトには合計だけ入っているが、その合計の根拠が分からない」という状態にしないことが大切です。


6. 買取業者への販売を記帳する

せどりでは、買取業者へ販売するケースもよくあります。

この場合も、売上として記帳します。

仕入れのマイナスにしないよう注意してください。

買取業者への販売で見るもの

確認するもの 目的
買取明細・査定書 何を、いくらで販売したかを確認する
入金明細 銀行振込の金額を確認する
現金受取記録 現金で受け取った売上を確認する
取引成立日 売上日を確認する

銀行振込と現金受取を重複させない

買取業者への販売で特に多いミスが、銀行振込分と現金受取分の重複です。

例えば、買取業者から楽天銀行へ1,159,500円が振り込まれているのに、別途「買取業者・現金売上」の表にも同じ1,159,500円を入力してしまうケースです。

この場合、売上が二重になります。

次のように分けてください。

受取方法 入力方法
銀行振込 銀行明細と買取明細を照合する
現金受取 現金売上として手入力する
一部現金・一部振込 それぞれ分けて記録する

「買取業者売上」の表を作る場合は、現金受取分だけを入力するのか、振込分も含めるのかを最初に決めます。

この教材では、重複を防ぐため、銀行に入金される分は銀行明細で確認し、現金で受け取った分は現金売上として別管理する形をおすすめします。

年末・決算月の買取売上

12月中に買取価格が決まり、翌年1月に入金される場合があります。

この場合、12月時点ではまだ入金されていませんが、売上が確定しているなら売掛金として確認します。

12月28日 買取価格500,000円が確定
1月5日 銀行に500,000円入金

12月28日

借方 金額 貸方 金額
売掛金/買取業者 500,000円 売上高 500,000円

1月5日

借方 金額 貸方 金額
普通預金 500,000円 売掛金/買取業者 500,000円

年末は、買取業者に出した商品について、次を確認してください。

  • 12月中に買取価格が確定したものはあるか
  • そのうち、12月末時点で未入金のものはあるか
  • 現金で受け取ったものと銀行振込のものが混ざっていないか

7. 現金売上・振込売上を記帳する

Amazonやメルカリのようなプラットフォームを通さず、直接販売することもあります。

例えば、知人への販売、業者への直接販売、店舗での現金販売、請求書を発行して銀行振込で受け取る販売などです。

現金売上

現金で販売した場合は、現金が増え、売上が発生します。

借方 金額 貸方 金額
現金 30,000円 売上高 30,000円

現金売上で大事なのは、現金の残高です。

帳簿上は現金が増えているのに、実際の現金が残っていない場合、どこかで経費精算、生活費への移動、入金漏れ、入力ミスが起きています。

現金を使う場合は、次を記録します。

  • 売上日
  • 販売先
  • 金額
  • 受取方法
  • 領収書・買取明細・販売明細
  • その後の現金の使い道

現金を銀行に預け入れたときは、売上をもう一度作りません。

すでに現金売上として記帳している場合、銀行預入は「現金から普通預金への移動」です。

振込売上

請求書を発行して、後日銀行へ振り込まれる場合は、売掛金を使います。

7月25日に100,000円で販売し、8月10日に入金された場合

7月25日

借方 金額 貸方 金額
売掛金/取引先A 100,000円 売上高 100,000円

8月10日

借方 金額 貸方 金額
普通預金 100,000円 売掛金/取引先A 100,000円

入金された日に売上を作るのではなく、販売した日に売上を作り、入金日に売掛金を消します。


8. 返品・返金・キャンセルを処理する

物販では、返品・返金・キャンセルが必ず発生します。

ここを雑に処理すると、売上、手数料、在庫、売掛金がズレます。

返品・返金の基本分類

状況 処理の考え方
発送前キャンセル 売上を立てない、または売上を取り消す
発送後返品 売上を取り消す、または売上返品として処理する
一部返金 返金額だけ売上を減らす
手数料も戻る 支払手数料も戻す
手数料が戻らない 手数料は費用として残す
商品が戻って再販売できる 在庫へ戻す処理を検討する
商品が戻らない・破損 損失や在庫評価を検討する

同じ月に売上と返金がある場合

6月に10,000円で売れ、同じ6月に全額返金された場合、月次集計上は売上から返金を差し引いて処理することがあります。

ただし、件数が多い場合や分析したい場合は、売上返品等を分けて表示する方法もあります。

重要なのは、返金があったことを売掛金や入金差額の中に埋もれさせないことです。

翌月以降に返金がある場合

6月に売れた商品が、7月に返金されることもあります。

この場合、6月の売上が7月に減るため、月ごとの利益を確認するときに違和感が出ることがあります。

ただし、これは実際に起きた取引です。

返金日、返金額、手数料の戻り、在庫の戻りを確認して処理します。

キャンセルと返品を「なかったこと」にしない

売上データを見ていると、キャンセルや返品がマイナス金額として出てくることがあります。

これを無視すると、売掛金が合わなくなります。

入金額が合わないときは、

「返金・キャンセルが混ざっていないか」

を必ず確認してください。


9. 複数販路は補助科目で管理する

販路が増えると、売掛金を一つにまとめて管理するのが難しくなります。

例えば、売掛金が合計1,500,000円残っているとしても、

  • Amazonの未入金なのか
  • メルカリの売上金なのか
  • 楽天の精算待ちなのか
  • 買取業者の未入金なのか
  • eBayやPayoneerの残高なのか

が分からなければ、確認できません。

そのため、売掛金は販路別に補助科目を作るのがおすすめです。

補助科目の例

勘定科目 補助科目の例
売掛金 Amazon国内
売掛金 メルカリ
売掛金 ヤフオク
売掛金 楽天市場
売掛金 Yahoo!ショッピング
売掛金 買取業者A
売掛金 eBay・Payoneer

アカウントが複数ある場合は、末尾に識別名を付けます。

  • 売掛金/Amazon国内A
  • 売掛金/Amazon国内B
  • 売掛金/楽天市場・本店
  • 売掛金/楽天市場・家族アカウント

ただし、補助科目を細かくしすぎると、入力が大変になります。

最初は「入金と残高を確認したい単位」で分けるのが実務的です。

売上高はどう分けるか

売上高も販路別に分けたい場合は、次の方法があります。

方法 向いているケース
売上高は一つ、売掛金だけ販路別 まずはシンプルに始めたい
売上高に補助科目を付ける 販路別売上を会計ソフトで見たい
部門を使う 法人、複数店舗、担当者別に分析したい
会計外の管理表で分析する 会計ソフトを複雑にしたくない

年商1億円以下のメイン層では、まずは売掛金を販路別にするだけでも十分効果があります。

年商が数億円規模になり、販路別利益、担当者別利益、広告費対効果を見たい場合は、部門や管理表を組み合わせます。


10. 月末売掛金残高を確認する

売上記帳の最後に、月末売掛金を確認します。

月末売掛金とは、簡単に言うと、

月末時点で、販売済みだけれど、まだ銀行に入金されていない金額

です。

実務上は、販売手数料や返金が差し引かれた後の入金予定額として確認することが多いです。

ただし、レポートによっては売上総額ベースで表示されている場合もあります。

そのため、どのレポートのどの金額を使っているのかを決めておきます。

月末売掛金の計算イメージ

内容 金額
前月末売掛金 200,000円
当月売上 1,000,000円
当月返金 △50,000円
当月手数料・送料等 △120,000円
当月入金 △900,000円
当月末売掛金 130,000円
前月末売掛金
+ 当月売上
− 返金
− 手数料・送料等
− 入金
= 当月末売掛金

この計算で出た当月末売掛金が、Amazon、メルカリ、楽天等の未入金額と合っているかを確認します。

月末売掛金チェックの手順

  1. 販路ごとの売掛金残高を出す
  2. 販路側の未入金・売上金残高・精算待ちデータを確認する
  3. 銀行入金済みのものが残っていないか確認する
  4. 返金、手数料、調整額が漏れていないか確認する
  5. 残高がマイナスになっていないか確認する
  6. 古い売掛金が残り続けていないか確認する

売掛金がマイナスになっている場合は、どこかがおかしい可能性が高いです。

よくある原因は、次のとおりです。

  • 入金を二重に登録している
  • 売上の登録が漏れている
  • 手数料を二重に引いている
  • 返金の処理が逆になっている
  • 前月末売掛金が間違っている
  • 販路を間違えて消し込んでいる

年末・決算月だけは必ず確認する

毎月完璧に売掛金を合わせるのが難しい場合でも、年末・決算月は必ず確認してください。

個人事業なら12月31日、法人なら決算月末です。

この日の売掛金がズレると、その年・その期の売上と利益がズレます。


11. 入金額が合わない場合

売上記帳でよくあるのが、

「銀行に入った金額と、売上データの金額が合いません」

という状態です。

このとき、いきなり会計ソフトの仕訳をいじるのではなく、原因を順番に確認します。

入金額が合わない主な原因

原因 確認するもの 対応
販売手数料が差し引かれている 精算レポート 手数料として記帳する
送料が差し引かれている 発送・配送データ 荷造運賃等として記帳する
返金・キャンセルがある 返金データ 売上を減らす、または返品処理をする
決済期間が月をまたいでいる 決済期間 月別に分ける
未確定データを見ている 確定済みレポート 確定後のデータで確認する
入金留保・調整額がある 精算明細 売掛金や調整額として確認する
複数アカウント分が合算入金されている 入金明細・店舗別レポート アカウント別に分ける
銀行振込手数料が引かれている 銀行明細 支払手数料として処理する
現金売上と銀行入金を二重登録している 現金管理表・銀行明細 重複を削除する
海外販売で為替差がある Payoneer等の明細 為替差損益を確認する

合わないときの見る順番

入金額が合わないときは、次の順番で見ます。

  1. 銀行入金額
  2. 販路の精算レポート
  3. 決済期間
  4. 売上総額
  5. 返金・キャンセル
  6. 販売手数料・送料・広告費
  7. 留保・調整額
  8. 月末売掛金

銀行入金額から売上を作るのではなく、販路の精算レポートから入金額へたどるイメージです。

売上
− 返金
− 手数料
− 送料
− 広告費
± 調整額
− 月末未入金
= 銀行入金

この流れで説明できれば、売上記帳はかなり安定します。


12. 法人・取引量が多い場合の売上管理

法人や年商が大きくなる事業では、売上管理を少しだけ仕組み化します。

対象としては、創業直後から年商1億円以下の事業者がメインですが、この考え方は年商数億円、20億円規模まで広げても使えます。

規模が大きくなるほど、やることは複雑になります。

しかし、基本は同じです。

販路別に、売上・手数料・入金・月末売掛金を説明できるようにする。

これだけです。

取引量が多い場合に決めること

決めること 内容
売上データの取得元 どのレポートを正とするか
取得タイミング 月初何日、確定後何日に取得するか
集計単位 日次、月次、精算期間別、販路別
会計ソフトへの登録方法 CSV取込、月次集計仕訳、API連携等
補助科目・部門 販路、店舗、アカウント、担当者
照合方法 入金、売掛金、返金、手数料の確認
承認者 誰が月次売上を確認するか

社長一人で運用している段階では、毎月のレポート保存と売掛金確認で十分です。

スタッフが増えたら、データ取得、入力、確認、承認の役割を分けます。

月次集計仕訳でもよい

取引件数が多い場合、すべての販売明細を会計ソフトへ一件ずつ入れると、現実的ではありません。

その場合は、月次集計仕訳を使います。

Amazon 7月分売上集計
楽天市場 7月分売上集計
Yahoo!ショッピング 7月分売上集計
メルカリ 7月分売上集計

ただし、月次集計にする場合は、次の資料を保存してください。

  • 元の売上CSV
  • 精算レポート
  • 入金明細
  • 返金・キャンセル明細
  • 手数料・広告費の内訳
  • 月末売掛金の計算表

会計ソフトには合計だけ入っていても、元データをたどれれば問題を発見できます。

逆に、合計だけ入力して元データが残っていないと、後から確認できません。

海外販売・Payoneer等がある場合

eBay、Amazon海外、Shopee等の海外販売では、次の点が追加で出てきます。

  • 外貨で売上が発生する
  • Payoneer等に一度残高がたまる
  • 日本の銀行へ入金するタイミングで為替差が出る
  • 販売手数料や決済手数料が外貨で引かれる
  • 消費税上の扱いを確認する必要がある

海外販売がある場合も、考え方は同じです。

売上、手数料、入金、月末残高を分けて確認します。

ただし、為替や消費税の判断が絡むため、具体的な処理は税理士等に確認してください。


よくある質問

Q1 入金日で売上を記帳してはいけませんか?

少額で取引件数が少ないうちは、入金日ベースでざっくり把握している人もいます。

ただし、月末・年末・決算月では、売れた日と入金日のズレを確認する必要があります。

せどり・物販は入金サイトが多く、売上と入金がズレやすいビジネスです。

この教材では、売上日と入金日を分け、売掛金を使って管理する方法を基本にします。

Q2 Amazonから98,000円入金されたら、売上98,000円ではダメですか?

原則としておすすめしません。

その98,000円は、売上から手数料、送料、返金等が差し引かれた後の金額である可能性が高いからです。

売上総額と差し引かれた費用を分けたほうが、利益率を正しく見られます。

Q3 売掛金残高とは何ですか?

簡単に言うと、

「販売済みだが、まだ銀行に入金されていない金額」

です。

Amazonで6月中に売れたけれど7月に入金されるもの、メルカリで売上金として残っているもの、12月に買取価格が決まったが1月に入金されるものなどが該当します。

Q4 メルカリの売上金をまだ銀行に振り込んでいません。売上にしなくてよいですか?

銀行に振り込んでいなくても、商品が売れて取引が成立していれば売上として把握します。

銀行に振り込まれていない部分は、売掛金等として残します。

Q5 売上がない月は何もしなくてよいですか?

何もしないのではなく、「売上なし」と記録してください。

空欄のままだと、取引がないのか、資料未提出なのか、取得方法が分からないのか判断できません。

Q6 買取業者の売上を現金管理表にも銀行明細にも入れてしまいました。

二重計上になっている可能性があります。

現金で受け取ったものは現金売上、銀行に振り込まれたものは銀行入金として確認します。

同じ売上を両方に入れないようにします。

Q7 Amazonの決済期間が「現在」となっているデータを使ってもよいですか?

決算や月末売掛金確認では、確定後のデータを使うのが安全です。

未確定データには、後から返金、手数料、調整額が入る可能性があります。

Q8 売上高と消費税の課税標準が一致しません。間違いですか?

必ずしも間違いとは限りません。

非課税、対象外、輸出、返品、税込・税抜、軽減税率、消費税の計算方式などにより、会計上の売上高と消費税申告上の金額が一致しないことがあります。

消費税の詳しい扱いは第15章で扱います。


実務チェックリスト

売上記帳が終わったら、次を確認してください。

  • 売上を入金額だけで処理していない
  • 販路別の売上データを保存している
  • 販売手数料、送料、広告費、返金を分けて確認している
  • Amazon等の決済期間が確定している
  • 月をまたぐ売上と入金を確認している
  • メルカリ等の売上金残高を確認している
  • 買取業者の現金売上と銀行振込を重複させていない
  • 売上がない月は「売上なし」と記録している
  • 売掛金を販路別に確認できる
  • 月末売掛金がマイナスになっていない
  • 古い売掛金が残り続けていない
  • 年末・決算月の売掛金を必ず確認している

次章へのつなぎ

ここまでで、売上側の流れを整理しました。

売上は、商品が売れた日に発生し、入金されるまで売掛金として残ります。

次の第9章では、反対側である「仕入れ」と「クレジットカード」を扱います。

せどり・物販では、売上のズレと同じくらい、カード利用日と銀行引落日のズレが重要です。

第9章で、仕入れ・経費・未払金の流れを確認していきましょう。


返品・キャンセルが起きたとき 返品・キャンセルが起きたとき 「なかったこと」にして削除するのは、やってはいけない処理です 1 売上を取り消す仕訳を立てる 元の売上を消すのではなく、返品として記録を残す 2 手数料が戻るか確認する 全額は戻らないことがある。差額は実質のコスト 3 在庫に戻すかを判断する 再販できるなら在庫へ。できないなら廃棄の処理 4 入金額との差を照合する 返品分が引かれた入金になっているか確認する 取引を削除すると、入金額と帳簿が合わなくなり、後から追えなくなります
図17返品・キャンセルが起きたとき

第9章

仕入れとクレジットカードを記帳しよう

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • カードで仕入れた日と、銀行から引き落とされた日を区別できる
  • カード利用を「未払金」で記帳できる
  • 引落しをもう一度経費にする二重計上を防げる
  • カードごとの未払金残高を確認できる
  • 個人カード・家族カード・法人カードを使い分けられる
  • 返品、返金、再発行、繰上返済、分割・リボへ対応できる
  • MFクラウドとカード会社の明細を照合できる

クレジットカードの利用日・締め日・引落日 カードは「使った日」と「払った日」が違う 未払金が合わない原因の多くは、このズレ 4/10 4/30 5/27 利用日 商品を仕入れた 締め日 請求額が確定 引落日 口座から出ていく 利用日に立てる仕訳 仕入高 / 未払金 ここで費用が発生 引落日に立てる仕訳 未払金 / 普通預金 ここで現金が動く 引落日だけで記帳すると、月をまたいだ費用が翌月にズレる 「引き落とし=経費」で処理すると、未払金は永遠に合いません 私も毎月、ここをいちばん丁寧に見ています
図18「未払金が合わない」の原因は、たいていこのズレです

最初に結論

クレジットカードの記帳で覚える基本形は、二つだけです。

カードを使った日

10万円の商品を楽天カードで仕入れた場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 100,000円 未払金/楽天カード 100,000円

銀行から引き落とされた日

借方 金額 貸方 金額
未払金/楽天カード 100,000円 普通預金 100,000円

カードを使った日に仕入れを記録して、銀行から引き落とされた日に未払金を消します。

引落しの日に、もう一度「仕入高」や「消耗品費」にしない。

まずは、この形を覚えてください。


1. カード払いは「今買って、あとで払う」

カードを使った日に、銀行口座のお金はまだ減っていません。

でも、商品はすでに仕入れています。そして、カード会社へ代金を払う義務が発生しています。

この「まだ払っていないけれど、払う義務があるお金」を、帳簿では未払金と呼びます。

flowchart LR
    A["4月10日 商品を仕入れる"] --> B["カード会社が店舗へ立替払い"]
    B --> C["自社にはカード会社への未払金が残る"]
    C --> D["5月27日 銀行から引落し"]
    D --> E["未払金が消える"]

図解で見る二段階

カード利用日                          銀行引落日

仕入高・経費が増える                  普通預金が減る
        +                                 +
カード会社への未払金が増える          カード会社への未払金が減る

カード利用と銀行引落しは、同じ買い物に関係していますが、帳簿では別の出来事です。


2. 五つの基本ルール

ルール1 仕入れ・経費はカード利用日で記帳する

基本は、カード会社が銀行から代金を引き落とした日ではなく、商品やサービスを購入した日で記帳します。

12月に仕入れて、引落しが翌年1月になっても、仕入れは12月です。

年をまたぐ取引で、引落日だけを見ていると、売上と仕入れの年度がずれてしまいます。

ルール2 事業用カードは「未払金」を使う

カードで購入した時点では代金が未払いなので、貸方に「未払金」を使います。

MFクラウドでは、カードごとに補助科目を作ると確認しやすくなります。

  • 未払金/楽天カード 1234
  • 未払金/三井住友カード 5678
  • 未払金/Amazon Mastercard 9012

カード名だけでは同じ名称が増えるので、末尾4桁等を付けます。カード番号全体は記載しません。

ルール3 銀行引落しは経費ではない

銀行から引き落とされたときは、すでに計上した未払金を消すだけです。

間違い:仕入高 100,000円 / 普通預金 100,000円
正しい:未払金 100,000円 / 普通預金 100,000円

利用日にも仕入高、引落日にも仕入高を使うと、10万円の仕入れが20万円になります。

ルール4 カード明細と購入先の証憑は役割が違う

カード会社の明細は、いつ、どの加盟店で、いくら使い、いくら引き落とされたかを確認する資料です。

一方、レシート、領収書、請求書、購入履歴等は、何を購入したか、税率、取引先、インボイス登録番号等を確認する資料です。

消費税の仕入税額控除では、原則としてカード会社の請求明細だけでは足りません。カード加盟店が発行した適格請求書等も保存します。

ルール5 毎月、未払金残高を照合する

MFクラウドへカードを連携しただけでは、記帳は完成していません。

次を確認して、初めて完了です。

  • 利用明細がすべて取得されている
  • 科目が正しい
  • 私用取引が区分されている
  • 返金が反映されている
  • 銀行引落し・繰上返済が反映されている
  • 帳簿上の未払金とカード会社の残高が合っている

3. 基本の記帳パターン

パターン1 販売する商品をカードで仕入れた

4月10日、販売目的の商品110,000円を事業用カードで購入した。

日付 借方 金額 貸方 金額
4月10日 仕入高 110,000円 未払金/カードA 110,000円

5月27日、カード利用代金110,000円が事業用口座から引き落とされた。

日付 借方 金額 貸方 金額
5月27日 未払金/カードA 110,000円 普通預金 110,000円

パターン2 梱包材・文房具等をカードで購入した

4月12日、梱包用テープ5,500円を購入した。

日付 借方 金額 貸方 金額
4月12日 消耗品費 5,500円 未払金/カードA 5,500円

販売目的の商品なら「仕入高」、自社で使う梱包材や文房具なら「消耗品費」等です。

「カードで買ったから仕入高」ではありません。何を買ったかで借方科目を決めます。

パターン3 一つのレシートに商品と消耗品が混ざっている

販売商品88,000円と、自社用の梱包材2,200円を同時に購入した。

借方 金額 貸方 金額
仕入高 88,000円 未払金/カードA 90,200円
消耗品費 2,200円

左右の合計は、どちらも90,200円です。

パターン4 10万円以上の備品を購入した

業務用パソコン220,000円を購入した。

借方 金額 貸方 金額
工具器具備品 220,000円 未払金/カードA 220,000円

金額や事業者の状況によって、固定資産、少額減価償却資産、一括償却資産、消耗品費等の扱いが変わります。詳しくは第16章で扱います。


4. 個人事業主と法人で変わるところ

個人事業主が、個人用カードで事業の支払いをした

たまに個人用カードで事業用の消耗品11,000円を購入した場合は、次のように処理できます。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000円 事業主借 11,000円

個人用口座からの引落しは、事業の帳簿には出しません。

ただし、個人用カードを日常的に事業利用し、MFへ連携して未払金管理を行っている場合は、途中で処理方法を変えず、税理士等と決めた方法に統一してください。

個人事業主が、事業用カードで私用の買い物をした

事業用カードで私物11,000円を購入した。

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 11,000円 未払金/カードA 11,000円

その後の銀行引落しは通常どおりです。

借方 金額 貸方 金額
未払金/カードA 11,000円 普通預金 11,000円

私用だから明細を削除するのではありません。事業用口座からカード代金が支払われるため、事業主貸として記帳します。

法人の役員が、個人カードで会社の経費を立て替えた

役員個人のカードで会社の消耗品11,000円を購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000円 役員借入金 11,000円

会社が役員へ精算した。

借方 金額 貸方 金額
役員借入金 11,000円 普通預金 11,000円

会社の経費と、役員が立て替えた代金を分けて考えます。

法人カードで役員の私物を購入した

会社が一時的に役員へ貸した状態として、役員貸付金等で管理することが考えられます。

借方 金額 貸方 金額
役員貸付金 11,000円 未払金/法人カードA 11,000円

役員貸付金を長期間放置すると、税務・金融機関対応等へ影響する場合があります。速やかに会社へ返金し、具体的な科目・処理は税理士等へ確認してください。

従業員が個人カードで会社経費を立て替えた

会社側では、従業員への未払額が分かる補助科目を使います。

借方 金額 貸方 金額
旅費交通費等 11,000円 未払金/従業員立替 11,000円

精算時

借方 金額 貸方 金額
未払金/従業員立替 11,000円 普通預金 11,000円

5. MFクラウドで入力しよう

MFクラウドのデータ連携で取得した明細は、最初から確定した仕訳ではありません。

仕訳候補です。

勘定科目や税区分が正しいかを確認してから登録します。

事前設定 カードごとに補助科目を作る

勘定科目 補助科目
未払金 楽天カード 1234
未払金 三井住友カード 5678
未払金 Amazon Mastercard 9012

カードごとに残高が確認できるため、差額の原因を探しやすくなります。

カード利用明細を登録する流れ

  1. 「連携サービスから入力」を開く
  2. 「通帳・カード他」を開く
  3. 対象カードを選ぶ
  4. 利用日、摘要、金額を確認する
  5. 購入内容に合わせて借方科目を選ぶ
  6. 貸方が「未払金/対象カード」になっているか確認する
  7. 税区分・インボイス情報を確認する
  8. 証憑を保存・添付する
  9. 登録する

登録前に見る四つ

  • 摘要:購入先はどこか
  • 金額:返金・取消を含めて正しいか
  • 科目:仕入れ、経費、私用のどれか
  • 税区分:10%、軽減8%、対象外等が正しいか

自動仕訳ルールは便利ですが、一度間違った科目を覚えると、次回も同じ間違いが提案されます。最初の登録ほど丁寧に確認してください。

銀行引落明細を登録する流れ

銀行側に「カード利用代金 300,000円」の引落しが表示された場合

借方 金額 貸方 金額
未払金/対象カード 300,000円 普通預金/引落口座 300,000円

「仕入高」「消耗品費」「支払手数料」等を選ばず、対象カードの未払金を選びます。

自動連携で最も大事なルール

一つの取引を、どのデータから仕訳登録するか決めます。

Amazon購入履歴とカード明細の両方がMFへ届いても、同じ購入を両方から登録しません。

データ 主な役割
カード利用明細 支払手段・未払金の記帳
EC購入履歴 商品内容・注文番号・証憑の確認
カード請求明細 引落額・繰越額・返金・手数料の確認
銀行明細 実際の支払い・未払金消込み

どれか一つを捨てるという意味ではありません。記帳の元データは一つ、他は確認資料として使います。


6. 二重計上を防ごう

実際のお客様対応でも、カード関係の二重計上・重複に関するやり取りは非常に多くありました。

仕入れが二重になる、よくある形 仕入れが二重になる、よくある形 連携が増えるほど起きやすくなります 正しい形 記帳元を1つに決める 例:カード明細から記帳する 購入履歴は確認だけに使う 家族カードも同じルールで 1つの仕入れ=1つの仕訳 二重計上 Amazonの購入履歴から登録 カード明細からも登録 同じ仕入れが2回入る 未払金も合わなくなる 経費が2倍、利益は過少に 対策はシンプルです。「どこから記帳するか」を1つに決めること
図19仕入れが二重になる、よくある形

特に次の組み合わせに注意します。

ケース1 カード利用と銀行引落しを両方経費にした

カード利用日:仕入高 / 未払金
銀行引落日:仕入高 / 普通預金 ←ここが間違い

銀行引落日は「未払金/普通預金」にします。

ケース2 Amazon購入履歴とカード明細を両方登録した

同じ注文番号・同じ金額・近い日付がないか確認します。

片方を仕訳登録したら、もう片方は証憑・確認資料として扱うか、MF上で「対象外」にします。

ケース3 レシートを手入力した後、カード連携明細も登録した

手入力済みなら、カード連携側をそのまま登録しません。手入力仕訳との関係を確認し、重複を解消します。

ケース4 親カードと家族カードを両方連携した

カード会社によっては、親カードの明細に家族カード分が含まれ、家族カード側にも同じ取引が表示されます。

連携前に、次を確認します。

  • 親カード明細に家族カード分が含まれるか
  • 家族カードを別連携すると同じ明細が重複しないか
  • 引落しは親カードへまとめられるか
  • カード会社の請求書で利用者別に確認できるか

「家族カードだから必ず連携」「家族カードだから連携不要」と決めつけず、実際の取得データで判断します。

ケース5 CSV取込後に自動連携した

過去分をCSVで取り込んだ後、自動連携が同じ期間まで取得すると重複する場合があります。

連携開始日とCSV対象期間を記録しておきます。


7. 未払金を毎月照合しよう

未払金の計算

月初の未払金
+ 当月のカード利用
+ カード手数料等
- 返品・返金・取消
- 通常の引落し
- 繰上返済
= 月末の未払金

比較する日付をそろえることが大切です。

「4月末の帳簿残高」と「5月27日の請求額」を、そのまま比べても合わないことがあります。カードの締め日と支払日が違うからです。

月次照合の手順

  1. MFの「残高試算表」または補助元帳を開く
  2. 未払金の補助科目から対象カードを選ぶ
  3. 月初残高を確認する
  4. 当月利用・返金・手数料を確認する
  5. 通常引落し・繰上返済を確認する
  6. カード会社の利用明細・請求明細と照合する
  7. 同じ基準日時点の残高を比較する
  8. 差額があれば、次の順番で探す

差額を探す順番

帳簿の未払金が多すぎる

  • 銀行引落しが未登録
  • 繰上返済が未登録
  • 返金・取消が未登録
  • カード利用が二重登録
  • 私用取引を削除してしまい、引落しとの関係が崩れている
  • 別カードの補助科目へ登録している

帳簿の未払金が少なすぎる、またはマイナス

  • カード利用明細が不足
  • 銀行引落しを二重登録
  • 繰上返済を二重登録
  • 返金を逆方向で登録
  • 期首残高が誤っている
  • 家族カード・旧カードの利用が別補助科目に残っている

一件ずつ探すのが大変な場合

金額が大きい取引、繰上返済、返金、再発行の前後から確認します。

差額が10万円なら、まず10万円前後の明細を探します。次に5万円が2件、2万円が5件というように確認します。


8. 繰上返済をした場合

カード会社へ30万円を繰上返済した。

借方 金額 貸方 金額
未払金/対象カード 300,000円 普通預金 300,000円

繰上返済は、新しい仕入れでも経費でもありません。未払金を早く支払っただけです。

必ず残す資料

  • 繰上返済日
  • 返済金額
  • 振込元口座
  • どの利用分へ充当されたか分かる資料
  • 返済前後の利用明細・請求明細

カード会社によっては、繰上返済後にWebで確認できる明細の見え方や範囲が変わることがあります。

繰上返済前に、利用明細をPDFまたはCSVで保存する。

これを毎回のルールにしてください。

連携外口座から返済した場合

連携外口座だから記帳しなくてよい、とは限りません。

個人事業主が個人口座から事業用カードを返済した場合や、法人で役員等が立て替えた場合は、事業主借・役員借入金等が関係する可能性があります。資金の出所を記録し、処理方法を統一します。


9. 分割払い・リボ払いをした場合

分割・リボでも、購入した商品・サービスの元本は、購入時に全額を記帳します。

60万円の商品を6回払いで購入した。

購入日

借方 金額 貸方 金額
仕入高 600,000円 未払金/対象カード 600,000円

1回目の引落し

元本100,000円、手数料5,000円、合計105,000円が引き落とされた。

借方 金額 貸方 金額
未払金/対象カード 100,000円 普通預金 105,000円
支払手数料等 5,000円

元本と手数料を分けます。

手数料に使用する科目は、契約内容や会計方針により「支払手数料」「支払利息」等が考えられます。個人・法人で税務上の扱いが異なる場合もあるため、使用科目と税区分を税理士等へ確認し、毎月統一してください。

リボ・分割で照合が難しくなる理由

  • 購入額と毎月の引落額が一致しない
  • 元本と手数料が混ざる
  • 複数月の利用が一つの支払へ含まれる
  • 繰上返済が加わる
  • カード会社の明細表示が通常払いと異なる

利用明細だけでなく、支払内訳・残高・手数料が分かる明細を保存します。


10. 返品・返金・キャンセルがあった場合

カード未払金から差し引かれた

仕入れた商品22,000円を返品し、カード請求から減額された。

借方 金額 貸方 金額
未払金/対象カード 22,000円 仕入高 22,000円

元の仕入れと反対方向の仕訳です。

すでに引落し後で、銀行口座へ返金された

借方 金額 貸方 金額
普通預金 22,000円 仕入高 22,000円

元の取引が固定資産・消耗品費等なら、原則として元の科目を取り消す方向で処理します。

ただし、返金時期、決算をまたぐか、カード会社がどのように充当したかで処理が変わる場合があります。次の三つをセットで確認してください。

  • 元の購入仕訳
  • カード会社の返金・充当明細
  • 実際の銀行入出金

11. カードを再発行・変更した場合

不正利用、有効期限、ブランド変更等でカード番号が変わった場合は、変更日を記録します。

カード変更台帳

項目 記録例
旧カード 楽天カード 1234
新カード 楽天カード 5678
変更日 2026年4月15日
旧カード最終利用 2026年4月14日
新カード利用開始 2026年4月16日
引落口座 変更なし
旧カード残高 新カードへ引継ぎ/旧カードで精算

MFで注意すること

  • 新カードの連携開始日
  • 旧カードの最終取得日
  • 同じ取引が旧・新の両方にないか
  • 返金が旧カード側へ戻っていないか
  • 未払金の補助科目を分けるか、継続するか

MFのデータ連携を解除すると、連携で取得した明細情報は削除されます。一方、明細から登録済みの仕訳は保持されます。解除前に取得期間・未登録明細・残高を確認し、必要なデータを保存してください。

「エラーが出たから、とりあえず削除して再連携」は危険です。


12. よくある質問

Q1 カードを連携すれば、自動で記帳は完成しますか?

いいえ。連携で作られるのは仕訳候補です。科目、税区分、私用、返金、重複等を確認して登録し、最後に未払金残高を照合します。

Q2 カード利用日と引落日、どちらで経費にしますか?

基本は商品・サービスを購入した日です。引落日は未払金を消します。

Q3 カード明細があれば、レシートや請求書はいりませんか?

カード明細は支払確認に役立ちますが、購入内容やインボイス記載事項を確認できない場合があります。購入先が発行したレシート、領収書、請求書、電子データ等も保存します。

Q4 個人カードで事業用の商品を仕入れても経費になりますか?

事業のための仕入れであり、内容を証明できれば、カード名義だけで仕入れではなくなるわけではありません。個人事業主は事業主借、法人は役員借入金・従業員立替等を使うことが考えられます。

Q5 事業用カードで私物を買ってしまいました。削除してよいですか?

引落しが事業用口座から行われるなら、単純に削除すると未払金が合わなくなります。個人は事業主貸、法人は役員貸付金等で区分します。

Q6 家族カードもMFへ連携しますか?

親カードの取得データに家族カード分が含まれるかで変わります。二重取得されないか確認してから決めます。

Q7 繰上返済したら何を提出・保存しますか?

返済額だけでなく、返済対象となった利用明細、返済日、振込元、充当内訳が分かる資料を保存します。可能なら繰上返済前にPDF・CSVを保存します。

Q8 カードを再発行しました。旧カードはすぐ連携解除してよいですか?

旧カードの未登録明細、返金、未払残高、最終取得日を確認してから判断します。先に削除しないでください。

Q9 Amazon購入履歴とカード明細の両方をMFへ連携して大丈夫ですか?

連携自体を行う場合でも、同じ購入を両方から仕訳登録しないルールが必要です。一方を記帳元、もう一方を確認資料とします。

Q10 未払金がマイナスです。問題ありますか?

通常は、利用明細の不足、引落し・繰上返済の二重登録、期首残高の誤り等を疑います。マイナスを別科目へ振り替えて隠す前に、原因を調べます。


13. 実際に多かった四つのケース

以下は、実際の顧客対応で繰り返し発生した内容を、個人が特定できないように再構成したものです。

ケースA 家族カードを追加したら取引が二重になった

親カードの連携データに家族カード分が含まれていたにもかかわらず、家族カードも追加連携したため、同じ仕入れが二重に表示されました。

対応

  1. カード会社の請求明細で親・家族の範囲を確認
  2. MFの同日・同店・同額取引を抽出
  3. 正しい取引だけを登録
  4. 不要な仕訳候補は対象外
  5. 今後の連携ルールを台帳へ記載

ケースB 繰上返済後、利用明細を確認できなくなった

利用枠を空けるため頻繁に繰上返済していましたが、後からカード利用の内訳を十分取得できず、仕入れと返済の照合に時間がかかりました。

対応

繰上返済前に利用明細を保存し、返済日・金額・振込元・充当内訳を管理表へ記録するルールへ変更しました。

ケースC EC購入履歴とカード明細を両方登録した

Amazon・Yahoo!ショッピング等の購入連携とカード連携から、同じ仕入れを登録していました。仕入高が実際より大きくなり、粗利が異常に低くなりました。

対応

注文番号、金額、日付で重複を確認し、カードを記帳元、EC購入履歴を購入内容・証憑の確認用としました。

ケースD カード再発行後の返金が旧カードへ戻った

不正利用によりカードを再発行しましたが、再発行前の返品分が旧カード側の明細へ反映されました。新カードだけ確認していたため、返金を見落としました。

対応

旧カードの残高がゼロになり、返金・取消がすべて反映されたことを確認するまで、旧カードの明細確認を継続しました。


14. 演習

演習1 基本仕訳

個人事業主Aさんは、事業用の楽天カードを使っています。次の取引を仕訳してください。

  1. 4月3日 販売商品330,000円を仕入れた
  2. 4月8日 梱包材11,000円を購入した
  3. 4月15日 1の商品のうち55,000円分を返品し、カード請求から減額された
  4. 5月27日 カード代286,000円が事業用口座から引き落とされた

解答

4月3日

借方 金額 貸方 金額
仕入高 330,000円 未払金/楽天カード 330,000円

4月8日

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000円 未払金/楽天カード 11,000円

4月15日

借方 金額 貸方 金額
未払金/楽天カード 55,000円 仕入高 55,000円

5月27日

借方 金額 貸方 金額
未払金/楽天カード 286,000円 普通預金 286,000円

未払金は、330,000円+11,000円-55,000円-286,000円=0円です。

演習2 間違いを見つけよう

次のうち、間違っているものを選んでください。

  1. カード利用日に「仕入高/未払金」を登録した
  2. 銀行引落日に「仕入高/普通預金」を登録した
  3. 私物購入を「事業主貸/未払金」とした
  4. Amazon購入履歴とカード利用明細から同じ商品を両方登録した
  5. 繰上返済を「未払金/普通預金」とした

解答

間違いは2と4です。

  • 2は「未払金/普通預金」にします
  • 4は二重計上です。記帳元を一つにします

15. 自分の帳簿でやってみよう

記入シート:カード未払金照合表

カード台帳を作る

カード名 末尾4桁 名義 事業・私用 引落口座 締日 支払日 MF連携 補助科目

今月の確認

  • 使用した事業用カードをすべて台帳へ記載した
  • 家族カード・追加カードの重複を確認した
  • カードごとに未払金の補助科目を作った
  • 連携エラーを解除した
  • 利用明細をすべて取得した
  • 仕入れ・経費・私用を区分した
  • 返金・取消を確認した
  • 銀行引落しを未払金で登録した
  • 繰上返済を登録した
  • 分割・リボの元本と手数料を分けた
  • 購入先のレシート・請求書等を保存した
  • MFの未払金残高とカード明細を照合した
  • 差額の理由を説明できる

すべてチェックできたら、そのカードの今月分は完了です。


参考にした公式情報

本章は一般的な教育情報として作成した初稿であり、個別の取引に対する税務判断を行うものではない。公開前に税理士等の専門家による監修を受ける。


支払方法によって、記帳の形が変わる 支払方法によって、記帳の形が変わる 同じ仕入れでも、払い方で相手科目が変わります クレジットカード 仕入高/未払金 使った日に計上 引落日は未払金の消込 現金・振込 仕入高/現金 仕入高/普通預金 その場で完結 ポイント・ギフト券 レシートの表記で決まる 「値引」なら仕入が減る 「利用」なら雑収入 第11章で詳しく 事業主の立替 仕入高/事業主借 個人のお金で払った 内容を摘要に残す どれも「仕入高」は同じ。変わるのは相手科目だけです
図20支払方法によって、相手科目が変わります

第10章

現金・振込・電子マネーを記帳しよう

共通該当者のみ個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 現金払いを漏れなく記録できる
  • 連携口座と連携外口座を区別できる
  • 銀行振込を売上・仕入・経費・資金移動に分けて判断できる
  • デビットカードをクレジットカードと混同しなくなる
  • Suica、PASMO、nanaco、WAON、majica等の電子マネーを整理できる
  • PayPay、楽天ペイ等のQR決済を重複なく記帳できる
  • チャージ時と利用時を分けて考えられる
  • 支払方法が分からない領収書を、いきなり二重入力しなくなる
  • 連携外取引管理表を使って、漏れと重複を防げる
  • 法人の小口現金・役員立替・従業員立替を整理できる

口座間の資金移動は、売上でも経費でもない 口座間の資金移動は、売上でも経費でもない ここを間違えると、売上も経費も水増しされます 正しい形 普通預金A/普通預金B 現金/普通預金 電子マネー/普通預金 お金が場所を移っただけ 利益は1円も変わらない 間違いやすい形 移動したお金を売上にする 引き出しを経費にする チャージを経費にする 同じお金を何度も数える 売上も経費も実際より大きくなる 「増えた・減った」ではなく「どこからどこへ動いたか」で考えます
図21口座間の資金移動は、売上でも経費でもありません

最初に結論

支払方法ごとの、記帳の入口の一覧です 支払方法別・記帳の入口マップ どの財布から払ったかで、貸方(相手科目)が決まります 現金 仕入高・経費 / 現金 払ったその日に完結 銀行振込 仕入高・経費 / 普通預金 連携明細から取り込み デビットカード 仕入高・経費 / 普通預金 即時引落し。未払金は使わない 交通系IC・電子マネー チャージ時は資産、使った時に経費 チャージだけでは経費にしない PayPay・楽天ペイ等 紐づく支払元(カード・残高)で変わる 何から払われたかを確認する どの方法でも「何を買ったか」で借方の科目を決めます
図22支払方法別・記帳の入口マップ

現金・振込・電子マネーの記帳で一番大事なのは、次の二つです。

MFクラウドに出てこない取引も、事業で使っていれば記帳が必要です。

ただし、レシートがあるからといって、必ず手入力してよいわけではありません。

この二つは、セットで覚えてください。

MFクラウド等に連携されない支払いは、放っておくと帳簿から漏れます。

一方で、すでに銀行やカード連携で取り込まれている支払いを、レシートを見てもう一度入力すると、二重計上になります。

flowchart LR
    A["支払いが発生"] --> B{"MF等に連携される?"}
    B -->|される| C["連携明細で処理"]
    B -->|されない| D["連携外取引管理表へ入力"]
    C --> E{"レシートあり?"}
    D --> E
    E -->|あり| F["証拠として保存"]
    E -->|なし| G["内容確認・資料依頼"]
    F --> H["二重入力していないか確認"]
    G --> H

この章では、次の順番で考えます。

  1. 現金で払ったのか
  2. 銀行振込なのか
  3. デビットカードなのか
  4. 電子マネー・QR決済なのか
  5. チャージしただけなのか、実際に使ったのか
  6. すでに銀行・カード連携に出ていないか
  7. 連携外取引管理表に残すべきものか

細かい科目より先に、まずは「どこからお金が出たか」と「すでに帳簿に入っているか」を確認します。


1. 現金払い

現金払いは、もっともシンプルに見えて、実務ではかなりズレやすい支払方法です。

理由は、会計ソフトに自動で出てこないからです。

店舗で現金仕入れをした場合、レシートを保存していなければ、後から思い出せません。

現金払いで記録するもの

現金で仕入れ・経費を支払ったら、最低限、次を残します。

項目 内容
日付 レシートの日付
金額 税込金額、必要に応じて税抜金額
支払先 店舗名、取引先名
内容 何を買ったか
科目 仕入高、消耗品費、旅費交通費等
支払方法 現金
証拠 レシート、領収書、買取明細等
事業・私用 事業分か、私用分か

個人事業主の場合

個人事業主で、事業用の現金箱を作っていない場合は、無理に「現金」勘定を使わないほうが分かりやすいことがあります。

例えば、個人の財布から3,000円の備品を買った場合、次のように処理します。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 3,000円 事業主借 3,000円

これは、

「個人のお金で、事業の経費を立て替えた」

という意味です。

実際に管理していない現金勘定を使うと、帳簿上の現金残高が何十万円、何百万円と増えたり、逆にマイナスになったりします。

手元現金を管理していないなら、個人立替として処理する方が実務的です。

法人の場合

法人では「事業主借」は使いません。

役員や従業員が立て替えた場合は、会社がその人に対して未払いになっていると考えます。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 3,000円 未払金/役員立替 3,000円

後日、会社口座から役員へ精算したとき

借方 金額 貸方 金額
未払金/役員立替 3,000円 普通預金 3,000円

法人で役員・従業員立替が多い場合は、誰が、いつ、何を、いくら立て替えたかを一覧化します。


2. 連携口座・連携外口座

銀行口座には、会計ソフトに連携している口座と、連携していない口座があります。

種類 処理
連携口座 MFクラウドに連携済みの事業用銀行 連携明細から処理
連携外口座 連携していない事業口座、個人口座、海外口座 CSV・PDF・通帳等で確認

連携外口座で事業取引をしている場合、

「会計ソフトに出てこないから記帳しない」

ではなく、手入力やCSV取込で記帳します。

連携外口座でよくある取引

  • 仕入先への振込
  • 借入金の入金
  • 借入金の返済
  • 事業用カードの引落し
  • 売上代金の入金
  • 事業口座から個人口座への資金移動
  • 個人口座から事業経費を支払った取引
  • 海外決済サービスからの入出金

口座一覧を作る

事業に関係する口座は、次のように一覧化します。

金融機関 用途 連携状況 月末残高確認 備考
楽天銀行 売上入金・仕入支払 連携済 必要 メイン口座
住信SBIネット銀行 Amazon入金 連携済 必要 売上入金あり
ゆうちょ銀行 古い支払 連携外 必要 取引があればCSV取得
個人口座 一部立替 連携外 必要に応じて 事業分のみ記帳

月次記帳では、すべての口座を毎回細かく見るというより、

「事業取引がある口座が漏れていないか」

を確認します。

取引がない口座は「取引なし」と記録しておきます。

空欄のままにしないことが大事です。


3. 銀行振込

銀行振込は、内容によって処理が大きく変わります。

通帳に「振込」と出ているだけでは、売上なのか、仕入なのか、経費なのか、資金移動なのか分かりません。

銀行振込の主なパターン

内容 処理の考え方
仕入先への振込 卸業者へ支払い 仕入、または未払金の支払い
経費の振込 外注費、家賃、システム利用料 経費、または未払金の支払い
売上入金 買取業者、取引先から入金 売上、または売掛金の回収
自分の口座間移動 事業口座から別の事業口座へ移動 資金移動
個人への移動 事業口座から生活費へ移動 事業主貸、または役員関係取引
借入金 金融機関から入金 借入金
借入返済 元金・利息の返済 借入金返済と支払利息

仕入先へ振り込んだ場合

10万円の商品を仕入れ、銀行振込で支払った場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 100,000円 普通預金 100,000円

すでに請求書で未払金を立てている場合は、支払時に未払金を消します。

借方 金額 貸方 金額
未払金/仕入先A 100,000円 普通預金 100,000円

同じ取引を、請求書で仕入、振込時にも仕入として登録すると二重計上になります。

振込手数料

振込手数料が差し引かれる場合や、別途引き落とされる場合があります。

仕入代金 100,000円
振込手数料 330円
銀行引落額 100,330円
借方 金額 貸方 金額
仕入高 100,000円 普通預金 100,330円
支払手数料 330円

振込手数料をどの科目にするかは、事業の運用に合わせて決めます。


4. デビットカード

デビットカードは、見た目はカードですが、処理はクレジットカードと違います。

クレジットカードは、使った日と銀行引落日がズレます。

デビットカードは、原則として使ったタイミングで銀行口座からすぐ引き落とされます。

デビットカードの基本形

10,000円の商品をデビットカードで仕入れた場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 10,000円 普通預金 10,000円

クレジットカードのように未払金を使うのではなく、普通預金から直接支払った処理になります。

デビットカードで注意すること

デビットカードで多いミスは、銀行明細とカード明細の二重取り込みです。

同じ支払いが、

  • 銀行口座の出金
  • デビットカードの利用明細

の両方に出ることがあります。

この場合、両方を仕入・経費として登録すると二重になります。

原則として、どちらを記帳の入口にするかを決めます。

初心者は、銀行口座からの出金を入口にする方が分かりやすいです。

ただし、銀行明細だけでは購入内容が分からないことがあります。その場合は、デビットカード明細やレシートを証拠として保存します。


5. Suica・PASMO・nanaco・WAON・majica等

電子マネーは、せどり・物販でかなり混乱しやすい支払方法です。

理由は、次の三つが別々に発生するからです。

  1. チャージする
  2. 利用する
  3. 残高が残る

チャージしただけでは、まだ商品を仕入れたとは限りません。

銀行やカードのお金が、電子マネー残高に移っただけです。

電子マネーの基本イメージ

銀行・カード
 ↓ チャージ
電子マネー残高
 ↓ 利用
仕入・経費

例えば、Suicaに10,000円チャージして、そのうち1,500円を事業の交通費に使った場合、事業で使ったのは1,500円です。

10,000円全額が交通費になるわけではありません。

事業専用で管理する方法

電子マネーを事業専用で使い、残高も確認できる場合は、次のように管理できます。

チャージ時

借方 金額 貸方 金額
電子マネー/Suica 10,000円 普通預金 10,000円

利用時

借方 金額 貸方 金額
旅費交通費 1,500円 電子マネー/Suica 1,500円

この方法では、月末に電子マネー残高を確認します。

ただし、初心者には少し管理が重くなります。

私用と混ざる場合の実務的な方法

Suica、PASMO、PayPay、楽天ペイ、majica等は、私用と事業用が混ざりやすいです。

この場合、チャージ全体を事業経費にするのは危険です。

事業で使った分だけ、レシートや利用明細をもとに記録します。

個人事業主で、個人の電子マネーを使って事業経費を払った場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 8,000円 事業主借 8,000円

法人で、役員個人の電子マネーを使って会社経費を払った場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 8,000円 未払金/役員立替 8,000円

この方法なら、チャージ履歴をすべて追わなくても、事業利用分を記録できます。

ただし、事業用カードからチャージしている場合は、そのチャージがカード明細に出ます。

この場合、チャージと利用を両方仕入にすると二重になります。


6. PayPay・楽天ペイ等

PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAY等のQR決済は、支払元が複数あります。

ここが混乱ポイントです。

QR決済で確認すること

確認すること
支払元 残高、銀行、クレジットカード、ポイント
事業利用か私用利用か 仕入、経費、生活費
連携に出ているか 銀行、カード、決済アプリ
利用明細が取得できるか CSV、PDF、スクショ、アプリ明細
ポイント利用があるか 全額ポイント、一部ポイント

QR決済は、

「PayPayで払った」

だけでは記帳できません。

PayPay残高で払ったのか、PayPayカードで払ったのか、ポイントを使ったのか、銀行から即時引落しなのかで処理が変わります。

PayPayカード払いの場合

PayPayで支払っていても、実際の支払元がPayPayカードなら、カード明細に出ます。

その場合、カード側で記帳します。

レシートを見て別途「現金」や「PayPay」として手入力すると、二重になる可能性があります。

PayPay残高払いの場合

PayPay残高から支払った場合は、PayPay側の利用明細やCSV、スクショ等で確認します。

会計ソフトに連携されない場合は、連携外取引管理表に入力します。

ポイントを使った場合

ポイントを使った場合は、第11章で詳しく扱います。

この章では、まず次だけ覚えてください。

ポイントで払ったから0円、ではありません。事業で商品や経費を取得していれば、記録が必要になることがあります。

ポイント、ギフト券、クーポン、値引き、モール負担などは判断が分かれることがあるため、詳しくは第11章・第15章で整理します。


7. チャージ時と利用時

電子マネーやQR決済で一番多いミスは、チャージ時に仕入・経費にしてしまうことです。

間違いやすい例

楽天カードで10万円分チャージし、その後、5万円分だけ仕入れに使ったとします。

このとき、チャージ10万円を仕入にして、さらに利用時の5万円も仕入にすると、仕入が15万円になります。

実際に仕入れたのは5万円です。

間違い
チャージ 100,000円 → 仕入
利用 50,000円 → 仕入
合計 150,000円

正しい考え方
チャージ 100,000円 → 資金移動・残高
利用 50,000円 → 仕入
未使用 50,000円 → 残高

三つの処理方針

電子マネーやQR決済は、次のいずれかの方針を選びます。

方針 内容 向いているケース
残高管理方式 チャージを電子マネー残高として管理し、利用時に経費化 事業専用で使う
利用分管理方式 チャージは追わず、事業利用分だけ記録 私用と混ざる
使わない方式 事業では電子マネーを使わない 管理を簡単にしたい

初心者には、私用と混ざる電子マネーを事業で使いすぎないことも大事です。

使えば使うほど、記帳が複雑になります。

年商が伸びて取引量が増えたら、事業専用の決済手段を用意してください。


8. 支払方法が分からない領収書

実務でとても多いのが、

「この領収書、現金で払ったのか、カードで払ったのか、電子マネーで払ったのか分からない」

というケースです。

この場合、いきなり現金として入力しないでください。

まず、同じ日付・同じ金額・同じ店舗名が、銀行やカード明細に出ていないか確認します。

確認手順

  1. 領収書の日付を確認する
  2. 金額を確認する
  3. 店舗名・取引先名を確認する
  4. 連携済みカード明細を検索する
  5. 銀行明細を検索する
  6. 電子マネー・QR決済明細を確認する
  7. 見つからなければ、現金・個人立替・連携外決済の候補にする

判断例

状況 処理
カード明細に同額がある カード側で処理し、領収書は証拠として保存
銀行明細に同額がある 銀行側で処理し、領収書は証拠として保存
電子マネー明細に同額がある 電子マネー側で処理
どこにも出てこない 現金・個人立替・連携外取引として確認
私用の可能性がある 事業経費にせず、要確認にする

「分からない」は残してよい

無理にその場で決めなくても大丈夫です。

むしろ、分からないものを推測で登録する方が危険です。

連携外取引管理表に「支払方法不明」「要確認」として残し、後で確認します。


9. レシートの二重入力

レシートは、入力するための資料であると同時に、すでに入力された取引の証拠でもあります。

ここを間違えると、二重計上が起きます。

二重入力の典型例

何が起きるか
楽天カードで仕入れ、カード連携で記帳済み。さらにレシートを現金で入力 仕入が二重になる
PayPayカード払いをカード明細で記帳済み。さらにPayPayレシートを手入力 経費が二重になる
銀行振込で支払済み。さらに請求書を見て同じ経費を入力 経費が二重になる
電子マネーのチャージを経費化し、利用時も経費化 経費が二重になる
買取業者の振込売上を銀行で登録し、現金売上表にも入力 売上が二重になる

レシートを送る・保存する前のルール

レシートを記帳担当者へ送る場合は、次のルールを決めます。

  • 連携済みカードで払ったレシートは、原則「証拠」として保存
  • 現金・連携外決済で払ったレシートは、手入力対象
  • 支払方法が不明なレシートは「不明」として分ける
  • 私用レシートは送らない
  • 事業用と私用が混ざるレシートは、事業分をメモする

送る側も受け取る側も、

「これは入力対象なのか、証拠保存だけなのか」

を分かるようにしておきます。


10. 連携外取引管理表

現金・電子マネー・連携外口座・個人立替は、管理表を作るとかなり楽になります。

管理表の項目例

項目 入力例
日付 2026/7/10
支払先 ドン・キホーテ
金額 12,800円
内容 販売用商品の仕入れ
科目 仕入高
支払方法 majica
支払元 個人チャージ、事業カード、残高等
事業・私用 事業
証拠 レシート写真、PDF、スクショ
連携確認 カード・銀行に同額なし
入力状況 未入力、入力済、要確認
メモ 一部ポイント利用あり、支払方法不明等

ステータスを決める

管理表では、空欄を減らします。

ステータス 意味
入力済 会計ソフトへ登録済み
証拠保存のみ 連携明細で処理済み、レシートは証拠
要確認 科目・支払方法・事業性が未確認
取引なし 対象月に該当取引なし
未提出 資料がまだ提出されていない

「何も書いていない」は、未提出なのか、取引なしなのか分かりません。

月次記帳では、「取引なし」も立派な回答です。

毎月の流れ

  1. 現金・電子マネー・QR決済を使ったか確認する
  2. 使った場合は管理表に入力する
  3. レシート・スクショ・PDFを保存する
  4. 連携済みカード・銀行と重複していないか確認する
  5. 会計ソフトへ登録する
  6. 要確認を残したまま月次完了にしない

11. 法人の小口現金・立替経費

法人では、現金や立替経費のルールを早めに決めておくと、後が楽です。

年商1億円以下の段階でも、従業員や外注先が増えると、現金・立替経費は急に散らかります。

年商数億円から20億円規模を目指すなら、ここは最初から仕組みにしておきたいところです。

小口現金を使う場合

会社に小口現金を置く場合は、次を決めます。

  • 金庫・保管者
  • 上限額
  • 使ってよい用途
  • 領収書提出ルール
  • 現金出納帳
  • 月末の現金実査
  • 補充方法

小口現金を10万円用意した場合

借方 金額 貸方 金額
小口現金 100,000円 普通預金 100,000円

小口現金から5,000円の備品を買った場合

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,000円 小口現金 5,000円

月末には、帳簿上の小口現金残高と、実際の手元現金を合わせます。

役員・従業員立替

役員や従業員が立て替えた場合は、立替精算のルールを決めます。

決めること
提出期限 翌月5日まで
必要資料 領収書、利用明細、目的
承認者 代表者、経理責任者
精算日 毎月15日、月末等
支払方法 銀行振込
科目確認 経理担当が確認

立替経費を登録する時

借方 金額 貸方 金額
旅費交通費 2,000円 未払金/従業員立替 2,000円

精算する時

借方 金額 貸方 金額
未払金/従業員立替 2,000円 普通預金 2,000円

立替精算は、本人への支払いと経費計上を混同しないことが重要です。


よくある質問

Q1 現金で払ったレシートは全部入力すればよいですか?

事業で使ったものだけ入力します。

私用のレシートは入力しません。

また、実はカードや電子マネーで払っていて、すでに連携明細に出ている場合は、手入力すると二重になります。

Q2 クレジットカードでSuicaにチャージしました。チャージ額を交通費にしてよいですか?

原則として、チャージしただけでは交通費ではありません。

Suica残高にお金が移っただけです。

実際に交通費や仕入れ・経費に使った分を記録します。

私用と混ざる場合は、事業利用分だけを管理表に入力する方法が現実的です。

Q3 PayPayで払いました。科目は何ですか?

「PayPay」は科目ではなく、支払方法です。

何に使ったかで科目が決まります。

販売用商品なら仕入高、交通費なら旅費交通費、備品なら消耗品費などです。

Q4 PayPayカード払いとPayPay残高払いは違いますか?

違います。

PayPayカード払いはカード明細に出るため、カード側で処理することが多いです。

PayPay残高払いは、PayPay側の利用明細やCSV等をもとに、連携外取引として管理することがあります。

Q5 支払方法が分からない領収書があります。

まず、同じ日付・金額・店舗名がカード明細や銀行明細にないか確認します。

見つかれば、その明細に証拠として紐づけます。

見つからなければ、現金・個人立替・電子マネー等の候補として「要確認」にします。

Q6 連携外口座を少しだけ使いました。記帳しなくてもよいですか?

事業取引があるなら記帳が必要です。

少額でも、仕入・経費・売上・借入返済などであれば帳簿に影響します。

使わない口座は、使わないと決めた方が管理は楽です。

Q7 法人で社長個人の財布から会社の経費を払いました。

会社から見ると、社長が会社経費を立て替えた状態です。

未払金、役員立替、役員借入金等で処理することがあります。

会社の状況や顧問税理士の方針によって科目が変わるため、法人では運用ルールを決めてください。

Q8 ポイントやギフト券で払った場合は、この章で処理しますか?

考え方は近いですが、詳しくは第11章で扱います。

この章では、電子マネー・QR決済の支払方法を整理し、ポイント・ギフト券部分は第11章へつなげます。


実務チェックリスト

月次で次を確認してください。

  • 現金払いのレシートを確認した
  • 私用レシートを事業経費に入れていない
  • 連携外口座に事業取引がないか確認した
  • 銀行振込の内容を確認した
  • 自分の口座間移動を売上・経費にしていない
  • デビットカードを二重取り込みしていない
  • 電子マネーのチャージをそのまま仕入・経費にしていない
  • 電子マネーの事業利用分を記録した
  • PayPay・楽天ペイ等の支払元を確認した
  • レシートを連携済みカード取引と二重入力していない
  • 支払方法不明の領収書を要確認にしている
  • 連携外取引管理表に入力状況を残している
  • 法人の役員・従業員立替を精算できる状態にしている

次章へのつなぎ

この章では、現金、振込、デビットカード、電子マネー、QR決済を整理しました。

次の第11章では、さらに混乱しやすい「ポイント」と「ギフト券」を扱います。

楽天ポイント、PayPayポイント、Amazonギフト券、Apple Gift Card等は、せどり・物販では金額が大きくなりやすい部分です。

チャージ、獲得、利用、私用利用、未使用残高を分けて、次章で整理していきましょう。


電子マネー・コード決済の記帳 電子マネー・コード決済の記帳 チャージした時点では、まだ経費ではありません 1 チャージした 資金の移動。電子マネー/普通預金 2 支払いに使った ここで初めて経費。仕入高/電子マネー 3 残高を確認する 月末の残高が、アプリの残高と合っているか 4 私用と混ざっていないか見る 混在しているなら、事業分だけを拾う チャージを経費にすると、使っていないお金まで経費になります
図23チャージした時点では、まだ経費ではありません

第11章

ポイント・ギフト券を記帳しよう

該当者のみ個人法人規模拡大

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • ポイントを使った仕入れを「0円」と判断しなくなる
  • 事業で獲得したポイントと私用ポイントを分けて考えられる
  • 楽天ポイント、PayPayポイント等の利用履歴を残せる
  • Amazonギフト券、Apple Gift Card等を購入時と利用時に分けて整理できる
  • ギフト券購入と商品仕入れの二重計上を防げる
  • ポイント・ギフト券を使った商品の棚卸価額を確認できる
  • 全額ポイント、一部ポイント、ギフト券+カード払いに対応できる
  • 消費税の扱いが分かれる場面を見分けられる
  • 税理士へ確認すべき論点を切り分けられる

ポイントの処理は、レシートの表記で決まる ポイントの処理は、レシートの表記で決まる どちらを選ぶかではなく、書いてあるとおりに処理します 「値引」と書かれている 商品代金から直接引かれている 支払総額そのものが下がる 仕入価額が減る 10,000円 → 8,000円で計上 課税仕入れは 8,000円 「ポイント利用」と書かれている 商品代金は変わらない 支払方法として使われている 仕入は総額のまま 充当分は雑収入で計上 課税仕入れは 10,000円 消費税の計算に影響します。同じチェーンでも表記が違うことがあります
図24ポイントの処理は、レシートの表記で決まります

最初に結論

ポイント・ギフト券で一番大事なのは、次の二つです。

ポイントやギフト券で払ったからといって、仕入れが0円になるとは限りません。

ギフト券を買った時点と、そのギフト券で商品を買った時点は分けて考えます。

せどり・物販では、楽天ポイント、PayPayポイント、Amazonポイント、Amazonギフト券、Apple Gift Card等を使って商品を仕入れることがあります。

このとき、

「現金を使っていないから記帳不要」

「ポイントだから0円仕入れ」

「ギフト券を買ったから仕入れ」

と単純に考えると、帳簿がズレます。

ポイント・ギフト券は、次の四段階で整理します。

flowchart LR
    A["獲得・購入"] --> B["保有・残高"]
    B --> C["事業利用"]
    B --> D["私用利用"]
    C --> E["仕入・経費・棚卸"]
    D --> F["事業外・役員/事業主処理"]

重要なのは、ポイントやギフト券そのものではなく、何に使ったかです。

販売用商品を買ったなら仕入れ、備品を買ったなら経費、私用で使ったなら事業の経費にはしません。


1. ポイントの基本

ポイントには、大きく分けて次のようなものがあります。

種類
店舗・モールのポイント 楽天ポイント、Amazonポイント、Yahoo!ショッピングのポイント等
決済サービスのポイント PayPayポイント、dポイント、Pontaポイント等
カード利用で付くポイント 楽天カード、PayPayカード、各種クレジットカードのポイント
キャンペーンポイント 買い回り、抽選、還元キャンペーン等
自社・共通ポイント 加盟店制度に基づくポイント等

ポイントは、獲得した時点、使った時点、何に使ったかで扱いが変わることがあります。

この章では、せどり・物販の実務で迷いやすい「ポイントを使って仕入れた場合」を中心に整理します。

ポイントは「科目」ではない

「楽天ポイントで払った」

「PayPayポイントで払った」

これは、支払方法の情報です。

勘定科目は、何を買ったかで決まります。

買ったもの 科目の例
販売用商品 仕入高
梱包資材 消耗品費、荷造運賃等
交通費 旅費交通費
仕事用PC 消耗品費、工具器具備品等
私用品 事業経費にしない

ポイントを使ったかどうかよりも、まず「事業で何を取得したか」を確認します。


2. 事業で獲得したポイント

せどりでは、事業用の仕入れでポイントが大量に発生することがあります。

たとえば、楽天市場で仕入れをして楽天ポイントが貯まる、PayPayカードやYahoo!ショッピングでPayPayポイントが貯まる、Amazonで仕入れてAmazonポイントが付く、といったケースです。

ポイント獲得時に必ず記帳するとは限らない

通常の買い物に応じて付与されるポイントは、獲得時点では記帳しない運用もあります。

実務では、ポイントを使用した時点で、使用内容に応じて処理する方が管理しやすいことが多いです。

ただし、次のような場合は注意が必要です。

  • 事業仕入れで多額のポイントを獲得している
  • そのポイントを事業仕入れに使っている
  • そのポイントを私用に使っている
  • キャンペーン、抽選、紹介、特典など通常の値引きとは性質が違う
  • 消費税課税事業者で、仕入税額控除に影響する
  • 法人で、役員や従業員個人のポイント利用が絡む

ポイントの獲得時に収益を立てるか、使用時に処理するか、値引きとして扱うか、雑収入を使うかは、ポイントの性質と証拠資料によって変わります。

教材では、初心者が破綻しにくいように、まずは使用履歴を残すことを重視します。

事業ポイントを私用に使った場合

事業の仕入れで貯まったポイントを、私用の買い物に使うことがあります。

個人事業主の場合は、事業主貸等で整理することがあります。

法人の場合は、会社で発生した経済的利益を役員や従業員が使ったことになるため、役員賞与、給与、貸付、福利厚生等の論点が出る可能性があります。

法人でポイントを私用利用するのは、金額が小さくてもルールを決めてください。


3. 仕入れへの利用

ポイントを販売用商品の仕入れに使った場合、次の二つを確認します。

  1. レシートや明細上、ポイントが「値引き」と表示されているか
  2. ポイントが「支払方法」「充当」として表示されているか

国税庁は、事業者が商品購入時にポイントを使った場合の消費税の仕入税額控除について、ポイント使用が商品本体価額の値引きなら値引後の金額、支払うべき価額の値引きなら商品対価の合計額を基に考える旨を案内しています。

つまり、レシートの表示によって扱いが変わることがあります。

例1 ポイントが値引きとして表示される場合

10,000円の商品を、2,000ポイント値引きで購入し、8,000円をカードで支払ったとします。

レシート上で、商品本体価格が8,000円に値引きされたように表示されている場合、仕入は8,000円として処理する考え方があります。

借方 金額 貸方 金額
仕入高 8,000円 未払金/カード 8,000円

この場合、ポイント分2,000円は仕入高に入れません。

例2 ポイントが支払方法として表示される場合

10,000円の商品を、2,000ポイントとカード8,000円で支払ったとします。

レシート上で、商品代金は10,000円、支払方法としてポイント2,000円、カード8,000円のように表示される場合、次のように処理する考え方があります。

借方 金額 貸方 金額
仕入高 10,000円 未払金/カード 8,000円
雑収入等 2,000円

この場合、仕入高は10,000円になり、ポイント使用分を雑収入等で処理します。

どちらが正しいかは資料で判断する

どちらの処理にするかは、感覚で決めません。

次を確認します。

  • レシートの表示
  • 購入履歴の表示
  • ポイント利用履歴
  • 税区分
  • 顧問税理士の処理方針
  • 継続して同じ処理をしているか

ポイントは「こうすれば絶対正解」と言い切りにくい部分です。

この教材では、まず次の運用をおすすめします。

ポイントを使った仕入れは、レシート・購入履歴・ポイント履歴を保存し、処理方針を毎月統一する。


4. 私用への利用

事業で獲得したポイントを私用に使った場合、事業の経費にはできません。

個人事業主と法人で、考え方が変わります。

個人事業主の場合

個人事業主で、事業用の仕入れで貯まったポイントを私用に使った場合、事業主貸等で整理することがあります。

事業仕入れで貯まった楽天ポイント5,000円分を、私用の日用品購入に使用

この場合、事業の仕入れや経費ではありません。

ポイント利用額を記録し、私用利用として分けます。

法人の場合

法人で、会社の事業活動により獲得したポイントを、役員や従業員が私用に使う場合は注意が必要です。

会社の資産・経済的利益を個人が使っていると見られる可能性があります。

少額だから何となく、ではなく、次を決めます。

  • 法人で獲得したポイントは会社用に使う
  • 私用利用を禁止する
  • 私用利用した場合の精算方法を決める
  • 役員・従業員ごとに利用履歴を残す

法人でポイントが多額になる場合は、顧問税理士へ必ず確認してください。


5. 楽天ポイント・PayPayポイント等

楽天ポイントやPayPayポイントは、せどりで特に利用頻度が高いポイントです。

楽天ポイント

楽天ポイントは、楽天市場仕入れ、楽天カード、SPU、買い回り等で大量に発生しやすいです。

毎月、次を保存します。

  • 楽天ポイントクラブの利用履歴
  • 楽天市場の購入履歴
  • レシート・領収書
  • カード明細
  • ポイントを使った取引の科目
  • 私用利用の有無

楽天ポイント履歴をスプレッドシートに貼り付ける運用にすると、あとから確認しやすくなります。

PayPayポイント

PayPayポイントは、PayPayアプリ、Yahoo!ショッピング、PayPayカード等と絡みます。

支払元が複数あるため、次を分けます。

内容 確認するもの
PayPay残高利用 PayPay利用明細、CSV、スクショ
PayPayポイント利用 PayPayポイント利用履歴
PayPayカード払い PayPayカード明細
Yahoo!ショッピング仕入れ 注文履歴、領収書、支払情報

「PayPayで払った」と言っても、残高、ポイント、カード、銀行チャージなどが混ざります。

支払元が分からないと、記帳も棚卸もズレます。

同じ取引を二つのシートに入力しない

実務で多いのが、ポイント履歴と現金・チャージ・ギフト券シートの両方に同じ取引を入れてしまうケースです。

例えば、楽天ポイント利用履歴に入力済みの取引を、さらに「現金・チャージ・ギフト券」の表にも入力すると、仕入れが二重になります。

次のルールを決めてください。

取引 入力先
楽天ポイント利用 楽天ポイント管理表
PayPayポイント利用 PayPay利用明細またはポイント管理表
Amazonギフト券利用 ギフト券管理表
Apple Gift Card利用 ギフト券管理表
現金支払 現金・連携外取引管理表

一つの取引は、一つの入口で管理します。


6. Amazonギフト券

Amazonギフト券は、せどりでよく使われます。

ただし、Amazonギフト券を買った時点で、販売商品を仕入れたことにはなりません。

ギフト券を使って、実際に商品やサービスを購入した時点で内容を判断します。

Amazonギフト券の基本

カード・銀行等でAmazonギフト券を購入
 ↓
Amazonギフト券残高として保有
 ↓
Amazonで商品購入
 ↓
販売用商品なら仕入、備品なら経費、私用なら事業外

購入時

10万円分のAmazonギフト券をカードで購入した場合

借方 金額 貸方 金額
ギフト券等 100,000円 未払金/カード 100,000円

または、個人事業主で管理簡略化のため、一旦事業主貸等で処理し、事業利用分だけ後で仕入・経費へ振り替える運用もあります。

ただし、ギフト券を買った時点で「仕入高」にすると、その後にギフト券を使った時にも仕入が出て、二重になる危険があります。

利用時

ギフト券で販売用商品30,000円を購入した場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 30,000円 ギフト券等 30,000円

ギフト券残高を資産として管理していない場合は、事業利用分だけを連携外取引管理表へ入力する運用もあります。

重要なのは、次の三つです。

  • ギフト券購入額
  • ギフト券利用額
  • 月末未使用残高

この三つが分かる状態にします。


7. Apple Gift Card等

Apple Gift Cardは、iPhone、Mac、Apple製品、アプリ、サブスク等の購入に使われます。

せどりでは、Apple製品の仕入れに使うこともあります。

Apple Gift Cardで特に多いミス

ミス 何が起きるか
ギフト券購入時に仕入高にする 利用時にも仕入れて二重になる
ギフト券+カード払いの総額をギフト券表に入れる カード支払分と重複する
仕事用Macと販売用iPhoneを同じ科目にする 固定資産・消耗品・仕入が混ざる
私用iPhoneを仕入にする 事業外取引が経費化される
未使用残高を把握していない 棚卸・資産残高がズレる

ギフト券+カード払いの場合

150,000円のiPhoneを、Apple Gift Card 100,000円、クレジットカード50,000円で購入したとします。

販売用商品として仕入れた場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 150,000円 ギフト券等 100,000円
未払金/カード 50,000円

このとき、ギフト券管理表に150,000円と入力すると、カード明細の50,000円と重複する可能性があります。

管理表には、次のように分けて入力します。

購入総額 ギフト券利用 カード支払 用途
150,000円 100,000円 50,000円 販売用iPhone仕入

「総額」「ギフト券分」「カード分」を分けるだけで、ミスがかなり減ります。


8. ポイント仕入れ商品の棚卸価額

ポイントやギフト券を使って仕入れた商品が、年末・決算日時点で売れ残っている場合、棚卸に影響します。

ここはかなり重要です。

棚卸は「売れ残った商品の仕入金額」を集計する

棚卸では、期末に残っている商品の仕入金額を集計します。

ポイントを使って仕入れた商品について、仕入金額をいくらにするかは、記帳方法と資料表示によって変わります。

販売用商品 10,000円
ポイント利用 2,000円
カード支払 8,000円
期末時点で未販売

この商品を8,000円仕入として記帳しているなら、棚卸も8,000円を基準にします。

この商品を10,000円仕入、ポイント分2,000円を雑収入等として記帳しているなら、棚卸も10,000円を基準にします。

大事なのは、仕入処理と棚卸処理を一致させることです。

「ポイントを記帳している場合」は注意

事業で発生したポイントを雑収入等で記帳し、そのポイントを使った仕入れを総額で処理している場合、棚卸も総額で集計することがあります。

逆に、ポイントを値引きとして処理し、ポイント使用後の金額だけを仕入にしている場合は、棚卸も値引後の金額を基準にすることがあります。

ここを混ぜると、利益がズレます。

未使用のギフト券残高

ギフト券を購入し、まだ使っていない残高がある場合、その残高は商品在庫ではありません。

商品そのものではなく、将来商品等を購入するための残高です。

ただし、ギフト券購入時に仕入として処理してしまっている場合、未使用残高が仕入に入ったままになります。

この場合、決算時に修正が必要になることがあります。

年末・決算月には、次を確認します。

  • 未使用のAmazonギフト券残高
  • 未使用のApple Gift Card残高
  • 未使用の電子マネー残高
  • 未使用のポイント残高のうち、事業上重要なもの
  • ギフト券購入時に仕入処理していないか
  • 仕入処理と棚卸処理が一致しているか

9. 証拠の残し方

ポイント・ギフト券は、あとから証明しにくい取引です。

毎月、次の資料を保存します。

ポイント

ポイント 保存するもの
楽天ポイント 楽天ポイントクラブ利用履歴、楽天市場購入履歴
PayPayポイント PayPay利用履歴、ポイント利用履歴、Yahoo!ショッピング注文履歴
Amazonポイント Amazon注文履歴、ポイント利用表示
dポイント・Ponta等 利用履歴、レシート、アプリ明細

ギフト券

ギフト券 保存するもの
Amazonギフト券 購入履歴、チャージ履歴、利用履歴、注文履歴、残高
Apple Gift Card 購入領収書、コード利用履歴、Apple注文履歴、残高
その他ギフト券 購入資料、利用履歴、残高、レシート

管理表の項目

項目 入力例
日付 2026/7/10
種類 楽天ポイント
取引区分 獲得、利用、私用、失効
金額・ポイント数 2,000ポイント
購入総額 10,000円
ポイント・ギフト券利用額 2,000円
現金・カード支払額 8,000円
用途 販売用商品仕入
科目 仕入高
証拠 レシート、購入履歴、ポイント履歴
入力状況 入力済、要確認、対象外
メモ 値引表示、支払充当表示、私用等

ポイント・ギフト券は、管理表が命です。

会計ソフトに仕訳を入れる前に、まず管理表で流れを説明できる状態にします。


10. 金額・状況により判断が分かれる場合

ポイント・ギフト券は、金額や状況によって判断が分かれます。

次のような場合は、自己判断で進めず、税理士等に確認してください。

  • 年間のポイント利用額が大きい
  • 仕入の大部分をポイント・ギフト券で行っている
  • 法人で役員・従業員個人のポイントを使っている
  • 法人で会社のポイントを私用利用している
  • キャンペーン、抽選、紹介等でポイントを獲得している
  • ポイントを売上・雑収入として処理している
  • 消費税の還付や仕入税額控除に影響する
  • レシート表示が値引きか支払充当か分かりにくい
  • ギフト券を大量購入し、未使用残高が大きい
  • 決算日時点で未使用残高やポイント仕入れ在庫が大きい

教材内での基本スタンス

この教材では、次のスタンスで説明します。

  • ポイントやギフト券を使った取引は記録を残す
  • レシートや購入履歴の表示を確認する
  • 仕入処理と棚卸処理を一致させる
  • ギフト券購入時と利用時を分ける
  • 事業利用と私用利用を分ける
  • 判断が分かれるところは税務レビュー対象にする

ここを押さえれば、少なくとも「資料がなくて説明できない」「二重に仕入れている」「ポイント利用が丸ごと漏れている」という大事故は避けられます。


11. 消費税との関係は第15章へ

ポイント・ギフト券は、消費税と非常に相性が悪い論点です。

レシート表示、値引き、支払充当、雑収入、非課税、不課税、仕入税額控除、インボイスが絡みます。

この章では、初心者が月次記帳で迷わないように、実務の入口を整理しました。

消費税の詳しい処理は、第15章で扱います。

ただし、ここで最低限覚えておくことは次の三つです。

  1. ポイント使用後の金額だけを見ればよいとは限らない
  2. レシート・購入履歴・ポイント履歴を保存する
  3. 処理方針を途中で変えない

特に課税事業者、原則課税、消費税還付が関係する事業者は、ポイント処理が税額に影響することがあります。

年商1億円以下のメイン層でも、ポイント仕入れが多い人はここを軽く見ないでください。

年商数億円以上になり、ポイント・ギフト券の金額が大きくなる場合は、月次で税理士レビューを入れることをおすすめします。


よくある質問

Q1 全額ポイントで仕入れた商品は、仕入0円ですか?

必ず0円とは限りません。

レシート上でポイント値引きとして扱われているのか、ポイント支払として扱われているのか、事業でそのポイントをどう処理しているのかによって変わります。

ポイントを使って販売用商品を取得しているなら、購入履歴とポイント利用履歴を必ず残してください。

Q2 Amazonギフト券を買ったら、その時点で仕入ですか?

通常は、ギフト券を買っただけでは販売商品を仕入れたことにはなりません。

ギフト券残高にお金が移った状態です。

そのギフト券で商品を購入した時点で、仕入か経費か私用かを判断します。

Q3 Apple Gift Cardを楽天カードで買いました。カード明細では事業主貸でよいですか?

個人事業主で、ギフト券購入時はいったん事業主貸等にし、事業利用分だけ後で仕入・経費へ振り替える運用はあります。

ただし、法人では事業主貸を使いません。

また、ギフト券購入時と利用時の資料がつながるように管理してください。

Q4 ギフト券+クレジットカードで仕入れた場合、管理表には総額を入れますか?

購入総額、ギフト券利用額、カード支払額を分けて入力してください。

総額だけをギフト券利用として入力すると、カード明細と重複する可能性があります。

Q5 ポイントを私用に使った場合も記録しますか?

事業で獲得したポイントを私用に使った場合は、記録した方が安全です。

個人事業主では事業主貸等、法人では役員・従業員への経済的利益として論点になる可能性があります。

Q6 ポイント履歴と現金・ギフト券シートに同じ取引を入れてしまいました。

二重計上になっている可能性があります。

同じ日付・金額・購入内容の取引が複数の表に入っていないか確認し、どちらを正とするか決めてください。

Q7 ポイント仕入れ商品の棚卸は、ポイント利用前と利用後のどちらですか?

仕入処理と一致させます。

ポイント利用後の金額で仕入処理しているなら、棚卸もその金額を基準にします。

ポイント利用前の総額で仕入処理し、ポイント分を雑収入等で処理しているなら、棚卸も総額を基準にすることがあります。

Q8 PayPayポイントはスプレッドシートへ入力が必要ですか?

運用によります。

PayPay公式CSVや利用明細から拾えるなら、そちらを入口にしても構いません。

大事なのは、同じ取引を複数の場所へ入力しないことです。


実務チェックリスト

月次で次を確認してください。

  • 楽天ポイント等の利用履歴を保存した
  • PayPayポイント等の利用履歴を確認した
  • ポイントを使った仕入れを0円として放置していない
  • ポイント履歴と他の管理表で二重入力していない
  • 事業利用と私用利用を分けた
  • Amazonギフト券の購入額・利用額・残高を確認した
  • Apple Gift Card等の購入額・利用額・残高を確認した
  • ギフト券購入時に仕入高へ入れていないか確認した
  • ギフト券+カード払いを分けて記録した
  • ポイント仕入れ商品の棚卸価額を仕入処理と一致させた
  • 未使用ギフト券残高を確認した
  • 判断が分かれる取引を税理士確認リストへ入れた

参考にした公式情報


次章へのつなぎ

ここまでで、現金、電子マネー、ポイント、ギフト券まで整理しました。

次の第12章では、経費とプライベートを分けます。

せどり・物販では、個人カード、家族カード、私用スマホ、仕事用PC、自宅、車、通信費など、事業と私用が混ざる取引が必ず出てきます。

第12章で、どこまで経費にできるか、どこから私用として外すべきかを整理していきます。


ポイント・ギフト券で気をつけること ポイント・ギフト券で気をつけること 現金が動かないので、帳簿から抜けやすい取引です 1 私用で使ったポイントは経費にならない 事業から個人へお金を移したのと同じ扱い 2 大量にもらったポイントは記録を残す いつ、いくら分もらったかをメモしておく 3 ギフト券の購入と使用は別の取引 買った時点では資産。使った時点で経費 4 処理方法は毎年変えない 年によって変わると、比較ができなくなります 現金が動かない取引は、意識しないと帳簿から消えます
図25現金が動かない取引は、帳簿から抜けやすい

第12章

経費と事業・プライベートを分けよう

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 経費にできるかどうかを、感覚ではなく手順で判断できる
  • 店名だけで「仕入」「経費」「プライベート」を決めなくなる
  • 個人事業主の事業主貸・事業主借を使い分けられる
  • 法人の役員立替・従業員立替・役員貸付金を区別できる
  • 家賃、通信費、車、光熱費等の家事按分を整理できる
  • 飲食、家族、友人、外注費、給与の危ない境界を把握できる
  • 領収書がない場合に、代わりに何を残すべきか分かる
  • 専門家へ確認すべき取引を見分けられる

事業とプライベートを分ける 分けるかどうかで、毎月の手間が変わる 分けることは義務ではありません。ラクになるかどうかの話です 混ざっている 1枚のカードに 事業 仕入れ 私用 スーパーでの買い物 事業 ツールの月額 私用 家族の食事代 事業 通信費 毎月、1行ずつ判断する必要がある 分けている 事業用カードには 事業 仕入れ 事業 ツールの月額 事業 通信費 事業 資材の購入 事業 広告費 明細がそのまま帳簿になる 過去に遡って分ける必要はありません 今日から前だけ分ければ十分です。過去の分は事業主貸・事業主借で処理できます まずはカードを1枚、「これが事業用」と決めるところから
図26分けるかどうかで、毎月の手間が変わります

最初に結論

経費かどうかは、次の三つで判断します。

  1. 事業に関係しているか
  2. 金額と内容を説明できる証拠があるか
  3. 私用が混ざるなら、合理的に分けられるか
flowchart LR
    A["支出がある"] --> B{"事業に関係する?"}
    B -->|しない| C["私用・対象外"]
    B -->|する| D{"証拠がある?"}
    D -->|ない| E["要確認・資料を残す"]
    D -->|ある| F{"私用が混ざる?"}
    F -->|混ざらない| G["経費・仕入等"]
    F -->|混ざる| H["按分・一部除外"]

領収書があるから経費、ではありません。

クレジットカード明細に出ているから経費、でもありません。

逆に、個人カードで払ったから経費にならない、でもありません。

大事なのは、

その支出が、売上を作るため・事業を続けるために必要だったと説明できるか

です。

せどり・物販では、Amazon、楽天市場、コンビニ、家電量販店、ヤマト運輸、ガソリンスタンド、スマホ料金、自宅家賃など、事業と私用が混ざりやすい支出が大量に出てきます。

この章では、経費判断を「勘」から「手順」に変えます。


1. 経費判断の基本

経費になるかを、3つの順番で確認します 経費になるかの3ステップ 「経費で落ちるか」ではなく、この順番で自分に聞きます STEP 1 事業との関係を説明できるか 仕入れ・販売・発送・管理に 必要な支出か STEP 2 証拠が残っているか レシート・領収書・注文履歴 日付・金額・内容・目的 STEP 3 私用が混ざっていないか 混ざるなら家事按分 根拠を残して割合を決める 3つとも Yes 事業の経費として記帳する どれか一つでも説明できない 経費にしない(私用は事業主貸等) 判断に迷う支出は、資料を残したうえで税理士へ確認します
図27経費になるかの3ステップ

経費にできる可能性があるのは、事業に関係する支出です。

国税庁も、事業所得等の必要経費について、収入を得るために直接要した費用や、その年に生じた販売費・一般管理費など業務上の費用を挙げています。

難しく言うとこうなりますが、実務では次のように考えると分かりやすいです。

経費判断の四つの質問

質問 見ること
何のために使ったか 仕入、発送、保管、販売、事務、打合せ等
事業との関係を説明できるか 売上、在庫、顧客、販路、業務効率との関係
証拠があるか 領収書、明細、契約書、注文履歴、スクショ等
私用が混ざっていないか 家族利用、生活費、趣味、旅行、私物購入等

この四つに答えられない支出は、すぐに経費にせず「要確認」にします。

店名だけで判断しない

実務で一番多いミスが、店名だけで判断することです。

店名・支払先 あり得る内容
Amazon 仕入、備品、サブスク、私物
楽天市場 仕入、消耗品、家族の買い物、ギフト券
コンビニ 発送、印刷、飲食、私物
ヤマト運輸 事業発送、私用荷物、返品送料
家電量販店 仕入、PC、スマホ、家電、私物
ガソリンスタンド 仕入移動、配送、通勤、家族利用
ホテル・航空券 出張、仕入遠征、旅行

「Amazonだから全部仕入れ」

「コンビニだから全部プライベート」

「ヤマトだから全部荷造運賃」

という処理は危険です。

取引内容を見て判断します。


2. 事業との関係

経費判断では、「事業との関係」を説明できることが大切です。

せどり・物販なら、次のような関係が分かりやすいです。

支出 事業との関係
販売用商品の購入 仕入れ
梱包材 発送に必要
配送料 商品販売に必要
倉庫代 在庫保管に必要
ECツール 価格改定、在庫管理、販売管理に必要
会計ソフト 記帳・申告に必要
仕入れ移動の交通費 商品仕入れのため
仕事用PC 出品、受注、管理、記帳に必要

一方、次のような支出は、事業との関係を慎重に見ます。

支出 注意点
家族の買い物 原則として私用
日用品 事業用か私用か分かりにくい
食事 打合せ、出張、個人の食事を分ける
旅行 仕入・出張と私的旅行を分ける
スマホ 事業利用と私用利用を分ける
事業利用と私用利用を分ける
自宅 事業利用部分だけを考える

「事業に少し関係ある気がする」だけでは弱いです。

あとから見ても分かるように、メモを残します。

2026/7/10 ヤマト運輸 2,180円
Amazon販売商品の発送。注文番号〇〇。荷造運賃。
2026/7/12 カフェ 1,240円
外注先Aさんと商品登録作業の打合せ。参加者2名。

一言メモがあるだけで、経費判断の説得力がかなり変わります。


3. 証拠を残す

経費にするなら、証拠を残します。

証拠は、領収書だけではありません。

残す資料の例

取引 証拠の例
店舗仕入れ レシート、領収書、商品明細
ネット仕入れ 注文履歴、領収書、請求書、カード明細
発送費 送り状控え、発送履歴、領収書
サブスク 契約画面、請求書、利用明細
交通費 利用履歴、経路、訪問目的
飲食 領収書、参加者、目的
車両費 ガソリン明細、走行距離、利用目的
家賃 賃貸契約書、支払明細、使用面積
通信費 請求明細、事業利用割合
外注費 契約書、請求書、成果物、振込記録

領収書があっても、内容が分からなければ弱いです。

カード明細があっても、何を買ったか分からなければ弱いです。

注文履歴、レシート、メモを組み合わせて、説明できる状態にします。

「証拠保存」と「入力」は別

レシートを保存することと、会計ソフトに入力することは別です。

カード連携で記帳済みの取引について、レシートをもう一度入力すると二重になります。

レシートは、

  • 新しく入力するための資料
  • すでに連携された取引の証拠

のどちらかです。

第10章で扱ったように、入力対象なのか証拠保存だけなのかを分けます。


4. 個人の私用・家事按分

家事按分は、事業で使う分だけを経費にする考え方です 家事按分:全体のうち、事業の分だけ 家賃・電気代・車など、事業と私用が混ざる支出で使います 例:自宅の家賃 100,000円(作業・在庫スペースが3割の場合) 事業で使う部分 作業・在庫置き場 30% 私用部分 生活スペース 70% 地代家賃 30,000円 事業の経費として記帳 私用分 70,000円 経費にしない 「何%が正解」は外から決められません 面積・時間・使い方など、説明できる根拠を残し、同じ基準を続けます
図28家事按分は事業で使う分だけ

個人事業主では、一つの支出が事業と生活の両方に関係することがあります。

これを家事関連費といいます。

国税庁は、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引記録などに基づいて業務上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限られる、という趣旨の説明をしています。

つまり、

「なんとなく半分」

ではなく、

「なぜその割合なのか説明できる」

ことが大事です。

家事按分の例

支出 按分基準の例
自宅家賃 事業利用面積、部屋数、使用状況
電気代 事業利用時間、部屋、設備
水道代 事業利用の有無、作業内容
ガス代 事業利用の有無
通信費 事業利用時間、回線用途、端末用途
スマホ代 事業利用割合、通話・通信履歴
ガソリン代 走行距離、仕入・配送の頻度
ETC・駐車場 事業移動と私用移動の区分
車両保険・車検 車両の事業利用割合

「何%ならOK」は誰も決められない

家事按分でよくある質問が、

「家賃は何%まで経費にできますか?」

「車は何%なら大丈夫ですか?」

です。

これは、外から一律に決められるものではありません。

同じ自宅でも、専用部屋がある人、リビングの一角で作業する人、在庫保管に使う人、ほとんど使わない人で違います。

同じ車でも、仕入れ・配送が中心の人、週末だけ使う人、家族利用が多い人で違います。

按分率は、次のように決めます。

  1. 実際の利用状況を確認する
  2. 面積、時間、距離、回数など説明しやすい基準を選ぶ
  3. その基準で割合を出す
  4. 毎年の変更理由を残す

毎年割合が変わること自体が悪いわけではありません。

事業の使い方が変わったなら、割合が変わることもあります。

ただし、理由なく毎年ころころ変えると説明しにくくなります。


5. 事業主貸・事業主借

事業主貸と事業主借は、お金が動いた向きで決まります 事業主貸と事業主借は「向き」で決まる 事業のお金から見て、どちらへ動いたかを見ます 事業のお金 事業用口座 事業用カード 事業の現金 個人のお金 生活費の財布 個人カード 個人の口座 事業主貸 例:事業口座から 生活費を出した 事業主借 覚え方:事業から出て行ったら「貸」、事業へ入れてもらったら「借」
図29事業主貸と事業主借の向き

個人事業主では、事業主貸・事業主借を使います。

この二つは、事業と個人のお金の行き来を表す科目です。

事業主貸

事業のお金を、個人側へ出したときに使います。

  • 事業用口座から生活費を引き出した
  • 事業用カードで私物を買った
  • 事業用ポイントを私用に使った
  • 事業用口座から個人の税金を払った

事業用カードで11,000円の私物を買った場合

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 11,000円 未払金/カード 11,000円

これは経費ではありません。

利益を減らすものではなく、事業のお金を個人側で使ったことを表します。

事業主借

個人のお金で、事業の支払いをしたときに使います。

  • 個人カードで販売用商品を仕入れた
  • 個人の財布から事業用の消耗品を買った
  • 個人口座から事業の経費を支払った

個人カードで20,000円の商品を仕入れた場合

借方 金額 貸方 金額
仕入高 20,000円 事業主借 20,000円

事業主貸は「不明処理」ではない

実務で多いのが、

「分からないから事業主貸」

です。

これは危険です。

事業主貸は、私用だと確認できた取引や、事業から個人へお金が動いた取引に使います。

ギフト券購入、資金移動、返金、前払、電子マネー残高などを、分からないまま事業主貸にすると、本来残すべき資産や取引が帳簿から消えることがあります。

分からないものは「要確認」にします。


6. 法人の役員・従業員立替

法人では、事業主貸・事業主借を使いません。

会社と個人は別人格です。

そのため、役員や従業員が会社の経費を立て替えた場合は、会社がその人にお金を返す必要があります。

役員が個人カードで会社経費を払った

役員が個人カードで5,000円の会社備品を購入した場合

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,000円 未払金/役員立替 5,000円

後日、会社口座から役員へ精算したとき

借方 金額 貸方 金額
未払金/役員立替 5,000円 普通預金 5,000円

従業員立替

従業員立替も同じです。

ただし、法人では内部ルールを作ります。

  • 申請期限
  • 領収書の提出方法
  • 利用目的の記載
  • 承認者
  • 精算日
  • 振込方法

立替精算は、放置すると誰にいくら返すべきか分からなくなります。

月次で精算する運用にしてください。


7. 役員借入金・役員貸付金

法人では、役員とのお金の行き来がよく出ます。

ここは、個人事業主との大きな違いです。

役員借入金

役員が会社へお金を入れた状態です。

  • 社長個人のお金で会社経費を払った
  • 社長個人口座から会社口座へ資金を入れた
  • 会社の資金不足を社長が一時的に補った

会社から見ると、社長から借りている状態です。

役員貸付金

会社が役員へお金を貸している状態です。

  • 法人カードで役員の私物を買った
  • 会社口座から役員の生活費を払った
  • 会社のお金を役員が私用で引き出した
  • 役員が会社へ返すべき精算金が残っている

会社から見ると、役員へ貸している状態です。

役員貸付金は放置しない

役員貸付金は、長期間放置しないでください。

税務上、利息や給与課税等の論点が出ることがあります。

金融機関から見ても、会社のお金が役員個人へ流れているように見えるため、融資審査上マイナスに見られることがあります。

発生したら、次を確認します。

  • なぜ発生したか
  • いつ返済するか
  • 利息をどうするか
  • 役員報酬・賞与と見られないか
  • 顧問税理士へ確認したか

せどり法人では、法人カードで私物を買ってしまうケースが意外とあります。

少額でも、早めに精算してください。


8. 飲食・車・家賃・通信費

ここでは、質問が多い費用をまとめます。

飲食

飲食代は、次を残します。

  • 誰と行ったか
  • 何の目的か
  • 事業との関係
  • 金額
  • 領収書

一人で食べた昼食は、原則として私用です。

外注先との打合せ、取引先との商談、出張中の業務上必要な支出など、事業との関係を説明できるものは、資料を残して判断します。

車関係は、せどりでよく出ます。

支出
ガソリン代 仕入れ移動、配送、私用移動
ETC 高速道路、仕入れ遠征
駐車場 月極、コインパーキング
車検・保険 事業利用割合で按分することがある
車両購入 固定資産、減価償却の論点

車は、走行距離で分けると説明しやすいです。

年間走行距離 10,000km
事業利用 6,000km
私用利用 4,000km
事業利用割合 60%

走行距離を細かく取れない場合でも、仕入頻度、配送回数、利用日数など、説明できる基準を残します。

家賃・自宅兼事務所

自宅兼事務所の場合、事業に使っている部分だけを考えます。

按分基準の例

  • 作業部屋の面積
  • 在庫保管スペース
  • 仕事専用スペース
  • 使用時間

住宅ローンの場合は、賃貸家賃のように返済額をそのまま経費にするわけではありません。

建物の減価償却、借入金利息、住宅ローン控除などが絡むため、必ず専門家に確認してください。

通信費

スマホ、インターネット、クラウド通信費は、事業利用と私用利用が混ざりやすいです。

利用状況 処理の考え方
事業専用回線 原則として事業経費として処理しやすい
私用兼用スマホ 事業利用割合で按分
家族共用回線 事業利用分を説明できる範囲で按分
法人契約で私用利用 役員・従業員利用の扱いを確認

スマホを事業で使っているなら、仕入れ連絡、出品、価格確認、発送連絡、経理作業など、どの業務で使っているか説明できるようにします。


9. 家族・友人との取引

家族や友人との取引は、金額が小さくても注意が必要です。

家族へ支払う家賃・給与

個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族へ家賃や給与を支払う場合、通常の外部取引と同じようには扱えないことがあります。

国税庁も、生計を一にする親族に支払う地代家賃等や給与賃金について、原則として必要経費にならない場合があること、青色事業専従者給与や事業専従者控除などの特別な扱いがあることを案内しています。

つまり、

「妻に手伝ってもらったから外注費」

「親の家を使っているから家賃」

と単純に処理できるとは限りません。

友人への支払い

友人へ作業を依頼した場合は、取引内容を明確にします。

  • 何を依頼したか
  • いくらで依頼したか
  • 成果物は何か
  • 請求書や領収書があるか
  • 振込記録があるか
  • 継続的な雇用ではないか

友人だから資料なしで現金払い、は避けてください。

身近な人との取引ほど、資料を残します。


10. 外注費と給与

外注費と給与の区分も重要です。

外注費にすれば何でも経費、というわけではありません。

実態として従業員のように働いている場合、給与として扱うべきことがあります。

外注費に近い例

  • 商品撮影を一件いくらで依頼した
  • 商品登録を成果物単位で依頼した
  • デザイン制作を依頼した
  • システム設定を依頼した
  • 請求書に基づいて支払った

給与に近い例

  • 毎日決まった時間に作業している
  • 指揮命令を受けて働いている
  • 時給・日給で支払っている
  • 会社の道具・場所で働いている
  • 欠勤や勤務時間を管理している
  • 他社の仕事を自由に受けにくい

外注費か給与かは、契約書の名前だけで決まりません。

実態で判断されます。

従業員を雇う場合は、源泉所得税、社会保険、労働保険、年末調整などの論点も出てきます。

迷う場合は、税理士や社労士へ確認してください。


11. 領収書がない場合

領収書がないから絶対に経費にできない、というわけではありません。

ただし、説明できる資料が必要です。

代わりに残すもの

支出 代替資料
ネット購入 注文履歴、領収書PDF、カード明細
交通費 交通系IC履歴、経路、訪問先、目的
銀行振込 振込明細、請求書、契約書
サブスク 請求メール、利用明細、契約画面
現金払い 出金伝票、メモ、相手先資料
駐車場 利用日、場所、目的、金額メモ

出金伝票・メモに残す内容

領収書がない場合は、最低限、次をメモします。

  • 日付
  • 金額
  • 支払先
  • 内容
  • 事業との関係
  • 領収書がない理由
  • 支払方法

ただし、領収書なしの取引が多すぎると弱いです。

できる限り、領収書・明細・スクショを残す運用にしてください。


12. 専門家へ確認する境界

次の取引は、自己判断で進めず、税理士等へ確認してください。

  • 自宅兼事務所の家賃・住宅ローン・減価償却
  • 車両購入、車両売却、リース
  • 役員貸付金が残っている
  • 法人カードで役員・従業員の私物を買った
  • 家族への給与・家賃・外注費
  • 外注費か給与か判断が難しい
  • 金額の大きい飲食・旅行・出張
  • 事業と私用が大きく混ざるスマホ・通信費
  • 住宅ローン控除や不動産所得が絡む
  • 税務調査で説明できるか不安な支出

この教材で大事にしているのは、

「無理に経費にする」

ことではありません。

あとから見ても説明できる帳簿にすることです。

説明できる支出は経費として検討し、説明できない支出は無理に入れない。

この姿勢が、長く安全に物販を続ける土台になります。


よくある質問

Q1 事業主貸はプライベートという意味ですか?

個人事業主では、事業のお金を個人側へ出した取引等に使います。

実務上「プライベート」と近い場面で使うことは多いですが、不明取引を消すための科目ではありません。

私用だと確認できたものに使います。

Q2 個人カードで仕入れた商品は経費になりますか?

事業用の商品を仕入れていて、証拠があるなら、個人カードで払っていても帳簿に反映します。

個人事業主なら事業主借、法人なら役員立替・未払金等で処理することがあります。

Q3 法人カードで私物を買ってしまいました。

会社が役員や従業員へ貸した状態として、役員貸付金等で管理することがあります。

削除して終わりにしないでください。

早めに会社へ返金し、顧問税理士へ確認してください。

Q4 家賃は何%まで経費にできますか?

一律の正解はありません。

事業で使っている面積、時間、用途などから、合理的に説明できる割合を決めます。

専用部屋がある場合、在庫保管スペースがある場合、リビングの一角だけの場合で割合は変わります。

Q5 車の按分率は毎年変えてもよいですか?

実際の利用状況が変わるなら、按分率が変わることはあります。

ただし、理由なく変えるのではなく、走行距離、利用頻度、事業利用日数などの根拠を残してください。

Q6 コンビニ支払いは全部プライベートでよいですか?

内容によります。

私用の買い物ならプライベートです。

発送、印刷、梱包資材、事業用備品などであれば経費になる可能性があります。

店名ではなく内容で判断します。

Q7 家族に手伝ってもらったので外注費にできますか?

生計を一にする家族への支払いは、通常の外注費とは扱いが異なることがあります。

青色事業専従者給与、事業専従者控除、給与、外注費などの論点があるため、税理士へ確認してください。

Q8 領収書をなくしました。

注文履歴、カード明細、振込明細、スクショ、出金伝票、メモなど、代わりに説明できる資料を残します。

ただし、領収書なしが多い状態は避けてください。


実務チェックリスト

月次で次を確認してください。

  • 店名だけで経費判断していない
  • 仕入・経費・私用を内容で分けた
  • 領収書、注文履歴、カード明細等を保存した
  • 私用支出を経費に入れていない
  • 個人カードで事業支出をしたものを拾った
  • 事業用カードの私用利用を事業主貸等で区分した
  • 法人では事業主貸・事業主借を使っていない
  • 役員立替・従業員立替を精算できる状態にした
  • 役員貸付金を放置していない
  • 家事按分の割合と根拠を残した
  • 飲食費は参加者・目的を残した
  • 家族・友人への支払いは資料を残した
  • 外注費と給与の境界を確認した
  • 判断が難しい支出を専門家確認リストへ入れた

参考にした公式情報


次章へのつなぎ

ここまでで、売上、仕入れ、カード、現金、電子マネー、ポイント、事業・私用区分を整理しました。

次の第13章では、いよいよ在庫と棚卸しを扱います。

せどり・物販では、棚卸しを間違えると利益が大きく変わります。

「仕入れたけれど、まだ売れていない商品」を正しく集計し、売上原価を理解していきましょう。


第13章

棚卸しと売上原価を理解しよう

共通個人法人

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 仕入れと売上原価の違いを説明できる
  • 棚卸しを入れると利益が変わる理由が分かる
  • 月末・年末・決算日の在庫を集計できる
  • Amazon FBA在庫、自宅在庫、外部倉庫在庫を漏れなく確認できる
  • ポイント仕入れ商品の棚卸価額を、仕入処理と合わせて考えられる
  • 返品、破損、紛失、廃棄、家事消費を棚卸から整理できる
  • 棚卸表に必要な項目を理解できる
  • 税込・税抜の混在を防げる
  • 複数倉庫・大量SKUでも棚卸の流れを作れる

棚卸と売上原価の関係 仕入れた分が、そのまま経費になるのではない 経費になるのは「売れた分」だけ 期首の在庫 300,000円 当期の仕入れ 1,000,000円 合計 1,300,000円 分ける 期末に残った在庫 400,000円 資産(経費にならない) 売れた分=売上原価 900,000円 これだけが経費になる 期首在庫 + 当期仕入 - 期末在庫 = 売上原価 在庫が増えると、経費が減って利益が増える。棚卸をしないと、この計算ができません ここが分かると、利益の見え方が変わります
図30仕入れた分が、そのまま経費になるわけではありません

最初に結論

せどり・物販で、利益を正しく出すために一番大事なのが棚卸しです。

理由はシンプルです。

仕入れた商品でも、まだ売れていないものは、その年・その月の売上原価にはまだなりません。

商品を100万円仕入れても、月末に40万円分が売れ残っているなら、その40万円は在庫として残ります。

その月に売れた商品の原価だけが、売上原価になります。

基本式はこれです。

期首在庫 + 当期仕入高 − 期末在庫 = 売上原価

この式を、まず丸ごと覚えてください。

flowchart LR
    A["期首在庫"] --> D["売上原価"]
    B["当期仕入高"] --> D
    C["期末在庫"] -->|差し引く| D
    D --> E["売上総利益"]

棚卸しが入っていない利益は、かなりズレている可能性があります。

特にせどりでは、カードで先に大量仕入れをして、販売は翌月以降になることがあります。

このとき、仕入れた金額を全部その月の原価にしてしまうと、利益が低く見えます。

逆に、在庫を多く数えすぎると、利益が高く見えます。

棚卸しは、税金を調整するための数字ではありません。

決算日・月末に実際に残っている商品を、正しく数える作業です。


1. 仕入れと売上原価

仕入れと売上原価は、似ていますが同じではありません。

用語 意味
仕入高 その期間に販売用商品を仕入れた金額
在庫 仕入れたが、まだ売れていない商品
売上原価 売れた商品の仕入原価

せどり初心者が最初に混乱するのは、

「仕入れたら経費じゃないの?」

という部分です。

お金は出ています。

カードも使っています。

銀行残高も減ります。

でも、商品がまだ売れていないなら、その商品は在庫として残っています。

在庫は、翌月以降に売れたとき、売上原価になります。

数字で見る例

1月に商品を1,000,000円仕入れました。

1月末に、400,000円分が売れ残っています。

この場合、1月の売上原価は600,000円です。

期首在庫    0円
当期仕入高 1,000,000円
期末在庫 △400,000円
----------------------
売上原価  600,000円

もし、期末在庫を入れずに仕入1,000,000円を全部原価にすると、利益が400,000円少なく見えます。

逆に、期末在庫を600,000円と多く数えてしまうと、利益が200,000円多く見えます。

棚卸しは、利益を大きく動かします。


2. 月末・年末の在庫

棚卸しは、基準日が大事です。

個人事業主なら、年末は12月31日です。

法人なら、決算月の末日です。

月次で利益を見たい場合は、月末時点の在庫を確認します。

基準日の例

目的 基準日
個人事業主の確定申告 12月31日
3月決算法人 3月31日
6月末の月次確認 6月30日
10月末の利益確認 10月31日

大切なのは、基準日と違う日の在庫をそのまま使わないことです。

たとえば、10月末の利益を見たいのに、11月10日に取得した在庫金額を使うと、11月1日〜10日の仕入れ・販売が混ざります。

概算で見ることはありますが、その場合は「概算」「取得日」を明記します。

月次は概算でもよいが、決算は正確に

毎月すべての商品を実地で数えるのは大変です。

月次では、在庫管理システム、FBAデータ、販売管理ツール等を使って概算で把握することもあります。

ただし、年末・決算日は、できるだけ正確に棚卸表を作ります。

月次管理と決算棚卸は、目的が違います。

種類 目的 精度
月次棚卸 利益の傾向を見る 概算でも可
中間照合 半年時点の残高確認 できるだけ正確
決算棚卸 申告・決算書に使う 正確に作る

棚卸に含めるもの

基準日時点で、自社が所有していて、まだ売れていない販売用商品を集計します。

保管場所は問いません。

  • 自宅
  • 事務所
  • 店舗
  • Amazon FBA倉庫
  • 楽天・Yahoo!等の倉庫
  • 外部倉庫
  • 納品代行先
  • 外注先
  • 輸送中・検品中
  • 返品処理中

「手元にないから在庫ではない」とは限りません。

所有しているかどうか、販売済みかどうか、基準日時点でどういう状態かを確認します。

月末前後のカットオフ

棚卸しでは、月末前後の取引を特に丁寧に見ます。

12月31日に在庫へ含めるか、翌年1月の取引として扱うかで、利益が変わるからです。

状況 確認すること
12月31日に仕入先から発送済み 所有権、納品条件、到着日、請求書
12月31日に自社へ到着済み 検品前でも所有しているか
12月31日に販売済み 売上計上基準、発送日、取引完了日
12月31日に発送準備中 在庫から外すか、売上計上と合わせる
1月1日に売れた 原則として翌期の売上・在庫移動

在庫から外すタイミングと、売上を計上するタイミングは揃えます。

たとえば、12月31日にまだ売上として計上していない商品を、棚卸からも外してしまうと、売上も在庫もない状態になります。

月末前後の商品は、販売日、発送日、到着日、取引完了日をメモしておきます。


3. Amazon FBA在庫

Amazon FBA在庫は、せどりの棚卸しで最もよく出てくる在庫です。

FBA倉庫にある商品は、手元にはありません。

でも、自分の商品です。

したがって、決算日や月末時点で売れていないFBA在庫は棚卸に含めます。

FBA在庫で確認すること

確認するもの 内容
商品名・SKU どの商品か
数量 何個残っているか
状態 販売可能、販売不可、返品中等
仕入単価 1個あたりいくらで仕入れたか
合計金額 数量×仕入単価
基準日 何月何日時点の在庫か

Amazonの在庫レポートや在庫元帳等を使うと、商品と数量を確認できます。

ただし、Amazonの在庫データには、仕入単価が入っていないことがあります。

その場合、自分で仕入単価を入力して棚卸金額を出します。

FBA在庫の注意点

FBA在庫では、次の漏れがよくあります。

漏れやすいもの 注意点
販売不可在庫 売れない状態でも、所有していれば確認対象
返品中の商品 返品処理中・検品中を確認
受領前の商品 FBAへ発送済みだが受領前の商品
自己配送在庫 FBA以外の手元在庫
別アカウント在庫 家族・法人・複数アカウントの在庫混在
ツール上の在庫 プライスター等の在庫データとのズレ

FBA在庫だけで事業をしているなら、FBAデータを中心に棚卸できます。

ただし、

「FBAのみの出品です」

という場合でも、本当に自宅在庫、返品在庫、納品前在庫、販売不可在庫がないか確認してください。


4. 自宅・倉庫・外注先在庫

FBA以外の在庫も忘れないようにします。

特に次の場所は漏れやすいです。

自宅・事務所

  • これから納品する商品
  • 返品されて戻ってきた商品
  • 検品中の商品
  • 修理中の商品
  • 出品前の商品
  • 自己配送用の商品
  • 破損確認中の商品

外部倉庫・納品代行先

  • 納品代行会社に預けている商品
  • 検品待ちの商品
  • ラベル貼付待ちの商品
  • FBA納品前の商品
  • 倉庫移動中の商品

外注先・スタッフ宅

  • 撮影用に渡した商品
  • 検品作業中の商品
  • 梱包作業中の商品
  • 返品対応中の商品

保管場所台帳を作る

棚卸しの前に、保管場所を一覧にします。

保管場所 担当者 在庫データ 棚卸方法
Amazon FBA 代表者 在庫レポート CSV取得
自宅倉庫 代表者 手元管理表 実地確認
外部倉庫A 倉庫担当 月末在庫表 PDF/CSV取得
納品代行B 外注先 納品待ちリスト 月末残高確認

「どこに在庫があるか」を書き出すだけで、棚卸漏れはかなり減ります。


5. ポイント仕入れ

ポイントを使って仕入れた商品も、売れ残っていれば棚卸対象です。

ここは第11章で詳しく扱いました。

第13章では、棚卸との関係だけ確認します。

仕入処理と棚卸処理を一致させる

10,000円の商品を2,000ポイント、カード8,000円で仕入れたとします。

この商品が決算日に売れ残っている場合、棚卸金額をいくらにするかは、仕入処理と合わせます。

仕入処理 棚卸の考え方
8,000円仕入として処理 棚卸も8,000円を基準
10,000円仕入+ポイント分を雑収入等で処理 棚卸も10,000円を基準

大事なのは、仕入では10,000円、棚卸では8,000円のように混ぜないことです。

処理方法が混ざると、利益がズレます。

未使用チャージ・未使用ギフト券

ギフト券や電子マネーを購入・チャージしていて、まだ使っていない残高がある場合、それは商品在庫ではありません。

ただし、ギフト券購入時やチャージ時に仕入として処理してしまっている場合、未使用残高が仕入に入ったままになります。

この場合、決算時に調整が必要になることがあります。

年末・決算月には、次を確認します。

  • 未使用のAmazonギフト券
  • 未使用のApple Gift Card
  • 未使用の電子マネー残高
  • 未使用のポイント残高のうち重要なもの
  • チャージ金額を仕入にしていないか

6. 返品・破損・紛失・廃棄

棚卸しでは、通常在庫だけでなく、返品、破損、紛失、廃棄も確認します。

返品された商品

返品された商品は、状態によって扱いが変わります。

状態 確認すること
再販売できる 在庫に戻す
開封済みだが販売可能 販売予定価格・状態を確認
破損あり 在庫価値を確認
返品処理中 どこにあるか確認
返金済みだが商品未着 売掛金・在庫・返金を確認

再販売できるなら、棚卸に含めます。

再販売できない場合は、廃棄、評価減、損失処理などを検討します。

具体的な税務処理は、金額や資料によって変わるため、税理士等に確認してください。

破損・紛失

破損・紛失があった場合、ただ在庫から消すのではなく、証拠を残します。

  • 破損写真
  • Amazonや倉庫の通知
  • 返品理由
  • 配送事故の記録
  • 補填・保険金の有無
  • 廃棄記録
  • 社内承認

補填や保険金を受け取った場合は、入金側の処理も必要です。

廃棄

廃棄した商品は、廃棄した証拠を残します。

  • 廃棄日
  • 商品名
  • 数量
  • 仕入金額
  • 廃棄理由
  • 写真
  • 廃棄業者の明細
  • 承認者

廃棄は、税務調査でも説明が求められやすい部分です。

「売れないから消した」ではなく、なぜ廃棄したかを残します。


7. 家事消費

販売用に仕入れた商品を、自分や家族で使うことがあります。

これを家事消費と呼ぶことがあります。

  • 販売用に仕入れた食品を自宅で消費した
  • 販売用の日用品を家庭で使った
  • 仕入れたスマホを私用にした
  • 販売用の家電を家族が使った

この場合、その商品はもう販売用在庫ではありません。

棚卸から外すだけでなく、事業外利用として記録します。

家事消費で残すもの

項目 内容
日付 いつ事業外利用したか
商品名 何を使ったか
数量 何個使ったか
仕入金額 いくらで仕入れたか
理由 私用、家族利用、サンプル利用等
処理 事業主貸、役員関係取引等

個人事業主と法人では処理が変わります。

個人事業主が販売用商品を家事消費した場合、所得税では、その商品を売上(家事消費売上)として収入金額へ計上する扱いが原則とされています。計上する金額の考え方には一定のルールがあるため、上の記録を残したうえで、具体的な金額は税理士または税務署へ確認してください。

法人で販売用商品を役員・従業員が私用利用する場合は、給与、貸付、売上、福利厚生等の論点が出る可能性があります。

金額が大きい場合は、必ず税理士へ確認してください。


8. 無在庫販売

無在庫販売では、通常の在庫販売と違い、注文後に仕入れることがあります。

この場合も、基準日時点の状態を確認します。

確認すること

状態 確認すること
注文を受けたが、まだ仕入れていない 売上計上・仕入義務・キャンセル可能性
仕入れたが、まだ発送していない 在庫または仕掛中の扱い
仕入先から直接顧客へ発送 所有権、発送日、売上日
顧客へ発送済み 売上・仕入・送料の処理
返品・キャンセル中 売上、仕入、在庫、返金を確認

無在庫販売は、在庫が少ないように見えますが、注文残、未発送、仕入先への未払い、顧客への返金義務などが残ることがあります。

棚卸だけでなく、売掛金、買掛金、未払金も一緒に確認します。


9. 前期からの繰越在庫

前期末の在庫は、翌期の期首在庫になります。

これは絶対につながります。

前期末在庫 = 当期首在庫

前期末在庫が1,000,000円なら、翌期は期首在庫1,000,000円から始まります。

前期在庫は「去年の経費」では終わらない

よくある質問が、

「昨年仕入れて売れ残った商品は、昨年の経費になっているのですか?」

です。

売れ残っている商品は、前期末では在庫として残っています。

翌期に売れたとき、売上原価になります。

つまり、前期在庫は翌期へ引き継がれます。

過去の棚卸が分からない場合

過去の棚卸表がない場合、利益の計算が大きくズレる可能性があります。

可能な限り、次の資料から復元します。

  • 前期の棚卸表
  • 在庫管理システム
  • Amazon・販路データ
  • 仕入明細
  • 販売履歴
  • 決算書・申告書
  • 税理士からの資料

それでも分からない場合は、自己判断で適当な数字を入れず、税理士へ相談してください。


10. 税込・税抜

棚卸金額は、税込で出すのか、税抜で出すのかを統一します。

ここが混ざると、利益も消費税もズレます。

基本の考え方

事業者・経理方式 棚卸金額
免税事業者 税込で管理することが多い
課税事業者・税込経理 税込で管理
課税事業者・税抜経理 税抜で管理

実務では、記帳担当者や税理士から、

「税抜で棚卸金額を教えてください」

「税込で棚卸金額を教えてください」

と言われることがあります。

必ず、自分の経理方式に合わせます。

税込・税抜を混ぜない

棚卸表では、次のように明記します。

  • 税込金額
  • 税抜金額
  • 税率
  • 軽減税率対象か
  • 複数税率が混ざるか

食品、日用品、家電、海外仕入れ、ポイント仕入れが混ざると、税込・税抜の判断が面倒になります。

消費税の詳しい処理は第15章で扱います。

この章では、まず「税込・税抜を混ぜない」と覚えてください。


11. 棚卸表

棚卸表は、在庫の証拠です。

単に合計金額だけをメモするのではなく、後から見て分かる形にします。

棚卸表の項目例

項目 内容
基準日 2026年12月31日
保管場所 FBA、自宅、外部倉庫等
SKU・管理番号 商品を特定する番号
商品名 商品名・型番
状態 新品、中古、販売不可、返品中等
数量 在庫数
仕入単価 1個あたりの仕入金額
棚卸金額 数量×仕入単価
税込・税抜 どちらで集計したか
証拠資料 在庫CSV、写真、管理表等
メモ 返品中、破損、廃棄予定等

棚卸表の例

保管場所 SKU 商品名 数量 仕入単価 棚卸金額 メモ
FBA A001 ワイヤレスイヤホン 10 2,000円 20,000円 販売可能
自宅 B015 スマホケース 30 500円 15,000円 出品前
外部倉庫 C120 ゲームソフト 5 3,000円 15,000円 検品中

合計50,000円が棚卸高になります。

合計だけでは弱い

「棚卸金額 6,521,228円」

という合計だけでは、後から確認しにくいです。

最低限、商品別、場所別、数量、単価の根拠を残します。

取引量が多い場合は、在庫システムやCSVを保存し、会計ソフトには合計金額を入れる形でも構いません。

ただし、合計の根拠資料は必ず保存してください。

棚卸表を作る手順

実際の作業は、次の順番で進めます。

  1. 基準日を決める
  2. 保管場所をすべて書き出す
  3. 保管場所ごとの在庫データを取得する
  4. 手元在庫を実際に数える
  5. 商品ごとの仕入単価を確認する
  6. 数量×仕入単価で棚卸金額を出す
  7. 税込・税抜を統一する
  8. 返品・破損・販売不可在庫を区分する
  9. 合計金額と根拠資料を保存する
  10. 会計ソフトへ反映する

先に合計金額を作ろうとすると、どの商品が含まれているか分からなくなります。

まず場所別、次に商品別、最後に合計です。

仕入単価に含めるもの

棚卸金額を出すときは、商品ごとの仕入単価を使います。

ただし、実務では「どこまでを仕入単価に含めるか」で迷います。

費用 考え方
商品本体価格 棚卸単価の中心
仕入時の送料 仕入付随費用として含めるか、別科目にするかを統一
関税・輸入消費税 輸入仕入では確認が必要
検品・加工費 商品取得に直接関係するか確認
FBA納品送料 仕入付随費用か発送・物流費か運用確認
販売手数料 通常は棚卸単価には含めない
販売後の送料 通常は棚卸単価には含めない

初心者向けには、まず「商品をいくらで仕入れたか」を基準に棚卸表を作ります。

ただし、輸入、加工、納品代行、送料込み仕入れ、セット組み、ポイント仕入れが多い場合は、取得価額の考え方を税理士等へ確認してください。

一番避けたいのは、ある商品は送料込み、別の商品は送料抜き、ある月は税込、別の月は税抜というように、集計基準が混ざることです。

MFクラウドへ反映するイメージ

日々の仕入れを「仕入高」で記帳している場合、決算時に期末在庫を反映することで、売上原価が調整されます。

会計ソフト上では、科目名や画面名は設定により異なりますが、考え方は次のとおりです。

当期に仕入れた商品
 ↓
売れた分  売上原価になる
売れ残り分 商品・在庫として翌期へ繰り越す

仕訳の形で見ると、期末に売れ残った商品を「商品」等の資産として残し、損益計算書上では期末商品棚卸高として売上原価から差し引くイメージです。

実際の入力方法は、MFクラウドの画面構成や勘定科目設定によって変わります。手順はマネーフォワード公式サポートで最新の画面を確認してください。

この章では、次だけ押さえてください。

棚卸表の合計金額を会計ソフトへ反映して、売れ残った商品を当期の売上原価から外す。


12. 在庫が利益へ与える影響

棚卸金額が変わると、利益が変わります。

売上が10,000,000円、当期仕入が7,000,000円、経費が1,000,000円だとします。

期末在庫が1,000,000円の場合

売上高   10,000,000円
売上原価  6,000,000円
経費    1,000,000円
利益    3,000,000円

期末在庫が2,000,000円の場合

売上高   10,000,000円
売上原価  5,000,000円
経費    1,000,000円
利益    4,000,000円

期末在庫が1,000,000円違うだけで、利益も1,000,000円変わります。

在庫を少なく数えると

  • 売上原価が増える
  • 利益が少なくなる
  • 税金が少なく見える
  • 翌期の期首在庫も少なくなる

在庫を多く数えると

  • 売上原価が減る
  • 利益が多くなる
  • 税金が多く見える
  • 翌期の期首在庫も多くなる

在庫は、当期だけでなく翌期にも影響します。

だから、毎年つながる数字として管理します。


13. 複数倉庫・大量SKUの管理

年商が大きくなると、棚卸しは根性では回らなくなります。

年商1億円以下の段階でも、SKUが増えると手作業だけでは危険です。

年商数億円から20億円規模を目指すなら、棚卸しは仕組みにします。

決めること

決めること 内容
在庫管理システム どのシステムを正とするか
保管場所 FBA、自社倉庫、外部倉庫、納品代行
SKUルール 商品を一意に識別できるか
仕入単価 どのデータから取るか
棚卸頻度 月次、四半期、決算時
実地棚卸 誰が数え、誰が確認するか
差異調整 システム在庫と実在庫の差をどう処理するか
承認 棚卸表を誰が承認するか

大量SKUの棚卸手順

  1. 保管場所を一覧化する
  2. 各場所の在庫データを取得する
  3. SKU・商品名・数量を統一する
  4. 仕入単価を紐づける
  5. 販売不可・返品中・輸送中を区分する
  6. 実地棚卸で差異を確認する
  7. 差異理由を記録する
  8. 棚卸表を確定する
  9. 会計ソフトへ反映する
  10. 翌期首在庫として引き継ぐ

バックアップを残す

棚卸表は、あとから確認される資料です。

次を保存します。

  • 確定版の棚卸表
  • 元CSV
  • 在庫システムのエクスポート
  • 棚卸実施日の写真
  • 外部倉庫からの在庫証明
  • 差異調整表
  • 承認履歴

ファイル名には、基準日を入れます。

2026-12-31_棚卸表_確定版.xlsx
2026-12-31_AmazonFBA在庫.csv
2026-12-31_自宅在庫写真.zip

よくある質問

Q1 棚卸は売値で集計しますか?

原則として、売値ではなく仕入金額を基準にします。

10,000円で売る予定の商品でも、3,000円で仕入れたなら、棚卸は3,000円を基準に考えます。

Q2 FBA在庫だけ集計すればよいですか?

FBA以外に在庫がないなら、FBA在庫が中心になります。

ただし、自宅在庫、返品在庫、納品前在庫、販売不可在庫、自己配送在庫がないか確認してください。

Q3 Amazonの在庫データに仕入金額が出ません。

在庫データには数量しか出ないことがあります。

その場合、仕入明細や在庫管理表から仕入単価を入力し、数量×仕入単価で棚卸金額を出します。

Q4 月末の棚卸を取り忘れました。

できるだけ近い日のデータを使い、月末以降の仕入れ・販売を調整して月末時点へ近づけます。

ただし、決算では正確性が重要です。

次回から、月末または翌月1日にデータを取得するルールを作ってください。

Q5 去年仕入れて売れ残った商品は、去年の経費ですか?

売れ残っている商品は、前期末では在庫として残ります。

翌期に売れたときに売上原価になります。

前期末在庫は、翌期首在庫として引き継がれます。

Q6 ポイントで仕入れた商品の棚卸はいくらですか?

仕入処理と一致させます。

ポイント利用後の金額で仕入処理しているなら、その金額を基準にします。

総額仕入+ポイント分を雑収入等で処理しているなら、総額を基準にすることがあります。

詳しくは第11章を確認してください。

Q7 壊れた商品や売れない商品は棚卸から外してよいですか?

自己判断で外さず、状態、写真、廃棄記録、販売不可理由を残します。

評価減、廃棄、損失処理などは税務判断が絡むため、金額が大きい場合は税理士へ確認してください。

Q8 税込と税抜が分かりません。

自社の経理方式を確認してください。

免税事業者、税込経理、税抜経理で扱いが変わります。

棚卸表には、税込か税抜かを必ず明記します。


実務チェックリスト

棚卸しを行うときは、次を確認してください。

  • 基準日を決めた
  • FBA在庫を確認した
  • 自宅・事務所・店舗在庫を確認した
  • 外部倉庫・納品代行先在庫を確認した
  • 返品中・販売不可在庫を確認した
  • 輸送中・検品中の商品を確認した
  • 商品別に数量を確認した
  • 仕入単価を確認した
  • ポイント仕入れ商品の処理を確認した
  • 未使用ギフト券・チャージ残高を確認した
  • 破損・紛失・廃棄の証拠を残した
  • 家事消費を記録した
  • 税込・税抜を統一した
  • 棚卸表の根拠資料を保存した
  • 前期末在庫と当期首在庫が一致している
  • 会計ソフトへ反映した

参考にした公式情報


次章へのつなぎ

棚卸しを反映すると、売上原価と利益が見えてきます。

ただし、利益だけを見ても経営判断はできません。

次の第14章では、利益、資金繰り、預金、売掛金、未払金、在庫残高をまとめて確認します。

「利益は出ているのにお金がない」

「在庫は多いのに資金が苦しい」

このような状態を、数字で説明できるようにしていきましょう。


在庫があるのは、手元だけではない 在庫があるのは、手元だけではない この4つを合計したものが、期末の在庫です 手元・自宅・倉庫 すぐ数えられる 一番忘れない場所 FBA倉庫 他人の倉庫でも自分の在庫 在庫レポートを取得 年末に落としておく 未着品(発注済み) 代金を払って未到着 所有権が移っていれば在庫 12月発注・1月着荷に注意 外注先・預け先 検品・梱包の代行先 OEMの製造委託先 忘れられやすい ①だけを数えて終わっているケースが、とても多いです FBAと未着品、本当に忘れやすいです
図31在庫があるのは、手元だけではありません

第14章

利益・資金繰り・残高を確認しよう

共通法人規模拡大

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 損益計算書で、売上・粗利・利益の流れを確認できる
  • 貸借対照表で、預金・売掛金・在庫・未払金・借入金の残高を確認できる
  • 売上総利益と、普段使っている「粗利」の違いを説明できる
  • 利益率が高すぎる・低すぎるときに、どこを疑えばよいか分かる
  • 「利益はあるのに現金がない」理由を整理できる
  • 預金残高、売掛金残高、未払金残高、在庫残高を照合できる
  • 仮払金・仮受金を放置してはいけない理由が分かる
  • 法人の月次試算表で、最低限見るべきポイントが分かる
  • 店舗別・販路別・部門別に、数字を見る入口が分かる

利益とキャッシュがズレる理由 利益は出ているのに、お金がない 伸びている事業ほど、この差は大きくなります 帳簿上の利益 1,000,000円 手元に残った現金 200,000円 差を生む3つの要因 在庫が増えた 仕入代金は出ていったが 売れていないので経費にならない 未払金がある カードの引き落としが これから来る 借入の元本返済 経費にならないのに 口座からは出ていく 税金がかかるのは、手元の現金ではなく「帳簿上の利益」 だから、利益が出ているのに納税資金が足りない、という事態が起きます
図32利益は出ているのに、お金がない理由

最初に結論

記帳が終わったら、最後に見るべきものは3つです。

1. 利益は自然か
2. 残高は実際と合っているか
3. 利益と現金のズレを説明できるか

この3つを確認して、はじめて「帳簿を経営に使える状態」になります。

逆に言うと、仕訳を全部登録しただけでは、まだ完成ではありません。

銀行連携がされている。

クレジットカード連携もされている。

Amazonや楽天の売上も入力した。

棚卸しも入れた。

それでも、預金残高や売掛金残高、カード未払金、在庫残高が実際と合っていなければ、どこかに漏れ・重複・期間ズレがある可能性があります。

せどり・物販の数字確認で大切なのは、損益計算書と貸借対照表をセットで見ることです。

損益計算書は、一定期間の成績表です。

売上
− 売上原価
= 売上総利益
− 経費
= 利益

貸借対照表は、ある時点の残高表です。

預金
売掛金
在庫
未払金
借入金
元入金・資本金など

月次や決算で確認する順番は、次の流れがおすすめです。

flowchart TD
    A["損益計算書を見る"] --> B["売上・粗利・利益率の違和感を確認"]
    B --> C["貸借対照表を見る"]
    C --> D["預金・売掛金・未払金・在庫を照合"]
    D --> E["利益と現金のズレを説明"]
    E --> F["違和感があれば仕訳・資料・残高へ戻る"]

本章では、この確認の型を身につけます。


1. 損益計算書

損益計算書は、一定期間の売上・原価・経費・利益を見る表です。

英語ではP/L、ピーエルと呼ばれます。

まずは、細かい勘定科目を全部読む必要はありません。

せどり・物販で最初に見るのは、次の4つです。

見る数字 意味
売上高 Amazon、楽天、Yahoo!、メルカリ、買取業者などの販売額
売上総利益 売上から売上原価を引いた利益
利益率 売上総利益 ÷ 売上高
控除前所得金額・税引前利益 売上総利益から経費を引いた後の利益

個人事業主向けの説明では「控除前所得金額」という表現が出ることがあります。

法人では「税引前当期純利益」や「当期純利益」のような表現が出ます。

いずれも、まずはこう理解してください。

売上総利益 = 商品販売で残った利益
控除前所得・税引前利益 = そこから経費を引いた後の利益

月次報告で見る形

記帳代行や税理士事務所から、次のような報告を受けることがあります。

売上高合計  :69,114,619円
売上総利益  : 6,929,151円
利益率    :10.02%
控除前所得金額: 4,616,396円

この報告を受けたら、最初に見るのは「前年・前月・自分の感覚とのズレ」です。

たとえば、普段の感覚では利益率10%前後なのに、急に30%と出ている。

あるいは、販路を増やして売上は伸びているのに、利益率が極端に下がっている。

このような場合、数字をそのまま信じるのではなく、違和感を伝えて確認します。

損益計算書で見る順番

損益計算書は、上から順に見ます。

順番 確認するもの 見るポイント
1 売上高 販路別の売上感覚と合っているか
2 売上原価 仕入れ・棚卸しが反映されているか
3 売上総利益 普段の粗利感覚と大きくズレていないか
4 経費 広告費、送料、手数料、外注費などが漏れていないか
5 利益 税金・資金繰りを考える前の利益として自然か

大事なのは、数字を一つだけで見ないことです。

売上だけを見ると、伸びているように見えます。

利益だけを見ると、儲かっているように見えます。

でも、在庫が増えすぎていたり、売掛金が回収されていなかったり、カード未払金が膨らんでいたりすると、資金繰りは苦しくなります。

損益計算書は「利益を見る表」です。

しかし、利益の裏側は貸借対照表で確認します。


2. 貸借対照表

貸借対照表は、ある時点の財産・借金・元手を見る表です。

英語ではB/S、ビーエスと呼ばれます。

損益計算書が「期間の成績表」だとすると、貸借対照表は「その時点の残高地図」です。

せどり・物販で見るべき項目は、最初はこれだけで十分です。

分類 主な科目 何を表すか
資産 現金・預金 事業用の手元資金
資産 売掛金 まだ入金されていない売上
資産 商品・棚卸資産 まだ売れていない在庫
資産 前払金・仮払金 内容が未確定の支払いなど
負債 買掛金・未払金 まだ支払っていない仕入れ・経費
負債 クレジットカード未払金 カードで使ったが、まだ引き落とされていない金額
負債 借入金 銀行融資などの返済残高
純資産 元入金・資本金・利益剰余金 事業に残っている元手や利益

貸借対照表は「合っているか」を見る

損益計算書は、金額が自然かどうかを見ます。

貸借対照表は、実際の残高と合っているかを見ます。

たとえば、帳簿上の普通預金が1,234,567円なのに、銀行の12月31日残高が1,180,000円なら、差額があります。

この差額は放置しません。

原因は、だいたい次のどれかです。

  • 明細の取得漏れ
  • 明細の二重登録
  • 手入力と連携データの重複
  • 事業用口座とプライベート口座の混在
  • 口座間振替の処理ミス
  • 取引日・決済日のズレ
  • 期首残高の誤り
  • 連携エラー
  • 対象外にした明細の戻し忘れ

帳簿の残高が実際と合っていない状態は、地図の現在地がズレているようなものです。

現在地がズレていると、利益も資金繰りも正しく判断できません。

月末・年末・決算日は特に大事

個人事業主なら12月31日。

法人なら決算月の末日。

月次管理なら月末。

この基準日の残高を確認します。

ここでよくあるミスが、「1月に入ってからの残高スクショ」を12月末残高として提出してしまうことです。

たとえば、2026年1月8日の銀行残高を提出しても、2025年12月31日の残高とは違います。

年末年始に入出金があれば、当然ズレます。

残高確認で必要なのは、基準日時点の残高です。

個人事業主の確定申告 → 12月31日時点
3月決算法人     → 3月31日時点
6月末の月次確認   → 6月30日時点

基準日がズレると、残高照合はできません。


3. 売上総利益と普段使う粗利

せどり・物販で、かなり混乱しやすいのが「売上総利益」と「粗利」です。

普段、せどりツールや販売管理シートで「粗利」と呼んでいる数字と、会計ソフトの損益計算書に出てくる「売上総利益」は、必ずしも一致しません。

ここは、早めに整理しておきましょう。

会計上の売上総利益

会計上の売上総利益は、基本的に次の式です。

売上高 − 売上原価 = 売上総利益

売上原価には、売れた商品の仕入原価が入ります。

前章で説明したとおり、仕入れた商品がまだ売れていない場合、その分は在庫として残ります。

売れていない商品は、まだ売上原価になりません。

普段使う粗利

一方、せどり実務で使う粗利は、次のように考えている人が多いです。

販売額
− 商品原価
− Amazon手数料
− 送料
− FBA手数料
− ポイント・クーポン等
= 実務上の粗利

こちらは、商品ごとの採算を見るための粗利です。

商品判断にはとても便利です。

ただし、会計上の売上総利益とは範囲が違う場合があります。

なぜ一致しないのか

理由は、手数料や送料、広告費などをどこに入れているかが違うからです。

項目 会計上の扱い例 実務粗利での扱い例
商品原価 売上原価 原価として差し引く
Amazon販売手数料 支払手数料など 粗利から差し引く
FBA手数料 支払手数料・荷造運賃など 粗利から差し引く
送料 荷造運賃など 粗利から差し引く
広告費 広告宣伝費 粗利または経費で見る
ポイント値引き 売上控除・手数料・販促費など 粗利から差し引く

つまり、損益計算書の売上総利益が高く見えるからといって、必ずしも記帳が間違っているとは限りません。

売上総利益の下に、手数料・送料・広告費が経費として入っているだけかもしれません。

数字を見るときのコツ

数字を見るときは、次のように分けると混乱しません。

目的 見る数字
商品ごとの仕入判断 実務上の粗利
会計・申告・決算 売上総利益、所得、税引前利益
経営判断 売上総利益+販売手数料+送料+広告費+在庫+資金繰り

会計ソフトの数字と、せどりツールの数字が違うときは、すぐに「どちらかが間違い」と考えないでください。

まずは、計算範囲が同じかを確認します。


4. 利益率が高すぎる・低すぎる

利益率が高すぎる、または低すぎるときは、必ず原因があります。

原因は、大きく分けると次の5つです。

1. 売上の漏れ・重複
2. 仕入れの漏れ・重複
3. 棚卸しの誤り
4. 手数料・送料・広告費の位置
5. 期間ズレ

利益率が高すぎるとき

たとえば、普段の感覚では利益率10%前後なのに、会計上30%と出ている場合です。

このときは、次を確認します。

疑う場所 起きている可能性
仕入れ 仕入れが未入力、または対象外のままになっている
売上原価 棚卸しが多すぎて、売上原価が少なくなっている
期首在庫 前年から繰り越した在庫が正しく入っていない
手数料・送料 経費に入っていない、または別期間に入っている
売上 売上が重複している
返品・返金 返品や返金が反映されていない
ポイント・ギフト券 値引きやポイント利用の処理が粗利感覚と違う

特に多いのは、仕入れ漏れと棚卸しのズレです。

前期から持ち越した在庫がある場合、期首在庫として入っていないと利益がズレます。

また、期末在庫を多く入れすぎると、売上原価が少なくなり、利益が高く見えます。

利益率が低すぎるとき

逆に、利益率が低すぎるときは次を確認します。

疑う場所 起きている可能性
売上 売上が未入力、または一部販路が抜けている
仕入れ 仕入れが二重登録されている
売上原価 棚卸しが少なすぎて、売上原価が多くなっている
経費 プライベート支出が混ざっている
カード カード明細と手入力が重複している
返金 返金・返品を売上マイナスと仕入れ戻しの両方で過大に処理している
期間 翌月分の仕入れや経費が当月に入っている

せどりでは、仕入れが先で販売が後になることが多いです。

そのため、棚卸しが入っていない月は、利益率が低く見えます。

月次で利益を見るなら、概算でも月末在庫を入れると数字がかなり見やすくなります。

違和感があるときの伝え方

税理士や記帳代行に確認するときは、ただ「おかしいです」と伝えるより、次のように伝えると原因を追いやすくなります。

普段の利益率は10〜12%ぐらいの認識です。
今回30%と出ているので、かなり高く感じます。

特に確認したいのは、
・期首在庫が入っているか
・当期仕入れの漏れがないか
・Amazon手数料や送料がどこに入っているか
・売上が重複していないか
です。

自分の感覚値を伝えることが大事です。

現場の感覚と帳簿の数字がズレているとき、その違和感はかなり価値があります。


5. 利益があるのに現金がない

利益が出ているのに現金がない、主な8つの理由です 利益と現金がズレる8つの理由 利益と現金は、同じ動きをしません 利益 300万円 でも銀行残高が増えない… 在庫が増えている 買ったが、まだ売れていない 売掛金が残っている 売れたが、まだ入金されていない カード支払いがある 過去の仕入れが後から引き落とされる 借入金を返済している 元本返済は経費ではないが現金は減る 税金を払っている 所得税・法人税・消費税・住民税など 生活費・役員貸付がある 事業の現金が事業の外へ出ていく 固定資産を買っている 一度に経費にならない場合がある 前払いがある 家賃・保険料などで現金が先に出る
図33利益と現金がズレる8つの理由

せどり・物販でとても多い悩みが、これです。

「利益は出ているはずなのに、銀行残高が増えていない」

これは珍しいことではありません。

利益と現金は、同じ動きをしないからです。

利益と現金がズレる主な理由

理由 何が起きているか
在庫が増えている 商品を買ったが、まだ売れていない
売掛金が残っている 売上は立ったが、まだ入金されていない
カード支払いがある 過去に仕入れた分が後から引き落とされる
借入金を返済している 元本返済は経費ではないが、現金は減る
税金を払っている 所得税・法人税・消費税・住民税などで現金が減る
生活費・役員貸付がある 個人の生活費や役員への貸付で現金が減る
固定資産を買っている 車、PC、設備などは一度に経費にならない場合がある
前払いがある 家賃、保険料、仕入予約金などで現金が先に出る

たとえば、利益が300万円出ていても、在庫が500万円増えていれば、手元現金は増えにくいです。

さらに、借入返済が200万円、税金が100万円、生活費が300万円あれば、銀行残高はむしろ減ります。

ざっくり式で見る

細かいキャッシュフロー計算書を作らなくても、次の式でかなり整理できます。

利益
− 在庫の増加
− 売掛金の増加
− 借入金の返済
− 税金の支払い
− 生活費・役員貸付
− 固定資産の購入
+ 借入金の増加
+ 未払金・カード未払金の増加
= 現金の増減イメージ

正確な計算式ではありません。

でも、「なぜ利益と現金がズレるのか」を見るには十分です。

せどりで特に注意するパターン

せどりでは、次のパターンがよくあります。

1. カードで大量仕入れ
2. 商品はまだ売れていない
3. 棚卸しでは在庫になる
4. 利益はそこまで悪く見えない
5. でもカード引き落としで現金が減る

または、こういうパターンです。

1. Amazonで売上が立つ
2. 会計上は売上になる
3. でも入金はまだ先
4. 売掛金として残る
5. 手元現金はまだ増えていない

このため、売上・利益だけでなく、在庫、売掛金、カード未払金、預金残高を一緒に見ます。

利益だけを見ると、資金繰りの危険に気づくのが遅れます。


6. 預金残高

預金残高は、残高確認の入口です。

ここが合っていないと、ほかの数字も疑わしくなります。

確認するのは、会計ソフト上の預金残高と、銀行の実際の残高です。

会計ソフトの普通預金残高
= 銀行の基準日残高

この一致を確認します。

提出・保存する資料

月末・年末・決算日の残高確認では、次の資料を残しておきます。

資料 内容
通帳の該当ページ 基準日の残高が分かるページ
ネットバンクの明細PDF 期間と残高が分かるもの
ネットバンクのスクショ 口座名・日付・残高が分かるもの
残高証明書 必要に応じて銀行から取得

スクショの場合は、日付が見えるようにします。

「今日の残高」だけが表示されている画面では、基準日の残高が分からないことがあります。

12月31日の残高を確認したいなら、12月31日時点の残高が分かる資料を出します。

残高が合わないとき

預金残高が合わないときは、次の順番で確認します。

順番 確認すること
1 期首残高が合っているか
2 対象期間の明細がすべて取得されているか
3 手入力と連携データが重複していないか
4 口座間振替が正しく処理されているか
5 プライベート入出金の処理が正しいか
6 対象外にした明細が本当に対象外でよいか
7 明細の日付と仕訳の日付がズレていないか
8 勘定科目・補助科目が口座設定と一致しているか

連携しているから大丈夫、とは限りません。

銀行連携は便利ですが、連携エラー、取得期間の制限、再連携による重複、手入力との二重処理などが起きることがあります。

残高が合っているかを確認して、はじめて安心できます。

安易に連携を解除しない

残高が合わないときに、焦って金融機関の連携を解除して再連携したくなることがあります。

ただ、これを安易にやると、過去明細が二重取得されたり、一部だけ取得されたり、前より状況が分かりにくくなることがあります。

連携エラーがある場合は、まず状態を確認します。

そのうえで、必要なら再取得・再連携・手入力で補います。

「合わないから一度全部つなぎ直す」は、最後の手段です。


7. 売掛金・未払金残高

預金の次に見るのが、売掛金と未払金です。

売掛金は、まだ入金されていない売上です。

未払金は、まだ支払っていないお金です。

せどり・物販では、特にこの2つが重要です。

売掛金 → Amazon、楽天、Yahoo!、メルカリ等の未入金売上
未払金 → クレジットカード、後払い、請求書払い等の未払い

売掛金残高とは

「売掛金残高とはなんですか?」

これは実務でもよく出る質問です。

売掛金残高とは、基準日時点で「売上にはなっているが、まだ入金されていない金額」です。

たとえば、12月31日までにAmazonで売れた商品があり、売上として計上している。

でも、Amazonからの入金は1月になる。

この場合、12月31日時点では売掛金として残ります。

販路別に確認する

売掛金は、できるだけ販路別に確認します。

販路 確認資料の例
Amazon 決済期間別レポート、トランザクション、未入金額が分かる資料
楽天 精算明細、入金予定明細
Yahoo! 精算明細、入金予定明細
メルカリShops 売上金・振込履歴
買取業者 請求書、入金予定、未収一覧

売掛金が大きく残っている場合は、次を確認します。

  • 本当にまだ入金されていないか
  • 入金済みなのに消し込みされていないだけではないか
  • 売上が二重計上されていないか
  • 返品・返金が反映されているか
  • 期末前後の売上期間が正しいか

未払金・カード未払金

クレジットカードで仕入れや経費を払った場合、カード利用時点ではまだ銀行から現金は出ていません。

会計上は、いったん未払金やクレジットカード未払金になります。

その後、銀行から引き落とされたときに未払金が消えます。

カード利用時
仕入・経費 / 未払金

引き落とし時
未払金 / 普通預金

カード未払金残高は、カード会社の請求明細や利用残高と照合します。

ここがズレていると、仕入れ漏れ、二重登録、引き落とし処理漏れが起きている可能性があります。

古い残高は危険信号

売掛金や未払金に、何ヶ月も前の残高が残っている場合は注意です。

たとえば、Amazonの売掛金が3ヶ月前から残り続けている。

楽天カードの未払金が引き落とし後も残っている。

このような場合、消し込みが漏れているか、入金・支払いの処理がズレている可能性があります。

月次で見るときは、残高の「金額」だけでなく「古さ」も見ます。


8. 在庫残高

在庫残高は、利益を大きく動かします。

前章で見たとおり、期末在庫が増えると売上原価は減り、利益は増えます。

期末在庫が減ると売上原価は増え、利益は減ります。

期首在庫 + 当期仕入高 − 期末在庫 = 売上原価

この式があるため、在庫残高の誤りは利益率の誤りにつながります。

在庫残高で確認すること

確認するもの 内容
基準日 月末、年末、決算日と一致しているか
金額 税込・税抜が会計処理と合っているか
範囲 FBA、自宅、外部倉庫、返品中、輸送中が含まれているか
単価 仕入単価が正しいか
期首在庫 前期末在庫が当期首へ引き継がれているか
不良在庫 破損、紛失、廃棄予定が整理されているか

月次では概算でも構いません。

ただし、決算ではできるだけ正確に作ります。

特に年商が大きくなるほど、在庫残高のズレが利益と税額に与える影響も大きくなります。

年商1億円以下でも、在庫が数百万円から数千万円になる人は普通にいます。

年商数億円、10億円、20億円規模になれば、在庫管理は経営管理そのものです。

利益率の違和感と在庫

利益率が高すぎるときは、在庫が多く入っていないか確認します。

期末在庫が多すぎると、売上原価が少なくなり、利益が高く見えます。

利益率が低すぎるときは、在庫が少なく入っていないか確認します。

期末在庫が少なすぎると、売上原価が多くなり、利益が低く見えます。

前年からの在庫

前年に仕入れて売れ残った商品は、前年の経費として全部落ちるわけではありません。

前年末に残っていれば、前年の期末在庫になります。

そして、翌年の期首在庫になります。

翌年に売れたとき、その商品の原価が売上原価に入ります。

前年に仕入れた
↓
前年末に売れ残った
↓
前年の期末在庫
↓
翌年の期首在庫
↓
翌年に売れたら売上原価

この流れを理解しておくと、「去年仕入れた在庫はどうなっているの?」という不安がかなり減ります。


9. 仮払金・仮受金

仮払金と仮受金は、便利ですが危険な科目です。

一時的に使う分には問題ありません。

しかし、ずっと残っていると「中身が分からない箱」になります。

仮払金とは

仮払金は、内容がまだ確定していない支払いです。

たとえば、次のようなケースです。

  • 何の支払いか確認中
  • 領収書待ち
  • 立替精算待ち
  • 仕入れか経費か確認中
  • 事業用かプライベートか確認中
  • 法人で役員への一時的な支払いを確認中

仮受金とは

仮受金は、内容がまだ確定していない入金です。

たとえば、次のようなケースです。

  • どの売上入金か不明
  • 返金なのか売上なのか確認中
  • 借入金なのか売上なのか確認中
  • 役員からの入金なのか取引先からの入金なのか確認中
  • 二重入金か確認中

仮勘定は宿題箱

仮払金・仮受金は、ゴミ箱ではありません。

宿題箱です。

あとで必ず中身を確認して、正しい科目へ振り替えます。

仮払金のまま残る
→ 経費なのか、貸付なのか、前払なのか分からない

仮受金のまま残る
→ 売上なのか、借入なのか、返金なのか分からない

月次で見るときは、仮払金・仮受金の残高が増え続けていないか確認します。

決算時には、原則として中身を説明できる状態にします。

法人では、役員とのお金のやり取りが仮払金・仮受金・役員貸付金・役員借入金として残ることがあります。

このあたりは税務上の論点も出やすいので、放置せず、早めに整理します。


10. 法人の月次試算表

法人の場合、月次試算表を使って毎月数字を確認する習慣を作ります。

年商1億円以下でも、法人であれば月次で見た方がいいです。

年商が数億円を超えてくると、月次管理はかなり重要になります。

年商20億円規模まで見るなら、最低でも月次試算表、資金繰り、在庫、売掛金、買掛金・未払金の確認は必要です。

月次試算表で見るもの

月次で見るものは、次のセットです。

資料 見ること
損益計算書 売上、売上総利益、経費、利益
貸借対照表 預金、売掛金、在庫、未払金、借入金
推移表 月ごとの増減、異常値
前期比較 前年同月・前年累計との違い
残高明細 売掛金、未払金、借入金などの内訳
在庫表 月末在庫、滞留在庫、評価
資金繰り表 今後の入金・支払い・借入返済

小規模のうちは、全部を完璧に作らなくても構いません。

ただし、次の4つだけは毎月見てください。

1. 売上
2. 売上総利益
3. 預金残高
4. 在庫残高

この4つを見るだけでも、かなり経営判断がしやすくなります。

月次締めの流れ

法人の月次締めは、次の流れにすると回りやすいです。

flowchart TD
    A["月末"] --> B["銀行・カード・販路データを取得"]
    B --> C["仕訳登録"]
    C --> D["売上・仕入・経費を確認"]
    D --> E["在庫・売掛金・未払金を反映"]
    E --> F["預金残高を照合"]
    F --> G["試算表を確認"]
    G --> H["違和感をメモして翌月改善"]

月次締めで大切なのは、締め日を決めることです。

たとえば、翌月10日までに資料回収、15日までに記帳、20日までに確認というように決めます。

資料が集まらないまま月次を見ると、数字が毎月ブレます。

経営者が見るべきコメント

試算表を受け取ったら、数字だけでなくコメントも残します。

たとえば、次のようなコメントです。

・売上は前月比120%だが、粗利率が3ポイント低下
・FBA手数料と広告費が増加
・在庫が前月より500万円増加
・カード未払金が翌月大きく引き落とされる
・預金残高は増えていないため、仕入れペースに注意

数字にコメントをつけると、試算表が経営資料になります。

単なる会計書類で終わらせないことが大切です。


11. 部門・店舗・販路別の確認

規模が大きくなると、全体の売上と利益だけでは判断できなくなります。

Amazonは利益が出ている。

楽天は売上は大きいが広告費が重い。

Yahoo!は在庫回転が遅い。

店舗せどりは粗利が良いが、交通費と外注費がかかる。

輸出は売上が伸びているが、為替・送料・手数料で利益が読みにくい。

このように、販路ごとに性格が違います。

分けて見る単位

最初は、次の単位で分けると分かりやすいです。

分け方
販路別 Amazon、楽天、Yahoo!、メルカリ、eBay、Shopify
事業別 国内物販、輸出、卸、メーカー取引
店舗別 実店舗A、実店舗B、倉庫、催事
担当者別 仕入担当、販売担当、外注チーム
商品カテゴリ別 家電、本、ホビー、アパレル、食品など

小規模のうちは、細かく分けすぎると管理が大変です。

まずは「販路別」だけで十分です。

年商が大きくなり、広告費や人件費、倉庫費が増えてきたら、部門や店舗で分ける意味が出てきます。

部門別で見る数字

部門別・販路別で見るなら、最低限この数字を見ます。

数字 見る理由
売上高 どの販路が伸びているか
売上総利益 どの販路が利益を作っているか
手数料 モール手数料・決済手数料の負担を見る
送料 送料負担が重い販路を把握する
広告費 売上増加と広告費の関係を見る
在庫 在庫がどの販路・倉庫に偏っているか
売掛金 入金サイクルと未回収を確認する

販路別で見ると、「売上は伸びているけど利益が残っていない販路」が見つかります。

これは、全体の損益計算書だけでは気づきにくいです。

分けすぎ注意

ただし、分けすぎには注意です。

年商1,000万円の段階で、部門を10個も作る必要はありません。

管理コストの方が大きくなります。

目安としては、次のように考えるとよいです。

規模 管理の目安
創業前後〜年商3,000万円 全体管理で十分。販路別売上だけ把握
年商3,000万円〜1億円 Amazon・楽天・その他など、ざっくり販路別に見る
年商1億円〜5億円 販路別の損益、在庫、広告費を見る
年商5億円〜20億円 部門別・店舗別・倉庫別・担当者別の管理を検討

本教材のメインターゲットは創業前後〜年商1億円以下です。

ただし、法人化後や規模拡大後も使えるように、上限としては年商20億円程度までの管理入口を含めています。

「自分には大きすぎる話かも」と感じる場合は、まず全体の損益と残高確認だけで大丈夫です。


実務チェックリスト

月次または決算時に、次の順番で確認します。

利益のチェック

  • 売上高が販路別の感覚と合っている
  • 売上総利益が普段の粗利感覚と大きくズレていない
  • 利益率が前年・前月と比べて不自然ではない
  • 手数料、送料、広告費が漏れていない
  • プライベート支出が経費に混ざっていない
  • 返品、返金、キャンセルが反映されている
  • 棚卸しが反映されている

残高のチェック

  • 預金残高が銀行の基準日残高と一致している
  • 売掛金残高が販路別の未入金額と合っている
  • カード未払金がカード会社の請求明細と合っている
  • 在庫残高が棚卸表と合っている
  • 借入金残高が返済予定表と合っている
  • 仮払金・仮受金の中身を説明できる
  • 古い売掛金・未払金・仮勘定が残っていない

資金繰りのチェック

  • 利益があるのに現金が減っている理由を説明できる
  • 在庫が増えすぎていない
  • 売掛金の回収が遅れていない
  • 翌月のカード引き落とし額を把握している
  • 借入返済と税金支払いを見込んでいる
  • 仕入れを増やす前に、預金残高と支払い予定を確認している

よくある質問

Q1 利益率が高すぎます。まず何を見ればいいですか?

まず、仕入れ漏れ、棚卸し、期首在庫を確認します。

次に、手数料・送料・広告費がどこに入っているかを確認します。

会計上の売上総利益と、せどりツール上の粗利は計算範囲が違うことがあります。

Q2 控除前所得金額から仕入れ額が引かれるのですか?

仕入れは、売れた分が売上原価として売上から引かれ、売上総利益が出ます。

その売上総利益から経費を引いたものが、控除前所得金額に近いイメージです。

ただし、仕入れた商品がまだ売れていない場合は、在庫として残り、まだ売上原価にはなりません。

Q3 去年仕入れて売れ残った商品は、去年の経費になっていますか?

売れ残っている商品は、原則として在庫です。

前年末に売れ残っていれば、前年の期末在庫になります。

そして翌年の期首在庫となり、翌年以降に売れたときに売上原価になります。

Q4 売掛金残高とは何ですか?

売上にはなっているけれど、まだ入金されていない金額です。

Amazonや楽天などでは、販売日と入金日がズレます。

そのため、月末や年末時点で未入金の売上が売掛金として残ります。

Q5 預金残高はスクショでいいですか?

基準日の残高、口座、日付が分かればスクショでも実務上使えることがあります。

ただし、PDF明細や通帳の方が確認しやすい場合もあります。

重要なのは、12月31日や決算日など、基準日時点の残高が分かることです。

Q6 利益が出ているのに現金がありません。記帳が間違っていますか?

必ずしも間違いではありません。

在庫が増えている、売掛金が残っている、借入金を返済している、税金を払っている、生活費や役員貸付がある、などの理由で現金は減ります。

利益と現金は別物として確認します。

Q7 残高が合わないとき、連携を一度解除して再連携すればいいですか?

安易な解除・再連携はおすすめしません。

過去明細の重複取得や取得漏れが起きることがあります。

まずは、取得漏れ、重複、対象外、口座間振替、期首残高、日付ズレを確認します。


参考にした公式情報


次章へのつなぎ

ここまでで、売上、仕入れ、経費、棚卸し、利益、残高確認まで見てきました。

次に大事になるのが、消費税とインボイスです。

せどり・物販は、売上が大きくなりやすいビジネスです。

年商1,000万円を超える。

インボイス登録をする。

輸出をする。

個人やフリマから仕入れる。

ポイントやギフト券を使う。

こうなると、消費税の理解が避けられません。

次章では、消費税とインボイスを、せどり・物販の実務に絞って整理します。


残高照合は、この順番でやる 残高照合は、この順番でやる 「入力が終わった」と「合っている」は違います 1 預金残高を通帳と合わせる 1円まで。合わないなら記帳漏れか二重計上 2 カードの未払金を請求額と合わせる 締め日と引落日のズレを考慮する 3 売掛金が未入金額として説明できるか 残っている理由を言えるか 4 在庫金額に棚卸表の根拠があるか 感覚ではなく、数えた記録があるか 5 事業主勘定の中身を説明できるか 「とりあえず事業主借」が積み上がっていないか この5つが説明できて、はじめて「記帳が終わった」と言えます
図34残高照合は、この順番で行います

第15章

消費税とインボイスを理解しよう

共通該当者のみ

この章は、制度の改正で内容が変わることがあります。記載と最新の制度が食い違う場合は、巻末の「改訂履歴と制度の更新情報」を確認してください。


この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 消費税の基本的な仕組みを説明できる
  • 自分が免税事業者か課税事業者かを確認する入口が分かる
  • 原則課税・簡易課税・2割特例・3割特例の違いをざっくり理解できる
  • 売上・仕入れ・経費の税区分を大きく分けられる
  • 軽減税率8%が関係する取引を見分けられる
  • インボイス制度で、何を保存すべきか分かる
  • クレジットカード明細とインボイスの違いを説明できる
  • 個人・フリマ・中古仕入れの注意点を理解できる
  • ポイント、ギフト券、電子マネーの消費税上の入口が分かる
  • 輸出取引の消費税の入口を理解できる
  • 会計ソフトで消費税の集計を確認する場所が分かる
  • 税理士へ確認すべきケースを判断できる

消費税の課税事業者になるかの考え方 消費税は、今年の売上だけでは決まらない 考え方の全体像です。実際の判定は税理士・税務署にご確認ください 前々年 基準期間 前年 特定期間を含む 今年 納税義務があるか 基準期間の課税売上高 1,000万円を超えたか 特定期間(前年上半期) 課税売上高・給与額 による判定もある 今年 課税事業者 インボイス発行事業者として登録している場合 上記の売上規模にかかわらず、消費税の申告が必要になります 入金額ベースで売上を計上していると、判定を誤ります 手数料が引かれた後の金額で見ていると、実際は超えているのに気づけません 判定は制度の細部で変わります。必ず税理士または税務署に確認してください
図35課税事業者になるかの考え方。実際の判定は税理士・税務署にご確認ください

最初に結論

消費税とインボイスは、せどり・物販の中で一番「自分だけで判断しない方がいい」分野です。

理由は、取引の種類、売上規模、届出、インボイス登録、仕入先、販路、輸出、ポイント、ギフト券によって扱いが変わるからです。

ただし、最初に見るポイントは多くありません。

まずは、次の5つを確認します。

1. 自分は免税事業者か、課税事業者か
2. 課税事業者なら、原則課税か簡易課税か
3. インボイス登録をしているか
4. 売上・仕入れ・経費の税区分が合っているか
5. 必要な証憑を保存しているか

この5つが分かれば、消費税の全体像はかなり見えます。

逆に、この5つが分からないまま記帳すると、あとで大きくやり直すことがあります。

特にインボイス制度が始まってからは、原則課税の記帳がかなり細かくなりました。

「クレジットカードで払ったから大丈夫」

「Amazonや楽天の購入履歴があるから大丈夫」

「レシートがあるから全部OK」

とは限りません。

インボイスが必要な取引では、適格請求書等として必要な情報がある資料を保存する必要があります。

とても大事なので、最初に言っておきます。

クレジットカード明細は、原則としてインボイスそのものではありません。

カード明細は「支払った証拠」にはなります。

しかし、仕入税額控除のために必要な「適格請求書等」とは別物です。

店舗で仕入れたなら、店舗のレシート・領収書。

ECで仕入れたなら、購入先が発行する適格請求書、領収書、請求書、取引明細。

これらを確認します。

この章では、細かい税法解説ではなく、せどり・物販の記帳で迷いやすい場所に絞って整理します。


1. 消費税の仕組み

消費税は、ざっくり言うと、売上で預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて納める税金です。

原則課税の場合、イメージは次のとおりです。

売上で預かった消費税
− 仕入れ・経費で支払った消費税
= 納める消費税

会計ソフトでは、次のような言葉で出てくることがあります。

表示 意味
仮受消費税 売上で預かった消費税
仮払消費税 仕入れ・経費で支払った消費税
納付税額 最終的に納める消費税
還付税額 条件によって戻ってくる消費税

たとえば、次のような報告を受けることがあります。

仮払消費税:3,302,370円
仮受消費税:3,382,307円

原則課税の感覚では、仮受消費税から仮払消費税を差し引いて、納付額の目安を見ます。

ただし、実際の申告では、税率区分、売上区分、仕入税額控除、インボイス、端数処理、簡易課税、2割特例・3割特例などが関係します。

そのため、単純に「仮受 − 仮払」だけで最終判断はしません。

消費税の対象になる取引

消費税は、国内で事業者が事業として対価を得て行う商品販売やサービス提供などが基本的な対象です。

せどり・物販でいえば、国内販売の売上は、基本的に消費税の対象になります。

取引 消費税の入口
Amazon国内販売 原則、課税売上
楽天国内販売 原則、課税売上
Yahoo!国内販売 原則、課税売上
メルカリShops国内販売 原則、課税売上
国内店舗での販売 原則、課税売上
輸出販売 輸出免税の検討
商品券・ギフト券の購入 原則、購入時は非課税の入口
ポイント利用 レシート表示・取引内容で判断

税区分は4つで考える

消費税の税区分は、最初は次の4つで考えると分かりやすいです。

区分 意味
課税 消費税の対象 国内の商品販売、国内仕入れ、事務用品、送料など
非課税 消費税の性格上、課税しない 土地、住宅家賃、商品券の譲渡など
不課税・対象外 そもそも消費税の対象外 借入金、出資、税金、給与、ポイント雑収入の一部など
免税 課税対象だが税率0%のように扱う 一定の輸出取引など

この4つは似ていますが、意味が違います。

特に「非課税」と「不課税」と「免税」は、初心者が混乱しやすいところです。

せどり実務では、まず次の感覚で大丈夫です。

国内で商品を売る    → 課税売上
国内で商品を仕入れる  → 課税仕入れの可能性
商品券・ギフト券を買う → 非課税の入口
ポイント収入      → 不課税の入口になることがある
海外へ商品を売る    → 輸出免税の検討

2. 免税・課税

消費税で最初に確認するのは、自分が免税事業者か課税事業者かです。

免税事業者とは

免税事業者は、消費税の納税義務が免除されている事業者です。

原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税義務が免除される入口があります。

個人事業主なら、基準期間は前々年です。

法人で事業年度が1年なら、原則として前々事業年度です。

個人事業主:前々年の課税売上高を見る
法人   :原則、前々事業年度の課税売上高を見る

たとえば、2026年の消費税を考えるなら、個人事業主は原則として2024年の課税売上高を確認します。

ただし、これだけで決まらない場合があります。

特定期間、新設法人、資本金、課税事業者選択届出書、インボイス登録などが関係するからです。

課税事業者とは

課税事業者は、消費税の申告・納付が必要な事業者です。

せどり・物販では、次のような場合に課税事業者になる可能性があります。

ケース 内容
基準期間の課税売上高が1,000万円超 前々年・前々事業年度の売上で判定
特定期間の課税売上高等が1,000万円超 前年・前事業年度前半などで判定
課税事業者選択届出書を提出 自分で課税事業者を選択
インボイス登録を受けた 登録を受けると免税のままではいられない
新設法人で資本金1,000万円以上など 設立時から課税になる場合あり

特に注意したいのが、インボイス登録です。

インボイス発行事業者として登録を受けると、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。

つまり、売上が1,000万円以下でも、インボイス登録をすれば課税事業者になります。

まず確認する質問

記帳を始めるときは、次の質問に答えられるようにしておきます。

1. 前々年・前々期の課税売上高はいくらか
2. 前年・前期前半の売上や給与はどうか
3. インボイス登録をしているか
4. 課税事業者選択届出書を出しているか
5. 法人の場合、資本金はいくらか
6. 税務署・税理士から課税事業者と言われているか

ここが曖昧なまま進めると、税区分が全部ズレることがあります。

記帳代行側から、

今年は消費税免税事業者でしょうか?
それとも課税事業者でしょうか?
課税事業者の場合は、原則課税か簡易課税かも教えてください。

と聞かれるのは、このためです。


3. 原則課税・簡易課税

課税事業者になったら、次に確認するのが計算方法です。

納める消費税の計算方法は、いくつかある 納める消費税の計算方法は、いくつかある どれを使えるか、どれが有利かは状況で変わります 原則課税 預かった消費税 − 支払った消費税 簡易課税 業種ごとのみなし仕入率 で計算する 2割特例 インボイス登録を機に 課税事業者になった人向け 選択には届出の期限があります。必ず税理士または税務署に確認してください
図36納める消費税の計算方法

大きく分けると、原則課税と簡易課税があります。

さらに、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった小規模事業者には、2割特例や3割特例が関係する場合があります。

原則課税

原則課税は、売上の消費税から、仕入れ・経費の消費税を差し引いて計算する方法です。

売上に係る消費税
− 仕入れ・経費に係る消費税
= 納付税額

原則課税では、仕入れや経費のインボイス確認が重要になります。

店舗せどりでレシートが大量にある。

ネット仕入れが多い。

フリマ・個人から仕入れる。

ポイントやギフト券を使う。

このような場合、税区分と証憑の確認がかなり細かくなります。

インボイス制度後に、原則課税の記帳代行料金が上がりやすいのは、この作業量が増えるからです。

簡易課税

簡易課税は、売上に係る消費税をもとに、業種ごとの「みなし仕入率」で仕入れに係る消費税を計算する方法です。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下など、一定の要件を満たす課税事業者が、届出により選択します。

せどり・物販では、主に次の区分が関係します。

事業区分 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業 80%
第5種事業 サービス業など 50%
第6種事業 不動産業 40%

一般的な小売せどりは、第2種事業に該当することが多いです。

ただし、卸売、委託販売、輸出、サービス収入、不動産収入などが混ざると、事業区分の判断が必要になります。

ここは自己判断せず、税理士へ確認します。

原則課税と簡易課税の違い

比較 原則課税 簡易課税
計算の基本 売上税額 − 仕入税額 売上税額 − 売上税額×みなし仕入率
仕入インボイス 重要 納付税額計算上は影響が小さい
事務負担 重くなりやすい 比較的軽い
大量仕入れ・設備投資 有利になる場合あり 不利になる場合あり
還付 起きる場合あり 原則として起きにくい
届出 不要 期限までに届出が必要

どちらが有利かは、売上構成、粗利率、仕入先、輸出、設備投資、インボイスの有無によって変わります。

「せどりなら絶対こっち」とは言えません。

2割特例・3割特例

インボイス制度を機に、免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった小規模事業者には、2割特例が関係する場合があります。

2026年7月8日時点の国税庁情報では、2割特例は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間において、納付税額を売上税額の2割とすることができる経過措置として案内されています。

また、令和8年度税制改正特集では、個人事業者について令和9年分・令和10年分の申告で3割特例が案内されています。

ただし、適用できる人、適用できる期間、法人か個人か、基準期間の売上、課税事業者になった理由によって扱いが変わります。

この教材では、次の理解で十分です。

2割特例・3割特例は、該当者だけが使える経過措置。
使えるかどうかは、必ず税理士・税務署・国税庁情報で確認する。

制度変更が入りやすい部分なので、本書の記載だけで判断せず、必ず最新情報を確認してください。


4. 売上・仕入れの税区分

消費税の記帳では、売上と仕入れに税区分を付けます。

消費税の税区分は、まず4つに分かれる 消費税の税区分は、まず4つに分かれる せどりで日常的に出てくるのは、課税と対象外です 課税 国内の売上 国内の仕入れ 手数料・送料 ほとんどがここ 非課税 支払利息 印紙 保険料 決められたものだけ 不課税(対象外) 給与 事業主貸・借 資金移動 税金の支払い 免税 輸出取引 海外向け販売 書類の保存が必要 迷ったら「対象外」にせず、内容から判断してください。判断に困る取引は税理士へ
図37税区分は、まず4つに分かれます

せどり・物販では、まず次の表を頭に入れておくと楽です。

売上の税区分

売上 税区分の入口
国内で販売した商品 課税売上10%
国内で販売した食品 課税売上8%の可能性
酒類 課税売上10%
輸出販売 輸出免税の検討
ポイント付与分 売上値引き・販促費等の検討
ポイント収入 不課税・雑収入等の検討
送料収入 課税売上の検討
キャンセル・返品 売上返還等の処理

仕入れ・経費の税区分

支出 税区分の入口
国内店舗での商品仕入れ 課税仕入10%または8%
国内ECの商品仕入れ 課税仕入10%または8%
食品仕入れ 軽減税率8%の可能性
Amazon販売手数料 課税仕入の検討
国内送料 課税仕入の検討
広告費 課税仕入の検討
事務用品 課税仕入10%
商品券・ギフト券の購入 非課税の入口
税金 対象外
給与 対象外
保険料 非課税の入口
住宅家賃 非課税の入口
事務所家賃 課税の入口

「売上」と「課税標準」が違うことがある

消費税の申告で、「会計上の売上」と「消費税の課税標準」が一致しないことがあります。

たとえば、次のような場合です。

  • ポイントの雑収入が不課税で入っている
  • 輸出売上がある
  • 非課税売上がある
  • 返品・値引きがある
  • 税込・税抜の表示が違う
  • 預り金や立替金が売上に混ざっている
  • 販路レポート上の売上と会計上の売上計上方法が違う

税務署から「売上と消費税の課税標準が違う理由」を聞かれた場合、慌てる必要はありません。

まず、課税売上、免税売上、非課税、不課税、雑収入、ポイント、返品を分けて確認します。

ただし、説明内容は申告に直結するため、税理士に確認してから回答するのが安全です。


5. 軽減税率

せどりで軽減税率8%が出やすい場面の入口です 軽減税率8%は、どこで出てくる? 「何を売買したか」で税率が変わります 8%(軽減税率)の入口 食品・飲料の仕入れ・販売 (酒類を除く飲食料品) 健康食品・サプリメント等 おまけ付き食品は内容で判断 10%のままの例 酒類(ビール・日本酒等) 日用品・家電・おもちゃ 医薬品・医薬部外品 販売手数料・送料などのサービス 食品を扱うなら、仕入れと売上の両方で8%・10%を分けて記帳します 判断に迷う商品は、レシートの税率表示を確認し、税理士へ相談します
図38軽減税率8%が出てくる場面

消費税には、標準税率10%と軽減税率8%があります。

せどり・物販で軽減税率が関係しやすいのは、食品を扱う場合です。

国税庁の説明では、軽減税率の対象は、飲食料品の譲渡と、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡とされています。

せどりでは、主に食品が問題になります。

食品を扱う人は要注意

次のような商品を扱う場合は、軽減税率8%が関係する可能性があります。

  • 食品
  • 飲料
  • お菓子
  • 健康食品
  • サプリメント
  • 調味料
  • レトルト食品
  • コーヒー、紅茶など

一方で、酒類は軽減税率の対象外です。

また、食品っぽく見えても、医薬品、医薬部外品、ペット用品などは別判断になることがあります。

売上と仕入れの両方で見る

食品を扱う場合、売上だけでなく仕入れも8%・10%が混ざります。

たとえば、食品仕入れは8%、梱包資材は10%、送料は10%というように混ざります。

取引 税率の入口
食品の仕入れ 8%の可能性
食品の販売 8%の可能性
梱包資材 10%
送料 10%の入口
Amazon手数料 10%の入口
広告費 10%の入口

食品を扱う人は、会計ソフトで8%と10%が正しく分かれているか確認します。

記帳代行側から「食品の売上はありますか?」と聞かれるのは、税率区分が必要だからです。


6. インボイス制度

インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」といいます。

2023年10月1日から始まった制度です。

課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、原則として、一定事項が書かれた帳簿と適格請求書等の保存が必要になります。

インボイスとは

インボイスは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類です。

請求書、納品書、領収書、レシート、取引明細など、名称は問いません。

大事なのは、必要事項が書かれているかです。

適格請求書に必要な主な情報

一般的な適格請求書では、次のような情報が必要になります。

項目 内容
発行者名 売手の氏名・名称
登録番号 Tから始まる番号
取引年月日 いつの取引か
取引内容 何を買ったか、軽減税率対象ならその旨
税率ごとの対価 10%・8%ごとの金額
税率ごとの消費税額等 10%・8%ごとの消費税額
宛名 買手の氏名・名称。ただし簡易インボイスでは不要な場合あり

店舗のレシートでは、簡易インボイスとして扱われることがあります。

小売業や飲食店業などが発行する簡易インボイスでは、通常の適格請求書と一部記載事項が異なります。

クレジットカード明細はインボイスではない

実務で特に多い質問がこれです。

店舗でクレジットカード決済しました。
カード明細に情報が来ているので、インボイスは不要ですか?

答えは、原則として不要ではありません。

クレジットカード明細は、カード会社が発行する利用明細です。

それは支払事実の確認には使えます。

しかし、仕入先が発行した適格請求書等ではありません。

したがって、インボイスが必要な場合は、店舗のレシート・領収書・請求書・ECの適格請求書等を保存します。

資料 役割
クレジットカード明細 支払いの確認
店舗レシート 取引内容・税率・登録番号の確認
領収書 取引・支払証明
適格請求書 仕入税額控除のための証憑
EC購入明細 購入先発行の証憑として確認

カード明細だけで済ませる運用にしていると、原則課税のインボイス確認で不足が出ることがあります。

インボイス番号はどこに入力するのか

会計ソフトによっては、取引先や仕訳にインボイス登録番号を持たせる機能があります。

ただし、毎回自分で番号を入力するより、次のような運用にした方が現実的です。

1. 仕入先・経費先ごとにインボイスの有無を確認
2. 必要なレシート・請求書・領収書を保存
3. 税理士・記帳担当が税区分と登録番号を確認
4. 不足があれば証憑回収リストで追加依頼

実務では、一定金額以上の支払いについてインボイス確認リストを作り、未提出分を回収することがあります。

ただし、少額特例や経過措置、事務所の処理方針により運用は変わります。

「1万円以上だけ出せば絶対OK」というように固定して覚えないでください。

自分の課税方式、売上規模、税理士方針に合わせます。


7. 個人・フリマからの仕入れ

せどりで非常に大事なのが、個人・フリマ・中古品からの仕入れです。

たとえば、次のような仕入れです。

  • メルカリで個人から仕入れる
  • ヤフオクで個人から仕入れる
  • ラクマで仕入れる
  • 店舗で中古品を仕入れる
  • 買取業者から中古品を仕入れる
  • 個人から直接買い取る

インボイス制度では、適格請求書発行事業者ではない人からの仕入れについて、原則として仕入税額控除が制限されます。

ただし、経過措置や古物商特例など、一定の例外や特例があります。

ここが、せどりではかなり重要です。

個人から買うと何が問題になるのか

個人の多くは、インボイス発行事業者ではありません。

インボイス発行事業者でない人から仕入れると、原則課税では仕入税額控除が制限されます。

つまり、同じ11,000円の仕入れでも、インボイスありの仕入れと、インボイスなしの仕入れで、消費税の計算上の扱いが変わる可能性があります。

古物商特例の入口

中古品を扱うせどりでは、古物商許可を持っている人も多いです。

古物商が、インボイス発行事業者ではない者から、棚卸資産として古物を買い受ける場合、一定の要件のもとで帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる特例があります。

ただし、これは「古物商許可があるから全部OK」という単純な話ではありません。

確認すべきポイントがあります。

  • 古物商許可があるか
  • 買ったものが棚卸資産か
  • 相手がインボイス発行事業者かどうか
  • 帳簿に必要な事項を記載しているか
  • 仕入れたものが特例の対象になるか
  • 金属くずなど、改正や除外が関係するものではないか
  • 税理士がその処理を認めているか

特に2026年時点では、インボイス経過措置の見直しや特定金属くずに関する改正情報も出ています。

中古仕入れ、買取、金券、金属、ブランド品、家電、ゲーム機、トレカなどを扱う人は、必ず税理士に確認してください。

フリマ仕入れで保存するもの

フリマ仕入れでは、次のような情報を残します。

保存する情報 理由
購入日 取引日確認
商品名 何を仕入れたか
金額 仕入金額確認
相手情報 帳簿記載・取引確認
取引画面スクショ 証憑補完
支払方法 カード・売上金・ポイント等の確認
発送・受取情報 実在取引の確認

フリマアプリは、あとから取引画面が見にくくなることがあります。

月次でスクショやPDF保存をしておくと安心です。


8. ポイント・ギフト券・電子マネー

せどりの消費税で、かなりややこしいのがポイント、ギフト券、電子マネーです。

第11章でも記帳の基本を扱いましたが、消費税ではさらに注意が必要です。

ポイントを使って仕入れた場合

ポイントを使って商品を購入した場合、消費税上の「課税仕入れに係る支払対価の額」がどうなるかは、ポイントの扱いによって変わります。

国税庁は、ポイント使用が商品本体価格の値引きである場合と、支払うべき価額の値引きである場合を分けています。

実務では、まずレシートや購入明細の表示を確認します。

レシート表示 考え方の入口
商品本体から値引き 値引後金額が課税仕入れの入口
支払金額から充当 商品対価全額が課税仕入れの入口になる場合
ポイント収入として表示 雑収入・不課税等の検討

ポイントは、会計上も消費税上も処理が分かれやすいです。

「ポイントだから全部対象外」と決めつけないでください。

逆に、「ポイントを使っているから全額経費にならない」とも限りません。

レシート表示と取引内容で判断します。

ギフト券・プリペイドカード

Amazonギフト券、Appleギフトカード、楽天ギフトカードなどを使う人も多いです。

消費税では、商品券やプリペイドカードなどの譲渡は、物品切手等の譲渡として非課税とされています。

つまり、ギフト券を買った時点で消費税の課税仕入れになるのではなく、そのギフト券を使って実際に商品やサービスを購入した時点で課税関係を見ます。

イメージは次のとおりです。

ギフト券を買う
→ 原則、商品券・プリペイドカードの購入として非課税の入口

ギフト券で商品を仕入れる
→ 実際に商品を購入した時点で税区分を判断

せどりでは、ギフト券を仕入れ資金のように使うことがあります。

その場合、ギフト券の購入だけを仕入れにして、実際の商品購入を記録しないと、在庫・原価・消費税がズレます。

電子マネー

電子マネーは、現金の代わりに使う決済手段として考えるのが基本です。

ただし、チャージ、決済、ポイント還元が絡むと、記帳は複雑になります。

動き 見ること
チャージ 現金から電子マネーへ移しただけか
商品購入 何を買ったか、税区分は何か
ポイント付与 値引きか、収入か
ポイント利用 レシート表示はどうなっているか

チャージしただけでは、通常は仕入れや経費ではありません。

電子マネーで実際に商品や経費を支払ったときに、取引内容を記帳します。


9. 越境EC・輸出の入口

輸出をしている人は、消費税の扱いが大きく変わります。

国内で商品を販売する場合、原則として消費税がかかります。

一方、販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されることがあります。

これを輸出免税といいます。

輸出免税のイメージ

輸出免税では、海外へ販売する売上には消費税がかからない一方、その輸出売上に対応する国内仕入れや経費に含まれる消費税は、一定の要件のもとで控除対象になることがあります。

そのため、輸出が多い事業者では、消費税の還付が関係する場合があります。

ただし、還付が出る可能性がある分、証明書類の保存がとても重要です。

輸出で保存する資料

輸出免税の適用を受けるには、輸出取引であることを証明する資料が必要です。

たとえば、次のような資料です。

資料 内容
輸出許可書 一定の輸出貨物で必要
EMS・小包の控え 郵便物で輸出した証明
発送伝票 受取人、品名、数量、価額など
販売明細 eBay、Amazon海外、Shopify等の販売情報
入金明細 PayPal、Payoneer、銀行入金など
為替計算資料 円換算の根拠

輸出は、売上計上、為替、送料、関税、返品、消費税還付が絡みます。

通常の国内せどりより複雑です。

輸出をしている場合は、最初から税理士へ共有してください。

海外プラットフォームの注意

越境ECでは、次のような論点が出ます。

  • 海外販売なのか、国内販売なのか
  • 商品の発送地はどこか
  • 買い手は国内か国外か
  • プラットフォーム手数料の税区分
  • 為替差損益
  • 返品・返金
  • 輸出証明の保存
  • 消費税還付の有無

「海外のお客様に売ったから全部輸出免税」と単純に判断しないでください。

発送実態、証明書類、取引形態を確認します。


10. 証憑に必要な情報

インボイス制度後は、証憑の保存がさらに大事になりました。

せどり・物販では、仕入れ先が多く、レシートやEC明細が大量になります。

ここを雑にすると、決算前に一気に苦しくなります。

最低限保存するもの

取引 保存するもの
店舗仕入れ レシート、領収書、購入明細
EC仕入れ 領収書、請求書、注文履歴、適格請求書
Amazon仕入れ 注文履歴、領収書、適格請求書等
楽天仕入れ 購入履歴、領収書、店舗発行の請求書等
Yahoo!仕入れ 注文履歴、領収書、請求書等
フリマ仕入れ 取引画面、支払情報、相手情報
ギフト券利用 ギフト券購入履歴、商品購入明細
輸出売上 販売明細、発送証明、輸出許可書等

インボイス確認で見ること

原則課税の場合、特に次を確認します。

  • 発行者名
  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 税率ごとの金額
  • 税率ごとの消費税額
  • 軽減税率対象かどうか

登録番号は、Tから始まる番号です。

法人の場合は「T+法人番号」です。

個人事業主など法人番号を持たない事業者は「T+13桁の数字」です。

ファイル名の工夫

インボイス証憑は、あとで取引と結び付けられるように保存します。

おすすめは、ファイル名に日付、取引先、金額、取引Noを入れることです。

2026-01-15_ヤマダ電機_仕入_54800円_取引No1234.pdf
2026-01-16_Amazon_消耗品_3280円_取引No1235.pdf
2026-01-18_楽天市場_仕入_19800円_取引No1236.pdf

記帳代行に提出する場合は、取引Noや会計ソフトの番号を付けると、照合がかなり楽になります。

実際の現場でも、ファイル名に取引Noを付けてもらえると、確認スピードが大きく上がります。


11. 会計ソフトでの確認

会計ソフトでは、消費税の設定と集計を確認します。

この章では、細かい画面操作までは扱いません。

画面名や配置は変わることがあるため、具体的なクリック手順は最新の公式ヘルプで確認してください。

会計ソフトで確認すること

確認項目 内容
消費税区分 免税、課税、原則、簡易など
経理方式 税込経理、税抜経理
税率 10%、8%、非課税、不課税、免税
インボイス設定 登録番号、適格区分、経過措置など
消費税集計 仮受、仮払、納付税額、還付税額
申告方式 原則課税、簡易課税、2割特例等

数字を見る場所

実務では、会計ソフト上で消費税集計や申告基礎データを確認します。

たとえば、次のような数字を見ます。

仮受消費税
仮払消費税
課税売上高
課税仕入高
非課税売上
免税売上
不課税取引
納付税額
還付税額

ここで違和感があれば、税区分に戻ります。

よくある違和感

違和感 疑う場所
課税売上が会計売上と違う 非課税、不課税、免税、ポイント、返品
仮払消費税が少ない 仕入税額控除不可、インボイスなし、非課税仕入れ
仮払消費税が多すぎる 税区分ミス、二重登録
食品売上が全部10% 軽減税率の設定漏れ
ギフト券購入が課税になっている 商品券・プリペイドカードの処理確認
輸出売上が課税になっている 輸出免税区分の確認
ポイント収入が課税売上に入っている 不課税・雑収入等の確認

消費税の数字は、見た目が合っていても税区分がズレていることがあります。

「売上と利益が合っているから消費税も大丈夫」とは考えないでください。


12. 税理士へ確認するケース

消費税は、自己判断で進めるほど危険な部分があります。

特に次に当てはまる場合は、税理士へ確認してください。

必ず確認したいケース

  • 年商が1,000万円を超えた、または超えそう
  • インボイス登録をするか迷っている
  • 課税事業者選択届出書を出すか迷っている
  • 原則課税と簡易課税で迷っている
  • 2割特例・3割特例を使えるか分からない
  • 食品を扱っている
  • 輸出をしている
  • フリマ・個人からの仕入れが多い
  • 古物商許可を使う中古仕入れが多い
  • ギフト券やポイント仕入れが多い
  • 大きな設備投資をする
  • 消費税還付が出そう
  • 課税売上割合が低い、または非課税売上がある
  • 不動産収入もある
  • 年商5億円を超える、または近づいている

年商20億円規模までを視野に入れるなら、消費税はかなり重要な管理項目です。

課税売上高が大きくなると、原則課税での仕入税額控除、課税売上割合、個別対応方式、一括比例配分方式、輸出還付、税務調査対応などが現実的な論点になります。

ただし、本教材のメインターゲットである創業前後〜年商1億円以下の人は、まず次を押さえれば大丈夫です。

1. 自分が免税か課税か
2. 課税なら原則か簡易か
3. インボイス登録しているか
4. レシート・領収書・適格請求書を保存しているか
5. 食品・輸出・フリマ・ポイント・ギフト券があるか

この5つを税理士に伝えるだけでも、相談の質が上がります。


実務チェックリスト

事業者区分

  • 前々年・前々期の課税売上高を確認した
  • 特定期間の売上・給与等を確認した
  • 免税事業者か課税事業者かを確認した
  • インボイス登録の有無を確認した
  • 課税事業者選択届出書の有無を確認した
  • 法人の場合、資本金と設立期を確認した

課税方式

  • 原則課税か簡易課税かを確認した
  • 簡易課税の場合、届出状況を確認した
  • 事業区分を確認した
  • 2割特例・3割特例の適用可能性を確認した
  • 税理士へ確認した内容をメモした

売上

  • 国内売上と輸出売上を分けている
  • 食品売上があるか確認した
  • 8%と10%の区分を確認した
  • 返品・キャンセルを反映している
  • ポイント・クーポン・値引きの処理を確認した
  • 会計売上と課税標準の違いを説明できる

仕入れ・経費

  • 店舗レシートを保存している
  • ECの領収書・請求書を保存している
  • クレジットカード明細だけで済ませていない
  • インボイス登録番号を確認している
  • 個人・フリマ仕入れの資料を保存している
  • ギフト券購入と商品購入を分けて記録している
  • ポイント利用時のレシート表示を確認している
  • 電子マネーはチャージと利用を分けている

会計ソフト

  • 消費税設定を確認した
  • 税込経理・税抜経理を確認した
  • 税区分が不自然な取引をチェックした
  • 仮受消費税・仮払消費税を確認した
  • 消費税集計や申告基礎データを確認した
  • 税理士に渡す資料を整理した

よくある質問

Q1 売上1,000万円以下なら、インボイス登録しても免税のままでいられますか?

いいえ。

インボイス発行事業者として登録を受けると、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。

登録するかどうかは、取引先、販路、BtoB比率、税負担、事務負担を考えて判断します。

Q2 Amazonや楽天で販売しているだけなら、インボイス登録は不要ですか?

一概には言えません。

BtoC中心なら、買い手からインボイスを求められる場面は少ないかもしれません。

ただし、自分が課税事業者になるかどうか、プラットフォーム上での表示、法人取引、卸販売、将来の事業展開によって判断が変わります。

税理士へ確認してください。

Q3 クレジットカード明細があれば、インボイスは不要ですか?

原則として、カード明細だけではインボイスとしては不十分です。

カード明細は支払いの確認資料です。

インボイスが必要な場合は、店舗や購入先が発行する適格請求書、領収書、レシート、請求書、取引明細などを保存します。

Q4 店舗せどりのレシートは全部保存すべきですか?

はい、基本的に保存します。

原則課税でインボイス確認が必要な場合、レシートの登録番号、税率、消費税額等が重要になります。

写真、PDF、スキャンなどで後から取引と結び付けられるように保存します。

Q5 フリマアプリで個人から仕入れた場合、消費税はどうなりますか?

個人がインボイス発行事業者でない場合、原則課税では仕入税額控除が制限される可能性があります。

ただし、経過措置や古物商特例などが関係する場合があります。

古物商許可の有無、棚卸資産かどうか、帳簿記載内容を税理士へ確認してください。

Q6 ギフト券を買った時点で仕入れにしていいですか?

原則として、商品券やプリペイドカードなどの購入は非課税の入口です。

実際にギフト券を使って商品やサービスを購入した時点で、税区分を判断します。

ギフト券購入だけを仕入れにすると、在庫や消費税がズレることがあります。

Q7 ポイントを使った仕入れはどう処理しますか?

レシートや購入明細の表示を確認します。

ポイントが商品本体価格の値引きなのか、支払額への充当なのかで、消費税上の入口が変わります。

ポイント処理は会計処理と消費税処理がズレやすいので、税理士方針に合わせます。

Q8 輸出をしています。消費税はかかりますか?

輸出取引に該当する場合、消費税が免除されることがあります。

ただし、輸出免税の適用には、輸出許可書や発送証明など、輸出した事実を証明する資料の保存が必要です。

輸出をしている場合は、必ず税理士へ共有してください。

Q9 消費税が還付になると言われました。喜んでいいですか?

還付は、輸出や大きな設備投資などで起きることがあります。

ただし、還付申告は税務署から確認されやすい分野です。

証憑、税区分、輸出証明、インボイス保存を整えて、税理士と進めます。

Q10 消費税の制度は変わりますか?

変わります。

インボイス制度の経過措置、2割特例、3割特例、少額特例、免税事業者等からの仕入れ控除割合などは、時期により変わります。

この章は2026年7月8日時点で確認した内容をもとにしています。

最終判断は必ず最新の国税庁情報と税理士確認で行ってください。


参考にした公式情報


次章へのつなぎ

この章では、消費税とインボイスの入口を整理しました。

次の第16章では、通常の売上・仕入れ・経費とは少し違う取引を扱います。

固定資産。

減価償却。

車両。

融資。

借入金。

給付金・補助金。

給与・外注費。

個人から法人への移行。

法人の役員・会社間取引。

これらは、いつもの「売上」「仕入」「経費」だけでは処理できません。

消費税と同じく、最初に見分けることが大事です。

次章では、特殊取引を見つけたときに、どの資料を準備し、どこで税理士に確認すればいいかを整理します。


免税事業者からの仕入れは、控除できる割合が下がっていく 免税事業者からの仕入れは、控除できる割合が下がっていく インボイスがない仕入れの取り扱いには、経過措置があります 令和5年10月 80%控除 令和8年10月 50%控除 令和11年10月 控除なし 現在の期間 80% を控除できる この先 50% に下がる 仕入先が課税事業者かどうかで処理が変わります。適用は税理士にご確認ください 仕入先の登録状況、いま確認しておきましょう
図39控除できる割合は、段階的に下がります

第16章

固定資産・借入・給与などの特殊取引

個人法人該当者のみ

この章でできるようになること

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 通常の売上・仕入れ・経費とは違う取引を見分けられる
  • 高額なPC、車、設備、ソフトウェアなどを固定資産として考えられる
  • 減価償却の基本を説明できる
  • 10万円、20万円、30万円の少額資産の入口を理解できる
  • 車両費、駐車場代、ガソリン代などを家事按分で整理できる
  • 融資・借入金の入金を売上にしないと分かる
  • 借入金の元金返済と利息を分けられる
  • 給付金・補助金を通常売上と分けて考えられる
  • 給与・外注費・源泉徴収の入口を理解できる
  • 個人事業から法人へ移行するときの注意点が分かる
  • 法人の役員・会社間取引を個人事業と同じ感覚で処理しないと分かる
  • 海外販売・外貨取引は通常章だけでは足りないと判断できる

高いものは、買った年に全額経費にならない 高いものは、買った年に全額経費にならない 使う年数に分けて、少しずつ経費にしていきます 買った年 資産として計上 全額は経費にならない 使っている間 毎年少しずつ 減価償却費として計上 使い終わる 帳簿から落とす 除却・売却の処理 金額によって扱いが変わります。少額のものは一度に経費にできる場合があります
図40高いものは、買った年に全額経費にはなりません

最初に結論

この章で覚えてほしいことは、ひとつです。

いつもの「売上」「仕入」「経費」に見えても、実は別処理が必要な取引がある。

せどり・物販の記帳は、日常的にはシンプルです。

売れたら売上。

仕入れたら仕入。

配送したら荷造運賃。

手数料は支払手数料。

これで大半は処理できます。

ただし、次のような取引は少し違います。

  • 20万円のパソコンを買った
  • 70万円の車を買った
  • カード2回払いで車両を購入した
  • 事業用融資を受けた
  • 借入金を返済した
  • 給付金・補助金が入金された
  • 家族に給与を払った
  • 外注さんへ継続的に報酬を払った
  • 個人事業から法人へ移した
  • 法人カードで社長個人の支出を払った
  • 海外販売で外貨入金がある

これらは、ただ「経費です」と処理するとズレることがあります。

たとえば、借入金が入金されても売上ではありません。

借入金を返済しても、元金部分は経費ではありません。

車を買っても、購入額をその年に全額経費にできるとは限りません。

法人の役員報酬は、個人事業主の生活費とは扱いが違います。

この章では、特殊取引を完璧に処理することを目指しません。

まずは、次の状態を目指します。

1. これは普通の経費ではないかも、と気づける
2. 必要な資料を集められる
3. 税理士・記帳担当へ正しく説明できる
4. 自己判断で危ない処理をしない

この4つができれば、決算前の大きな手戻りをかなり減らせます。


1. 固定資産

固定資産とは、長く使うために買った資産です。

せどり・物販では、次のようなものが固定資産になることがあります。

資産
パソコン 仕入管理、出品、会計、画像編集用PC
スマホ・タブレット 仕入れ、リサーチ、撮影、出品用
カメラ・撮影機材 商品撮影用カメラ、照明、背景セット
車両 仕入れ、納品、配送、倉庫移動に使う車
倉庫設備 棚、ラック、作業台、フォークリフト等
事務所設備 エアコン、机、椅子、複合機
ソフトウェア 一定金額以上の業務用ソフト
内装工事 事務所、倉庫、店舗の改装

固定資産のポイントは、買ったときに全額を一気に経費にしない場合があることです。

第12章で扱った通常経費とは違います。

固定資産と消耗品の違い

たとえば、2,000円の梱包テープは消耗品です。

使えばなくなります。

一方、200,000円のパソコンは、何年も使います。

このような資産は、購入した年に全額を経費にするのではなく、数年に分けて費用化します。

この数年に分ける手続きが、次の節で説明する減価償却です。

固定資産で集める資料

固定資産を買ったら、次の資料を残します。

資料 内容
請求書・領収書 何をいくらで買ったか
見積書 内訳確認
契約書 車両、リース、設備、工事など
明細書 本体価格、手数料、付属品、諸費用
支払方法 現金、カード、ローン、分割払い
使用開始日 いつから事業で使い始めたか
事業利用割合 個人利用と事業利用が混ざる場合
写真・管理表 車両、設備、備品の現物確認

特に車や高額設備は、購入明細が必要です。

「車を714,000円で買いました。頭金30万円、カード2回払い414,000円、カード手数料20,700円です」

このような場合、合計金額だけでは足りません。

車両本体、諸費用、税金、保険、ローン手数料、支払方法を分けて確認します。


2. 減価償却

減価償却とは、高額な資産を何年かに分けて経費にする手続きです。

国税庁の説明では、建物、機械装置、器具備品、車両運搬具など、時の経過等によって価値が減る資産を減価償却資産とし、その取得に要した金額は取得時に全額必要経費にするのではなく、使用可能期間にわたり分割して必要経費にしていくものとされています。

ざっくり言うと、こうです。

高額で長く使うもの
→ 買った年に全額経費ではなく
→ 何年かに分けて経費にする

数字で見る例

240,000円のパソコンを買いました。

これを4年で使う資産として処理する場合、単純化すると毎年60,000円ずつ経費にするイメージです。

240,000円 ÷ 4年 = 年60,000円

実際には、取得日、使用開始日、耐用年数、償却方法、個人・法人、税込経理・税抜経理などで計算が変わります。

ここでは「一気に経費ではなく、分けることがある」と理解してください。

減価償却で確認すること

減価償却が関係しそうな資産を買ったら、次を確認します。

確認項目 内容
取得日 いつ買ったか
使用開始日 いつ事業で使い始めたか
取得価額 本体、付属品、送料、設置費など
資産の種類 車両、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなど
新品・中古 耐用年数に影響する場合あり
事業利用割合 家事按分が必要か
支払方法 一括、カード、ローン、リース
消費税方式 税込経理か税抜経理か

土地や骨とう品は違う

すべての高額なものが減価償却資産になるわけではありません。

土地のように、時の経過で価値が減るものとして扱わない資産は、減価償却の対象ではありません。

高額なコレクション品や美術品なども判断が難しくなります。

トレカ、フィギュア、時計、ブランド品などを「販売用商品」として持っているのか、「事業用資産」として使っているのかでも扱いが変わります。

せどりでは、販売用商品は通常、固定資産ではなく棚卸資産です。

ここを間違えないでください。


3. 少額資産

備品などは、金額で処理の入口が変わります 10万円・20万円・30万円の入口マップ 販売用の商品は在庫(棚卸資産)なので、この図の対象外です 10万円未満 その年の経費に できる入口 10万円以上 20万円未満 一括償却資産として 3年で処理する入口 10万円以上 30万円未満 青色申告者等の 少額特例の入口(期限あり) 30万円以上 固定資産として 減価償却 これは入口の目安です。要件・届出・期限は変わるため、適用前に最新情報と税理士へ確認します
図41少額資産は金額で入口が変わる

固定資産といっても、金額によって扱いが変わることがあります。

まず入口として、10万円、20万円、30万円を覚えてください。

金額 入口
10万円未満 原則、その年の経費にできる入口
10万円以上20万円未満 一括償却資産として3年で処理する入口
10万円以上30万円未満 青色申告者・中小企業者等の少額減価償却資産特例の入口

ただし、これは「必ずこう処理する」という意味ではありません。

要件、届出、青色申告、個人・法人、取得時期、貸付用資産かどうか、税制改正によって変わります。

特に30万円未満の少額減価償却資産の特例は、適用期限や要件が変わる可能性があるため、毎年確認が必要です。

2026年7月8日時点で確認した国税庁ページでは、令和7年4月1日現在法令等として、一定の青色申告者について令和8年3月31日までの取得を対象とする案内がされています。

教材の最終公開時には、必ず最新の延長・改正情報を確認してください。

せどりでよくある少額資産

資産 注意点
パソコン 金額次第で消耗品・一括償却・固定資産
スマホ 事業利用割合も確認
プリンター 本体と消耗品を分ける
カメラ 事業利用割合、付属品も確認
撮影照明 セット購入なら合計額に注意
棚・ラック 倉庫設備として固定資産になる場合あり
ラベルプリンター 金額次第
ソフトウェア 利用形態・金額・契約期間を確認

判断のコツ

迷ったら、次の質問をします。

1. 取得価額はいくらか
2. 1年以上使うものか
3. 販売用商品か、事業で使う道具か
4. 個人利用が混ざるか
5. 青色申告か
6. 税理士はどの処理方針か

せどりでよくあるミスは、販売用商品と固定資産を混同することです。

売るために仕入れた商品は、原則として棚卸資産です。

出品・撮影・管理のために使う道具は、固定資産や消耗品の入口です。


4. 車両と家事按分

車は、せどりでかなりよく出てくる特殊取引です。

店舗仕入れ、納品、配送、倉庫移動に車を使う人は多いです。

ただし、車はプライベート利用と事業利用が混ざりやすい資産です。

そのため、家事按分が重要になります。

車関係で出てくる費用

費用
車両本体 車を購入した金額
ガソリン代 仕入れ・納品で使った分
駐車場代 月極駐車場、コインパーキング
高速代 仕入れ遠征、納品移動
自動車保険 任意保険、自賠責
自動車税 車種・用途に応じた税金
車検代 車検、整備
修理代 タイヤ交換、故障修理
ローン利息 車両ローンの利息部分

車を買った場合、車両本体は固定資産になる可能性があります。

ガソリン代や駐車場代は、事業で使った割合だけ経費にする考え方になります。

家事按分の考え方

個人事業主の場合、ひとつの支出がプライベートと事業の両方に関係することがあります。

これを家事関連費といいます。

国税庁の説明では、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。

つまり、感覚で「なんとなく半分」では弱いです。

按分には根拠が必要です。

車の按分根拠

車の按分は、次のような根拠で考えます。

根拠 内容
走行距離 年間走行距離のうち事業利用距離
利用日数 事業利用日数と私用日数
目的別記録 仕入れ、納品、配送、私用
ルート記録 仕入れ先、倉庫、配送先
ETC・駐車場履歴 移動実態の補助資料

たとえば、年間走行距離10,000kmのうち、仕入れ・納品・配送が9,400kmなら、事業利用94%という説明ができます。

一方で、「去年は98%、今年は94%ですが、毎年変わっても大丈夫ですか?」という疑問が出ることがあります。

事業利用実態が変われば、按分率が変わること自体は自然です。

ただし、根拠がないまま毎年コロコロ変えるのは弱いです。

走行距離、利用記録、仕入れ頻度などで説明できるようにします。

駐車場代の按分

駐車場代は、実務で迷いやすいです。

自宅近くの月極駐車場を、事業用にも私用にも使う車のために借りている場合、車両費と同じ按分にする考え方があります。

一方、事務所や倉庫の駐車場として使っている場合は、地代家賃に近い整理をすることもあります。

大事なのは、どの車のための駐車場か、何のために使っているかを説明できることです。

仕入れ・納品用の車に紐づく月極駐車場
→ 車の利用割合に合わせる考え方

自宅兼事務所の駐車場
→ 家事按分の根拠を確認

倉庫・事務所の業務専用駐車場
→ 業務用として整理できる可能性

按分率は税理士方針に合わせます。


5. 融資・借入金

融資や借入金は、売上ではありません。

借入の返済は、経費になる部分とならない部分がある 借入の返済は、経費になる部分とならない部分がある ここを分けないと、利益が実際より小さくなります 利息 経費になる 支払利息として計上 毎月の返済額のうち一部 損益計算書に載る 元本 経費にならない 借入金の残高が減るだけ お金は出ていくのに経費にならない 貸借対照表の話 「返済したから経費」ではありません。利益と現金がズレる大きな理由の一つです
図42返済のうち、経費になるのは利息だけです

銀行から1,000万円の融資を受けて口座に入金されても、それは事業の売上ではありません。

借りたお金です。

会計上は、借入金という負債になります。

融資入金
普通預金 / 借入金

売上にしてしまうと、利益が大きくズレます。

税金もおかしくなります。

借入で集める資料

融資を受けたら、次の資料を保存します。

資料 内容
金銭消費貸借契約書 借入条件
返済予定表 元金・利息・返済日
保証料明細 信用保証協会など
入金通帳・明細 実際の入金日・金額
返済口座明細 毎月の返済確認
融資目的資料 仕入資金、設備資金、運転資金など

返済予定表はとても大事です。

毎月の返済額の中に、元金と利息が混ざっているからです。

借入金は貸借対照表で見る

借入金は損益計算書ではなく、貸借対照表に残ります。

第14章で見たとおり、貸借対照表は残高の地図です。

借入金残高は、返済予定表の残高と会計ソフトの残高が合っているか確認します。

借入残高が合わない場合は、元金と利息の分け方、返済処理、保証料、繰上返済などを確認します。


6. 元金返済・利息

借入金の返済で一番大事なのは、元金と利息を分けることです。

毎月100,000円返済していても、その全額が経費ではありません。

たとえば、内訳が次のようになっているとします。

返済額 100,000円
元金   92,000円
利息    8,000円

この場合、経費になる入口があるのは利息8,000円です。

元金92,000円は、借りたお金を返しているだけなので、経費ではありません。

仕訳イメージはこうです。

借入金   92,000円 / 普通預金 100,000円
支払利息   8,000円

車や設備のローン

車や設備をローン・分割払いで買うと、さらに注意が必要です。

車両本体は固定資産。

ローンの元金返済は借入金の返済。

利息や手数料は支払利息・支払手数料の入口。

このように分かれます。

車を購入
→ 車両運搬具などの固定資産

頭金を支払う
→ 資産購入代金の一部支払い

ローン・分割払い
→ 未払金または借入金の入口

利息・手数料
→ 支払利息・支払手数料の入口

購入時の明細がないと、内訳を分けられません。

車を買ったら、販売店の注文書、請求書、ローン明細、支払予定表を必ず保存します。


7. 給付金・補助金

給付金や補助金も、通常の売上とは分けて考えます。

実務では、雑収入などで処理することがあります。

ただし、制度の種類、目的、税務上の特例、消費税、法人・個人によって扱いが変わるため、必ず確認が必要です。

給付金・補助金で集める資料

資料 内容
交付決定通知書 何の給付金・補助金か
申請書類 申請内容
入金明細 入金日・金額
使途報告 何に使ったか
対象経費の領収書 補助対象の支出
返還条件 返還義務の有無
税務上の案内 課税・非課税・不課税など

通常売上と混ぜない

たとえば、コロナ関連の給付金が500,000円入金されたとします。

これは商品を販売した売上ではありません。

そのため、Amazon売上や楽天売上と同じ行に混ぜないようにします。

商品販売の売上
→ 売上高

給付金・補助金
→ 雑収入等の入口

ただし、「雑収入でよい」と断定する前に、制度案内と税理士方針を確認します。

補助金で固定資産を買った場合には、圧縮記帳や取得価額の整理など、通常より難しい論点が出ることがあります。

ここは教材本文だけで判断しないでください。

入金口座も確認する

給付金が、普段連携していない銀行に入ることがあります。

その後、事業用口座へ移した場合、ただの口座間移動にも見えます。

しかし、元をたどると給付金です。

連携していない口座に入金された場合は、次を伝えます。

・どの給付金か
・いつ入金されたか
・どの口座に入ったか
・その後、どの口座へ移したか
・いくら移したか

口座連携されていない銀行がある場合は、残高照合にも影響します。

事業に使っている口座は、できるだけ共有します。


8. 給与・外注費・源泉徴収の入口

給与と外注費は、似ているようで扱いが違います。

せどり・物販では、外注さんに作業をお願いすることがあります。

  • 商品リサーチ
  • 出品作業
  • 梱包
  • 発送
  • メルカリ販売代行
  • 画像編集
  • 商品説明文作成
  • 倉庫作業

これらを外注費として処理することはあります。

ただし、働き方の実態によっては、給与に近いと判断される可能性があります。

給与と外注費の違い

見るポイント 給与寄り 外注費寄り
指揮命令 時間・場所・方法を細かく指示 成果物・業務単位で依頼
勤務時間 決まっている 自分で調整
報酬 時給・月給 作業単価・成果報酬
道具 会社が用意 外注者が用意
代替性 本人が働く前提 他の人でも可能
請求書 ないことが多い 発行されることが多い

これは税務・労務の判断が絡むため、表だけで決めないでください。

継続的に人へ支払う場合は、税理士や社労士へ確認します。

源泉徴収の入口

会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士・弁護士など一定の報酬を支払ったりする場合、支払時に所得税等を差し引いて国に納める義務が生じることがあります。

これが源泉徴収です。

給与を払う場合は、源泉徴収、年末調整、給与支払報告書、社会保険、労働保険などが関係します。

外注費でも、原稿料、デザイン料、講演料、士業報酬など、源泉徴収が必要な報酬があります。

せどりの外注作業が必ず源泉徴収対象になるわけではありませんが、内容によって判断が必要です。

外注費で集める資料

外注さんへ支払う場合は、次の資料を残します。

資料 内容
契約書・業務委託契約書 依頼内容、報酬、責任範囲
請求書 請求内容、金額、消費税、登録番号
作業内容 何を依頼したか
納品物 成果物、作業記録
支払明細 振込日、金額、手数料
源泉徴収の有無 対象報酬かどうか

たとえば、PSA鑑定のように、商品に付加価値を付けるための外部サービスを使う場合、外注費や支払手数料として整理する入口があります。

一方で、商品そのものを仕入れているのか、サービスを受けているのかは確認が必要です。

内容が分からない支払いは、金額が大きいほど必ず説明できるようにします。

家族へ給与を払う場合

個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族へ給与を払う場合は特に注意です。

原則として、親族への給与は必要経費になりません。

ただし、青色申告者の青色事業専従者給与など、一定の要件を満たす場合に認められる制度があります。

青色事業専従者給与には、届出、従事期間、職務内容、給与額の相当性などの要件があります。

「家族に手伝ってもらったから給与で経費にする」は危険です。

必ず事前に税理士へ確認します。


9. 個人から法人への移行

せどりで売上が伸びてくると、個人事業から法人へ移行する人がいます。

法人化すると、会計の前提が変わります。

個人事業の延長で、なんとなく同じ口座・同じカード・同じ在庫を使うと、あとで整理が大変になります。

法人化で確認するもの

項目 確認すること
法人設立日 いつから法人で取引するか
個人事業の終了日 個人側の売上・経費をどこまでにするか
在庫 個人から法人へどう移すか
固定資産 車、PC、設備を法人で使うか
銀行口座 個人用と法人用を分ける
クレジットカード 法人カードへ移行する
販路アカウント 名義変更・契約主体を確認
借入金 個人借入か法人借入か
売掛金 個人時代の売上入金が後から来る場合
買掛金・カード未払 個人時代の支払いが後から出る場合
消費税 個人・法人で別々に判定

在庫移行が重要

個人事業で持っていた在庫を、法人で販売する場合があります。

このとき、在庫をどう移すかを決める必要があります。

個人の在庫をそのまま法人が売ると、個人・法人の売上原価がズレます。

在庫一覧、数量、金額、移行日を整理して、税理士へ確認します。

売掛金・カード未払のズレ

法人化直後は、個人時代の売上入金やカード引き落としが後から来ます。

たとえば、3月31日まで個人事業、4月1日から法人にしたとします。

3月にAmazonで売れた売上が、4月に入金されることがあります。

3月に個人カードで仕入れた分が、4月に引き落とされることもあります。

このようなズレを整理しないと、個人と法人の数字が混ざります。

法人化するときは、移行月の取引を特に丁寧に見ます。


10. 法人の役員・会社間取引

法人になると、社長個人と会社は別人格です。

個人事業主のときは、事業用口座から生活費を引き出すと「事業主貸」として整理していました。

法人では、同じ感覚で会社のお金を個人に移すと、役員貸付金、役員報酬、立替金、仮払金などの論点になります。

法人で注意する取引

取引 注意点
役員報酬 定期同額給与などのルールがある
社長への一時的な支払い 役員貸付金・仮払金の入口
社長が立て替えた経費 役員借入金・未払金の入口
法人カードで私用支出 役員貸付金・給与課税等のリスク
個人カードで法人経費 精算・立替処理が必要
社長個人から会社へ入金 役員借入金・増資・売上ではない可能性
会社から別会社へ支払い 契約・請求書・関連当事者取引の確認

役員報酬は自由に変えない

法人の役員報酬は、個人事業主の生活費とは違います。

法人税では、役員給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与などに該当しないものは、損金算入できない入口があります。

ざっくり言うと、社長の給料を利益に合わせて毎月自由に増減すると危険です。

役員報酬は、決算期、株主総会・社員総会、議事録、支給時期、支給額を確認して決めます。

小規模法人でも、ここはかなり重要です。

役員貸付金を放置しない

法人カードで社長個人の支出を払った。

会社口座から個人の生活費を払った。

会社のお金を社長が一時的に使った。

このような場合、役員貸付金や仮払金として残ることがあります。

役員貸付金が増え続けると、金融機関の評価や税務上の説明で不利になることがあります。

法人では「あとで何とかする」は危険です。

毎月、会社のお金と個人のお金を分けます。


11. 海外販売・外貨は選択教材へ

海外販売、輸出、外貨、PayPal、Payoneer、海外Amazon、eBayなどは、通常の国内せどりより複雑です。

第15章では消費税の入口として輸出免税を扱いました。

この章では、海外販売・外貨取引は選択教材へ回す方針にします。

理由は、論点が多いからです。

海外販売で出る論点

論点 内容
売上計上 いつ、いくらで売上にするか
為替 円換算レート、為替差損益
手数料 プラットフォーム手数料、決済手数料
入金 PayPal、Payoneer、外貨口座
輸出証明 発送伝票、輸出許可書、EMS控え
返品 海外返品、返金、再発送
関税・VAT 国や販路によって扱いが変わる
消費税還付 輸出が多い場合に関係

国内せどりだけなら、ここまでを一度に覚える必要はありません。

本編では「海外販売・外貨は別管理が必要」とだけ覚えます。

輸出や海外販売をしている人は、税理士へ最初から伝えてください。


実務チェックリスト

特殊取引が出たら、次のリストで確認します。

固定資産・減価償却

  • 10万円以上の備品・設備・車両を買った
  • 1年以上使うものか確認した
  • 販売用商品ではなく、事業で使う道具か確認した
  • 請求書・領収書・明細を保存した
  • 使用開始日を記録した
  • 新品・中古を確認した
  • 事業利用割合を確認した
  • 税理士へ資産処理を確認した

車両・家事按分

  • 車両本体と諸費用を分けた
  • ローン明細・返済予定表を保存した
  • ガソリン代、駐車場代、保険、税金、車検代を整理した
  • 事業利用割合の根拠を残した
  • 走行距離・利用日数・仕入れルートを記録した
  • 毎年按分率が変わる場合、理由を説明できる

融資・借入

  • 借入入金を売上にしていない
  • 金銭消費貸借契約書を保存した
  • 返済予定表を保存した
  • 元金と利息を分けた
  • 保証料・手数料を確認した
  • 借入金残高が返済予定表と合っている

給与・外注

  • 給与か外注費かを確認した
  • 業務委託契約書や請求書を保存した
  • 源泉徴収の要否を確認した
  • 家族への支払いは専従者給与等の要件を確認した
  • 継続的な外注は税理士・社労士へ相談した

法人・役員

  • 法人口座と個人口座を分けた
  • 法人カードと個人カードを分けた
  • 役員報酬の金額・支給時期を確認した
  • 役員貸付金・役員借入金を放置していない
  • 法人化時の在庫、売掛金、カード未払を整理した

よくある質問

Q1 20万円のパソコンを買いました。全額経費ですか?

全額をその年の経費にできるとは限りません。

固定資産、減価償却、一括償却資産、少額減価償却資産の特例などの入口があります。

金額、青色申告、取得時期、税理士方針を確認します。

Q2 車を買いました。購入額を全部経費にできますか?

通常は、車両本体は固定資産として減価償却の対象になる入口があります。

さらに、個人利用が混ざるなら事業利用割合で按分します。

購入明細、支払方法、ローン明細、事業利用割合を整理してください。

Q3 車の按分率は毎年変わってもいいですか?

事業利用実態が変われば、按分率が変わることはあります。

ただし、根拠が必要です。

走行距離、利用日数、仕入れ・納品ルートなどで説明できるようにします。

Q4 住宅ローンは経費になりますか?

住宅ローンの返済額そのものをそのまま経費にする考え方ではありません。

自宅の一部を事業で使う場合、建物の減価償却、ローン利息、固定資産税、水道光熱費などの家事按分が論点になります。

住宅ローン控除との関係もあるため、必ず税理士へ確認してください。

Q5 融資で入金されたお金は売上ですか?

売上ではありません。

借りたお金なので、借入金という負債です。

売上にしてしまうと、利益と税金が大きくズレます。

Q6 借入金を返済したら経費ですか?

元金返済は経費ではありません。

経費になる入口があるのは利息部分です。

返済予定表で元金と利息を分けます。

Q7 給付金は売上ですか?

商品販売の売上ではありません。

実務では雑収入等で処理することがありますが、制度の種類や税務上の扱いにより確認が必要です。

交付決定通知書、入金明細、制度案内を保存してください。

Q8 外注費と給与はどう違いますか?

働き方の実態で判断します。

時間・場所・方法を細かく指示している、継続的に勤務している、時給・月給で払っている場合は給与寄りの論点が出ます。

成果物や業務単位で請求書を受けている場合は外注費寄りですが、自己判断せず確認します。

Q9 妻や家族に給与を払えば経費になりますか?

原則として、生計を一にする親族への給与は必要経費になりません。

ただし、青色事業専従者給与など、一定の制度があります。

届出、従事期間、給与額の相当性などが必要です。

Q10 法人カードで個人の買い物をしてしまいました。どうなりますか?

法人では、会社と社長個人は別です。

個人支出を法人カードで払うと、役員貸付金、給与課税、仮払金などの論点になります。

放置せず、早めに税理士・記帳担当へ伝えてください。


参考にした公式情報


次章へのつなぎ

ここまでで、せどり・物販の記帳でよく出る取引の処理を見てきました。

次の第17章では、帳簿・領収書・電子データの保存を整理します。

どれだけ正しく記帳しても、証憑が残っていなければ後から説明できません。

特にインボイス制度後は、カード明細だけでは不足する場面もあります。

次章では、紙の領収書、PDF、メール、ECサイトの購入履歴、電子取引データを、後から取引と結び付けられる形で保存する方法を整理します。


給与を払うときの流れ 給与を払うときの流れ 支払った金額の全部が、そのまま相手に渡るわけではありません 給与を計算する 総支給額を決める 源泉所得税を預かる 相手の税金を 会社が預かる 差引後を支払う 手取り額を渡す 預かった分を納付する 原則は翌月10日まで 納期の特例あり 預かったお金は「預り金」。自社の経費でも収入でもありません
図43給与を払うときの流れ

第17章

帳簿・領収書・電子データを保存しよう

この章は、制度の改正で内容が変わることがあります。記載と最新の制度が食い違う場合は、巻末の「改訂履歴と制度の更新情報」を確認してください。

この章のゴール

この章では、帳簿、領収書、請求書、カード明細、PDF、メール、ECサイトの購入履歴などを、後から取引と結び付けられる形で保存できるようにします。

記帳は、入力して終わりではありません。

数字の根拠になる資料を残しておくところまで含めて、はじめて「帳簿が整っている」といえます。

特に、せどり・物販は取引の数が多くなりやすいです。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、メルカリ、ヤフオク、PayPay、Suica、各種クレジットカード、銀行振込、現金仕入れ、ポイント、ギフト券など、資料の発生場所がバラバラになります。

そのため、保存ルールを決めずに進めると、あとからこうなります。

  • どの領収書がどの取引に対応しているか分からない
  • カード明細はあるが、何を買ったか分からない
  • PDFをダウンロードしたはずだが、どこに保存したか分からない
  • ECサイトの購入履歴が古くなって見られない
  • 税理士や記帳代行に資料を渡すたびに探し直している
  • インボイス確認が必要になったとき、対象取引の証憑をすぐ出せない

これ、地味ですがかなり時間を奪います。

しかも、決算や確定申告の直前に発覚すると、精神的にもなかなかしんどいです。

この章で目指す状態は、完璧な文書管理システムを作ることではありません。

あとから見たときに、「この帳簿の数字は、この資料に基づいています」と説明できる状態を作ることです。


電子帳簿保存法は、3つの区分に分かれる 電子帳簿保存法は、3つの区分に分かれる せどらーに一番関係するのは、いちばん左です 電子取引データの保存 メールで届いた請求書 サイトからDLした領収書 原則データのまま保存 対応が必要 スキャナ保存 紙で受け取ったものを スキャン・撮影して保存 要件を満たせば紙は不要 任意 電子帳簿等保存 会計ソフトの帳簿を データのまま保存する 一定の要件がある 任意 ネットで完結するせどりは、左の「電子取引」がほぼ全部に当てはまります
図44電子帳簿保存法は3つの区分に分かれます

まず結論

せどり・物販の証憑保存は、次の5つだけ先に押さえてください。

ルール 内容
1 帳簿と証憑はセットで考える
2 電子で受け取った資料は、電子データのまま保存する
3 カード明細だけで安心しない
4 ファイル名に日付・取引先・金額を入れる
5 月ごとに締めて、足りない資料をその月のうちに潰す

この5つを守るだけで、後からの確認作業はかなりラクになります。

逆に、これをやらないと、記帳そのものはできていても、決算・確定申告・税務調査・税理士確認の場面で止まりやすくなります。

保存の基本は、次の一文です。

「支払った証拠」だけでなく、「何を・誰から・いくらで・いつ買ったか」が分かる証拠を残す。

クレジットカード明細は、支払った証拠にはなります。

しかし、それだけでは「何を買ったか」「消費税率はどうか」「インボイスとして有効か」までは分からないことがあります。

だから、カード明細と領収書・請求書・購入明細を分けて考える必要があります。


1. 保存する帳簿・証憑

まず、何を保存する必要があるのかを整理します。

保存が必要になるもの 保存が必要になるもの せどりでは、ほとんどがデータで受け取るものです 帳簿 仕訳帳 総勘定元帳 売掛帳・買掛帳 固定資産台帳 決算関係 決算書 棚卸表 申告書の控え 取引の証拠 請求書・領収書 納品書 契約書 販路の売上データ 電子で受け取ったもの メールの請求書 サイトからDLした領収書 原則データのまま保存 紙に印刷して原本を捨てない 保存期間は原則7年(法人は事情により長くなる場合があります)。詳細は税理士・税務署へ
図45保存が必要になるもの

大きく分けると、保存対象は次の2つです。

種類 内容
帳簿 取引を記録したもの 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売上帳、仕入帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳など
証憑・書類 帳簿の根拠になるもの 領収書、請求書、納品書、注文書、契約書、カード明細、銀行明細、棚卸表、売上データ、購入履歴など

帳簿は、会計ソフトの中にある取引データです。

証憑は、その取引が本当にあったことを説明する資料です。

たとえば、会計ソフトに次の仕訳が入っていたとします。

仕入高 33,000円 / クレジットカード未払金 33,000円
摘要:楽天市場 商品仕入れ

この仕訳だけでは、まだ根拠が弱いです。

この取引について、次のような資料と結び付けられると強くなります。

  • 楽天市場の購入履歴
  • 領収書または請求書PDF
  • クレジットカード明細
  • ポイント利用がある場合はポイント利用履歴
  • インボイス確認が必要な場合は適格請求書等

ここで大事なのは、会計ソフトに連携されていることと、証憑が保存されていることは別物だという点です。

MoneyForwardにカード明細が連携されていても、それだけで領収書が保存されたことにはなりません。

Amazonや楽天市場を連携していても、すべての証憑が、将来にわたって必要な形で保存されているとは限りません。

連携は、記帳をラクにする仕組みです。

保存は、後から説明するための仕組みです。

この2つは、似ているようで役割が違います。

せどり・物販で保存したい資料一覧

せどり・物販では、次の資料を保存対象として考えます。

区分 保存する資料
売上 Amazonトランザクション、楽天・Yahoo!・メルカリ・ヤフオク等の売上明細、入金明細、買取業者の明細
売掛金 Amazonなどの未入金残高が分かるデータ、決済期間ごとの明細
仕入 店舗レシート、領収書、請求書、ECサイト購入履歴、納品書、インボイス関連資料
経費 領収書、請求書、利用明細、契約書、家賃・通信費・外注費などの根拠資料
カード 月ごとの利用明細、引落金額、引落日が分かるPDFまたはCSV
銀行 通帳、入出金明細、ネット銀行のPDF・CSV、期末残高スクショ
現金 領収書、現金出納メモ、現金売上・現金仕入れの明細
電子マネー Suica、PayPay、楽天ペイなどの利用履歴、チャージ履歴
ポイント 楽天ポイント、PayPayポイント、Amazonポイントなどの利用履歴
ギフト券 Amazonギフト券、Appleギフトカード、楽天キャッシュなどの購入・利用履歴
棚卸 年末・決算日の在庫金額、集計表、棚卸の根拠データ
固定資産 購入明細、領収書、保証書、売却・廃棄資料
借入 借入契約書、返済予定表、返済明細
給与・外注 請求書、契約書、支払明細、源泉徴収関連資料

全部を最初から完璧にやろうとすると重いです。

まずは、次の4つだけでも月ごとにそろえてください。

  1. 売上データ
  2. 仕入・経費の領収書、請求書
  3. カード明細
  4. 銀行明細、残高資料

この4つがそろうと、月次記帳の精度が一気に上がります。


2. 紙の領収書

店舗せどりをしている人は、紙のレシートや領収書がどうしても発生します。

家電量販店、リサイクルショップ、ホームセンター、ドラッグストア、スーパー、コンビニ、古物市場、展示会、仕入れ同行、交通費、駐車場などです。

紙の領収書で大事なのは、次の3つです。

項目 理由
失くさない 紙は一度なくすと復元が難しい
読める状態で残す 感熱紙は薄くなる
帳簿と結び付ける 後から何の支払いか分からなくなる

特にレシートは、財布に入れっぱなしにするとすぐ迷子になります。

また、感熱紙のレシートは時間が経つと文字が薄くなります。

そのため、紙のレシートは次の流れで処理するのがおすすめです。

紙レシートのおすすめ処理

  1. 受け取ったら、できるだけ早くスマホで撮影する
  2. 月別フォルダに画像またはPDFで保存する
  3. 紙の原本は月別封筒に入れる
  4. 月次記帳が終わるまで捨てない
  5. 保存期間中は、原本または適切な電子保存ルールに従って保管する

ここで注意したいのは、写真を撮ったから必ず紙を捨ててよい、という話ではないことです。

紙の書類を電子化して原本の保存に代えるには、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件が関係します。

細かい制度対応を自分で判断するのは危険なので、本教材では、初心者〜中級者向けの安全運用として、次のルールを推奨します。

紙でもらったものは、紙の原本も月別に保管する。あわせて、検索しやすいように写真・PDFも残す。

これがいちばん分かりやすく、実務上も安全寄りです。

紙レシートにメモしておきたいこと

レシートを見ても、あとから内容が分からないことがあります。

その場合は、レシートの裏や別メモに、次の情報を残しておくと助かります。

  • 何に使ったか
  • 仕入れか経費か
  • 誰と行ったか
  • どの事業に関係するか
  • プライベート利用が混ざっていないか
  • クレジットカード、現金、電子マネーのどれで払ったか

たとえば、こうです。

2026/01/15 ヤマダ電機
中古スマホ仕入れ用の充電器・検品備品
楽天カードで支払い

または、

2026/02/03 カフェ
仕入れ同行者との打ち合わせ
参加者:〇〇さん

この一言があるだけで、後からの判断がかなりラクになります。

お客様とのやりとりでも、「クレジットか現金か分からない領収書があります」「Suica決済の領収書はどうすればいいですか」という質問はよく出ます。

支払手段が分からないと、二重計上や漏れの原因になります。

領収書を保存するときは、できれば支払手段まで分かるようにしておきましょう。


3. PDF・メール・ECサイトのデータ

せどり・物販では、紙よりも電子データの方が多い人もいます。

代表例は次のとおりです。

  • Amazonの注文履歴
  • 楽天市場の購入履歴
  • Yahoo!ショッピングの購入履歴
  • メルカリ・ヤフオクの取引履歴
  • クレジットカード明細PDF
  • ネット銀行の入出金明細
  • PayPal、Stripeなどの決済明細
  • メールで届いた請求書PDF
  • クラウドサービス上で発行される領収書
  • アプリ内でしか見られない利用明細

ここでの落とし穴は、「サイト上で見られる」ことと「保存している」ことは違うという点です。

ECサイトやカード会社の画面で見られるから大丈夫、と思っている人は多いです。

しかし、次のようなことが起きます。

  • 過去分の表示期間が限られている
  • アカウントを解約すると見られない
  • 仕様変更でダウンロード場所が変わる
  • 家族アカウント・複数アカウントで混ざる
  • カードを解約すると明細取得が面倒になる
  • アプリでは見られるがPDF保存が分かりにくい
  • 退職した担当者のメールにしか資料が残っていない

だから、必要な資料は「見られる状態」ではなく、自分の保存場所に移すことが重要です。

PDFで保存するもの

次のものは、できるだけPDFで保存しましょう。

資料 保存タイミング
クレジットカード明細 毎月、明細確定後
銀行入出金明細 毎月または決算前
Amazon・楽天・Yahoo!の領収書 仕入れ後または月次締め時
請求書・納品書 受領時
インボイス対象の領収書 受領時または月次確認時
固定資産の購入資料 購入時
借入契約書・返済予定表 契約時

PDFにできない場合は、スクリーンショットでも構いません。

ただし、スクリーンショットの場合は、次の情報が見えるようにしてください。

  • 取引日
  • 取引先名
  • 金額
  • 購入内容
  • 税率・消費税額
  • インボイス番号が必要な場合は登録番号
  • アカウント名や対象期間

画面の一部だけを切り取ると、後から何の資料か分からなくなることがあります。

スクショを使う場合は、少し広めに撮るのがコツです。

メールで届いた請求書・領収書

メールで請求書や領収書が届く場合もあります。

この場合、メール本文そのものが取引情報を含むこともありますし、添付PDFが証憑になることもあります。

おすすめは、次のどちらかです。

方法 内容
添付PDFを保存 請求書・領収書PDFを月別フォルダへ保存する
メール本文をPDF化 本文に取引情報がある場合、メールをPDF出力して保存する

「メールボックスにあるから大丈夫」と思いがちですが、メールは探すのが大変です。

また、担当者が変わったり、メールアドレスを変更したりすると、会社として資料を管理できなくなります。

法人や複数人運営では、個人のメールボックスに資料を閉じ込めないようにしてください。


4. 電子取引データ

ここは少し制度の話になります。

ただし、難しい言葉を覚える必要はありません。

まず実務上の結論だけ押さえてください。

電子で受け取った請求書・領収書・取引明細などは、電子データのまま保存する。

これが基本です。

電子帳簿保存法では、電子取引を行った場合、取引情報に関する電子データを保存する必要があります。

電子取引には、たとえば次のようなものが含まれます。

  • インターネット上で取得する領収書
  • メール添付で受け取る請求書PDF
  • クラウドサービス上で授受する請求書
  • ECサイト上の購入情報
  • アプリで受け取る利用明細
  • インターネットバンキングの振込情報

つまり、せどり・物販のかなり多くの資料が電子取引に関係します。

印刷だけでは不十分になりやすい

以前は、PDFを印刷して紙で保存しておけば安心、という感覚の人も多かったと思います。

しかし、電子取引データについては、電子データ自体の保存が必要です。

紙に印刷して整理すること自体は、管理の補助としては悪くありません。

ただし、電子データを削除して、紙だけにしてしまう運用は避けてください。

おすすめは次の運用です。

電子で受け取った資料
↓
PDF・画像・CSVなどの電子データで保存
↓
必要に応じて紙にも印刷
↓
ただし、電子データは消さない

これが安全です。

電子保存で意識する3つの条件

専門的には、真実性、可視性、検索性のような要件が出てきます。

細かい制度用語は別として、実務でやるべきことに置き換えると、次の3つです。

実務ルール 意味
勝手に消さない・書き換えない 後から改ざんを疑われないようにする
すぐ見られる 必要なときにPDFや画像を開ける
探せる 日付・金額・取引先で見つけられる

この3つを満たすために、ファイル名とフォルダ構成が重要になります。

特別な高額システムがない場合でも、ファイル名に「日付・金額・取引先」を入れて保存するだけで、かなり実務に耐えやすくなります。

小規模事業者ほど、最初から型を作る

「まだ年商が小さいから、保存は後でいいですか?」と聞かれることがあります。

答えは、いいえです。

売上が小さいうちこそ、型を作るチャンスです。

取引が少ないうちにルールを作っておけば、年商3,000万円、5,000万円、1億円と伸びても、そのまま拡張できます。

逆に、年商が伸びてから過去資料を整理しようとすると、かなり大変です。

せどり・物販は、伸びると取引数が急増します。

月100件だった取引が、月1,000件、月3,000件になることもあります。

そのときに、保存ルールがないと経理が一気に崩れます。

経理は、売上が伸びてから整えるものではありません。

売上が伸びても壊れないように、先に整えておくものです。


5. カード明細だけでは不足する場合

ここは、本章で特に大事です。

せどり・物販では、クレジットカード明細を見れば、かなりの支払いは分かります。

たとえば、カード明細には次の情報が載っています。

  • 利用日
  • 利用先
  • 金額
  • 引落日
  • 引落金額

これだけで記帳できる取引もあります。

しかし、カード明細だけでは足りない場面も多いです。

理由は、カード明細には通常、次の情報が不足するからです。

カード明細で不足しやすい情報 なぜ必要か
何を買ったか 仕入、消耗品、交際費、プライベートの判定に必要
数量・内容 棚卸や固定資産判定に関係する
消費税率 10%、8%、非課税、不課税などの判定に必要
インボイス登録番号 仕入税額控除の確認に関係する
ポイント利用額 値引き処理や実質支払額の確認に必要
宛名・取引先情報 法人・インボイス確認で必要になることがある

たとえば、カード明細にこう表示されていたとします。

2026/01/18 AMAZON.CO.JP 48,920円

これだけでは、何を買ったか分かりません。

商品仕入れかもしれません。

梱包資材かもしれません。

事業用パソコンの周辺機器かもしれません。

プライベートの買い物かもしれません。

金額だけで判断すると、誤った科目になる可能性があります。

インボイス制度後は、より注意

インボイス制度後は、消費税の仕入税額控除を受けるために、帳簿と一定の請求書等の保存が重要になります。

カードで払ったからといって、カード会社がインボイス情報を自動で保証してくれるわけではありません。

カード会社の明細は、あくまでカード利用の明細です。

適格請求書等が必要な取引では、店舗やECサイト、取引先から発行される領収書・請求書・購入明細などを保存する必要があります。

お客様対応でも、次のような質問はよく出ます。

店舗でクレジット決済をした場合、
インボイス番号はカード経由で来ているのでしょうか?

この答えは、基本的には「カード明細とは別に、適格請求書等を確認・保存する」です。

カード明細は支払いの確認には使えます。

しかし、インボイスの根拠資料としては、レシート・領収書・請求書・購入明細の確認が必要です。

カード明細で足りるもの・足りないもの

ざっくり分けると、次のイメージです。

取引 カード明細だけで判断しやすいか 補足
月額ソフト利用料 サービス名で分かることもあるが、請求書・領収書がある方がよい
Amazon仕入れ × 購入商品・税率・インボイス確認が必要
楽天市場仕入れ × 店舗ごとの領収書・購入明細が必要
店舗仕入れ × レシート・領収書が必要
ガソリン代 領収書がある方がよい。車両按分も関係
交通費 利用区間や目的が分かるメモがあるとよい
飲食代 × 相手・目的・人数などの記録が必要
税金・公的支払い 納付書・支払画面・領収書を保存

「カード明細があるから大丈夫」ではなく、カード明細は支払い側の証拠、領収書・請求書は取引内容側の証拠と考えてください。

両方あると、かなり強いです。


6. ファイル名・フォルダ構成

保存でいちばん大事なのは、後から探せることです。

そのために、フォルダとファイル名のルールを決めます。

おすすめの基本形は、次のとおりです。

経理資料
└── 2026年
    ├── 01月
    │   ├── 01_売上
    │   ├── 02_仕入
    │   ├── 03_経費
    │   ├── 04_カード明細
    │   ├── 05_銀行明細
    │   ├── 06_ポイント・ギフト券
    │   ├── 07_インボイス確認
    │   └── 99_不明・要確認
    ├── 02月
    └── 03月

個人でも法人でも、まずは月別が分かりやすいです。

取引量が少ないうちは、月別フォルダの中に全部入れても構いません。

取引量が増えてきたら、上のように売上・仕入・経費・カード・銀行に分けます。

ファイル名の基本形

ファイル名は、次の形がおすすめです。

YYYY-MM-DD_取引先_金額_内容.pdf

例です。

2026-01-15_ヤマダ電機_54800円_店舗仕入.pdf
2026-01-18_Amazon_48920円_商品仕入.pdf
2026-01-22_楽天市場〇〇店_12800円_梱包資材.pdf
2026-01-31_楽天カード_1月利用明細.pdf
2026-01-31_三井住友銀行_1月入出金明細.pdf

インボイス確認や記帳代行に渡す場合は、取引Noや行番号を入れるとさらに分かりやすいです。

2026-01-18_Amazon_48920円_取引No1234.pdf
2026-02-03_ビックカメラ_88000円_インボイス確認_取引No0456.pdf

実際の記帳代行のやりとりでも、ファイル名に取引Noを付けてもらえると確認がかなりスムーズになります。

「これ、どの取引の資料ですか?」という往復が減るからです。

よくないファイル名

逆に、次のようなファイル名は避けましょう。

IMG_3847.jpg
領収書.pdf
スクショ.png
Amazon.pdf
楽天.pdf
資料1.pdf

その月は分かるかもしれません。

しかし、半年後・1年後に見ると、ほぼ分かりません。

ファイル名をつけるのは面倒ですが、後から探す時間に比べると安いです。

経理資料は、未来の自分への置き手紙です。

未来の自分が泣かないように、少しだけ親切にしてあげてください。

ZIPで提出するときの注意

税理士、記帳代行、社内担当者に資料を渡すときは、月別にZIPでまとめると便利です。

おすすめは次の形です。

2026年01月_経理資料.zip

中身は、できれば次のように分けます。

2026年01月_経理資料
├── 01_売上
├── 02_仕入
├── 03_経費
├── 04_カード明細
├── 05_銀行明細
└── 99_不明・要確認

資料を送るときに、「とりあえず全部送ります」でも悪くはありません。

ただ、受け取る側は、どれがどの月で、どれがどの取引かを確認する必要があります。

最初から月別・種類別にしておくと、相手の作業時間も減り、確認漏れも減ります。


7. 保存期間

帳簿や書類には、保存期間があります。

ここは個人・法人・青色・白色・消費税・電子帳簿保存法などで細かく変わるため、最終的には税理士や最新の国税庁情報を確認してください。

ただし、実務上は次の考え方で運用すると安全です。

迷ったら、最低7年は保存する。法人や赤字繰越などがある場合は、10年保存も前提にする。

個人の白色申告では、法定帳簿は7年、その他の帳簿や請求書・領収書などは5年とされるものがあります。

個人の青色申告では、帳簿書類は原則7年保存、書類によっては5年でよいものもあります。

法人では、帳簿や取引書類を原則7年間保存します。

また、青色申告法人で欠損金が生じた事業年度などは、10年間保存が必要になる場合があります。

インボイス制度に関係する適格請求書等についても、保存期間があります。

そのため、本教材では、実務運用として次のルールをおすすめします。

保存期間の実務ルール

事業者 おすすめ運用
個人・白色 最低7年を目安に保存
個人・青色 最低7年を目安に保存
法人 最低7年、欠損金等がある期は10年も想定
インボイス関連資料 7年保存を前提に整理
重要契約・借入・固定資産 期間満了後も、取引が続く限り保存推奨

「法律上は5年でよいものもあるのに、7年保存するのはムダでは?」と思うかもしれません。

しかし、実務では資料の種類ごとに5年・7年を厳密に分ける方がミスしやすいです。

せどり・物販のように資料が多い業種では、全部7年保存と決めた方が、運用がシンプルです。

法人で欠損金、繰越控除、大きな固定資産、借入、税務調査リスクがある場合は、10年保存も前提にしてください。

クラウドストレージの容量コストを考えても、経理資料を長めに保存するコストはそこまで大きくありません。

資料がないことによる損失の方が、ずっと大きいです。


8. 証憑が取得できない場合

現実には、どうしても証憑が取得できないことがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • レシートをなくした
  • 店舗で領収書をもらい忘れた
  • ECサイトの発行期限が過ぎた
  • アカウントを解約して購入履歴が見られない
  • カードを解約して明細が取れない
  • 相手先が領収書を再発行してくれない
  • 現金取引で資料が残っていない
  • フリマ・個人間取引で正式な領収書がない

この場合にやってはいけないのは、何も残さずに放置することです。

証憑がないならないで、できる限り説明資料を残します。

証憑がないときの対応順

  1. 再発行できるか確認する
  2. 購入履歴・メール・スクショを探す
  3. カード明細・銀行明細と照合する
  4. 取引内容をメモに残す
  5. 税理士・記帳担当者に「証憑なし」として共有する

メモには、次の情報を書きます。

日付:
取引先:
金額:
内容:
支払方法:
証憑がない理由:
代替資料:
事業との関係:

例です。

日付:2026/03/12
取引先:〇〇リサイクルショップ
金額:18,500円
内容:中古ゲーム機仕入れ
支払方法:現金
証憑がない理由:レシート紛失
代替資料:店舗ポイントアプリの購入履歴スクショ、現金出納メモ
事業との関係:メルカリ販売用の仕入れ

このメモがあれば必ず経費になる、という意味ではありません。

ただ、何もないよりは、はるかに説明しやすくなります。

判断が難しい場合は、税理士・会計専門家に確認してください。

「資料なし」と「取引なし」は違う

ここは月次記帳でも非常に大事です。

資料がないことと、取引がないことは違います。

たとえば、カード明細には利用があるのに、領収書がない場合があります。

この場合、取引はあります。

ただし、証憑が不足しています。

逆に、あるカードについて「今月は利用なし」であれば、取引そのものがありません。

この2つを分けて伝えないと、記帳担当者は判断できません。

月次資料を提出するときは、次のように伝えると分かりやすいです。

楽天カード:1月利用あり。明細PDF提出済み。
PayPayカード:1月利用あり。PDF取得不可のためCSV提出。
三井住友カード:1月利用なし。
現金仕入れ:1月利用あり。領収書3枚提出。
Suica:1月事業利用なし。

「ないです」だけだと、資料がないのか、取引がないのか分かりません。

記帳の現場では、この違いで何度も確認が発生します。

ここは、ぜひ習慣にしてください。


9. 法人・複数担当者の保存ルール

個人事業のうちは、自分だけが分かれば何とかなるかもしれません。

しかし、法人化したり、外注さん・スタッフ・家族・税理士・記帳代行が関わったりすると、保存ルールが一気に重要になります。

法人や複数担当者でやってはいけないのは、次の状態です。

  • 社長のスマホにだけ領収書画像がある
  • 担当者個人のメールにだけ請求書がある
  • LINEの過去履歴を探さないと資料が出てこない
  • 退職したスタッフのアカウントに購入履歴が残っている
  • Google Driveのどこかにあるが、誰も場所を知らない
  • 同じ資料が何度もアップされ、どれが最新版か分からない
  • カード明細はあるが、インボイス資料は別の人が持っている

こうなると、経理は属人化します。

属人化した経理は、売上が伸びるほど危険です。

法人・複数担当者の基本ルール

法人やチームで運用する場合は、次のルールを作ってください。

ルール 内容
保存場所を1つに決める Google Drive、Dropbox、OneDriveなど
月別フォルダを固定する 毎月同じ構成にする
ファイル名ルールを統一する 日付・取引先・金額を入れる
個人メールに閉じ込めない 会社共有の保存場所へ移す
アップロード担当を決める 誰が保存するか曖昧にしない
月次締め担当を決める 足りない資料を確認する人を決める
編集権限を管理する 誰でも削除できる状態を避ける
バックアップを取る クラウドだけに依存しない

おすすめは、月ごとに「提出済み」「不足」「確認中」を分けることです。

2026年01月
├── 提出済み
├── 不足
└── 確認中

または、スプレッドシートで提出状況を管理します。

資料 状態 担当 備考
楽天カード明細 提出済み 経理担当 1月分PDF
Amazon領収書 確認中 仕入担当 取引No1234のみ不足
PayPayカードCSV 未提出 社長 アプリから取得
棚卸表 未提出 倉庫担当 月末確定後

このように見える化すると、「誰かがやっているはず」が減ります。

経理でいちばん怖いのは、悪意ではありません。

だいたいは、誰も担当だと思っていなかったことから崩れます。

LINEやチャットで受け渡しする場合

LINE、Googleチャット、Chatwork、Slackなどで資料を送ることもあります。

チャットは便利ですが、保存場所としては不安定です。

過去履歴を探すのに時間がかかったり、ファイルの保存期限があったり、スレッドが流れたりするからです。

チャットで送った資料は、必ず正式な保存場所に移してください。

チャットで送る
↓
受け取った人が保存フォルダへ移す
↓
ファイル名を整える
↓
提出状況表を更新する

この流れを決めておくと、チャットが連絡手段になり、保存場所はクラウドフォルダに固定されます。

この分離が大事です。

年商が上がるほど、保存ルールが利益を守る

年商1,000万円のときは、資料を探す時間もまだ小さいかもしれません。

しかし、年商5,000万円、1億円、3億円と上がると、資料の量は急増します。

年商20億円規模まで見据えるなら、保存ルールはもはや「几帳面な人の趣味」ではありません。

会社の管理体制そのものです。

ただし、創業前後から年商1億円以下の規模なら、最初から大企業のようなシステムは不要です。

必要なのは、次の3つだけです。

  1. 保存場所を決める
  2. ファイル名を決める
  3. 月次で不足を確認する

これだけで、かなり強い経理になります。


実務チェックリスト

この章の内容を、月次チェックリストにすると次のとおりです。

毎月やること

  • 売上データを保存した
  • カード明細PDFまたはCSVを保存した
  • 銀行明細を保存した
  • 紙の領収書を月別に保管した
  • 電子領収書・請求書をPDFで保存した
  • ECサイトの購入履歴を保存した
  • ポイント・ギフト券の利用履歴を保存した
  • インボイス確認が必要な取引を確認した
  • 証憑がない取引をリスト化した
  • 「取引なし」と「資料なし」を分けて記録した

決算・確定申告前にやること

  • 12月末または決算日の預金残高を保存した
  • 売掛金残高が分かる資料を保存した
  • 棚卸表を保存した
  • カード未払金の残高資料を保存した
  • 借入金残高・返済予定表を保存した
  • 固定資産の購入資料を保存した
  • インボイス関連資料の不足を確認した
  • 税理士・記帳担当者に渡す資料を月別に整理した

保存で迷ったときの判断

迷ったら、次の質問をしてください。

この資料だけで、
いつ、誰から、何を、いくらで買ったか説明できるか?

説明できるなら、かなり良い保存です。

説明できないなら、追加資料が必要です。


よくある質問

Q1. カード明細があれば、領収書は不要ですか?

原則として、不要とは考えない方がよいです。

カード明細は支払いの証拠にはなりますが、購入内容や税率、インボイス情報までは分からないことがあります。

特に仕入れ、店舗購入、EC購入、飲食、固定資産、高額取引は、領収書・請求書・購入明細も保存してください。

Q2. PDFではなくスクショでもいいですか?

PDFが取れるならPDFがおすすめです。

PDFが取れない場合はスクショでも実務上使うことがあります。

ただし、日付、取引先、金額、内容、対象期間が分かるように撮ってください。

画面の一部だけでは後から判断できないことがあります。

Q3. 電子で受け取った領収書を印刷して保存すればいいですか?

電子で受け取った資料は、電子データのまま保存するのが基本です。

印刷して紙でも保存すること自体は管理上便利ですが、電子データを削除しないでください。

Q4. 紙の領収書は写真を撮れば捨てていいですか?

本教材では、安全運用として、紙でもらったものは紙の原本も月別に保管することをおすすめします。

スキャナ保存として原本廃棄まで行う場合は、電子帳簿保存法の要件確認が必要です。

Q5. ECサイトの購入履歴は、サイト上で見られるなら保存不要ですか?

表示期間やアカウント状況に左右されるため、必要な資料はPDFやスクショで保存してください。

特に、仕入れ・高額経費・インボイス確認が必要な取引は、自分の保存場所に移すことをおすすめします。

Q6. 資料をなくした場合、その経費は絶対に落とせませんか?

絶対に落とせないとまでは限りませんが、説明資料が弱くなります。

再発行、購入履歴、カード明細、銀行明細、メモなど、代替資料をできるだけ集めて、税理士・会計専門家に相談してください。

Q7. どこまで細かくファイル名を付けるべきですか?

最低限、日付・取引先・金額を入れてください。

インボイス確認や記帳代行に渡す場合は、取引Noや行番号も入れると、確認がかなり速くなります。

Q8. 個人事業でも法人並みに保存ルールを作るべきですか?

はい。

ただし、大げさなシステムは不要です。

月別フォルダ、ファイル名ルール、提出状況表の3つだけで十分です。

この型は、法人化してもそのまま使えます。


参考にした公式情報


次章へのつなぎ

この章では、帳簿・領収書・電子データをどのように保存するかを整理しました。

ここまでで、日々の取引を入力し、必要な証憑を残す考え方はかなり見えてきたはずです。

ただし、もう一つ大事なことがあります。

それは、毎月の記帳をどこで「完了」とするかです。

入力しただけでは、まだ完了ではありません。

連携エラー、不明取引、カード未払金、預金残高、売掛金、棚卸、証憑不足を確認して、ようやく月次が締まります。

次の第18章では、毎月の記帳を完了させるためのチェックリストとルーティンを作ります。


保存で困らないための、実務のコツ 保存で困らないための、実務のコツ 制度の要件よりも先に、探せる状態を作ることです 1 受け取ったその場で保存する 後でまとめては、必ず抜けます 2 ファイル名を統一する 日付_取引先_金額 の形にしておく 3 月ごとのフォルダに入れる 探す時間が一番のコストです 4 紙のレシートはその日に撮る 感熱紙は時間が経つと消えます 要件を満たすことより、1年後に自分が探せることを優先してください
図46制度の要件より先に、探せる状態を作る
保存は「受け取ったとき」に決まる 保存は「受け取ったとき」に決まる 後から整理しようとすると、必ず抜けます 1 受け取る メール、ダウンロード、レシート 2 その場で保存する 所定のフォルダに入れる。紙はその場で撮影 3 名前を統一する 日付_取引先_金額 の形にそろえる 4 月ごとにまとめる 月末に、その月のフォルダを閉じる 5 記帳と突き合わせる 帳簿に入っている取引と、資料が対応しているか 要件を満たすことより、1年後に自分が探せることを優先してください
図47保存は「受け取ったとき」に決まります

第18章

毎月の記帳を完了させよう

この章のゴール

この章では、毎月の記帳を「入力した」だけで終わらせず、チェックリストで月次完了まで持っていく方法を整理します。

第17章では、帳簿・領収書・電子データの保存を見てきました。

保存ルールができると、記帳の材料がそろいます。

ただし、材料がそろっただけでは、まだ月次は終わっていません。

月次記帳では、次のような状態がよく起きます。

  • 自動連携された取引はあるが、科目が未確定
  • 銀行やカードに連携エラーが出ている
  • Amazonや楽天のデータが途中で止まっている
  • カード明細は入力されているが、未払金残高が合っていない
  • 売上は入っているが、売掛金残高が確認できていない
  • 現金、PayPay、Suica、ポイント、ギフト券の利用が漏れている
  • 棚卸を入れていないので利益が大きくズレている
  • 不明取引が残ったまま、なんとなく翌月に進んでいる

この状態で「記帳しました」と言ってしまうと危険です。

入力はされています。

でも、完了はしていません。

この章の目的は、毎月あなたが自分でこう言える状態を作ることです。

「この月は、必要な資料がそろい、未処理がなく、残高も確認済みです」

これが月次完了です。


「入力が終わった」と「記帳が完了した」は違う 「入力が終わった」と「記帳が完了した」は違う 多くの人は、左で止まっています 入力が終わった 仕訳が入っている 数字は並んでいる 残高を照合した 通帳・カード・在庫と 突き合わせた 今月は完了 数字が現実と 一致している 完了とは、数字が現実と一致していて、その理由を説明できる状態です
図48「入力が終わった」と「完了」は違います

まず結論

月次記帳の完了条件は、次の7つです。

番号 完了条件
1 銀行・カード・ECサイト等の連携が最新になっている
2 未処理・不明取引が残っていない
3 カード未払金がカード明細・引落額と合っている
4 預金残高と会計ソフト残高が合っている
5 売掛金、特にAmazon等の未入金残高を確認している
6 現金・ポイント・ギフト券・電子マネーなど連携外取引を入れている
7 棚卸を入れて、利益が見られる状態になっている

この7つを満たして、はじめて「その月は締まった」と考えます。

月次締めは、難しい会計理論ではありません。

やることはかなり実務的です。

資料を集める。

エラーを直す。

不明を潰す。

残高を合わせる。

棚卸を入れる。

利益を見る。

これだけです。

ただし、毎月やるとなると、意外と抜けます。

だから、月次締めにはチェックリストが必要です。


1. 入力済みと完了

まず、「入力済み」と「完了」の違いをはっきりさせましょう。

会計ソフトに取引が入ると、なんとなく終わった気になります。

特にMoneyForwardなどのクラウド会計を使っていると、銀行やカードのデータが自動で取り込まれるため、画面上はどんどん取引が増えていきます。

しかし、自動で入った取引は、あくまで素材です。

そのまま正しい帳簿になるわけではありません。

入力済みとは

入力済みとは、会計ソフトに取引が登録されている状態です。

たとえば、次のような状態です。

  • 銀行明細が取り込まれている
  • クレジットカード明細が取り込まれている
  • Amazonの売上データが取り込まれている
  • 手入力で現金取引を入れた
  • CSVでPayPayカードを取り込んだ
  • 領収書を見ながら経費を入力した

これは大事な作業です。

でも、この段階ではまだ途中です。

完了とは

完了とは、入力された数字について、次の確認が終わっている状態です。

  • 科目が正しい
  • 事業用とプライベートが分かれている
  • 重複していない
  • 漏れていない
  • 不明取引が残っていない
  • 証憑が保存されている
  • 残高が実際の資料と合っている
  • 棚卸を反映した利益を確認できる

つまり、完了とは「入力した」ではなく、説明できる状態になったということです。

月次完了のイメージ

月次完了を図にすると、こうです。

資料収集
↓
データ連携・入力
↓
未処理・不明の確認
↓
残高照合
↓
棚卸反映
↓
利益確認
↓
月次完了

この流れの途中で止まっている場合は、まだ完了ではありません。

よくあるのは、次の状態です。

データ連携・入力
↓
ここで止まる

この状態でも、会計ソフト上は数字が出ます。

でも、その数字はまだ信用しすぎてはいけません。

棚卸が入っていなければ粗利はズレます。

カード未払金が合っていなければ負債残高がズレます。

売掛金が確認できていなければ売上や入金のズレに気づけません。

連携エラーがあれば、そもそも取引が欠けています。

月次完了とは、こうしたズレを一つずつ潰していく作業です。


2. 連携エラー

月次締めで最初に確認するのは、連携エラーです。

会計ソフトと銀行、クレジットカード、ECサイト、決済サービスを連携している場合、エラーが出ることがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 銀行の認証期限が切れた
  • カード会社のログイン認証が必要になった
  • Amazonの画像認証で止まっている
  • 楽天市場やYahoo!ショッピングの連携が途中で止まった
  • PayPayカードなど、一部サービスがうまく連携できない
  • パスワード変更後に連携が止まった
  • 二段階認証やワンタイムパスワードが必要になった
  • 連携名が重複して、どのアカウントか分からなくなった

連携エラーがあると、取引が会計ソフトに入ってきません。

つまり、記帳漏れが起きます。

だから、月次締めの最初にやることは、連携エラーの確認です。

優先順位

連携エラーは、全部大事です。

ただし、優先順位を付けるなら次の順です。

優先度 連携先 理由
銀行口座 入出金と残高確認の中心
クレジットカード 仕入・経費が大量に入る
Amazon出品・決済 売上・売掛金に直結
Amazon購入・楽天・Yahoo!等 仕入・インボイス確認に関係
PayPal・Stripe等 入金・手数料に関係
電子マネー・QR決済 連携外の場合は別途入力が必要

特に、銀行・カード・Amazon売上系は優先して直してください。

ここが止まると、月次の数字が大きくズレます。

連携エラーを見つけたら

連携エラーを見つけたら、次の順で対応します。

  1. いつから止まっているか確認する
  2. 連携先のログインができるか確認する
  3. 認証・画像認証・ワンタイムパスワードを解除する
  4. データ取得が再開されたか確認する
  5. 止まっていた期間の取引が取り込まれているか確認する
  6. 取り込めない場合はPDF・CSV・手入力で補う

ここで注意したいのは、むやみに連携を削除しないことです。

連携エラーが出たからといって、すぐに連携を解除して作り直すと、重複取り込みやデータ欠落が起きることがあります。

まずは、認証更新や再取得で直るかを確認します。

それでも直らない場合に、記帳担当者や税理士と相談して対応してください。

連携できないサービスは「連携外」として管理する

サービスによっては、そもそも安定して連携できないことがあります。

たとえば、PayPayカード、PayPay残高、アプリ内明細、特定のECアカウントなどです。

この場合は、無理に連携にこだわらず、次のように管理します。

  • 毎月CSVをダウンロードする
  • PDF明細を保存する
  • スプレッドシートに入力する
  • 利用なしの月は「利用なし」と記録する

大事なのは、連携できるかどうかではありません。

取引が帳簿に入っているかどうかです。

連携できないものは、連携外取引として月次チェックリストに入れてください。


3. 未処理・不明取引

連携が最新になったら、次は未処理・不明取引を確認します。

未処理とは、会計ソフトに取り込まれているが、まだ登録されていない取引です。

不明取引とは、登録はできそうだが、内容や科目が分からない取引です。

たとえば、次のようなものです。

2026/01/12 AMAZON.CO.JP 18,240円
2026/01/15 PAYPAY 7,980円
2026/01/18 ラクテン 55,000円
2026/01/22 〇〇ショウジ 132,000円

これだけでは、仕入なのか、経費なのか、プライベートなのか分かりません。

この状態で適当に登録すると、帳簿がズレます。

不明取引を残さない仕組み

不明取引は、頭の中で覚えようとしないでください。

必ず一覧にします。

おすすめは、確認事項シートを作ることです。

日付 口座・カード 取引先 金額 確認内容 回答 状態
1/12 楽天カード AMAZON.CO.JP 18,240 仕入・経費・私用のどれか 商品仕入 完了
1/15 銀行 PAYPAY 7,980 何の支払いか 梱包資材 完了
1/18 PayPayカード ヤフーショッピング 55,000 商品内容 中古スマホ仕入 完了
1/22 三井住友カード 〇〇商事 132,000 固定資産か仕入か 事業用PC 完了

ポイントは、「分からないもの」を会計ソフト内だけに残さないことです。

会計ソフト上で不明のまま残しておくと、翌月以降に埋もれます。

一覧化して、回答をもらい、処理済みにします。

よくある不明取引

せどり・物販でよく出る不明取引は、次のようなものです。

表示 よくある内容
AMAZON.CO.JP 商品仕入れ、消耗品、備品、私用購入
楽天市場 商品仕入れ、ギフト券購入、消耗品、私用購入
Yahoo!ショッピング 商品仕入れ、PayPay残高利用、ポイント利用
コンビニ 発送費、消耗品、飲食、私用
ドラッグストア 仕入れ、消耗品、私用
家電量販店 商品仕入れ、固定資産、備品、私用
PayPay 仕入れ、経費、飲食、私用
Suica 交通費、仕入れ、消耗品、私用
Apple 仕入れ、備品、サブスク、私用

同じ表示でも、内容は人によって違います。

だから、最初のうちは面倒でも確認が必要です。

ただし、毎回同じ取引であれば、ルール化できます。

たとえば、

毎月の〇〇ツール利用料 → 通信費
毎月の倉庫利用料 → 支払手数料または地代家賃等
特定カードの〇〇ショップ → 商品仕入れ

このようにルールができると、月次処理は速くなります。

不明は「仮置き」で終わらせない

不明取引を、とりあえず「仮払金」「事業主貸」「雑費」などに入れて終わらせることがあります。

一時的には仕方ありません。

でも、仮置きのまま月次完了にしてはいけません。

仮置きは、あくまで保留ボックスです。

月次締めの時点で、次のどれかに振り分けます。

  • 仕入
  • 経費
  • 固定資産
  • プライベート
  • 返金・取消
  • 立替
  • 借入・返済
  • 証憑不足
  • 税理士確認

不明を残さないこと。

これが、月次を締めるための大前提です。


4. カード未払金

せどり・物販の月次で、かなり重要なのがカード未払金です。

カード未払金とは、クレジットカードで使ったけれど、まだ銀行から引き落とされていない金額です。

たとえば、1月にカードで100万円仕入れて、2月に銀行から引き落とされる場合、1月末時点ではまだお金は出ていません。

しかし、商品は1月に買っています。

このとき、帳簿上は「カード未払金」という負債で管理します。

カード未払金がズレるとどうなるか

カード未払金が合っていないと、次の問題が起きます。

  • 経費・仕入れの月がズレる
  • 二重計上に気づけない
  • 入力漏れに気づけない
  • 引落額と帳簿が合わない
  • 負債残高が実態と合わない
  • 決算時に修正が大量発生する

カードをたくさん使う物販では、ここが崩れやすいです。

特に、次のような場合は要注意です。

  • 複数カードを使っている
  • 家族カードがある
  • 事業用とプライベートが混ざっている
  • リボ払い・分割払いがある
  • 繰上返済がある
  • 返品・キャンセルが多い
  • 連携できないカードがある
  • カード明細PDFと会計ソフトの取込データが一致しない

カード未払金の確認式

カード未払金は、ざっくり次の式で確認します。

前月末カード未払金
+ 当月カード利用額
- 当月銀行引落額
- 返品・取消・調整
= 当月末カード未払金

この当月末カード未払金が、カード会社の明細や翌月引落予定額と合っているかを見ます。

カード会社によって締め日と引落日が違うため、少しややこしいですが、基本はこの考え方です。

カード明細で見るポイント

カード明細を保存するときは、次の3つが分かるものを用意してください。

  • 利用明細
  • 引落日
  • 引落金額

記帳代行の現場でも、カード明細をお願いするときは、この3つを確認します。

利用明細だけでは、引落額の照合ができないことがあります。

逆に、引落額だけでは、何に使ったか分かりません。

だから、カード明細は「利用内容」と「引落情報」の両方が必要です。

何月分まで出すべきか

カードは、利用月と引落月がズレます。

たとえば、6月の月次締めをしたい場合でも、7月10日や8月10日に引き落とされる明細が必要になることがあります。

なぜなら、6月に使ったカード利用が、翌月以降に請求されるからです。

そのため、月次締めでは次のように考えます。

6月の数字を締めたい
↓
6月中のカード利用を確認する
↓
その利用が載っているカード明細を取得する
↓
必要に応じて7月・8月引落分の明細も確認する

「6月分の記帳だから、6月引落分だけでいい」とは限りません。

カードはここが少しトリッキーです。

月次チェックリストには、カードごとに「何月引落分まで提出済みか」を入れておくと管理しやすくなります。


5. 預金・売掛金

カード未払金の次に確認するのは、預金と売掛金です。

預金は、銀行残高です。

売掛金は、売上は発生しているが、まだ入金されていない金額です。

せどり・物販では、Amazonなどのプラットフォーム売上で売掛金が発生します。

預金残高の確認

月次締めでは、会計ソフトの預金残高と、実際の銀行残高を確認します。

理想は、毎月末の残高が合っていることです。

少なくとも、半年に1回、決算前、年末には必ず確認してください。

確認する資料は、次のようなものです。

  • 通帳の写真
  • ネット銀行の残高スクショ
  • 月末残高が分かるPDF
  • 入出金明細CSV
  • 銀行アプリの残高画面

ここで大事なのは、月末時点の残高です。

たとえば、12月末残高を確認したいのに、1月8日時点の残高を見ても意味が変わります。

1月1日〜1月8日の入出金が混ざってしまうからです。

実務でも、「12月末残高が必要なのに、1月に入ってからの残高が届いた」ということはよくあります。

月末残高を確認するときは、必ず対象日を意識してください。

良い例:2026年1月31日時点の残高
悪い例:2026年2月5日に見た現在残高

現在残高ではなく、締めたい日の残高です。

売掛金の確認

売掛金は、初心者がつまずきやすいところです。

「売掛金って何ですか?」という質問もよくあります。

簡単にいうと、売掛金は、売れたけれど、まだ入金されていないお金です。

Amazonを例にします。

12月28日に商品が売れた。

でも、Amazonからの入金は1月5日だった。

この場合、12月末時点では、売上は発生していますが、まだ銀行に入金されていません。

この未入金分が売掛金です。

月次や決算で売掛金を確認しないと、売上や資産残高がズレます。

Amazonの売掛金で見るポイント

Amazonでは、決済期間が月末できれいに区切られないことがあります。

そのため、月末や年末をまたぐ決済期間のデータを確認する必要があります。

実務では、次のような資料を確認します。

  • 月末を含む決済期間のトランザクションデータ
  • 入金予定額
  • 手数料
  • 返金・返品
  • 留保金
  • 月末時点の未入金分

ここは、慣れるまでは難しく感じます。

ただ、やることはシンプルです。

月末時点で、売れたけれどまだ入金されていない金額を確認する。

これだけです。

Amazon以外でも、楽天市場、Yahoo!ショッピング、メルカリ、ヤフオク、買取業者などで、入金が翌月になる場合は売掛金が発生します。

買取業者・フリマ売上の未入金

買取業者への販売で、年内に買取価格が決まり、翌年1月に入金されることがあります。

この場合も、年末時点で売掛金を確認する必要があります。

月次でも同じです。

月末までに売上が確定していて、入金が翌月になるものは、未入金として管理します。

「売上がいつ発生したか」と「お金がいつ入ったか」は、分けて考えてください。


6. 現金・ポイント・連携外取引

クラウド会計の弱点は、連携されない取引に弱いことです。

銀行やカードは自動で入ってきます。

でも、現金、ポイント、ギフト券、電子マネー、アプリ決済、連携できないカードなどは、手動管理が必要です。

せどり・物販では、この連携外取引がかなり多いです。

代表的な連携外取引

区分
現金 店舗仕入れ、駐車場、交通費、現金売上
電子マネー Suica、PASMO、nanaco、WAON
QR決済 PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAY
ポイント 楽天ポイント、PayPayポイント、Amazonポイント
ギフト券 Amazonギフト券、Apple Gift Card、楽天キャッシュ
連携不可カード PDF・CSVでしか取得できないカード
フリマ・個人間 メルカリ、ヤフオク、現金買取、個人仕入れ

これらは、自動連携だけでは漏れやすいです。

特に、ポイントとギフト券は、金額が大きくなりやすいので注意してください。

ポイント・ギフト券は「おまけ」ではない

せどり・物販では、ポイントを使って仕入れることがあります。

楽天ポイント、PayPayポイント、Amazonギフト券、Apple Gift Cardなどです。

このとき、「ポイントだから経理に関係ない」と考えるとズレます。

実際には、ポイントやギフト券を使って商品を仕入れているなら、帳簿に反映する必要があります。

また、チャージしたギフト券の未使用残高がある場合、棚卸や資産管理に関係することもあります。

月次締めでは、次の情報を確認してください。

  • ポイントを何に使ったか
  • ギフト券を何に使ったか
  • チャージしただけで未使用の残高がないか
  • 仕入れに使ったのか、経費に使ったのか
  • プライベート利用が混ざっていないか

利用なしも記録する

連携外取引で大事なのは、「利用なし」を記録することです。

たとえば、記帳担当者から見ると、Suica利用がないのか、資料が未提出なのか分かりません。

そのため、毎月次のように記録します。

現金仕入れ:あり。領収書3枚提出。
Suica事業利用:なし。
PayPay事業利用:あり。CSV提出済み。
楽天ポイント利用:あり。スプレッドシート入力済み。
Amazonギフト券:未使用残高あり。

これだけで、確認の往復がかなり減ります。

「ありません」は危険です。

取引がないのか、資料がないのか、まだ見ていないのかが分からないからです。

月次締めでは、あり・なし・未確認を分けてください。


7. 棚卸し

せどり・物販の利益を見るうえで、棚卸はものすごく重要です。

棚卸を入れないと、利益が大きくズレます。

なぜなら、商品を仕入れた時点で全部経費にしてしまうと、まだ売れていない在庫まで経費になってしまうからです。

第13章でも見たように、売れていない商品は在庫です。

月末や決算日時点で残っている在庫は、棚卸資産として扱います。

棚卸がないと利益が見えない

たとえば、1月に300万円仕入れて、1月末時点で100万円分の商品が残っていたとします。

この場合、1月に売上原価になるのは、ざっくりいうと売れた分の200万円です。

残っている100万円は在庫です。

もし棚卸を入れなければ、300万円すべてが経費のように見えて、利益が低く出ます。

逆に、在庫が減っているのに棚卸を更新しなければ、利益が高く出ることもあります。

つまり、棚卸がないと、利益率が信用できません。

毎月棚卸が理想、最低でも節目で確認

理想は、毎月末に棚卸金額を確認することです。

ただし、取引数が多い人にとって、毎月の正確な棚卸は大変です。

その場合でも、次のタイミングでは確認してください。

  • 6月末
  • 12月末
  • 決算月末
  • 融資を受ける前
  • 大きく在庫が増減した月
  • 利益を正確に見たい月

お客様対応でも、6月末や12月末に「預金残高・売掛金・棚卸」をセットで確認することがよくあります。

これは、数字の信頼性を上げるためです。

棚卸金額は税抜でそろえる

消費税の処理にも関係しますが、棚卸金額は税抜でそろえる運用が一般的です。

ただし、会計方針や税込経理・税抜経理によって扱いが変わるため、最終的には税理士に確認してください。

本教材では、実務の指示として、棚卸を報告するときは次のように書くことをおすすめします。

2026年6月末棚卸金額:6,356,068円(税抜)

税込か税抜かを書いていないと、確認が発生します。

必ず明記してください。

棚卸は「いつ時点」かが大事

棚卸でよくあるミスは、対象日がズレることです。

たとえば、6月末棚卸が必要なのに、7月8日時点の在庫金額を出してしまうケースです。

7月に仕入れや販売があれば、6月末の数字とは変わります。

棚卸は、必ず「いつ時点の数字か」を明記します。

良い例:2026年6月30日時点の棚卸金額
悪い例:今日時点の棚卸金額

棚卸は、月次利益の心臓部です。

ここがズレると、全部ズレます。


8. 月次完了チェックリスト

ここまでの内容を、月次完了チェックリストにまとめます。

毎月、この順番で確認してください。

ステップ1 資料収集

  • 銀行明細を取得した
  • クレジットカード明細を取得した
  • Amazon等の売上データを取得した
  • ECサイトの購入履歴・領収書を保存した
  • 現金領収書を整理した
  • 電子マネー・QR決済の利用履歴を確認した
  • ポイント・ギフト券の利用履歴を確認した
  • 棚卸金額を確認した
  • 証憑不足をリスト化した

ステップ2 連携確認

  • 銀行連携が止まっていない
  • クレジットカード連携が止まっていない
  • Amazon等の売上連携が止まっていない
  • EC購入系の連携が止まっていない
  • エラーがある場合、解除または代替資料で補った
  • 連携できないものはCSV・PDF・手入力で管理した

ステップ3 未処理・不明確認

  • 未処理取引が残っていない
  • 不明取引の確認事項を一覧化した
  • 回答済みのものを処理した
  • プライベート取引を分けた
  • 仮置き科目が残っていない
  • 税理士確認が必要なものを分けた

ステップ4 残高確認

  • 銀行残高が実際の残高と合っている
  • カード未払金がカード明細・引落額と合っている
  • Amazon等の売掛金を確認した
  • 現金残高がある場合、実際残高と合っている
  • 借入金残高が返済予定表と合っている
  • 固定資産や在庫の大きな変動を確認した

ステップ5 利益確認

  • 売上が大きくズレていない
  • 売上原価が大きくズレていない
  • 棚卸が反映されている
  • 粗利率が異常に高すぎない・低すぎない
  • 経費に異常値がない
  • 事業主貸・役員貸付金が増えすぎていない
  • 消費税区分に大きな違和感がない

ステップ6 保存・共有

  • 月次資料を月別フォルダに保存した
  • 税理士・記帳代行へ渡す資料をまとめた
  • 不足資料リストを共有した
  • 月次完了日を記録した
  • 次月に持ち越す確認事項を明記した

このチェックリストをすべて完了したら、その月はかなり締まっています。

もちろん、税理士確認が必要な論点は残るかもしれません。

それでも、「何が未確定か」が見えていれば、月次としてはかなり強いです。


9. 30分・60分・半日ルーティン

月次締めは、毎月やるものです。

だから、完璧すぎるルーティンを作ると続きません。

あなたの事業規模や取引量に合わせて、3段階で考えましょう。

30分ルーティン

対象は、創業初期、副業、小規模、取引数が少ない人です。

やることは最低限です。

時間 作業
5分 連携エラー確認
10分 未処理・不明取引確認
5分 現金・ポイント・ギフト券の利用有無確認
5分 カード明細・銀行明細の保存
5分 不足資料をメモ

30分ルーティンでは、細かい分析まではしません。

目的は、月次が崩れないように最低限の確認をすることです。

60分ルーティン

対象は、年商1,000万円〜1億円前後で、取引数が増えてきた人です。

時間 作業
10分 連携エラー確認
15分 未処理・不明取引の回答
10分 カード明細・未払金確認
10分 銀行残高・売掛金確認
10分 現金・ポイント・ギフト券確認
5分 利益・粗利率のざっくり確認

60分ルーティンでは、数字の違和感まで見ます。

粗利率がいつもより低い。

経費が急に増えている。

カード未払金が大きく増えている。

こうした変化に気づくのが目的です。

半日ルーティン

対象は、法人、年商1億円以上、複数アカウント、多店舗展開、スタッフがいる事業者です。

時間 作業
30分 資料提出状況の確認
30分 連携エラー・CSV不足の確認
60分 未処理・不明取引の処理
45分 カード未払金・銀行残高照合
45分 売掛金・プラットフォーム入金確認
45分 棚卸・在庫変動確認
30分 利益率・資金繰り・異常値確認
15分 税理士・社内共有用メモ作成

半日ルーティンでは、ただ記帳するだけでなく、経営管理まで見ます。

売上は伸びているか。

粗利率は下がっていないか。

在庫が増えすぎていないか。

カード未払金が膨らみすぎていないか。

資金繰りに無理がないか。

ここまで見られると、経理は経営判断の武器になります。


10. 法人の締め日・担当者・承認

個人事業では、自分のペースで月次を進めることが多いです。

しかし、法人やチーム運営では、締め日と担当者を決める必要があります。

決めていないと、毎月こうなります。

  • 誰がカード明細を出すのか分からない
  • 誰が棚卸を集計するのか分からない
  • 誰が不明取引に回答するのか分からない
  • 税理士へ渡す資料が遅れる
  • 月次数字の確認が翌々月になる
  • 社長が見たいときに数字が見られない

経理は、自然には回りません。

回るように設計します。

月次スケジュール例

法人や複数担当者の場合は、次のようなスケジュールを作ります。

日程 作業
毎月1〜3日 前月分の資料回収開始
毎月5日 現金・ポイント・ギフト券・連携外取引の入力期限
毎月10日 カード明細・銀行明細の提出期限
毎月15日 不明取引の回答期限
毎月20日 残高照合・棚卸確認
毎月25日 月次数字の確認・社長承認
月末 次月への改善メモ作成

事業によって締め日は変えて構いません。

大事なのは、毎月同じリズムで進めることです。

担当者を決める

月次締めでは、最低でも次の担当を決めます。

担当 役割
資料回収担当 カード明細、銀行明細、領収書を集める
入力担当 会計ソフトやスプレッドシートに入力する
回答担当 不明取引に回答する
棚卸担当 在庫金額を集計する
確認担当 残高・利益・異常値を見る
承認者 月次完了を判断する

小規模なら、全部社長でも構いません。

ただし、その場合でも「自分が全部担当」と明確にしてください。

なんとなくでは続きません。

承認を入れる

法人では、月次完了後に承認を入れると強いです。

承認といっても、大げさな稟議ではありません。

次のような簡単な記録で十分です。

2026年1月月次
資料提出:完了
未処理:なし
不明取引:税理士確認2件
預金残高:確認済み
カード未払金:確認済み
棚卸:1月31日時点で確認済み
確認者:中野
確認日:2026/02/20

この記録があると、後から「この月はどこまで確認したか」が分かります。

年商が大きくなるほど、この小さな記録が効いてきます。


11. 税理士へ渡す月次資料

税理士や記帳代行へ渡す資料は、毎月同じ形にするとスムーズです。

資料の出し方が毎月バラバラだと、確認作業が増えます。

逆に、毎月同じ形で渡せば、処理もチェックも速くなります。

月次資料セット

最低限、次の資料をそろえます。

資料 内容
銀行明細 連携外の銀行、残高確認資料
クレジットカード明細 利用明細、引落日、引落金額
売上データ Amazon、楽天、Yahoo!、メルカリ、買取業者など
売掛金資料 月末をまたぐ決済期間データ、未入金一覧
現金取引 領収書、現金出納メモ
電子マネー・QR決済 利用履歴、CSV、スクショ
ポイント・ギフト券 利用履歴、残高、仕入・経費利用分
棚卸 月末時点の在庫金額
不明取引回答 確認事項シート
インボイス資料 必要な適格請求書等

提出メッセージ例

資料を送るときは、次のように書くと分かりやすいです。

2026年1月分の資料を提出します。

・銀行明細:提出済み
・クレカ明細:楽天カード、三井住友カード提出済み
・PayPayカード:CSV提出済み
・Amazon売上:1月分提出済み
・メルカリ売上:1月利用なし
・現金仕入れ:あり。領収書3枚提出済み
・Suica事業利用:なし
・楽天ポイント利用:あり。シート入力済み
・棚卸:1月31日時点 4,820,000円(税抜)
・不明取引:確認事項シートに回答済み

未提出:
・Yahoo!ショッピングの領収書2件

このように書かれていると、受け取る側は非常に助かります。

「何があるか」だけでなく、「何がないか」も分かるからです。

税理士へ渡すときの注意

税理士は、魔法使いではありません。

資料がなければ判断できません。

特に、せどり・物販は取引数が多く、プラットフォームも多いため、資料の整理状態で処理時間が大きく変わります。

毎月の資料提出が整っている人は、決算も早いです。

逆に、年末にまとめて資料を探す人は、ほぼ必ず苦労します。

税理士へ渡す資料は、税理士のためだけではありません。

未来の自分のためです。


月次完了の判定表

最後に、月次完了の判定表を置いておきます。

この表を毎月コピーして使ってください。

チェック項目 状態 メモ
銀行連携 完了・未完了・対象外
カード連携 完了・未完了・対象外
EC連携 完了・未完了・対象外
連携外CSV 完了・未完了・対象外
未処理取引 なし・あり
不明取引 なし・あり
カード未払金 確認済み・未確認
預金残高 確認済み・未確認
売掛金 確認済み・未確認
現金取引 なし・あり・未確認
ポイント・ギフト券 なし・あり・未確認
棚卸 入力済み・未入力
証憑保存 完了・不足あり
利益確認 完了・未確認
税理士確認事項 なし・あり
月次完了日 日付

この表で「未完了」「あり」「未確認」「不足あり」が残っている場合、その月はまだ締まっていません。

逆に、残っている項目が税理士確認事項だけで、内容が明確になっているなら、実務上はかなり良い状態です。


よくある質問

Q1. 未処理取引がゼロなら、月次完了ですか?

いいえ。

未処理がゼロでも、残高が合っていない、棚卸が入っていない、売掛金を確認していない、証憑が不足している場合は未完了です。

未処理ゼロは、月次完了の一部にすぎません。

Q2. 連携エラーがある月は、月次を締められませんか?

エラーの内容によります。

銀行やカードなど重要な連携が止まっていて、代替資料もない場合は締めにくいです。

一方、CSVやPDFで不足期間を補えているなら、月次を進めることはできます。

大事なのは、エラーを放置しないことです。

Q3. 棚卸は毎月必要ですか?

理想は毎月です。

ただし、取引量が多い場合は、最低でも決算月、年末、半期、融資前などの節目で確認してください。

利益を正確に見たい月は、棚卸を入れないと判断を誤ります。

Q4. ポイント利用は少額なら無視していいですか?

少額であっても、継続的に使っているなら管理した方がよいです。

せどり・物販ではポイント利用が大きくなりやすく、仕入れや消費税判断にも関係することがあります。

毎月、少なくとも利用有無は確認してください。

Q5. 税理士に丸投げすれば、月次チェックは不要ですか?

不要ではありません。

税理士は資料をもとに処理します。

資料の有無、取引内容、在庫状況、プライベート利用の有無は、事業者本人でないと分からないことが多いです。

税理士に任せる場合でも、資料提出と不明回答は事業者側の仕事です。

Q6. 月次締めは何日までにやるべきですか?

理想は翌月15日〜25日ごろまでです。

カード明細やプラットフォームデータの確定時期があるため、翌月初日にすべて完了するのは難しいことがあります。

ただし、翌々月まで放置すると記憶が薄れ、資料も探しにくくなります。

毎月の締め日を決めて、同じリズムで回すのがおすすめです。


次章へのつなぎ

この章では、毎月の記帳を完了させるためのチェックリストを作りました。

ここまで来ると、日々の取引を記帳し、証憑を保存し、月次で締める流れが整います。

次に必要なのは、年末・決算前の準備です。

個人事業主であれば確定申告。

法人であれば法人決算。

どちらも、年末や決算日に必要な残高と資料をそろえることが重要です。

次の第19章では、年末決算と確定申告・法人決算の準備を整理します。


月次の完了チェックリスト 「今月は完了」と言えるチェックリスト 全部にチェックが入れば、その月は終わりです 各販路のレポート、カード明細、通帳を取得した 売上を「売れた日」に、総額で計上した 仕入れ・経費を「使った日」に計上した ポイント・自家消費・相殺・廃棄を拾った 棚卸をして、在庫金額を確定した 預金残高が、通帳と1円まで合っている 売掛金が、未入金の金額として説明できる 未払金が、カードの請求額として説明できる 在庫金額に、根拠となる棚卸表がある この状態になって、はじめて「記帳が終わった」と言えます 入力が終わっただけでは、まだ終わりではありません ここまで来られたら、もう十分に回せています
図49全部にチェックが入れば、その月は完了です
「完了」まで進めないときは、たいていこの3つ 「完了」まで進めないときは、たいていこの3つ 止まっている場所が分かれば、対処できます 資料がそろっていない 連携が切れている レポートを取っていない レシートが手元にない → 第6章・第17章へ 処理の仕方が分からない 初めて出てきた取引 ポイント・自家消費 特殊な取引 → 該当章・実践編へ 残高が合わない 未払金・売掛金 預金・現金 在庫 → 第14章・実践編へ 止まったまま放置すると、翌月の作業に上乗せされていきます
図50完了まで進めないときの詰まり所
毎月いつやるか、決めておく 毎月いつやるか、決めておく 「時間ができたら」では、永遠に始まりません 月初 資料を集める 上旬 売上・仕入れを記帳 中旬 残高を照合 月末まで 完了を宣言 前月分のデータ 販路・カード・通帳 ここが一番大事 実際の残高と合わせる 日付を決めて予定に入れてしまうのが、続けるいちばんの近道です
図51毎月いつやるかを決めておく

第19章

年末決算と確定申告・法人決算の準備

この章のゴール

この章では、個人事業主は確定申告、法人は法人決算に向けて、年末・決算日前後にそろえるべき資料と残高を整理します。

ここまでの章で、日々の取引の記帳、証憑保存、月次締めまで見てきました。

最後に必要なのが、年末・決算日の数字を固めることです。

せどり・物販の決算で止まりやすいのは、難しい税法論点よりも、実は次のようなものです。

  • 12月31日時点の預金残高が分からない
  • Amazonの年末売掛金データが取れていない
  • 棚卸金額が出ていない
  • カード未払金が合っていない
  • 12月利用分のカード明細が翌年2月引落に混ざっている
  • 固定資産の購入資料が見つからない
  • 借入金の残高と返済予定表がない
  • 個人の生活費と事業用支出が混ざったまま
  • 法人の役員貸付金・役員借入金が整理されていない
  • 消費税の数字をどこで見るか分からない

こういうところで詰まります。

逆にいうと、年末・決算日に必要な資料を先にそろえておけば、確定申告や法人決算はかなり進めやすくなります。

この章の目的は、申告書の書き方を細かく解説することではありません。

申告書そのものは、国税庁の確定申告書等作成コーナー、会計ソフト、税理士、税務署などを使って作成する領域です。

本章では、その前段階として、申告・決算に渡せる状態の数字と資料を作ることに集中します。


年末・決算日にそろえるもの 年末・決算日にそろえるもの この日にしかできないことが、いくつかあります 1 12月31日(決算日)の在庫を数える ★この日にしかできません。後から遡れない 2 FBA在庫レポートを取得する 後から取れなくなることがあります 3 預金・カードの残高を確定する 年末時点の残高を記録に残す 4 売掛金・未払金の残高を確認する 未入金・未払いの内訳を説明できるように 5 固定資産・借入金の残高を確認する 減価償却と元本残高 6 翌年の期首へ引き継ぐ 今年の期末が、来年の期首になります 棚卸だけは、後から絶対に遡れません。年末は他の何より優先してください
図52年末・決算日にそろえるもの

まず結論

年末決算・確定申告・法人決算で最初にそろえるべきものは、次の7つです。

番号 必要なもの 理由
1 年末・決算日の預金残高 会計ソフト残高と実際残高を合わせるため
2 年末・決算日の売掛金 売上済み・未入金の金額を確認するため
3 年末・決算日の棚卸金額 売上原価と利益を確定するため
4 クレジットカード未払金 仕入・経費の漏れや二重計上を防ぐため
5 借入金残高 負債残高を正しくするため
6 固定資産資料 減価償却・資産台帳を整えるため
7 不明取引・証憑不足リスト 申告前に判断が必要なものを残さないため

個人なら、12月31日時点。

法人なら、決算日時点です。

3月決算法人なら3月31日。

9月決算法人なら9月30日。

12月決算法人なら12月31日。

ここで大事なのは、「今日の残高」ではなく、決算日時点の残高をそろえることです。

たとえば、個人事業主の2026年分の確定申告なら、必要なのは2026年12月31日時点の残高です。

2027年1月8日に見た現在残高ではありません。

年末・決算日をまたぐと、入金、引落、仕入、売上、カード利用が混ざります。

だから、対象日を間違えると、決算数字がズレます。


1. 年末・決算日に必要な残高

決算とは、ある日付で数字を区切る作業です。

個人事業主は、原則として1月1日から12月31日までを1年として計算します。

法人は、会社ごとに決めた事業年度で計算します。

年末・決算日に必要な残高は、主に次のとおりです。

区分 必要な残高
預金 決算日時点の銀行残高
現金 決算日時点の事業用現金残高
売掛金 売上済みだが未入金の金額
在庫 決算日時点で残っている商品・材料・ギフト券等
カード未払金 カード利用済みだが未引落の金額
買掛金・未払金 仕入・経費が発生済みだが未払いの金額
借入金 決算日時点の借入残高
固定資産 事業用資産の残高
前払・未収・未払 家賃、保険料、利息、税金などの期間ズレ

初心者のうちは、全部を一度に完璧に理解する必要はありません。

まずは、次の3つを最優先で押さえてください。

  1. 預金残高
  2. 売掛金
  3. 棚卸

この3つがそろうと、せどり・物販の決算はかなり前に進みます。

実際の記帳代行でも、年明けにまずお願いするのはこの3つです。

・12月31日時点の預金残高
・12月31日時点のAmazon等の売掛金
・12月31日時点の棚卸金額

これが決算の入口です。

残高は「資料」で確認する

残高は、口頭やメモだけでなく、資料で確認します。

たとえば預金残高なら、次のような資料です。

  • 通帳の写真
  • ネット銀行の残高スクショ
  • 月末残高が載ったPDF
  • 入出金明細CSV

棚卸なら、次のような資料です。

  • 在庫管理表
  • 棚卸集計表
  • Amazon・倉庫・自社管理表
  • 仕入価格ベースの在庫一覧

売掛金なら、次のような資料です。

  • Amazonの決済期間データ
  • 楽天市場・Yahoo!ショッピング等の入金予定資料
  • メルカリ・ヤフオクの未入金情報
  • 買取業者の買取確定・未入金一覧

決算は、「だいたいこのくらい」ではなく、根拠資料とセットで進めます。


2. 棚卸し

せどり・物販の決算で、最重要といっていいのが棚卸です。

棚卸とは、年末・決算日時点で残っている商品の金額を集計することです。

なぜ重要かというと、棚卸が利益を大きく動かすからです。

第13章でも説明しましたが、仕入れた商品は、売れたときに売上原価になります。

まだ売れていない商品は、在庫です。

年末・決算日に在庫が残っているのに、それを全部経費にしてしまうと、利益が少なく見えます。

逆に、在庫が減っているのに棚卸が古いままだと、利益が多く見えることもあります。

つまり、棚卸がズレると、利益がズレます。

棚卸で必要な情報

棚卸では、次の情報をそろえます。

項目 内容
対象日 12月31日、決算日など
商品名・管理番号 どの商品か分かる情報
数量 決算日時点で残っている数
単価 仕入単価
金額 数量×単価
税抜・税込 どちらで集計したか
保管場所 自宅、倉庫、FBA、外注先など

報告するときは、次のように書きます。

2026年12月31日時点の棚卸金額:6,521,228円(税抜)

または法人なら、

第3期 2026年9月30日時点の棚卸金額:18,430,000円(税抜)

ポイントは、日付と税抜・税込を必ず書くことです。

ありがちな棚卸ミス

棚卸でよくあるミスは、次のとおりです。

ミス 何が問題か
今日時点の在庫を出す 決算日時点の数字ではない
売価で集計する 原則として仕入原価ベースで見る
税込・税抜が不明 会計処理と合わなくなる
FBA在庫を忘れる 実在庫より少なくなる
返品予定・不良在庫を混ぜる 評価の確認が必要になる
ギフト券残高を忘れる 仕入用チャージ残高が漏れることがある
ポイント利用後の金額が曖昧 仕入原価の整理が必要になる

棚卸は、最後にまとめてやろうとすると大変です。

年末に初めて棚卸ルールを決めるのではなく、できれば6月末などの中間でも一度練習しておくと安心です。

実務でも、6月末や7月末に一度、預金残高・売掛金・棚卸を照合することがあります。

これは、年末にいきなり崩れないようにするためです。

棚卸は「利益を見るための作業」

棚卸は、税務署のためだけにやるものではありません。

自分の利益を見るためにやります。

たとえば、売上が伸びているのにお金が残らない場合、原因は在庫にあるかもしれません。

在庫が増えすぎている。

売れ残りが多い。

利益率の低い商品に資金が寝ている。

こうしたことは、棚卸をしないと見えません。

棚卸は面倒です。

でも、せどり・物販では、利益の正体を見るためのレントゲンみたいなものです。

痛いところも映りますが、見ないと治せません。


3. 預金・売掛金・未払金

年末・決算では、預金、売掛金、未払金を必ず確認します。

この3つは、貸借対照表に大きく関係します。

損益計算書だけを見ていると、「利益は出ているのにお金がない」という状態になりがちです。

その理由を理解するには、残高を見る必要があります。

預金残高

預金残高は、会計ソフトの残高と実際の銀行残高を合わせるために確認します。

確認対象は、事業で使っているすべての銀行口座です。

個人の場合、事業用とプライベートが混ざっている口座もあるかもしれません。

法人の場合、会社名義のすべての口座が対象です。

確認資料は、次のようなものです。

  • 決算日時点の通帳写真
  • ネット銀行の残高スクショ
  • 月末残高が分かるPDF
  • 決算月の入出金明細

ここで注意したいのは、対象日です。

12月末残高が必要なのに、1月に入ってからの現在残高を送ってしまうと、照合できません。

資料を出すときは、次のように明記してください。

楽天銀行 2026年12月31日時点残高:2,103,559円
三井住友銀行 2026年12月31日時点残高:391,642円

売掛金

売掛金は、売上は発生しているが、まだ入金されていない金額です。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、メルカリ、ヤフオク、買取業者などで発生します。

特にAmazonは、決済期間が年末でぴったり切れないことがあります。

そのため、12月31日をまたぐ決済期間のデータを取得する必要があります。

考え方はこうです。

12月中に売れた
↓
でも入金は1月
↓
12月末時点では売掛金

逆に、1月に売れたものは、12月の売掛金ではありません。

年末をまたぐ売掛金は、売上と入金のズレを整理する作業です。

買取業者の未入金

買取業者への販売でも、売掛金が出ることがあります。

たとえば、12月中に買取価格が確定し、1月14日に入金された場合です。

この場合、12月末時点では未入金です。

年末時点で売上が確定していたなら、売掛金として確認する必要があります。

記帳担当者に伝えるときは、次のように書くと分かりやすいです。

2026年12月中に買取価格確定、2027年1月14日入金
金額:1,184,800円
取引先:〇〇買取

「入金が翌年だから翌年の売上」ではありません。

売上がいつ確定したかを見ます。

未払金・カード未払金

未払金は、すでに仕入れや経費が発生しているが、まだ支払っていない金額です。

せどり・物販では、クレジットカード未払金が特に重要です。

12月にカードで仕入れたものが、1月や2月に引き落とされることがあります。

この場合、12月の仕入れや経費として処理しつつ、年末時点ではカード未払金として残ります。

だから、年末決算では、翌年1月・2月引落分のカード明細が必要になることがあります。

実務でも、「12月末までのカード利用履歴を確認するために、翌年2月引落明細まで必要」というケースがあります。

カードは利用月と引落月がズレる。

この感覚を持っておいてください。


4. 借入金・固定資産

年末・決算では、借入金と固定資産も確認します。

売上や仕入れほど日常的ではありませんが、決算では重要です。

借入金

借入金がある場合、決算日時点の残高を確認します。

必要な資料は次のとおりです。

  • 金銭消費貸借契約書
  • 返済予定表
  • 金融機関の返済明細
  • 決算日時点の借入残高
  • 利息と元金の内訳

毎月の返済額は、全額が経費になるわけではありません。

返済額のうち、元金部分は借入金の返済です。

利息部分は支払利息です。

たとえば、毎月100,000円返済していても、その全額が経費ではありません。

内訳を確認します。

返済額:100,000円
元金:92,000円
利息:8,000円

この場合、経費になるのは利息部分です。

元金部分は、借入金残高が減る処理になります。

固定資産

固定資産とは、長期間使う高額な事業用資産です。

せどり・物販では、次のようなものが出ます。

  • パソコン
  • スマホ
  • カメラ
  • 車両
  • 棚、什器、倉庫設備
  • 撮影機材
  • 業務用ソフト
  • 倉庫設備

固定資産がある場合、次の資料をそろえます。

  • 領収書・請求書
  • 購入日
  • 購入金額
  • 事業利用割合
  • 資産の内容
  • 売却・廃棄があった場合の資料

固定資産は、購入した年に全額経費にならない場合があります。

減価償却として、複数年に分けて経費にすることがあります。

そのため、決算前に「高額なものを買ったか」を確認してください。

売却・廃棄も忘れない

固定資産は、買ったときだけでなく、売ったとき・捨てたときも処理が必要です。

たとえば、事業用パソコンを買い替えた。

古いスマホを下取りに出した。

車を売却した。

このような場合、固定資産台帳の整理が必要になります。

決算前に、次の質問を自分にしてください。

今年、高額な事業用資産を買ったか?
今年、過去に買った事業用資産を売ったか?
今年、使わなくなった資産を廃棄したか?

この3つです。


5. 個人の青色申告決算書

個人事業主が青色申告をする場合、青色申告決算書を作成します。

青色申告決算書は、ざっくりいうと、事業の成績表です。

主に次の内容が入ります。

  • 売上
  • 仕入
  • 売上原価
  • 経費
  • 所得金額
  • 減価償却
  • 貸借対照表
  • 月別売上・仕入

せどり・物販では、特に次の数字が重要です。

項目 内容
売上金額 各販路の売上合計
期首商品棚卸高 年初に残っていた在庫
仕入金額 その年に仕入れた商品
期末商品棚卸高 年末に残っている在庫
売上原価 期首棚卸+仕入−期末棚卸
経費 送料、手数料、通信費、消耗品費など
所得金額 売上総利益から経費を引いた金額

この中で特に意識してほしいのは棚卸です。

期末商品棚卸高が入らないと、売上原価が決まりません。

売上原価が決まらないと、所得金額も決まりません。

つまり、棚卸が入らないと確定申告の数字が固まりません。

65万円・55万円・10万円控除の違い

青色申告には、青色申告特別控除があります。

控除額は要件によって変わります。

ざっくりいうと、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を付け、期限内申告を行うことなどが重要になります。

さらに、電子申告や優良な電子帳簿保存などの要件が関係する場合があります。

ここは毎年の制度確認が必要なので、最終判断は国税庁情報や税理士に確認してください。

ここで押さえてほしいのは、次のことです。

青色申告の控除を受けたいなら、年末にあわてて帳簿を作るのではなく、毎月の記帳と残高管理が必要です。

貸借対照表を作るには、預金、売掛金、棚卸、未払金、借入金などの残高が必要です。

損益計算書だけでは足りません。

だから、第18章の月次締めが大事になります。


6. 個人の確定申告書

青色申告決算書で事業所得の数字が固まったら、個人の確定申告書に進みます。

確定申告書では、事業所得だけでなく、個人全体の所得や控除を扱います。

たとえば、次のようなものです。

  • 給与所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 雑所得
  • 配当所得
  • 譲渡所得
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 医療費控除
  • 寄附金控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除
  • 住宅ローン控除

この教材はせどり・物販の記帳教材なので、すべての所得や控除を詳しく扱いません。

ただし、次のことは理解しておいてください。

事業の帳簿が完成しても、それだけで個人の確定申告が全部終わるわけではありません。

事業以外の所得や控除も、個人の確定申告書に反映します。

副業の人なら、会社の源泉徴収票が必要です。

ふるさと納税をしていれば寄附金の情報が必要です。

医療費控除を使うなら医療費の資料が必要です。

不動産投資をしているなら、不動産所得の収支も必要です。

ここは、事業帳簿とは別の個人資料です。

確定申告で必要になる代表資料

個人の確定申告では、次のような資料をそろえます。

区分 資料
事業 青色申告決算書、帳簿、棚卸、残高資料
給与 源泉徴収票
社会保険 国民年金、国民健康保険等の支払資料
保険 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書
医療費 医療費通知、領収書、医療費集計
寄附 ふるさと納税等の寄附金受領証明書
住宅 住宅ローン控除関連資料
その他 株式、不動産、暗号資産などの資料

国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って入力することで申告書等を作成できます。

ただし、入力する数字の元資料は自分でそろえる必要があります。

会計ソフトが魔法のように個人控除まで全部そろえてくれるわけではありません。

消費税申告がある人

課税事業者の場合は、所得税の確定申告とは別に、消費税申告も必要になります。

原則課税、簡易課税、2割特例、インボイス登録など、状況によって確認事項が変わります。

せどり・物販で原則課税の場合、仕入税額控除、インボイス、課税区分、輸出、軽減税率などが絡むことがあります。

消費税は難易度が上がるため、少しでも不安があれば税理士や税務署に確認してください。

会計ソフト上では、消費税集計や勘定科目別税区分集計表などを確認することがありますが、申告書への反映や区分の妥当性は慎重に見ます。


7. 法人の決算整理前資料

法人の場合、個人の確定申告よりも決算・申告の難易度が上がります。

決算整理でやること 決算整理でやること 毎月の記帳が終わっていれば、あとはこれだけです 1 棚卸を確定する 期末の在庫金額。★この日にしかできません 2 減価償却費を計上する 固定資産を持っている場合 3 家事按分を計上する 自宅兼事務所の家賃・光熱費など 4 未払・前払を整理する 期をまたぐ費用の調整 5 消費税の処理をする 課税事業者の場合。振替の仕訳 6 残高をすべて確認する 翌年の期首に引き継ぐ数字になります 毎月の記帳が止まっていると、この作業の前に1年分の記帳が必要になります
図53決算整理でやること
個人と法人で、区切りが違う 個人と法人で、区切りが違う 自分がどちらのスケジュールで動くかを確認してください 個人事業主 1月1日〜12月31日で区切る 12月31日に棚卸 翌年に確定申告・納税 全員が同じ時期に動く 期限は毎年、国税庁の案内で確認を 法人 自社で決めた事業年度で区切る 決算日に棚卸 事業年度終了後に申告・納税 会社ごとに時期が違う 延長制度が使える場合もあります どちらも、日々の記帳が終わっていることが前提になります
図54個人と法人で、区切りが違います

法人は、会社としての財務諸表を作り、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税などを整理します。

本教材では法人決算書や法人税申告書の作成そのものまでは扱いません。

ただし、税理士へ渡す前の資料整理は、事業者側でできます。

法人決算前にそろえる資料

法人決算前にそろえる資料は、次のとおりです。

区分 資料
売上 販路別売上データ、売掛金、入金明細
仕入 仕入明細、買掛金、棚卸表
経費 領収書、請求書、未払金、前払費用
預金 決算日時点の銀行残高、入出金明細
カード 利用明細、未払金残高、引落資料
借入 借入契約書、返済予定表、残高証明
固定資産 固定資産台帳、購入・売却・廃棄資料
給与 給与台帳、源泉所得税、社会保険資料
役員 役員報酬、役員貸付金、役員借入金
税金 中間納付、予定納税、納付書
消費税 課税区分、インボイス、税区分集計

個人と比べて、法人で特に注意したいのは、会社と社長個人を分けることです。

会社のお金と個人のお金が混ざると、役員貸付金や役員借入金が増えます。

この残高が大きくなると、融資や税務上の印象にも影響することがあります。

法人化したら、「自分のお金」ではなく「会社のお金」として扱う感覚が必要です。

決算整理前に見ておく数字

税理士へ渡す前に、次の数字を確認しておくとスムーズです。

  • 売上高
  • 売上総利益
  • 粗利率
  • 営業利益
  • 現預金残高
  • 売掛金残高
  • 在庫残高
  • カード未払金
  • 借入金残高
  • 役員貸付金・役員借入金
  • 消費税の概算

この段階で、違和感があれば早めに確認します。

たとえば、

  • 粗利率が急に下がっている
  • 在庫が増えすぎている
  • 現金が少ないのに利益が出ている
  • 役員貸付金が増えている
  • 消費税の納税額が想定より大きい

こうした違和感は、決算申告の直前ではなく、決算整理前に見つけたいところです。


8. 法人税申告は税理士等へ引き継ぐ

法人税申告は、個人の確定申告よりもかなり専門的です。

法人税申告書には、別表、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書などが関係します。

さらに、地方税、消費税、役員報酬、交際費、減価償却、欠損金、税額控除など、確認項目が多くなります。

そのため、本教材では、法人税申告書を自力で作る方法を本編の中心にはしません。

法人の場合は、次の考え方がおすすめです。

日々の記帳と決算前資料の整理は自社で整え、法人税申告は税理士等の専門家へ引き継ぐ。

もちろん、会社が自社で申告すること自体は可能です。

しかし、年商が数千万円〜1億円を超え、在庫、カード未払金、消費税、役員取引、借入、固定資産が増えてくると、申告書作成の難易度は一気に上がります。

この教材の対象は、創業前後〜年商1億円以下をメインにしつつ、法人・年商20億円程度までの経理にも対応できる考え方です。

その範囲では、法人税申告そのものを無理に内製化するより、税理士へ渡す前の資料精度を上げる方が効果的です。

税理士へ渡す前に社内でやること

税理士へ丸投げする前に、事業者側でやるべきことはあります。

  • 資料を月別にそろえる
  • 不明取引に回答する
  • 棚卸を集計する
  • 売掛金を確認する
  • カード未払金を確認する
  • 借入金残高を確認する
  • 固定資産の購入・売却・廃棄を共有する
  • 役員の私的利用や立替を整理する
  • 消費税区分で迷う取引をリスト化する

税理士は、資料がなければ判断できません。

また、事業内容や取引実態は、本人・会社側でないと分からないことがあります。

税理士に依頼する場合でも、資料整理は事業者の仕事です。

ここを整えるだけで、決算のスピードと精度はかなり変わります。


9. 税理士・税務署へ渡すもの

確定申告や法人決算のときは、税理士や税務署へ渡す資料を整理します。

ここで大事なのは、「全部あります」と言うことではありません。

何が提出済みで、何が未提出で、何が確認中かを分かるようにすることです。

個人事業主の提出資料セット

個人事業主の場合、次の資料をそろえます。

区分 資料
売上 販路別売上データ、入金明細、売掛金資料
仕入 仕入明細、領収書、請求書、棚卸表
経費 領収書、請求書、カード明細
預金 12月31日時点の残高資料、入出金明細
カード 利用明細、引落明細、未払金確認資料
現金 現金取引一覧、領収書
ポイント・ギフト券 利用履歴、残高、チャージ資料
固定資産 購入・売却・廃棄資料
借入 契約書、返済予定表、残高
個人控除 源泉徴収票、控除証明書、医療費、寄附金など
消費税 課税区分、インボイス、消費税集計資料

法人の提出資料セット

法人の場合は、次の資料をそろえます。

区分 資料
月次試算表 決算月までの試算表
総勘定元帳 主要科目の元帳
補助元帳 売掛金、未払金、借入金、カード等
売上資料 販路別売上、売掛金、入金明細
仕入資料 仕入明細、買掛金、棚卸表
預金資料 すべての銀行残高、入出金明細
カード資料 利用明細、引落明細、未払残高
借入資料 契約書、返済予定表、残高証明
固定資産 固定資産台帳、購入・売却・廃棄資料
給与資料 給与台帳、源泉所得税、年末調整資料
役員資料 役員報酬、役員貸付・借入
税金資料 中間納付、納付書、予定納税
消費税資料 税区分集計、インボイス、輸出入資料

資料提出メッセージ例

資料を送るときは、次のようにまとめると分かりやすいです。

2026年分の確定申告資料を提出します。

提出済み:
・12月31日時点の預金残高
・12月31日時点の棚卸金額:6,521,228円(税抜)
・Amazonの12月31日を跨ぐ決済期間データ
・クレカ明細:12月利用分まで確認済み
・現金取引:利用なし
・楽天ポイント利用履歴:提出済み

確認中:
・買取業者の12月売上、1月入金分
・Apple Gift Cardの未使用残高

未提出:
・三井住友カードの2月引落明細

これなら、受け取る側がすぐに状況を把握できます。

決算の資料提出は、量よりも整理です。


10. 提出するもの・保存するもの

確定申告や決算では、「税務署へ提出するもの」と「自分で保存するもの」があります。

すべての領収書を税務署へ提出するわけではありません。

しかし、提出しないからといって、保存しなくてよいわけではありません。

第17章で見たように、帳簿や証憑は保存が必要です。

提出するもの

個人事業主では、主に次のようなものを提出・送信します。

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書または収支内訳書
  • 必要な添付書類や明細書
  • 消費税申告書が必要な場合は消費税申告書

法人では、主に次のようなものが関係します。

  • 法人税申告書
  • 地方法人税申告書
  • 勘定科目内訳明細書
  • 法人事業概況説明書
  • 消費税申告書
  • 地方税申告書
  • 財務諸表

実際に何を提出するかは、申告内容、申告方法、税目、自治体、税理士の方針によって変わります。

最新の様式や提出方法は、国税庁・自治体・税理士に確認してください。

保存するもの

保存するものは、提出物より多いです。

たとえば、次のようなものです。

  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳
  • 現金出納帳
  • 売上帳
  • 仕入帳
  • 棚卸表
  • 領収書
  • 請求書
  • 納品書
  • 契約書
  • カード明細
  • 銀行明細
  • 固定資産資料
  • 借入金資料
  • インボイス関連資料

税務署へ出さない資料こそ、後から説明するために必要です。

申告書は結果です。

帳簿と証憑は、その結果の根拠です。

この2つを分けて考えてください。


11. 副業と住民税の注意

副業でせどり・物販をしている人は、住民税にも注意が必要です。

よくある不安は、次のようなものです。

副業が会社にバレないようにできますか?
住民税を自分で納付にすれば大丈夫ですか?
確定申告しなければ分からないですか?

ここは、とても慎重に扱う必要があります。

まず、所得があるのに申告しない、という選択肢はおすすめしません。

申告が必要な所得があるなら、正しく申告します。

そのうえで、住民税の納付方法について、自治体の取扱いを確認します。

確定申告書には、給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法を選ぶ欄があります。

ただし、自治体や所得区分、勤務先の処理、給与支払報告書の状況などによって、希望どおりになるとは限りません。

そのため、本教材では次のように伝えます。

副業の住民税は、確定申告書の欄だけで安心せず、必要に応じて自治体へ確認する。

また、会社の就業規則の問題もあります。

税務上の申告と、勤務先の副業規定は別の話です。

副業禁止規定がある場合は、税務だけでなく会社ルールも確認してください。

副業の人がそろえるもの

副業の人は、事業資料に加えて、次の資料も必要になりやすいです。

  • 会社の源泉徴収票
  • 社会保険料控除の情報
  • 生命保険料控除証明書
  • ふるさと納税資料
  • 医療費控除資料
  • 住宅ローン控除資料
  • その他の所得資料

せどりの帳簿だけ完成しても、個人全体の確定申告はまだ終わりではありません。

ここを忘れないでください。


12. 翌年・翌期へ繰り越す数字

決算は、1年を閉じる作業であると同時に、翌年・翌期のスタートを作る作業です。

今年の期末残高は、翌年の期首残高になります。

たとえば、個人事業主なら、

2026年12月31日の期末棚卸高
↓
2027年1月1日の期首棚卸高

法人でも同じです。

第3期末の預金・売掛金・棚卸・未払金・借入金
↓
第4期首の残高

この繰越がズレると、翌年・翌期の数字もズレます。

実務でも、前年度の貸借対照表や期末残高が必要になることがあります。

たとえば、前年に青色申告で貸借対照表を作っていた場合、その期末残高を翌年の期首残高として引き継ぎます。

前年の数字が分からないと、今年のスタートが合いません。

繰り越す主な数字

翌年・翌期へ繰り越す主な数字は、次のとおりです。

科目 内容
現金・預金 期末時点の残高
売掛金 未入金の売上
商品・棚卸資産 期末在庫
前払費用 翌期分を先払いした費用
固定資産 減価償却後の残高
買掛金・未払金 未払いの仕入・経費
カード未払金 未引落のカード利用
借入金 期末借入残高
事業主貸・事業主借 個人事業の事業と個人のやりとり
役員貸付金・役員借入金 法人と役員のやりとり

決算が終わったら、翌年・翌期に引き継がれる数字を確認してください。

特に、棚卸、売掛金、カード未払金、借入金は重要です。

ここがズレると、翌年の利益や残高に影響します。


13. 申告・決算後に行うこと

確定申告や法人決算は、提出したら終わりではありません。

提出後にもやることがあります。

申告後に保存するもの

申告が終わったら、次の資料を保存します。

  • 提出した申告書
  • 青色申告決算書・収支内訳書
  • 消費税申告書
  • 法人税申告書
  • 地方税申告書
  • 受付完了通知
  • 納付書・納付履歴
  • 還付通知
  • 決算書
  • 総勘定元帳
  • 棚卸表
  • 決算整理資料

e-Taxで提出した場合は、受付結果や送信票も保存しておきます。

紙で提出した場合は、控えや受付印のある資料を保存します。

納税・還付の確認

申告後は、納税や還付も確認します。

所得税、消費税、法人税、地方税など、税目によって納付先や期限が違います。

振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付など、納付方法も複数あります。

納付したら、納付履歴を保存してください。

還付がある場合は、入金日と金額を確認し、翌年・翌期の記帳に反映します。

翌年・翌期の改善メモを作る

申告が終わったら、すぐに翌年・翌期の改善メモを作ります。

記憶が新しいうちにやるのがコツです。

たとえば、次のように書きます。

来年改善すること
・12月末の棚卸を1月10日までに出す
・カード明細は毎月PDF保存する
・Amazon売掛金データの取得手順を保存しておく
・PayPay CSVを毎月提出する
・ポイント利用履歴を月次で貼り付ける
・固定資産購入時は領収書を別フォルダに保存する
・消費税区分で迷った取引を月次で確認する

確定申告が終わった瞬間は、解放感があります。

でも、ここで改善メモを残すかどうかで、翌年のラクさが変わります。

毎年同じところで苦しまないために、申告後5分だけ振り返ってください。


年末・決算前チェックリスト

最後に、この章の内容をチェックリストにまとめます。

共通チェック

  • 年末・決算日の預金残高を保存した
  • 年末・決算日の現金残高を確認した
  • 年末・決算日の売掛金を確認した
  • 年末・決算日の棚卸金額を税抜・税込を明記して集計した
  • カード未払金を確認した
  • 翌年・翌期引落のカード明細を確認した
  • 借入金残高を確認した
  • 固定資産の購入・売却・廃棄を確認した
  • 不明取引を解消した
  • 証憑不足をリスト化した
  • 消費税区分で迷う取引を確認した

個人チェック

  • 青色申告決算書の数字を確認した
  • 貸借対照表の残高を確認した
  • 会社員の場合、源泉徴収票を用意した
  • 各種控除証明書を用意した
  • 医療費・ふるさと納税等を確認した
  • 住民税の徴収方法を確認した
  • 消費税申告が必要か確認した

法人チェック

  • 決算月までの試算表を確認した
  • 売掛金・買掛金・未払金を確認した
  • 棚卸表を作成した
  • 固定資産台帳を更新した
  • 借入金残高を確認した
  • 役員貸付金・役員借入金を確認した
  • 給与・源泉所得税・社会保険資料をそろえた
  • 税理士へ渡す資料をフォルダ化した
  • 法人税・消費税・地方税の申告予定を確認した

よくある質問

Q1. 年末残高は、1月に見た現在残高でもいいですか?

いいえ。

必要なのは、年末・決算日時点の残高です。

1月に見た現在残高には、年明け後の入出金が混ざるため、年末残高とは違います。

Q2. 棚卸は売価で出せばいいですか?

通常は、仕入原価ベースで集計します。

売価で集計すると、利益が正しく出ません。

ただし、評価方法や税抜・税込処理は事業者ごとに確認が必要なので、税理士に確認してください。

Q3. Amazonの売掛金とは何ですか?

Amazonで売れたけれど、年末・決算日時点でまだ入金されていない金額です。

年末や決算日をまたぐ決済期間のトランザクションデータを確認します。

Q4. カード明細は12月分だけあれば足りますか?

足りないことがあります。

12月利用分が翌年1月・2月引落明細に載ることがあるため、翌年の引落明細まで確認する場合があります。

Q5. 法人でも自分で申告できますか?

自社で申告すること自体は可能です。

ただし、法人税申告は別表や地方税、消費税、役員取引などが絡み、難易度が高いです。

本教材では、記帳と決算前資料を整えたうえで、法人税申告は税理士等へ引き継ぐことをおすすめします。

Q6. 副業なら確定申告しなくてもよいですか?

所得や状況によります。

給与所得者で一定の条件に該当する場合、所得税の確定申告が不要になるケースはありますが、住民税申告や他の条件が関係することがあります。

自己判断せず、国税庁・自治体・税理士に確認してください。


参考にした公式情報


次章へのつなぎ

ここまでで、セドケイリ本編の主要な流れは一通り整理できました。

せどり・物販のお金の流れを理解し、初期設定を行い、売上、仕入、カード、現金、ポイント、経費、棚卸、消費税、特殊取引、証憑保存、月次締め、年末決算までつなげました。

最後に必要なのは、困ったときに戻ってこられるまとめです。

次のまとめ・索引では、1か月分の記帳完了チェック、年間スケジュール、用語索引、困ったときの逆引きを整理します。


後から取り返せないもの 後から取り返せないもの 記帳やレシートは後から追いつけます。これだけは無理です 1 12月31日(決算日)時点の在庫を数える ★最重要。この日にしか数えられません 2 FBA在庫レポートを取得する 後から取得できる期間に限りがあります 3 その日の預金・カード残高を記録する 通帳やアプリの表示を残しておく 4 現物の写真を撮っておく 棚卸の根拠として残ります 年末は誰でも忙しい時期です。だからこそ、この4つだけは先に予定に入れてください
図55後から取り返せないもの

 

実践・トラブル解決編

共通個人法人

ここまでの章は、正しい順番で作業を進めるための説明でした。

この編は違います。作業が止まったときに開く場所です。

記帳代行で実際に受けた相談のうち、同じ質問が何度も来たものを集めました。数字は変えていますが、起きていることは実際のとおりです。

この編の使い方

頭から読む必要はありません。次の一覧から、今の症状に近いものを探してください。

各ケースは、同じ順番で書いています。

症状        こういう言い方で相談が来ます
何が起きているか   仕組みの上で何が食い違っているか
確認する場所     どこを、どの順番で見るか
直し方        実際の処理
再発防止       来月これをやらないために

「直し方」だけ読んでも直りますが、「何が起きているか」を読むと、来月は自分で見つけられるようになります。


困ったときの逆引き 困ったときの逆引き 症状から、見るべき章を探せます 残高が合わない 未払金 → 第9章 売掛金 → 第8章 預金 → 第14章 現金 → 第10章 利益がおかしい 在庫・原価 → 第13章 二重計上 → 第9章 資金繰り → 第14章 自家消費 → 第12章 何を選ぶか迷う 勘定科目 → 第4章 税区分 → 第15章 ポイント → 第11章 保存方法 → 第17章 そもそも進まない 読む順番 → 第0章 毎月の手順 → 第7章 初期設計 → 第5章 完了の基準 → 第18章 同じところで止まる人がとても多いです。あなただけではありません 止まるのは、あなただけではありません
図56症状から、見るべき章を探せます

逆引き一覧

困りごとから、読むケースを探せます 症状から探す逆引きマップ 左の症状に近いものから、右のケースへ カードを連携したのに、未払金が合わない ケース01 売上と入金の違いが分からない ケース02 仕入れが実際より多い気がする ケース03 家族カードを作ったら数字が崩れた ケース04 ポイント・ギフト券の処理が分からない ケース05 棚卸しで利益が変わる理由が分からない ケース06 MFの数字と実際の感覚が合わない ケース07 何を提出すれば完了なのか分からない ケース08
図57症状から探す逆引きマップ
今の症状 ケース
カードを連携したのに、未払金が合わない ケース01
未払金がマイナスになっている ケース01
入金額をそのまま売上にしていいのか分からない ケース02
売掛金という残高が何なのか分からない ケース02
仕入れが実際より多い/利益が少なすぎる ケース03
同じ商品が2回入っているように見える ケース03
カードを追加してから数字が崩れた ケース04
家族カード・追加カードの扱いが分からない ケース04
ポイントで仕入れた商品の金額が分からない ケース05
ギフト券を買った時点で仕入なのか分からない ケース05
棚卸しを入れたら利益が変わった ケース06
売れ残った在庫をどう扱うのか分からない ケース06
利益率が高すぎる/低すぎる ケース07
利益があるのに現金がない ケース07
何をすれば記帳が完了なのか分からない ケース08
税理士に何を渡せばいいのか分からない ケース08

ケース01 カードを連携したのに、未払金が合わない

未払金が合わないときは、3つの原因を上から順に確認します 未払金が合わないときの確認順 原因のほとんどは、この3つに絞れます 原因 1 利用日と引落日のズレ まだ引き落とされていない利用が残っているだけかもしれません 見る場所: 締め日・支払日と未引落し分を確認 原因 2 二重登録 カード明細と購入履歴、両方から登録していませんか 見る場所: 同じ日付・同じ金額の仕訳を検索 原因 3 家族カード・追加カード 別カードの利用分が、抜けているか混ざっているかも 見る場所: カードごとの補助科目を確認 この3つで見つからなければ、前月末の残高(スタート地点)を疑います 詳しい手順は、このあとの本文で一つずつ確認します
図58未払金が合わないときの3大原因

症状

MFにカードを連携しているのに、未払金の残高とカード会社の請求額が合いません。

先月までは合っていたのに、今月から急に合わなくなりました。

未払金がマイナスになっています。

未払金は、記帳で最も差額が出やすい科目です。合わないこと自体は珍しくありません。大事なのは、差額の探し方を持っているかどうかです。

何が起きているか

その前に、確認してほしいことがあります。

そもそも、比べる相手を間違えていませんか。

カードには締め日と支払日があります。この二つがずれているため、「帳簿の月末残高」と「今月引き落とされた金額」は、本来一致しません。

締め日が月末、支払日が翌月27日のカードで見てみます。

時期 起きたこと 金額
3月中 カードを使った 20万円
4月27日 3月利用分が引き落とされた 20万円
4月中 カードを使った 15万円
4月30日 帳簿の未払金残高 15万円
5月27日 4月利用分が引き落とされる 15万円

4月末の帳簿残高15万円と一致するのは、5月27日に引き落とされる金額です。4月27日に引き落とされた20万円ではありません。

ここを取り違えて「合わない」と言っているケースが、相談の3割ほどを占めます。まず、同じ日を基準にした数字どうしを比べてください。

それでも合わないときが、本当の差額です。

確認する場所

MFクラウドで、次の順に開きます。

  1. 「会計帳簿」→「補助元帳」
  2. 勘定科目で未払金を選ぶ
  3. 補助科目で対象のカード1枚を選ぶ
  4. 期間を、その1か月に絞る

第5章で作ったカード台帳のとおりに補助科目を分けていれば、ここで1枚ずつ確認できます。未払金をカードごとに分けていない場合は、まずそこからです。全カードが混ざった残高では、差額は絶対に見つかりません。

差額の向きで分ける

補助元帳の残高と、カード会社の同時点の金額を比べます。

差額の向き 意味 疑うもの
帳簿のほうが多い 未払金を減らす取引が入っていない 引落し・返金・繰上返済の未登録、利用の二重登録
帳簿のほうが少ない、またはマイナス 未払金を増やす取引が入っていない 利用明細の不足、引落しの二重登録、期首残高の誤り

差額の金額から犯人を探す

差額の金額そのものが、手がかりです。

二重登録なら、差額はその取引の金額とぴったり同じになります。引落しが未登録なら、差額は引落額ちょうどです。

ですから、順番はこうです。

  1. 差額と同じ金額の明細を検索する
  2. 見つからなければ、差額の半分の金額を検索する(同じ取引を2回入れていると、片方を消せば差額の半分ではなく全額が動きます。ただし返金を逆方向で入れた場合は、差額が返金額の2倍になります)
  3. それでも見つからなければ、大きい取引から順に、カード明細と1件ずつ突き合わせる

差額が10万円なら、まず10万円前後の明細を探します。次に5万円が2件、2万円が5件、という順です。

よくある原因と直し方

1 銀行引落しが登録されていない

差額が引落額ちょうどになります。一番多い原因です。

引落し口座がMFに連携されていないか、連携エラーで止まっています。まず口座の連携状態を確認してください。

引落しの記帳はこうです。

未払金 ○○カード / 普通預金 ○○銀行

引落しを「仕入高」や経費で記帳していないか、必ず確認してください。これをやると経費が二重になり、利益が実際より少なく出ます。第9章のルール3です。

2 家族カード・追加カードの分が抜けている、または混ざっている

「先月までは合っていたのに、今月から」というときは、これを疑ってください。

家族カードを追加すると、請求は親カードにまとまりますが、MFの連携は別扱いになることがあります。片方だけ連携していると利用分が抜け、両方連携していると二重になります。

  • 抜けている → 未連携のカードの明細を取得して登録する
  • 二重 → どちらか一方を記帳元と決め、もう一方の明細は登録しない

記帳元を1つに決めるのが原則です。第5章のカード台帳に、どちらを記帳元にするか書いておいてください。

3 購入履歴とカード明細を、両方登録した

Amazonの購入履歴を見ながら仕入れを入力し、そのあとカード連携の明細も登録してしまうパターンです。

差額は、二重に入れた取引の金額と同じになります。

仕入れの記帳元は、カード明細か購入履歴か、どちらか一方に決めてください。カードで買った仕入れは、カード明細を記帳元にするのが管理しやすいです。

4 返品・返金が登録されていない

差額が返金額と一致します。

返金は、仕入れや経費を取り消す方向で記帳します。

未払金 ○○カード / 仕入高

返金を逆方向(未払金を増やす向き)で入れていると、差額は返金額の2倍になります。金額を2で割ってみて、返金の金額と一致したらこれです。

5 繰上返済が登録されていない

差額が大きく、10万円・30万円といったキリのよい金額になります。

繰上返済は、カード会社の通常の引落しとは別に発生します。連携していない口座やATMから支払っていると、記録がどこにも残りません。

第9章のとおり、繰上返済をしたら振込控えを必ず保存してください。

6 リボ払い・分割払いにしている

これは「間違い」ではなく、照合が構造的に難しくなるケースです。

購入時に全額を未払金として計上し、引落しのたびに元金部分だけを減らします。手数料は支払利息等として、元金と分けて記帳します。

カード会社の請求額には手数料が含まれているので、そのまま未払金から引くと合いません。請求明細で、元金と手数料を分けて確認してください。

それでも合わないとき

ここまでで見つからなければ、当月ではなく、過去に原因があります。

  • 期首残高が違う — 開業時や法人化時に、未払金の残高を入れ忘れている、または前期末の残高が誤っている
  • カードを再発行した — 番号が変わると、MF側で別のカードとして扱われます。旧カードの未払金が残ったままになっていないか確認してください
  • 私用の取引を削除した — 事業用カードで私用の買い物をしたぶんを「経費じゃないから」と削除すると、引落し金額と合わなくなります。削除ではなく、事業主貸(法人なら役員貸付金等)で処理してください

差額を「雑損失」で消してはいけません。原因が分からないまま残高を合わせても、翌月また同じ差額が出ます。第4章のとおり、分からない残高を勝手に0円にしないでください。

再発防止

毎月、次を守れば、この症状はほぼ出なくなります。

  • 未払金は、カード1枚につき補助科目を1つ作る
  • カードごとに、記帳元(カード明細/購入履歴)を1つに決めて台帳に書く
  • 家族カード・追加カードを作ったら、その日に台帳を更新する
  • 引落し口座をMFに連携し、毎月エラーがないか確認する
  • 月末に、カード1枚ずつ補助元帳と請求明細を照合する
  • 繰上返済・返金をしたら、その日のうちに控えを保存する

照合は、月に一度、カード1枚あたり5分です。溜めてから探すと、その何十倍もかかります。

関連する章

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カード払いの基本と二重計上 第9章
カード台帳・記帳元の決め方 第5章
分からない残高の扱い 第4章
残高照合の全体像 第14章

ケース02 売上と入金の違いが分からない

症状

Amazonから98,000円入金されました。売上98,000円ではダメですか。

メルカリの売上金を、まだ銀行に振り込んでいません。売上にしなくていいですよね。

売掛金という残高が、何なのか分かりません。

何が起きているか

売った日と、お金が入る日は違います。

そして販路は、売れた金額をそのまま振り込んできません。手数料と送料を引いてから入金します。

項目 金額
商品が売れた金額(売上) 100,000円
販売手数料 △15,000円
配送料 △5,000円
入金される金額 80,000円

入金された80,000円だけを売上として記帳すると、3つのことが同時に壊れます。

  1. 売上が20,000円少なくなる — 消費税の判定にも影響します
  2. 手数料と送料が経費に出ない — 本当はいくら払っているのか分からなくなります
  3. 売掛金が消えない — 「売れたのにまだ入金されていない金額」が管理できません

「入金がないから売上ではない」も同じです。メルカリの売上金が口座に残っていても、商品が売れた時点で売上です。振込を待っている間、そのお金は売掛金として帳簿に残ります。

確認する場所

販路のレポートを見ます。銀行の入金額から逆算してはいけません。

販路 見るもの
Amazon トランザクション/ペイメントのサマリー
メルカリ・ヤフオク・ラクマ 売上履歴・取引明細
楽天・Yahoo!ショッピング 売上レポート・請求明細
買取業者 買取明細書

直し方

総額で記帳します。順番は3つです。

1 売れたとき

売掛金 ○○販路   100,000 / 売上高      100,000
販売手数料       15,000 / 売掛金 ○○販路  15,000
荷造運賃          5,000 / 売掛金 ○○販路   5,000

2 入金されたとき

普通預金 ○○銀行  80,000 / 売掛金 ○○販路  80,000

3 月末に売掛金残高を確認する

売掛金の残高が、販路の「未入金の金額」と合っているか見ます。第8章の計算式です。

月初の売掛金
+ 当月の売上
- 当月の手数料・送料
- 当月の返金
- 当月の入金
= 月末の売掛金

つまずきやすいところ

決済期間が月をまたぎます。 Amazonの決済期間は月初から月末で区切られていません。「3月28日〜4月10日」のような期間で入金されます。売上は決済期間ではなく、売れた日で月に振り分けてください。

「現在」と表示されるデータは使えません。 Amazonのレポートで決済期間が「現在」となっているものは、まだ確定していません。確定してから記帳します。

売上がない月も、「なし」と記録します。 何も書かないと、後から見たときに「ゼロだったのか、入力を忘れたのか」が区別できません。

出品者アカウントと購入アカウントを混ぜないでください。 同じAmazonでも、売る側と買う側は別の取引です。

再発防止

  • 販路ごとに、売掛金の補助科目を作る
  • 記帳は必ず販路のレポートから行い、銀行入金から逆算しない
  • 月末に、販路ごとの売掛金残高を確認する
  • 売上がなかった月は「なし」と記録する
  • 決済期間が「現在」のデータは使わない

関連する章

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売上・売掛金の基本と販路別の処理 第8章
売掛金残高の見方 第14章
返品・返金があった場合 第8章

ケース03 仕入れが実際より多い(記帳元が二つある)

症状

利益が、感覚よりかなり少なく出ます。

仕入高が、明らかに多い気がします。

同じ商品が2回入っているように見えます。

何が起きているか

同じ仕入れを、二つの場所から記帳しています。

よくあるのはこの流れです。

  1. Amazonの購入履歴を見ながら、仕入れを入力する
  2. あとからカード連携の明細がMFに入ってくる
  3. それも仕入れとして登録する

同じ買い物が2回、仕入高に計上されます。

レシートを手入力したあとにカード明細も登録した場合、CSVを取り込んだあとに自動連携をつないだ場合も、まったく同じことが起きます。

これは「入力ミス」ではなく、記帳元を決めていないことが原因です。

確認する場所

  1. MFの「会計帳簿」→「仕訳帳」または「補助元帳」を開く
  2. 勘定科目で仕入高を選ぶ
  3. 金額で並べ替える
  4. 同じ金額・近い日付の組を探す

同じ金額が2件並んでいたら、まずそこを疑ってください。日付は数日ずれることがあります。購入日とカードの利用計上日が違うためです。

直し方

先に、記帳元をどちらか一方に決めます。消してから決めると、また同じことになります。

買い方 記帳元にするもの
クレジットカードで仕入れた カード明細
代引き・現金で仕入れた レシート・領収書
ポイント・ギフト券を使った 販路の注文明細(ケース05へ)
銀行振込で仕入れた 銀行明細

カード払いの仕入れは、カード明細を記帳元にするのが管理しやすいです。理由は、未払金の照合がそのままできるからです(ケース01)。

記帳元を決めたら、もう一方から登録した仕訳を削除します。

削除するときの注意があります。カード明細から登録した仕訳を消すと、そのぶん未払金が減らないまま残ります。未払金の残高も必ず確認してください。片方だけ直すと、今度は未払金が合わなくなります。

つまずきやすいところ

「念のため両方入れておく」は必ず崩れます。あとで片方を消すつもりでも、件数が増えると分からなくなります。

販売する商品と、自分で使うものを分けてください。同じAmazonの注文でも、売る商品は仕入高、梱包材や事務用品は消耗品費です。一つの注文に混ざっていたら、明細を分けて記帳します。

再発防止

  • カードごと・販路ごとに、記帳元を1つ決めてカード台帳に書く
  • 記帳元以外の明細は、MFに取り込んでも登録しない(無視する運用を決める)
  • CSV取込と自動連携を、同じカードに同時に使わない
  • 月末に、仕入高を金額順で並べて同額の重複がないか見る
  • 仕訳を消したら、必ず未払金の残高も確認する

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カード払いの記帳と二重計上の5パターン 第9章
記帳元・連携台帳の決め方 第5章
未払金が合わないとき ケース01

ケース04 家族カード・追加カードを作ったら、数字が崩れた

症状

カードを1枚追加してから、経費が急に増えました。

未払金がマイナスになっています。

先月までは合っていたのに、今月から合いません。

何が起きているか

請求と連携で、単位が違います。

家族カードや追加カードは、請求が親カードにまとまります。しかしMFのデータ連携では、カードごとに別のものとして扱われることがあります。

ここで二通りの崩れ方が起きます。

状態 起きること 症状
親カードと家族カードを両方連携した 家族カードの利用が2回入る 経費が増える、未払金がマイナス
親カードだけ連携し、家族カードの明細を取っていない 家族カードの利用が入らない 引落額のほうが多く、未払金が足りない

「先月までは合っていた」という言い方が出たら、まずこれを疑ってください。カードを増やした月から症状が出ます。

確認する場所

  1. MFの「データ連携」一覧を開く
  2. カード会社ごとに、何件の連携が登録されているか数える
  3. 第5章のカード台帳と照らし合わせる
  4. 台帳にないカードが連携されていたら、そこが原因です

台帳を作っていない場合は、ここで作ってください。第5章の記入シートが使えます。

直し方

記帳元を1枚に決めます。

請求が親カードにまとまるなら、親カードの明細を記帳元にするのが基本です。親カードの明細には、家族カードの利用も含まれています。

  • 両方連携している → 家族カード側の連携を解除するか、取り込んでも登録しない運用にする
  • 親カードだけ連携している → それで正しい。家族カードの利用も親の明細に出ているか確認する
  • 請求が別々に来るタイプのカード → 台帳上も別カードとして扱い、未払金の補助科目も分ける

連携を解除する前に、取得済みの明細を確認してください。第6章のとおり、安易に解除すると取得済みデータや自動仕訳ルールに影響することがあります。

個人・法人で変わるところ

家族カードは、私用の買い物が混ざりやすいカードです。

  • 個人事業主 — 事業用カードで私用の買い物をしたら、事業主貸で処理します。削除してはいけません。削除すると引落額と合わなくなります
  • 法人 — 法人カードで役員の私物を購入したら、役員貸付金等で処理します。従業員が個人カードで会社経費を立て替えた場合は、未払金または立替金で処理し、精算します

再発防止

  • カードを追加・再発行したら、その日にカード台帳を更新する
  • 台帳に「記帳元にするカード」を明記する
  • MFの連携一覧と台帳の枚数を、月に一度つき合わせる
  • 私用の買い物は削除せず、事業主貸・役員貸付金等で処理する
  • 使わなくなったカードも、未払金がゼロになるまで台帳から消さない

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個人カード・家族カードを使う場合のルール 第5章
事業主貸・役員貸付金の使い方 第4章
未払金が合わないとき ケース01

ケース05 ポイント・ギフト券の処理が分からない

症状

全額ポイントで仕入れた商品は、仕入0円ですか。

Amazonギフト券を買いました。その時点で仕入ですか。

Apple Gift Cardを楽天カードで買いました。カード明細では事業主貸でいいですか。

何が起きているか

ポイントは、勘定科目ではありません。

「ポイント」という科目を作って処理しようとすると、必ず行き詰まります。ポイントは支払いの手段であって、何を買ったかとは別の話です。

そしてポイントには、資料上の表示によって処理が変わるという厄介さがあります。

注文明細での表示 意味 処理
値引きとして表示される 商品の値段そのものが下がっている 値引き後の金額が仕入高
支払方法として表示される 値段は変わらず、ポイントで払った 値引き前の金額が仕入高

どちらが正しいかは、想像ではなく資料で判断します。注文明細を開いて、ポイントが「割引」欄にあるのか「お支払い方法」欄にあるのかを見てください。

ギフト券は、また別です。買った時点では、まだ何も仕入れていません。

確認する場所

  • ポイント — 販路の注文明細(ポイント履歴だけでは判断できません)
  • ギフト券 — 購入時のレシート・カード明細と、利用時の注文明細の両方

直し方

ポイントを仕入れに使った(値引き表示の場合)

10,000円の商品を、1,000ポイント使って9,000円で買った。

仕入高  9,000 / 未払金 ○○カード  9,000

ポイントを仕入れに使った(支払方法表示の場合)

仕入高 10,000 / 未払金 ○○カード  9,000
              / 雑収入            1,000

Amazonギフト券を買ったとき

前払金(またはギフト券)  50,000 / 未払金 ○○カード  50,000

そのギフト券で商品を仕入れたとき

仕入高  50,000 / 前払金(またはギフト券)  50,000

Apple Gift Card等を事業用カードで買い、私用に使ったとき

個人事業主なら事業主貸、法人なら役員貸付金等です。事業で使うものだけを事業の帳簿に残します。

つまずきやすいところ

ここが一番間違えます。仕入処理と棚卸価額をそろえてください。

ポイントを値引きとして処理したなら、その商品の棚卸価額も値引き後の金額です。支払方法として処理したなら値引き前の金額です。片方だけ違う基準にすると、売上原価が狂います(ケース06)。

同じ取引を、二つのシートに入力しないでください。ポイント履歴の管理表と、現金・ギフト券の管理表に同じ買い物を書くと、二重計上になります。第11章のとおり、どちらか一方に決めます。

未使用のギフト券残高は、期末に確認してください。買ったけれど使っていないギフト券は、まだ仕入れではありません。資産として残ります。

私用に使ったポイントも記録します。金額が小さくても、記録がないと後から説明できません。

再発防止

  • ポイントを使った取引は、注文明細を保存する(履歴の画面だけでは足りない)
  • ポイント・ギフト券の管理表を1つに決め、二重に書かない
  • 仕入処理と棚卸価額の基準を、同じにそろえる
  • 月末に、未使用のギフト券残高を数える
  • ポイント利用がなかった月も「なし」と記録する

関連する章

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ポイント・ギフト券の全処理 第11章
ポイント仕入れ商品の棚卸価額 第13章
消費税との関係 第15章

ケース06 棚卸しをすると、なぜ利益が変わるのか分からない

症状

棚卸しを入れたら、利益が急に増えました。何かの間違いですか。

在庫を数える意味が分かりません。仕入れたときに経費にしたはずです。

去年仕入れて売れ残った商品は、去年の経費ですよね。

何が起きているか

仕入れた金額は、そのままでは経費になりません。

経費になるのは、売れた商品の仕入金額だけです。これを売上原価といいます。

売上原価 = 期首の在庫 + 当期の仕入 - 期末の在庫

売れ残った商品は、経費ではなく資産として残ります。だから棚卸しを入れると、そのぶん経費が減り、利益が増えます。間違いではなく、それが正しい姿です。

数字で見ます。仕入100万円、そのうち30万円が売れ残った場合です。

項目 棚卸しなし 棚卸しあり
売上 120万円 120万円
仕入 100万円 100万円
期末在庫 0円 △30万円
売上原価 100万円 70万円
売上総利益 20万円 50万円

棚卸しを入れないと、利益が30万円少なく見えます。これは「節税」ではありません。去年の在庫は今年の売上原価になるので、翌年に反動が来ます。

確認する場所

在庫がある場所を、すべて数えます。ここが抜けやすいところです。

場所 確認するもの
Amazon FBA FBA在庫レポート
自宅・事務所 実地で数える
外部倉庫・納品代行先 倉庫の在庫データ
外注先・スタッフ宅 預けている数量
発送済み・未着 出荷したが相手に届いていないもの

FBAだけ数えて終わりにしないでください。せどりで最も多い漏れです。第5章の在庫保管場所台帳を使ってください。

直し方

  1. 基準日を決める(月末なら月末時点、決算なら決算日時点)
  2. 場所ごとに、商品・数量・仕入単価を書き出す
  3. 仕入単価に、送料や手数料を含めるかどうかのルールを決めて統一する
  4. 合計を出す
  5. MFに期末商品棚卸高として反映する

棚卸表は、合計金額だけでは弱いです。商品名・数量・単価の明細を残してください。あとで税務署や税理士に説明できません。

つまずきやすいところ

税込と税抜を混ぜないでください。仕入を税抜で記帳しているなら、棚卸も税抜です。ここが混ざると、利益率がおかしくなります。

月末前後のカットオフに注意してください。月末に売れた商品、月末に届いた仕入れが、どちらの月に入るのかを決めておきます。

在庫を少なく数えると利益が減り、多く数えると利益が増えます。数え間違いは、そのまま利益の間違いになります。だから明細を残します。

壊れた商品・売れない商品を、勝手に棚卸から外さないでください。廃棄したなら廃棄の記録を残します。記録なしで外すと、ただの数え漏れと区別がつきません。

ポイントで仕入れた商品は、仕入処理と同じ基準で評価します(ケース05)。

再発防止

  • 在庫保管場所台帳を作り、数える場所を固定する
  • 基準日を決め、毎月同じ日に数える
  • 棚卸表は商品・数量・単価の明細で残し、合計だけにしない
  • 税抜・税込のどちらでそろえるか決めて、変えない
  • 廃棄・破損は、その都度記録を残す
  • 棚卸表のバックアップを取る

関連する章

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棚卸しと売上原価のすべて 第13章
在庫残高の見方 第14章
在庫保管場所台帳 第5章

ケース07 MFに数字が入っているのに、実際の感覚と合わない

症状

利益率が明らかに高すぎます。こんなに儲かっている感覚はありません。

逆に、利益が出ていないことになっています。もっと出ているはずです。

利益が出ているのに、口座にお金がありません。記帳が間違っていますか。

何が起きているか

原因は、だいたい3つのどれかです。この順番で確認すると早いです。

1 在庫が入っていない、または間違っている

利益率が高すぎるときの筆頭候補です。期末在庫を多く数えていると、売上原価が減って利益が増えます。逆に在庫を入れていないと、利益が減ります(ケース06)。

2 どこかが抜けている、または二重になっている

  • 売上を入金額で記帳している → 売上も手数料も少なくなる(ケース02)
  • 仕入れを二重に登録している → 利益が減る(ケース03)
  • 経費の登録漏れ → 利益が増える
  • カード引落しを経費で記帳している → 経費が二重になる(ケース01)

3 利益と現金は、そもそも別物

「利益があるのに現金がない」は、記帳の間違いとは限りません。せどりでは、むしろ普通に起きます。

理由 何が起きているか
在庫が増えた 仕入れた分だけ現金が減るが、経費にはならない
売掛金が増えた 売れているが、まだ入金されていない
借入の元金返済 現金は減るが、経費ではない
固定資産を買った 現金は減るが、その年の経費は減価償却分だけ
税金・社会保険の支払い 現金は減るが、経費にならないものがある

ざっくり言うと、こうです。

現金の増減 = 利益 - 在庫の増加 - 売掛金の増加 - 元金返済 - 固定資産の購入 + …

確認する場所

利益がおかしいと思ったら、この順で見てください。

  1. 在庫 — 期末在庫が入っているか。金額は妥当か
  2. 売上 — 販路のレポート合計と、売上高が合っているか
  3. 仕入 — 金額順に並べて、同額の重複がないか
  4. 残高 — 預金・売掛金・未払金の残高が、実際と合っているか
  5. 仮払金・仮受金 — 「あとで調べる」で置いた取引が残っていないか

残高が合っていれば、利益はだいたい正しいです。逆に、残高が合わないまま利益だけ見ても意味がありません。

直し方

残高から潰します。順番はこうです。

預金残高 → 売掛金残高 → 未払金残高 → 在庫残高 → 仮払金・仮受金

預金は、通帳・ネットバンキングの残高と1円単位で合わせます。ここが合わないうちは、先に進んでも無駄です。

古い残高は危険信号です。半年以上動いていない売掛金、いつまでも消えない未払金、去年からある仮払金。これらは、たいてい記帳の誤りが化石になったものです。

残高が合わないからといって、連携を解除して再連携しないでください。第14章のとおり、取得済み明細や自動仕訳ルールに影響します。まず原因を探します。

つまずきやすいところ

会計上の売上総利益と、普段使う「粗利」は一致しません。せどりの現場では、売値から仕入値と手数料を引いたものを粗利と呼びます。会計上の売上総利益は、売上-売上原価です。手数料は販管費なので引かれていません。別のものを比べて「合わない」と言っていることが、よくあります。

部門や販路で分けすぎないでください。細かく分けるほど、どこかに入れ忘れが出ます。

再発防止

  • 毎月、預金・売掛金・未払金・在庫の残高を確認する
  • 仮払金・仮受金には、担当者と解消期限を必ず付ける
  • 前月比・前年比で、大きく動いた科目を毎月1回見る
  • 「粗利」と言うとき、何を引いた数字か決めておく
  • 違和感があったら、利益ではなく残高から調べる

関連する章

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利益・資金繰り・残高の確認 第14章
棚卸しと利益の関係 第13章
売上・売掛金 第8章

ケース08 何を提出すれば、記帳が完了なのか分からない

症状

MFに全部登録しました。これで確定申告できますか。

未処理取引がゼロなら、月次は完了ですか。

税理士に何を渡せばいいのか分かりません。

何が起きているか

「入力済み」と「完了」は、違います。

状態 意味
入力済み 取引がMFに登録されている
完了 登録した数字が、実際と合っていることを確認できている

未処理取引がゼロでも、完了ではありません。連携が止まっていれば、そもそも取引が来ていません。来ていないものは、未処理にも出ません。「未処理ゼロ」は、確認できたことの証明にならないのです。

確認する場所と順番

第18章の6ステップです。この順番でやってください。順番を変えると、あとの工程をやり直すことになります。

ステップ1 資料を集める

銀行明細、カード明細、販路レポート、現金・ポイント・ギフト券の記録、棚卸表。

ステップ2 連携を確認する

MFのデータ連携一覧を開き、エラーと最終取得日を見ます。エラーが1件でもあれば、その口座の取引は入っていません。連携できないサービスは「連携外」として、別に資料を用意します。

ステップ3 未処理・不明取引をゼロにする

「あとで調べる」で置いたものを解消します。仮払金・仮受金に逃がしたまま終わらせないでください。

ステップ4 残高を合わせる

預金 → 売掛金 → 未払金 → 在庫 の順です。ここが月次の山場です。

ステップ5 利益を見る

前月比、利益率、大きく動いた科目。違和感があれば、ステップ4に戻ります。

ステップ6 保存・共有する

その月の資料をまとめて保存し、必要なら税理士へ渡します。

月次完了の判定

次がすべて言えたら完了です。

  • 今月の連携エラーはゼロ、または代替資料で補った
  • 未処理・不明取引はゼロ
  • 預金残高が、通帳・ネットバンキングと一致している
  • 売掛金残高が、販路の未入金額と説明できる
  • 未払金残高が、カード請求と説明できる
  • 在庫金額が入っている
  • 現金・ポイント・ギフト券の記録がある(利用なしなら「なし」と記録)
  • 利益を見て、説明できない違和感がない

一つでも欠けていたら、まだ「入力済み」です。

時間がないときの優先順位

第18章に3つのルーティンがあります。時間で選んでください。

時間 やること
30分 連携エラー確認、未処理の解消、預金残高の照合
60分 上記+売掛金・未払金の照合
半日 上記+棚卸し、利益確認、資料の保存・共有

30分しか取れない月でも、連携エラーと預金残高だけは見てください。ここが崩れていると、あとから直す手間が何倍にもなります。

税理士へ渡すもの

税理士に渡す場合は、次をセットにします。

  • 銀行明細(全口座・全月)
  • カード明細(全カード)
  • 販路の売上レポート
  • 現金・ポイント・ギフト券の記録
  • 棚卸表
  • 連携外取引の一覧

「MFを見てもらえれば分かります」では足りません。税理士は、MFの数字が実際と合っているかを、資料がないと確認できません。

再発防止

  • 月次の締め日を決めて、カレンダーに入れる
  • 6ステップの順番を変えない
  • 完了の判定リストを、毎月同じものでチェックする
  • 資料は月ごとのフォルダにまとめ、ファイル名のルールを守る
  • 30分しか取れない月でも、連携エラーと預金残高だけは見る

関連する章

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月次完了チェックリストとルーティン 第18章
残高の確認方法 第14章
証憑の保存ルール 第5章・第17章
年末・決算前にやること 第19章

それでも解決しないとき

ここまでのケースに当てはまらない場合、次のどれかです。

1 原因が、当月ではなく過去にある

期首残高、前期の棚卸、開業時・法人化時の引き継ぎ。過去の数字が違っていると、今月だけ見ても永久に見つかりません。前期末の残高が正しいかを確認してください。

2 勘定科目ではなく、消費税の区分の問題

金額は合っているのに申告の数字が合わない場合は、税区分を疑います。第15章です。

3 税務の判断が必要な領域

「これは経費になりますか」「この処理で申告して大丈夫ですか」という問いは、記帳ではなく税務の判断です。この教材では扱いません。顧問税理士か、所轄の税務署に確認してください。

記帳と税務の線引きは、はじめにで説明したとおりです。帳簿を正しく作るところまでが、この教材の役割です。そこまでできていれば、税理士に相談したときの答えも早く、正確になります。



利益の感覚が合わないときに見る場所 利益の感覚が合わないときに見る場所 「儲かっているはずなのに」の原因は、だいたいここです 利益が大きすぎる 在庫が増えている 経費の計上漏れ 売上の二重計上 → 第13章・第9章 利益が小さすぎる 仕入れを全額経費にした 売上を入金額で計上 棚卸をしていない → 第13章・第8章 利益はあるのに現金がない 在庫の増加 借入の元本返済 納税・未払の支払い → 第14章 利益がおかしいときの原因の多くは、在庫まわりにあります
図59利益の感覚が合わないときに見る場所
残高が合わないときの切り分け 残高が合わないときの切り分け 上から順にやると、たいてい原因にたどり着きます 1 差額の金額を確認する その金額に見覚えはないか。1件の取引かもしれません 2 差額を2で割ってみる 割り切れるなら、貸借を逆に入れている可能性 3 期間を絞る 月ごとに見て、どの月からズレたかを探す 4 重複を疑う 同じ取引が2回入っていないか 5 漏れを疑う 連携が切れていた期間はないか 6 それでも合わなければ記録を残す 原因不明のまま放置せず、状況をメモしておく 差額の金額そのものが、いちばんのヒントになります
図60残高が合わないときの切り分け

 

改訂履歴と制度の更新情報

共通

この教材は、一度作って終わりにするつもりがありません。

記帳の考え方や手順は、そう簡単には変わりません。勘定科目の使い分け、売掛金と入金の関係、棚卸しと売上原価、月次の締め方。この教材の大部分は、何年経っても同じことを書いています。

一方で、制度は動きます。消費税、インボイス、電子帳簿保存法。このあたりは、数年おきに扱いが変わります。

そこで、この教材では次のようにしています。

  • 本文 は、変わりにくい考え方と手順を書く
  • このページ に、制度が動いたときの差分を追記する

制度に関する記述で迷ったときは、本文よりもこのページの記載を優先してください。


改訂履歴

時期 変更した内容
3.0 2026年7月 初版

制度の更新情報

現時点で、初版の記載から変更された制度はありません。

変更があった場合は、ここに次の形で追記します。

  • いつ 何が変わったか
  • どの章のどこ に関係するか
  • どうすればよいか

更新のお知らせについて

改訂したときは、購入いただいた方にお知らせします。お知らせが届いたら、最新版を取り直してください。

なお、この教材の記載はあくまで記帳・経理実務の説明です。制度の解釈や、あなたの場合にどう適用されるかという判断は、税務の領域です。改訂後の記載であっても、最終的な判断は顧問税理士または所轄の税務署に確認してください。


制度を自分で確認したいとき

当社の更新を待たずに、ご自身で確認したい場合は、次の一次情報を見てください。個人のブログやSNSではなく、必ず公式のものにあたってください。

調べたいこと 見る場所
消費税・インボイス 国税庁「インボイス制度特設サイト」
所得税・確定申告 国税庁「確定申告特集」
電子帳簿保存法 国税庁「電子帳簿保存法関係」
法人税・決算 国税庁「法人税関係」
会計ソフトの操作 マネーフォワード クラウド公式サポート

各章の末尾にも、その章に関係する公式情報の参照先を載せています。

 

まとめ・索引

この章の使い方

ここまでお疲れさまでした。

この「まとめ・索引」は、最初からじっくり読む章というより、作業中に戻ってくるための地図です。

せどり・物販の経理は、覚えることが多そうに見えます。

でも、実際に毎月やることは、かなり決まっています。

大事なのは、毎回ゼロから考えないことです。

この章では、次の5つをまとめます。

  1. 1か月分の記帳完了チェック
  2. 年間スケジュール
  3. 用語索引
  4. 困ったときの逆引き
  5. 更新情報の確認方法

毎月の記帳前、決算前、税理士へ資料を渡す前に、この章だけ見返しても使えるようにしています。


この教材の地図 この教材の地図 20章がどうつながっているかの全体像です 準備する 第0章 読む場所 第1章 申告の全体像 第2章 帳簿の目的 第3章 お金の流れ 設計する 第4章 勘定科目 第5章 初期設計 第6章 MF設定 毎月まわす 第7章 月次の全体像 第8〜12章 取引別の記帳 第13〜14章 棚卸と残高 第18章 完了の確認 年に一度 第15章 消費税 第16章 特殊取引 第17章 保存 第19章 年末決算 毎月まわすのは真ん中の列だけです。ここが習慣になれば、記帳は終わります 毎月まわすのは、真ん中の列だけです
図6120章がどうつながっているかの全体像

1. 1か月分の記帳完了チェック

毎月の記帳は、次の順番で確認します。

完璧に暗記する必要はありません。

このチェックリストをコピーして使ってください。

ステップ1 資料を集める

  • 銀行明細を確認した
  • クレジットカード明細を確認した
  • Amazon、楽天、Yahoo!、メルカリ等の売上データを確認した
  • ECサイトの購入履歴・領収書を保存した
  • 紙のレシート・領収書を月別に整理した
  • 現金取引の有無を確認した
  • PayPay、Suica、楽天ペイ等の利用履歴を確認した
  • 楽天ポイント、PayPayポイント、Amazonポイント等の利用履歴を確認した
  • Amazonギフト券、Apple Gift Card、楽天キャッシュ等の利用履歴を確認した
  • 棚卸が必要な月は、月末時点の在庫金額を確認した

ステップ2 連携を確認する

  • 銀行連携が止まっていない
  • クレジットカード連携が止まっていない
  • Amazon出品・売上系の連携が止まっていない
  • Amazon購入、楽天市場、Yahoo!ショッピング等の連携が止まっていない
  • 画像認証、ワンタイムパスワード、再認証が必要なものを解除した
  • 連携できないカードや決済サービスは、PDF・CSV・手入力で補った
  • 連携を削除・再作成する前に、重複や欠落が起きないか確認した

ステップ3 未処理・不明取引をなくす

  • 未処理取引を登録した
  • 不明取引を一覧化した
  • Amazon、楽天、PayPay、Suicaなど内容が分かりにくい取引を確認した
  • 仕入、経費、固定資産、プライベートを分けた
  • 仮払金、事業主貸、役員貸付金などの仮置きを放置していない
  • 税理士確認が必要な取引を別に分けた
  • 証憑が不足している取引をリスト化した

ステップ4 残高を確認する

  • 銀行残高が会計ソフトと合っている
  • カード未払金がカード明細・引落額と合っている
  • Amazon等の売掛金を確認した
  • 現金残高がある場合、実際残高と合っている
  • 借入金がある場合、返済予定表・残高と合っている
  • 固定資産の購入・売却・廃棄があれば反映した

ステップ5 利益を見る

  • 売上高に大きな違和感がない
  • 売上原価に大きな違和感がない
  • 棚卸が反映されている
  • 粗利率が極端に高すぎない・低すぎない
  • 経費に異常な増減がない
  • 資金繰りに違和感がない
  • 消費税の課税区分に大きな違和感がない

ステップ6 月次完了を記録する

  • 月別フォルダに資料を保存した
  • 税理士・記帳代行へ渡す資料をまとめた
  • 未提出・確認中の資料を明記した
  • 月次完了日を記録した
  • 次月に持ち越す確認事項をメモした

月次完了のひとこと判定

次の一文が言えれば、その月はかなり良い状態です。

この月は、必要な資料がそろい、未処理・不明取引がなく、
主要な残高も確認済みです。

この一文が言えない場合は、どこかがまだ未完了です。


2. 年間スケジュール

せどり・物販の経理は、年間で見るとリズムがあります。

毎月やること、半年に一度やること、年末・決算前にやることを分けるとラクになります。

毎月やること

タイミング やること
月初 前月分の資料を集める
月初〜10日頃 カード明細、売上データ、CSV、領収書を保存する
10日〜15日頃 未処理・不明取引を確認する
15日〜20日頃 カード未払金、預金、売掛金を確認する
20日〜25日頃 利益、資金繰り、異常値を見る
月末 次月へ持ち越す確認事項を整理する

カード会社や販路によって、明細確定日や入金日が違います。

そのため、必ずしも毎月10日に全部そろうとは限りません。

大事なのは、自分の事業に合った締め日を決めることです。

1月にやること

個人事業主は、前年分の確定申告準備が始まります。

12月決算法人も、決算資料をそろえる時期です。

  • 12月31日時点の預金残高を保存する
  • 12月31日時点の棚卸金額を出す
  • 12月31日時点の売掛金を確認する
  • 12月利用分のカード明細を確認する
  • 翌年1月・2月引落分に前年利用が含まれていないか確認する
  • 不明取引を潰す
  • 固定資産、借入金、カード未払金を確認する
  • 税理士へ渡す資料を月別に整理する

年明けに慌てないために、12月中から棚卸と資料整理の準備を始めてください。

2月〜3月にやること

個人事業主は、所得税の確定申告時期です。

所得税の確定申告は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。

ただし、期限が土日祝に当たる場合など、実際の期限が変わることがあります。

消費税の申告が必要な個人事業者は、消費税の期限も確認してください。

  • 事業所得の数字を確認する
  • 青色申告決算書または収支内訳書を確認する
  • 確定申告書を作成する
  • 消費税申告が必要な場合は消費税集計を確認する
  • 会社員の副業なら源泉徴収票を用意する
  • 各種控除証明書を用意する
  • 申告後、申告書控え・受付通知・納付履歴を保存する
  • 翌年の改善メモを作る

6月・7月にやること

年の半分が終わったタイミングで、一度残高を見ます。

ここで見ておくと、年末にかなりラクになります。

  • 6月末時点の預金残高を確認する
  • 6月末時点の売掛金を確認する
  • 6月末時点の棚卸を確認する
  • 粗利率を見る
  • 在庫が増えすぎていないか確認する
  • 消費税の納税見込みをざっくり見る
  • 連携外取引の漏れを確認する

棚卸は、年末にいきなりやるより、半期で一度練習しておく方が安全です。

10月〜12月にやること

年末・決算に向けた準備期間です。

  • 連携エラーを残さない
  • カード明細の未提出をなくす
  • 現金・ポイント・ギフト券の入力漏れを潰す
  • インボイス資料の不足を確認する
  • 棚卸の方法を決める
  • 年末に必要な売掛金データの取得方法を確認する
  • 固定資産や借入金の資料を整理する
  • 税理士へ早めに相談する

12月31日を過ぎてから思い出すと、資料を集めるのが一気に重くなります。

年末の経理は、12月に始めるのではなく、10月から整えます。


3. 用語索引

ここでは、本教材で出てきた重要用語をざっくり確認します。

細かい会計定義よりも、せどり・物販の実務でどう使うかを優先しています。

用語 意味 関連章
売上 商品やサービスを販売して得た収入 第3章、第8章
売掛金 売上済みだが、まだ入金されていない金額 第8章、第14章、第19章
仕入 販売するための商品を買うこと 第3章、第9章
売上原価 売れた商品に対応する仕入原価 第13章
棚卸 期末・月末時点で残っている在庫を集計すること 第13章、第19章
商品 販売目的で保有している在庫 第13章
経費 事業のために使った費用 第12章
事業主貸 個人事業で、事業のお金を個人側に使ったときなどに使う科目 第12章
事業主借 個人のお金を事業に入れたときなどに使う科目 第12章
未払金 すでに費用や仕入が発生しているが、まだ支払っていない金額 第9章、第18章
カード未払金 クレジットカード利用済みで、まだ銀行引落されていない金額 第9章、第18章
買掛金 商品仕入に関する未払い 第9章
預金残高 銀行口座にある実際の残高 第14章、第18章、第19章
固定資産 長期間使う高額な事業用資産 第16章
減価償却 固定資産を複数年に分けて経費にする処理 第16章
借入金 金融機関などから借りたお金 第16章
元金 借入金の返済のうち、借りたお金そのものの返済部分 第16章
利息 借入金の返済のうち、借入に対する費用部分 第16章
消費税 商品・サービスの取引にかかる税金 第15章
課税事業者 消費税の申告・納税が必要な事業者 第15章
免税事業者 一定条件で消費税の納税義務がない事業者 第15章
インボイス 適格請求書。仕入税額控除のために重要な請求書等 第15章、第17章
仕入税額控除 受け取った消費税から、支払った消費税を差し引く仕組み 第15章
電子取引 PDF、メール、ECサイトなど電子的に取引情報を授受する取引 第17章
証憑 領収書、請求書、明細など、取引の根拠資料 第17章
月次締め 1か月分の記帳を確認し、完了させる作業 第18章
確定申告 個人が1年分の所得と税額を計算して申告する手続き 第1章、第19章
法人決算 法人が事業年度ごとに決算書や申告資料を整える作業 第1章、第19章
青色申告決算書 個人の青色申告で事業所得の内容を示す書類 第19章
貸借対照表 ある時点の資産・負債・純資産を示す表 第1章、第14章
損益計算書 一定期間の売上・費用・利益を示す表 第1章、第14章
粗利率 売上に対して売上総利益がどれくらいあるかを見る割合 第14章
資金繰り お金の入金・出金の流れを管理すること 第14章

4. 困ったときの逆引き

困ったときは、下の表から該当する章に戻ってください。

記帳の全体像が分からない

困りごと 戻る章
何から始めればいいか分からない 第0章、第1章
帳簿をつける意味が分からない 第2章
せどりのお金の流れが分からない 第3章
勘定科目が分からない 第4章

初期設定で迷った

困りごと 戻る章
事業用口座・カードをどう分けるか分からない 第5章
会計ソフトに何を連携すればいいか分からない 第5章、第6章
MFクラウドの設定の考え方を確認したい 第6章
連携名や補助科目をどう作るか迷う 第5章、第6章

売上・仕入・カードで迷った

困りごと 戻る章
Amazonの売上と入金が合わない 第8章、第14章、第19章
売掛金が分からない 第8章、第19章
カード利用と引落の関係が分からない 第9章、第18章
カード明細だけでいいか不安 第9章、第17章
返品・返金の処理で迷う 第8章、第9章

現金・ポイント・ギフト券で迷った

困りごと 戻る章
現金仕入れをどう入れるか分からない 第10章
PayPayやSuicaの利用をどう扱うか迷う 第10章
楽天ポイントを仕入に使った 第11章
Amazonギフト券・Apple Gift Cardを使った 第11章
チャージ残高や未使用分がある 第11章、第13章、第19章

経費・プライベートで迷った

困りごと 戻る章
これは経費になるのか迷う 第12章
プライベート利用が混ざった 第12章
家事按分が必要 第12章
飲食代・交際費で迷う 第12章、第17章
事業主貸・事業主借が分からない 第12章

在庫・利益・資金繰りで迷った

困りごと 戻る章
棚卸が分からない 第13章、第19章
利益率が急に変わった 第13章、第14章
売上はあるのにお金がない 第14章
在庫が増えすぎている気がする 第13章、第14章
資金繰りを見たい 第14章

消費税・インボイスで迷った

困りごと 戻る章
自分が課税事業者か分からない 第15章
原則課税・簡易課税が分からない 第15章
インボイスが必要な場面を確認したい 第15章、第17章
カード明細にインボイス情報がない 第15章、第17章
消費税申告で不安がある 第15章、第19章

特殊取引で迷った

困りごと 戻る章
10万円以上の備品を買った 第16章
パソコン・車・設備を買った 第16章
借入をした 第16章
給与・外注費が出てきた 第16章
個人から法人に移行する 第16章
海外販売や外貨がある 第16章

保存・月次・決算で迷った

困りごと 戻る章
領収書やPDFをどう保存するか分からない 第17章
電子取引データの保存が不安 第17章
月次記帳をどこで完了にするか分からない 第18章
連携エラーが残っている 第18章
年末・決算前に何をそろえるか分からない 第19章
確定申告・法人決算前の資料が不安 第19章

5. 更新情報の確認方法

経理教材で大事なのは、「考え方」と「最新情報」を分けることです。

お金の流れ、帳簿の目的、売上・仕入・棚卸・残高確認の考え方は、大きくは変わりません。

一方で、制度、会計ソフトの画面、ECサイトの仕様、インボイス対応、電子帳簿保存法の細部は変わることがあります。

だから、この教材を使うときは、次の情報を定期的に確認してください。

税制・申告制度

税制や申告期限、消費税、インボイス、電子帳簿保存法などは、国税庁の公式情報を確認します。

特に確認したいのは次の項目です。

  • 所得税の確定申告期限
  • 消費税申告期限
  • 青色申告特別控除の要件
  • インボイス制度の経過措置
  • 電子帳簿保存法の要件
  • 簡易課税・2割特例など消費税関連の制度
  • 届出書の提出期限

会計ソフト

MoneyForwardなどの会計ソフトは、画面やメニュー名が変わることがあります。

本教材では、できるだけ普遍的な考え方を中心にしています。

実際のクリック手順は、最新の公式ヘルプで確認してください。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 銀行・カード連携の方法
  • 連携エラーの解除方法
  • Amazon、楽天、Yahoo!等の連携方法
  • 証憑保存機能
  • 消費税集計画面
  • 勘定科目・補助科目の設定
  • 仕訳ルールの設定

販路・決済サービス

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、メルカリ、PayPay、クレジットカード会社なども仕様が変わります。

特に、次のものは定期的に確認してください。

  • 売上データの出力方法
  • 決済期間データの取得方法
  • 領収書・請求書PDFの取得方法
  • インボイス対応資料の取得方法
  • ポイント利用履歴の取得方法
  • CSVダウンロード方法
  • 過去明細の閲覧可能期間

「去年できた方法が今年も同じ」とは限りません。

年末に慌てないように、少なくとも年1回は出力方法を確認しておきましょう。

最後に

せどり・物販の経理は、最初は細かく見えます。

売上、入金、仕入、カード、ポイント、ギフト券、棚卸、インボイス、消費税。

いろいろなものが一気に出てくるので、苦手意識を持つ人も多いです。

でも、本教材で繰り返し見てきたとおり、やることの芯はシンプルです。

取引を集める
↓
正しく分ける
↓
証拠を残す
↓
残高を合わせる
↓
利益とお金を見る

この流れです。

経理は、税務署のためだけにやるものではありません。

自分の事業を守るためにやるものです。

売上が伸びても、お金が残らなければ苦しくなります。

在庫が増えすぎても、気づけなければ資金が止まります。

消費税やカード未払金を見ていなければ、あとから大きな支払いに驚きます。

帳簿は、その危険を早めに教えてくれます。

完璧な経理を最初から目指さなくて大丈夫です。

まずは毎月、資料を集める。

不明を残さない。

棚卸を意識する。

残高を見る。

この4つからで十分です。

それができるようになると、経理は「面倒な作業」から「経営の見える化」に変わります。

セドケイリは、そのための地図です。

困ったら、またこの索引に戻ってきてください。


読み終えたあとに

最後に、ここから先の進め方を書いておきます。

まず、1か月分を回してください

読み終えただけでは、何も変わりません。いちばん直近の1か月を、実際に締めてみてください。

完璧でなくて構いません。第18章の6ステップを順番にやって、預金残高が通帳と合うところまで進めば、それで十分な前進です。合わない月が来ても、それが普通です。そこからが本番です。

詰まったら、聞いてください

チャットで質問できます。月2回の勉強会・作業会もあります。

一人で30分悩むより、聞いたほうが確実に早いです。「こんなことを聞いていいのか」と迷う必要はありません。むしろ、そういう質問こそ多くの人が同じところで詰まっています。

自分でやる以外の道もあります

途中で「これは自分でやらないほうがいい」と気づくことがあります。それも正しい判断です。

  • 帳簿は自分で作ったが、合っているか確かめたい  入力済みの帳簿を診断するサービスがあります。数値・残高・月別推移から、確認が必要な箇所を整理してお渡しします。

  • 経理に時間を取られて、仕入れが止まっている  記帳そのものをお引き受けするサービスがあります。明細・証憑との突合を含めて対応します。

  • 法人で、担当者に経理を任せたい  社内で月次決算を締められるようになるまで伴走するサービスがあります。

どれも当社で行っています。詳しくは、サポートのチャットで聞いてください。売り込みはしません。


経理は、一度仕組みを作れば、あとは同じことの繰り返しです。

最初の1か月がいちばん重いです。そこを越えれば、2か月目は半分の時間で終わります。3か月目には、何をどの順番でやるか、考えなくても手が動くようになります。

その状態まで、一緒に進みましょう。

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